第15回詩人バトル Entry24
アフリカには 砂漠がある サバンナがある
そして ジャングルがあった
少年の挨拶は ”ジャンボ”
しかし もう長い間言ったことがなかった
出会う人は皆 敵だった
銃口を向けてくる 兵士だった
アフリカには 砂漠がある サバンナがある ジャングルがある
そして 戦争があった
少年は 腹を減らしていた
少年の食べ物は雑草の芽だった 辺りに生えている木の実だった
ただそれだけだった
ある日 少年は見知らぬ男を見た
兵士でない人を見たのは久しぶりだった
男は火を焚いていた 食べ物のいい香りがした
少年は 生きるためなら何でもしようと思った
―ここに座って食べないか? ―
男は不意に話しかけた
少年はぎくっとしたが 食べ物の香りに負けて座った
男はアフリカ人ではなかった 少なくとも少年の知らない国の人だった
すすけた服を着て 大きな羽飾りのついた鞄を持っていた
少年は尋ねた あなたは誰だ、と
―ただ 世界を旅しているものだ―
どこから来たのだ、と
―海の向こうから来た―
何者だ、と
―人は私をインディオと呼ぶ―
少年は よくわからなかった
男は 焼けたサツマイモを渡した
少年は 無言でほおばった
甘い 甘い うまい・・・
男は少年に言った
ここに三つの種芋を植える
もしまた食べたいのなら 六ヶ月掘り起こしてはいけない
六ヶ月後になると蔓が生えている それを掘り起こせばまた食べられるだろう
少年はうなずいた
次の日 腹を減らした中年の男が芋を探していた
中年の男は昨日 木陰から見ていた
男はひとつ芋を見つけると そのまま食べてしまった
一週間後 芋の上で銃弾が飛び交った 兵士達が撃ち合った
何人も死んだ
ある兵士が手榴弾を投げた それは芋の上で爆発した
芋は粉々に飛んでしまった
一ヵ月後 ひとつ残った芋は生きていた
芋は芽を出した
芽は葉になり 蔓になり 地を這った
少年のように 中年の男のように 死んでいった兵士のように
地を這った 地を這っていった
六ヵ月後 少年は現れた
少年は飢えていた 何も食べていなかった
芋蔓は一面に広がっていた
少年は必死で土を掘った 夢中で蔓を引っ張った
大きな芋が引っ張り出された
少年は生のまま 泥がついていたが かぶりついた
芋は淡く黄色く 甘かった
少年は 食べた
食べて 泣いた
三年後 インディオの男が通りかかった
そこには小さな女の子が立っていた
インディオの男を見つけると 慌てて走っていった
しばらくすると 女の子はあの少年を連れて戻ってきた
少年の後ろには 小さな子供達がいっぱいついてきた
子供達はみんな サツマイモを持っていた
少年は男にサツマイモを渡した
そして笑った
男も笑った
でも、子供達はもっともっと笑った
少年は言った
”ジャンボ ”
アフリカには 砂漠がある サバンナがある ジャングルがある 戦争がある
そして 笑顔があった