エントリ1
小さな酒 駄々
こんな小さな飲み会でも
みんな昔の同級生でも
支配者っているもんだ
自分の話を言い過ぎる
人の話の骨を折る
笑わせるからいいじゃないかと言いたげに
店員にも絡んでいき店員すらも笑うしかない
口数少なくなる私にお前も喋れと叩かれて
何も言えずに酒を飲む
ああ、昔は楽しかった
みんながみんな馬鹿だった
馬鹿で我が強く意味など無いのに記憶に残る
こいつだけは馬鹿のまま
人の話の上げ足取って
笑わせるから空気は決して重くはならない
笑いながらもいい気分ではないけれど
お前みたいになりたかったと
笑いながら言いたかった
エントリ3
秋づく 石川順一
初秋から仲秋にかけて
ふく北風である
雁渡しに吹かれて
想う
そろそろ雁が
渡って来るので
秋らしくなって来ると
空も海も水も澄んで来て
青北風(あおぎた)とも言われる
風に吹かれて
新北風(しんぎた)とも言われる
風に吹かれて
雁寒(かりがねざむ)と言われる時期までは
まだまだかもしれない
と言う感慨にも浸る
エントリ4
喪失 大覚アキラ
這い上がって
くるみたいな
あの感じ
背骨を
震えが
そういうのは
なくなった
もうなくなってしまった
終わることのない音楽に
うつくしい
という名を付ける
その衝動のはじまりの場所を
見つける
その瞬間の
震えが
這い上がって
背骨を
のようなあの感じ
そういうのは
もうなくなったんだ
だから
終わることのない音楽に
限りなく透明に近い
白い光を混ぜ合わせて
消していこう
ひとつずつ
もうなくなったから
もうなくなってしまったから
エントリ5
drop90% 凛々椿
drop90%
雨が降るでしょう
外出の際は傘をお忘れなく
雨、雨……ああ雨雨雨雨、雨!
ああ神よなぜこの世に雨をもたらしたか
僕は憎むよ
傘ほど邪魔な物質を僕は他に知らない
夕暮れに雨が降るかもとなれば傘を持つか持たぬかで逡巡し
かといって折りたたみ傘は最悪だ
そっくり返るのをなだめつつ広げたら最後
たたむのにどれだけの時間と労力を費やすだろう
おまけにうまいこと元に戻せない
電車の中でたまに開いちゃったりするし
まったく人生じゃないんだしそんな面倒はごめんだ
面倒なのは人生だけでいい
そもそもずぶ濡れになると視線が痛いのが堪らない
なぜ濡れてはいけない
なぜ濡れると哀しい顔をする
なぜ犬ですら中年濡れ鼠を切なく見上げるのか髪も寂しいからか
だいたい犬に合羽なんて……
可愛いから許す けど
もういっそ傘なんて存在しなければいいんだ!
みんな濡れちまえばいい
そしたらブラジャーのラインはくっきり映えるし
厚化粧もハロウィンメイクに早変わりするし
もしかしたら僕のこんな愚痴だらけのやらしい性格も
よくなるかもしれないだろ?
なるわけないか
ごめん
drop90%
雨が降るでしょう
外出の際は傘をお忘れなく
わかったよもうスーツが濡れたら面倒なんだろ
ちゃんとジャンプ傘持ってくって なんなら駅まで相合傘……
犬とするからいらない?
あ そう
じゃ行ってくるわ
今日メシいらねえからよろしくな
まあ 僕は一人暮らしだけどな
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