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第17回詩人バトル Entry30

冒険者

よく陽が射す今日は、森にでもいって本を読もう。

緑や緑から差し込むたくさんの小さい白い光が本を読む明かりとなるだろう。
その明かりの下でゆっくりと本のページをめくり、見つめ、次第にその世界へ入り込む。

いつしか、吹きつく風は大嵐になり、ざわざわと揺れる葉は大波になり、
座っている大木の根は海の上でうねる一艘の船となる。

私は航海者。

私が荒波で揺れ動く船上で必死にマントを下ろし、
帆柱をささえ、仲間と必死で荒波と戦っていることを
私のママは知らずにいまごろ、洗濯物を干していることだろう。
私が仲間を海の中に失い、悲しみに濡れ、それでも涙を流す
暇はなく、綱を帆柱に巻き付けていることを
私のパパは知らずにいまごろ、客人と談笑していることだろう。

ようやく嵐は去り、船は海をしっかりと進み始めた。
海の中に散った仲間を生き残った仲間と弔い、涙を流し、その涙とともに
船は小さい島へ着いた。

ほっと胸をなでおろす。よかったと。
いつしか、吹きつく風はやさしい海風になり、ざわざわと揺れる葉は
見知らぬ島にたどり着いた仲間とのささやきになり、
座っていた大木の木は島についてはじめて休むための枕となった。

私は探検者

私が島で名も知らぬ果物や木々を集めていることを
私のママは知らずに台所で林檎のタルトを焼いていることだろう。
私が仲間と星が輝く夜にたき火の明かりを頼りにぼろぼろの航海図をみていることを、
なにより、星がきれいであることを
私のパパは知らずに葉巻の手入れをしていることだろう。

十日ほどたったある晴れた朝、私は仲間に言う。「脱出しよう」と。
新たなる航海、私たちはあくまで目的のグリーンランドへつかねばならない。
そのための食料が足りないために、魚を釣り、日に干して、干物をたくさん作らねば。
また、果実を薄く切り、乾燥させておこう。

船に食料を詰め込み、気持ちが引き締まる。
いつしか、吹きつく風は私のお腹に吹き、ざわざわと揺れる葉の音は
私のお腹の中からも聞こえたようで、座っていた大木の木は自然と足を離した。

私は冒険者。

すくっと立ち上がる私の手には一冊の証。
白いシャツに黒い半ズボン、白い靴下に皮の靴。
私は手を上げさけぼう「いざすすめ!」

もはや航海は簡単だった。
私はあの荒波を乗り越えた。
どんな状況でも食べ物を探し、生きていく勇気もある。
仲間を失う悲しみからも立ち直った。
だから、こんな航海はもはや単々たるものだ。

ようやく、見えてきた。目的の島が。
緑をでると、それまでの小さな光が急に集まり、
まばゆい光となった。
冒険者にふさわしい、この光。
しっかりと足を進め、私は光の先を行く。
威厳を持って進め!
やがて見えてきた、二つの影。

二つの影がいう。
「よくぞ帰ってきた、冒険者よ」
「さあさあ、こちらにお座りなさい」

やさしい光だ。
いつしか、吹きつく風は心地よい微笑みであり、ざわざわと揺れていた葉は
私の大好物のタルトであり、座っていた大木は白いベンチだった。

私は帰還者

私が荒波を乗り越え島に着いたことを
私のママは知らずに、「今日もおいしく焼けたわね」と言った。
私が島で仲間とどうやって海を進むかを思案していたことを
私のパパは知らずにエヴィリデイタイムズに目を通していた。

いくつもの危険を乗り越えた最高の褒美である林檎のタルトを
私が口いっぱいにほおばると、私のママは「あら、そんなに食べたら、貴重な
食料がなくなっちゃわ、グリーンランドまで持つかしら」と言い、笑った。
私が速やかに本を背中に隠すと、私のパパは「はは、いつ海賊が
現れるかわからないものな」と言い、笑った。

タルトの中の林檎の、その林檎の赤い色がわたしの頬の色となった。
私のママもパパも冒険をしてきたのだろうか。
その冒険者の子だとしたら、やはり私は冒険者なのだろう。

やがて、ひとときの時間が終わる。

少しだけの大切な冒険・・

明日も晴れていたら、私はまた冒険の旅へ出かけよう。
なんとしてもグリーンランドを目指さなければならない。

いやいや、たとえ雨でも私は冒険するのだ。

いざすすめ!

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