エントリ1
U りよ
いつかわからないけど、誰かが言った
「UはIのために曲がったんだよ」
たまごボーロが口で溶けていく
「UとIは別物だろう?」
僕は戸惑いながら
ギターの曲線をなぞったんだっけ
まあるい夕日が
「IがIであるために」
まあるい瞳が
「UがUであるために」
あの頃かき鳴らしたギターから
甘い匂いがした
エントリ2
12月に思うこと 日向さち
あの後ろ姿を
私は一生忘れないだろう
数年前、忘年会と題したオールナイトライブを観に行った
その終演後のことだった
お目当てだった男性芸人に
他のライブで提出しそびれていたアンケートを手渡して
別れて、彼の目の前に
いつものお客さんたち
二十歳前後の女の子たちが、歩道の端に
お疲れ様でした、と声を掛けたのは彼の方で
一瞬の沈黙の後
女の子たち同士で探り合うみたいに
口々に、お疲れ様でした
笑顔もなく、それだけ
あの瞬間
あの後ろ姿
こんなにも伝わってくるものかと思うくらいの
明け方の乾いた空気の中、私は
一人で歩き去っていく彼を無言で見つめることしかできなかった
翌日、彼のブログを読むと
とにかく楽しかった、と書かれていて
最近全然出待ちいなかったり、とも書かれていて
彼女たちがあそこにいたのは
人気急上昇中だった芸人さんの出待ちをしていたからだ
もう戻ってくることはないだろう
私が若い頃にファンだった俳優さんには戻れないみたいに
あれからも
彼らの元を離れていくお客さんたちを見てきた
彼は今、芸人としての仕事を減らして
自分の面白いと思うものをジャンルに縛られず創るようになった
私もそれを面白いと思っているし
無名のままではあるものの、演劇界での評価も上がってきた
彼に付いてくる仲間が増えたことで
更に活動の幅が広がってきている
そんな彼を
ネットを通じて見守りながら
また東京へ観に行ける日を心待ちにしている
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