第16回詩人バトル Entry42
どこまでもどこまでも
流れる音
俺を苦しめる優しい流れ
最初で最期の贈り物
『鍵付きのオルゴール』
白い世界の中で
最後の最期まで
流れていた音
君の傍で
くりかえしくりかえしくりかえし
君が静かに目を閉じるまで
くりかえしくりかえし
1フレーズだけ
それは君を生かしていた
どんな薬よりも
どんな治療よりも
君を生かしていた
ふっと
確実に聞こえていた
単調な
君が生きている証拠の音が
消えた
流れていた音まで
消えた
静寂
閉ざされた瞳
聞こえない音
静寂はすぐに破られた
流れ込んできた
足音 声音 破音
この世のすべての雑音
君の音も オルゴールも
聞こえなくなった
どこまでもどこまでも
流れていた音
くりかえしくりかえしくりかえし
耳にかすかに響いてた
くりかえしくりかえし
かすかに君の声が混じってきて
白い世界に居た君の
姿が浮かび上がってきた
それが苦しくて
あれから鍵をかけた
オルゴールに
君に関する記憶に
鍵は捨てた
だから
音は流れない
君は知らないはずなのに
くりかえしくりかえし
聞こえてくる音
耳の奥から 弱弱しく
とぎれることなく
くりかえしくりかえし
どこまでもどこまでも…