第25回詩人バトル
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  INDEX
 エントリ 作者 作品名 文字行数 得票なるか!? ★
 1 繭  pray to the sky  32   
 2 aluma   ファンタスト  29   
 3 8148(略)ソラン  有罪  37   
 4本作品は公開終了しました    
 5 IONA  ランドリー  9   
 6 山口幸子  出発。  20   
 7 haneruku  親友  459   
 8 ぶるぶる☆どっぐちゃん  春一番  30   
 9 みや  憎しみの輪廻  0   
 10 さゆり  いいところ  19   
 11 さと  螺流旋  288   
 12 五月原華弥   ずっと好き  18   
 13本作品は公開終了しました    
 14 ヨケマキル  ママ、さよならだ  35   
 15 三浦智恵  天国  13   
 16 奈緒  再会  82   
 17本作品は公開終了しました    
 18 加賀 椿  あの頃よもう一度  18   
 19 佐藤yuupopic  拝啓、弁当屋さん  0   
 20 大覚アキラ  黒い母鵞鳥  36   
 21 日向さち   引力  23   
 22 春九千  三月マーチ♪  20   
 23 小松知世  幸せ  7   
 24 有機機械  引力  18   
 25 木葉一刀(コバカズト)  歌舞伎町ブルース  51   
 26本作品は公開終了しました    
 27 棗樹  音楽の話をしよう  16   
 28 橘内 潤  『Sunny Days And Tuesdays』  15   
 29 獅焔  僕AND君  13   
 30 沙汰  残されたもの  11   
 31 空人  恋海、わたし 泳ぐ  23   
 32 狭宮良  羽化前夜  27   
 33 氷月そら  どこかにある、その、  44   
 34 若桜 満  別れ  30   
 35 蜜   Dolls  13   
 36 葉月みか  ポストカード  41   
 37 麻葉  妄想  23   
 38 詠理  光波に因る諸感覚  50   
 39 香月朔夜  いろんなカタチ  127   
 40 WAKA  笑み  14   


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Entry1
pray to the sky


あたたかい光を放つ午後の太陽を背景に行き交う心
青々と葉を揺らす風たちが無邪気そうに笑ってる笑顔に添える

この時代のこの場所ではありふれた言葉が
「生きている」と言う意味自体を紛らわす

見慣れた景色たちに問いてみる
心地よい幸せの声が聞こえた

やがて来る夕闇を待ちながら
見つけては微笑んだ一番星に

この時代のこの場所では奇跡と偶然が
「愛する」と言う意味自体を教えてくれている

果てなき天上を見上げて何を祈る?
明日がある限り強さを手に入れたい
雨にも負けないで風にも負けられない
誰もが探している幸せ見つけよう

紺色にちりばめた星たちに手を伸ばし目を閉じて願いをかけた
やがて来る朝焼けを待ち侘びて汚れなく澄みきった空気を吸った

この時代のこの場所では過去と未来とが
「運命」と言う意味自体を形付けている

果てなき天上を見上げて何を願う?
誰もが信じてる愛を見つけよう
果てなき天上を見上げて何を想う?
いつかの未来には何が待ってるの?
雨にも負けないで風にも負けられない
誰もが探している幸せ見つけよう


Entry2
ファンタスト
aluma

あなたは怖がりだった。
両親とも、兄弟とも、クラスメイトとも、誰とも目を合わせることをしなかった。
学校の帰り、あなたはよく待ち伏せをされた。
だからあなたは寄り道をして帰っていた。
忘れられた公園、埋もれた路地、汚れた工場裏の土手。
何かを探していた。
それは簡単に見つけられるものではなかった。
結局は見つからなかった。
あなたはきれいなものが好きだった。
珍しい石、ガラス球、白い鳥の羽根。
すべて拾ったものばかり。
それが自分にふさわしいと思っていた。
そんなあなたが一度だけ、自分にはふさわしくないものを好きになった。
その娘は聡明で、活発なクラスメイトだった。
少なくともあなたにはそう見えた。
だからあなたは彼女が年上の男とホテルから出てきたのを見て、我を失った。
何も怖くはなかった。
少しばかりの使命感もなかった。
ただ、きれいなものを守りたいと思った。
気が付いたときには、あなたの胸にはナイフが深く刺さっていた。
どこかで何かか鳴いていた。
すぐにあなたは、死んでしまうのだということを理解した。
悲しいという気持ちはなかった。
ただ、少し、もったいないかもしれないと思った。
消えてしまう意識の中で、あの娘の声をあなたは聴いた。
あなたの名前を呼んでいた。
あの娘があなたの名前を呼んでいた。
あなたは笑いたかった。
心から笑いたかった。


Entry3
有罪
8148(略)ソラン

すれ違う人と目を合わさないように、

浜辺まで歩きました。

薄曇りの海岸に人影は無く、

少しだけ救われたような気持ちになりました。

春は近いけれど、まだ冷たい風が吹いています。

すでにつま先の感覚は無く、

体は芯まで冷え切っていますが、

今の僕には寒さを凌ぐ事さえ許されない、

許されないのです。

僕は不用意な自らの言葉のために、

世界から切り離されたのですから。

死んじまえと言った夜に、

父は死んでしまいました。

追い詰められていたと、

今頃知りました。

夕暮れの海は日が差し始め、

強く、強く光っていました。


Entry4


Entry5
ランドリー
IONA

脱水が終わったころに
ぼくは君に 手紙を書く

ハンガーが揃ったころに
ぼくは何度も ペンを置く

空が晴れてくるころに
ぼくは切手を はり付ける

洗濯物が 乾いたころには
ポストの前で ぼくは泣く。

封筒がまだ ぬれている。


Entry6
出発。
山口幸子

初めて乗った
あなたの車
ちっちゃな車

外から切り離されて
ふたりきり
ふたりを乗せて
動き出す

横にいる!
それだけで
体半分が
どんどんどんどん
染まっていく、
だんだんだんだん
染まっていく、

まだ始まったばかりの、
心地よい、
息苦しさ。


Entry7
親友
haneruku

僕は「友達」に強い思い入れがある。それは認める
思うに、僕はずっと「親友」を探している
他愛もない話をしながらも、どこか崇高で、神秘的で、恐らく周囲の 
皆は皆目見当もつかぬ言い知れぬ、共有感、一体感を与えてくれて 
なおかつ煩雑な日常を忘れさせてくれて、それでいて   
生きていくうちでの大切な何かを啓示してくれる
そういう、その「時間、空間」がとても愛おしくて、思わずその
「時間、空間」を与えてくれている何かに感謝してしまう
そういう存在を僕は求めている。そういう存在は在り得ないのだろうか?
僕にも「友達」はたくさんいて、それぞれに色んな思い入れがある。
ほぼ全てが尊敬に値する何かを持っている。でも「親友」には成り得ない。
ふと、退屈したり、失望したりする。それがとても苦しくて、悲しい。
僕は皆を愛しているんだろうか?強く求めすぎるばかりに
失望するのだろうか?それとも僕は欲張りで、自己中心的過ぎるのか?
完全である「親友」などありえないのか?それとも「友達」全てで
「親友」なのだろうか?そうであれば嬉しい、そうでなければ悲しい。
僕は「親友」を「外」ではなく「内」、つまり自分に求めた事があった。
とても小さな頃で、はだしで歩いてて、鼻水で、腕の袖がキンキラキンに
なってたころだ。僕の姓名をもじってそれは「アキヨシ君」と名付けられていた。
僕の悩みを完璧に理解してくれるし、話も面白いように弾んだ。
ひょんなことから彼は消えてしまったけど、僕にとっては
本当に今でも逢いたい「大切」な存在に思える。彼は「親友」なのだろうか?
「親友」とは「内」にも存在しうるのだろうか?そうであれば嬉しい。
そうでなければ悲しい。


Entry8
春一番
ぶるぶる☆どっぐちゃん

古代ギリシャからシルクロードを渡り
スクリーンを突き破って
そうやって吹き込んできた春一番が
「今月の事故死者数」の看板の赤字を書き換えて
吹き過ぎて行く

技師はほんのちょっとだけ手を休めてそれを見て
桜の好きだった妹を思い浮かべた

風はあっという間で
それは技師のコンピュータのCPUよりもずっと早かったけれど
技師だって負けてはいない
涙を流したのは一瞬だった
「どうした?」
そう尋ねる同僚に
「なんでも無い」
と完璧なイントネーションで答えもした

無くしたものを手にしようとするのは
見えないものを見ようとするのは
時計の針を折り曲げたり伸ばしたりするのは
死んだ者を思い続けるのは
生き返らせようとするのは

果たして有罪か無罪か

そんなことを考える間も無く
風は今年も桜を色めかせたし
技師はただ目標に到達しようと
春一番と同速度で
コンピュータに命令を続ける


Entry9
憎しみの輪廻
みや

白い閃光
空の落下
風の塊
五感は引き裂かれ
大地が殴り付けてきた

母を呼ぶ喘ぎ声
焼け焦げた臭気
苦痛が噬み付く

黒焦げの棒
引き千切れた腕
銃に絡み付いたまま

足に伝わる人の温度
砕けた頭蓋
溢れた脳髄

呻き声
臓物を引き摺り
幽かな息をする
朋の
   半身

腰から抜くナイフ
朋の半身を抱き寄せる
強く

手が

体が

震える

視界が歪む

わずかに動く心臓に向け

力を

  込めた

っぁあっ

ああっ

何故・・・
こんな・・・

何を怨めばいいのだ
何故失わなければならない
誰がこんなことを・・・

っあっっあっ

このナイフを
誰に向ければいいのだ


Entry10
いいところ
さゆり

金太郎飴を
輪切りにすると
たくさん 
金太郎が生まれます

それが金太郎飴の 
いいところ

オクラを
輪切りにすると
きれいな
星型の出来あがり

それがオクラの
いいところ

わたしの
輪切りはどんなだろう

ハートの形を
しているのかな

それが 
わたしのいいところ?

自問自答をしています


Entry11
螺流旋
さと

雨が空を捨てる時 森がそっと 微笑みました。
私が貴方を捨てる時 女が一人 微笑みました。

別れは何かを残していきます。
すべては みな 螺旋のように 回っています。
めぐり巡って 私から貴方へ そしてあの人へ。

夕日が空を捨てた時 光りがそっと 泣きました。
心が悲しみを捨てた時 恋がひそかに 泣きました。

別れは何かを替えていきます。
すべては みな 時間のように 流れています。
ながれ流され 貴方から私へ そしてあの人へ。

風が海を捨てる日は 月が海原を拾います。
涙が頬を捨てる日は 私が笑顔を拾います。

 めぐり巡って 私から貴方へ
 ながれ流され 貴方から私へ

 そして また あの人へ。


Entry12
ずっと好き
五月原華弥

わたしの不安とあなたの不安が一緒だったなんて
思ったことなんて一度もなかった
いつも求め合って
いつもつき離しあって
不必要な存在じゃないかと危惧して
傍から見れば馬鹿馬鹿しいことだけど
本人同士にとっては
それ以外の重要なことは何もなくて
ただ抱きしめあっていれば
何の不安もないのかといえば
そういうわけでもなくて
「どうでもいいこと」から誤解が生まれたり
「どうでもいいこと」で傷ついてみたり
いつも心は忙しくて付いていくのに精一杯
だけどきっとわたしとあなただから
そんなことでもやっていける
何があっても嫌いになりきれなくて
何があってもずっと好き


Entry13


Entry14
ママ、さよならだ
ヨケマキル

少年キィは
まよるの黄色い車線を裸足で綱渡り

「あなたを宿した時  
 産もうかどうしようか迷ったけど  
 産んでよかったと思った事は一度も無いわ」

キィが毎夜見る夢は
フルカラーの腐った胎児

しばらく歩くと
レンガビルの1階に
「奇術小屋」と書かれた看板
派手で怪しげなネオン管

その奇術小屋の前でネオンに照らされ
いきなりキィは踊り出す歌い出す

<ママ、さよならだ>  歌とステップ少年キィ

ボクのナイフ光ってるよ光ってる

ママ見ておくれ光ってるだろ

ポケットには携帯チェーンソー
銃と弾薬も持ってるよ
でも何よりボクには歌とステップがある
だからもう何もこわくないこわくないよ

チッキティッキー チッキティッキー
ほら歌えるだろ

トゥエンクティンク トゥエンクティンク
ほら踊れるだろう

なんだって出来るんだママ

さよならだ さよならだ
失くした言葉探しに行くんだ
言葉だけが見つからないんだママ
だから

だからさよならだ さよならなんだ、ママ

ステップが止まり
ネオンが消え

キィの姿は見えなくなった

「チッキティッキー チッキティッキー  
 
 ほら歌えるだろ、ママ」


Entry15
天国
三浦智恵

天国って何ですか?天国ってどこですか?
物語の中の天国は、みんなが同じキレイな国に居るけれど
それは本当に幸せなのですか?
大好きなあの人がそばにいなくても、天国というのは幸せなのですか?
私の思い描く天国は何もなくても横にあの人が居ればそこが天国になる
もしも私が地獄に堕ちるなら、私はあの人を連れていってしまうと思う。
もしもあなたが地獄に堕ちるなら私も一緒について行ってしまうと思う。
それは私のワガママなのでしょうか?
それでも私はあの人がいないところへは行きたくない!
それがたとえ誰もが幸せな天国だとしても
悲しみも何もない無の世界だとしても
私はどこにも行きたくない
あの人がいないところへは逝きたくない


Entry16
再会
奈緒

 それぞれのHAPPYに向かおう
 
 歩いて 歩いて 歩いて 歩いて
 
 いつか地球を一周して。

 両手いっぱいのHAPPYをもって

  ・・・今度は笑顔で会えたらいいね。


Entry18
あの頃よもう一度
加賀 椿

早朝の公園は すがすがしく
木々の香りがする

前を行く人の腰が
前より曲がって見える

いつ頃からか
話を聞くのがおっくうになり
一緒にいるだけで 疲れるようになった

空は青く 風は心地よい
この公園は 変わらない

あの頃の私は
気をつかう事もなく 自由だった
なのに
今よりも 上手くやっていた

小さい頃の私は
この人に気をつかう事もなく
素直に 仲良く出来ていた

もう一度あの頃に戻れたら
祖父孝行も辛くないだろう


Entry19
拝啓、弁当屋さん
佐藤yuupopic

腹が、ぐおう、と鳴きやがって
ふらりと外に出た
掃除と洗濯で日が暮れて
明日はもう月曜なのだ

空に
藍と、朱と金の、眩しい帯
落ち往く日の、名残り日の、
光が、
人と、町と、動くものと、そうじゃないもの、全部
境目を曖昧にする
撮影用語でマジックアワーと呼ぶ
夕刻
遠くの校庭からチャイム
胃の端、ひねられて
酸っぱい液、喉の奥せりあがって
なんとも自分が
心もとなくなる
吐いた息ごと
そのまま、薄まって
消えちまいそうに
なる
また、無意識にあいつに電話をかけようとした

ごまかすように
煙草に火を点ける

腹が、ぐおう、と鳴きやがって
反射的に

迷うことなく
自動ドアを
くぐる

拝啓、弁当屋さん、

紅鮭弁当一丁
コロッケ一枚
野菜不足に
ほうれん草の胡麻和え
豆とひじきの甘煮
缶ビールもよろしく

何もなかった
二週間ぶり
たった一日ばかりの、俺の休日

せめて飯だけは、
プラスチックの容器のふたに
びっしり水滴したたるくらい
炊きたてであって欲しい
ね、いいだろう
頼むよ

敬具


Entry20
黒い母鵞鳥
大覚アキラ

電気仕掛けの揺り籃は
往けど戻らぬ矛盾の振り子
猫の眼をした赤子が眠る
揺り籠転げりゃ赤子は堕ちる
落ちて真ッ朱な血の花咲かす
オギャアと泣いてデングリ返る
赤子産んだの誰ァれだ
赤子殺ったの誰ァれだ

ウブなあの娘が惚れたのは
上海帰りのヤクザ者
自慢は背中の唐獅子で
酔えば何処でも素ッ裸
桜舞散る春の宵
ドスでハラワタ抉られて
痛い痛いと泣きながら
地獄巡りに旅立った
ウブなあの娘も泣いたとさ
泣いて泣いて泣き続け
涙の河ができたので
あの娘は河原に石積んだ
一つ積んでは父の為
二つ積んでは母の為
三つ積んだら涙も枯れた
気がつきゃお腹が膨らんで
十月十日の月満ちて
猫の眼をした赤子を産んだ

電気仕掛けの揺り籠で
赤子いつまで眠るのか
揺り籠転げりゃ赤子は堕ちる
落ちて真ッ朱な血の花咲かす
オギャアと泣いてデングリ返る
赤子産んだの誰ァれだ
赤子殺ったの誰ァれだ
うしろの正面誰ァれ


Entry21
引力
日向さち

月のかけらが降ってきました
黄金の天から降ってきました
かけらは火を吐いていました
ぷすぷすと音をたてていました
木炭に似ています
軽石に似ています

海の底に埋めてやりました
温かい砂をかぶせてやりました
地球となじむようにと思いました
月は地球だったと思いました
地球のかけらだったのです
初めから相性は良いのです

ふらふらと浮かんでいる月が
ばらばらになって落ちてきたら
地球はようやく一つになって
広い世界をぐらぐらします

太陽はそれを見て
けたけたと笑うでしょう
冥土の土産に持ち去ろうとしたら
水星につまみ食いされるでしょう



Entry22
三月マーチ♪
春九千

ズンタ〜ッカ♪
ズンタッカ♪
ズンタ〜ッカ♪
ズンタッカ♪

聞こえてきたよ
春の足音

駆け足 差し足 後戻り
3歩下がって 4歩前

日が伸び 雪解け 花が咲く

まだまだ寒いと思っていたら

あ っ !

という間に春がきた

キタ━━━━━o(^O^)○━━━━━ッッッ♪


Entry23
幸せ
小松 知世

おーい
と呼んだら
はーい
と返事する

そんな感じであなたといたい
そう思う今日この頃


Entry24
引力
有機機械

僕らは今微かな引力で引き合っている。
その引力を少しずつ少しずつ強めながら僕らは近付いていく。

それが強すぎると僕らは激しくぶつかって粉々に砕け散り、
それが弱すぎると僕らは真っ暗な闇の中で離ればなれになってしまう。

でもうまく一つになれたなら、
僕らは二人分の重力によって核融合を果たし光り輝くことが出来る。

それはいつか冷えて小さい固まりになるか、
まばゆい光と膨大なエネルギーを放って消え去るまでの儚い夢。


Entry25
歌舞伎町ブルース
木葉一刀(コバカズト)

せんとらるぱーくの後
どこへ行ったかは覚えていなかった

ただ半分覚醒したときには
体中が痛み
その体は汚臭を放つ
柔らかいゴミ袋の山に抱かれていた

ゴミ袋に抱かれながら
あたりを見回すと
交番の傍
ちょうど死角に埋もれていた事を
理解する

清掃員が来たとき
揉めて
そこで警官に気づかれる

警官は応援を呼ぶ
その間に軋む体に無理をきかせて
距離を稼ぐ

時々振り返れば
二人の警官が迫る

ゴールデン街に逃げ込んだとき
脚が壊れた

悶える
その俺に警官は構え
二人で取り囲み無線を入れる

飲み屋の薄い引き戸に凭れ
聞かれたことをその場で忘れる

サイレンが到着するころ
背中の引き戸が錆付いた音を立てながら
開く

眠そうな女主人が
コップを差し出す
黙って受け取り生ぬるい水を
腹の中に流し込むと

重い
カルキ臭もきつい

それでも
その水で俺が確実に覚醒できたときは
蛍光灯も薄暗い
スチール机を前にしていた


Entry27
音楽の話をしよう
棗樹

音楽を
わたしはきかない

黒と金で埋め尽くされた
十二月の豪奢なオーケストラに背を向け

五月の窓を開け放ち
畳の上に寝そべって

試験帰りの学生の語る
因数分解とサバンナ気候に 耳を澄ませ

花びらを肩に受けた少女達の
笑い声に 心躍らせる

銀盤は虚しく回り
響きは壁に吸い込まれる

五線譜がほどけ
音符は独り歩きをし

ピアニストの腕のあいだにある
美しいものを慕って

静かに光る
涙ぐむ


Entry28
『Sunny Days And Tuesdays』
橘内 潤

水溜りにうつる太陽が あんまり澄ましてやがるんで

蹴りをいれたら 大口あけて笑いやがった

昨日まで 暗い顔して泣いてたくせにさ

あんまり笑いやがるんで くやしくなって目を逸らしたら

空のうえから 笑いやがった

「にいぃぃ」

――って 笑いかえしてやった


Entry29
僕AND君
獅焔

目まぐるしく変わる時代
息の詰まるような今日
絡みつく視線
なんて時代に生を受けたんだ
先の見えないレールの上で教え込まれたルールに踊らされてる
君は”滑稽”だと言い、指を指しケラケラ笑っている
そんな君も影が揺れているんだ
”そんなもんだ”と妙に悟ってしまう僕に嫌気がさす
この世に矛盾を感じるけど、一番矛盾しているのは誰?
苦笑いして手を挙げる僕
全て時代のせいにして逃げてしまいたい衝動にかられるのも性かな
そんなことできやしないのに
こんな僕をまた君は指を指して笑うかい?


Entry30
残されたもの
沙汰

 私は、絵の具をギュッと搾った。

 空の青だ。

 そう思った。

 真っ白なキャンパスに一本だけ線を引いた。

 広い空が広がっていた。


Entry31
恋海、わたし 泳ぐ
空人

ベッドのなかで 何度も寝返りをうつ
ここ最近 うまく眠れた試しがない

目を閉じると どうしてもあの人が 現れて
その手や その口元や その背中が
繰り返し 浮かんできて
眠るという本能を 邪魔するのです
目を開ければ パタリと消えてしまうけど
目を開けたまま 眠る方法なんて わたしは知らない

「いい歳して片想い?」 って友達にも言われた
白くて とても高そうなコートを脱いで 彼女はあきれた顔
「ほんとに子供なんだから」 まったくその通り
わたしはあなたみたいに うまく泳げないんだ この不可解な気持ちのなかを

本能を 正体不明のもやもやが だんだん浸食しようとしている
恋心は 本能よりも勝る? まさか
笑いとばしてみたって 今日もベッドで 転がって 丸まって

あんまり眠れないから ベッドの上で泳いでみた
あいかわらず 泳ぎは下手だけど それでも
このままあきらめないで泳いだら あなたのいる場所までたどり着けるかな
たどり着ける かな
たどり着けたら いい な


Entry32
羽化前夜
狭宮良

色褪せてゆく未明は過ぎて
一日の終わりを迎える
斜め向かいの屋根のうえから
光が射しひとつ朝が来る

六時に目覚ましが鳴っていた頃
空の高さは自身の広さで
どれだけ手のひらが小さくても
掴めないものなどなかった

多分残ったものは
蛾にも似て重いこの羽だけで
全て望んだものは
自由の故に空へ溶けたけれど

古い目覚ましが午後に鳴るまで
窓を閉じ意識を閉ざそう
今は風の届かないところにいる
力を撓めてただ眠っている

いつかまた早起きを競って
明日のさきがけを掴め
貪欲に求め追い掛けることを
光に恥じない朝のために

消えてしまうものが消えても
其処にある意味を信じるために


Entry33
どこかにある、その、
氷月そら

夏の、暑くなりそうな朝だった
深い森、見上げると、まっすぐの木
しっとりと澄んだ空気の中
あたしに向かって おいで、おいで、と
手まねきしている、その姿を
あの杉の木の向こうに
見たのだ、確かに、この目で!

なのに

そこには何も、なかった

ああ、あれは、霧だったのだ


夏の、暑い午後だった
アスファルト、見上げると、ビルの森
じっとりと重い空気の中
あのビルの向こうで
ゆらゆら、ゆらゆら、とゆれているその姿に
少しずつ 少しずつ ちかづいていく
あとすこし、あとすこし、

そして

届いた!
触れたのだ、確かに、この手で!

なのに

そこには何も、なかった

ああ、あれは、蜃気楼だったのだ


ちがう、
あたしが欲しいのはこんなものじゃない
あの霧の向こうに、
あの蜃気楼の向こうに、
もっと別の、ちがう、何か
あたしの欲しい何かが、あるんだ
きっと、必ず、絶対に、あるんだ

どこかにある、その、


Entry34
別れ
若桜 満

「そろそろ、時間だね。」

と後ろを向かずに言うあなた。

その声が、妙に心にしみて

あなたの背中がぼやけて見える

なんだか、心にポッカリ穴があいたみたいに

寂しいんだ

もう、お別れかな

なんて思いたくなかったのに

別れたい

なんて思っていなかったのに

どうして、こうなってしまったの?

幸せであふれていたあの日々は

もう、戻ってはこないの?

お願い、私に背中をみせないで

お願いだから、私にその顔を見せて

もう一度、私の名前を呼んで

あなたの声が、もっと聴きたい・・・

「さよなら」なんて、口にしないで

ナミダが溢れてくるの

胸が、苦しいの

そんな言葉が聴きたいわけじゃない。

もう一度だけ

私と、手をつないで歩いてくれませんか

もう一度だけ幸せを

感じさせてくれませんか

それだけで何も

あとには何もいらないから・・・


Entry35
Dolls


友達といても“自分”じゃなくて
一人でいても“ジブン”じゃなくて

もう“じぶん”が

どんなイロで
どんなカタチで
どんなコエでしゃべっていたのか

それすら思い出せなくて

瞳はまるでビー玉で
見るもの全て逆さに映す


Entry36
ポストカード
葉月みか

太陽は遠く靄の内
まどろみのような昼下がり
音を立てて流れ往く空気
潮を孕んだ湿気に
心地よく溺れている

(いつか見た覚書 信号化された睦言)

誰かの作った葡萄酒を携える男が居る
女は目を瞑り、祈るように妄想する
男はそれを総て海に飲ませる
木霊する音
硝子の砕ける清澄な響き

(それぞれの帯びた それぞれの熱や自我が)

そして
不浄の手で破片を拾い
互いの喉を切り裂けば
彼女は微笑むでしょう
きっと微笑むでしょう

(意識の奈落に隔てられる)

彼の林檎を抉り出して
泡沫と変えれば
彼女は幸せでしょう
時計や巻尺では測れない
眼差しの距離が判る、と
嗚呼 きっと幸せでしょう

(齟齬 そして 乖離)

浅瀬に魚
光る鱗
逃げる尾ひれ
そのタイミングで
意味を失していく言葉
この昼下がりのこの美しさ

(今ではない時間)


Entry37
妄想
麻葉

電車に揺られてどこかへ行きます。
一年ぐらい前までは、全くめずらしくない僕。
でも、ここ最近は、一番遠出で学校です。

がたがたがたこんがたこんこん

田んぼ、ビル、地下、ビル、ビル、海、ビル、山。
眠い僕の目に次から次へと割り込んでくる。
我先に、我先に。
嫌いじゃないけど好きじゃない。
降り遅れないように、僕は眠らない。
僕は眠れない。
僕は眠らない。
僕は眠れない。

がたんがたんがたがたっきゅっ

みんな邪魔してくれる。
睡眠、妨害。
ありがとう。

ありがとう。


Entry38
光波に因る諸感覚
詠理

白鷺が水面を揺らして飛びました
すぅっ
空気を食みに舞い上がるのです

するとゆらゆら光波が現れます
はらはら
それはとても美麗な波動です
しゃらしゃら
あるいはとても至妙な波動です
私は何ともこの光波が恐ろしく
頻りに避けて渡ります

川辺に小さな小舟を見つけました
ころろろ
樫の木の葉の如き小舟です
ちゃぽん
押しだすと岸を離れて流れます
見上げた木立が陸の空を占めて
呼びかけながら遮っています

辺りは氷雨の結晶で煌いていました
ぴりり
小枝の先の萌芽まで薄氷に包まれています
ふわり
可笑しいでしょうか
くるまれた景色が産毛のように優しいのです
結晶に透けて見えているのは何でしょう

表面はゆっくりと融けて水滴が落ちています
ぽたら
川面にはまた光波が現れます
ふわりん
先刻までの冷たい刃は霧のような粒子
私もまた包まれていました
宙は不思議な波動で溢れています

耳に何か聞こえました
(私の身体を霞むように通り過ぎて)
光波と風がぶつかる音です
(私の身体に染み入るように中ります)
風は波間へ手をのべています
光波は宙へ拡がっていきます
川を漂うゆらめきの遊技でしょうか

少しだけ目に映った気がしたのです
きゅぅっ
それでいて何も映らなかった気がしたのです
ざぁぁ
突風が瞬きを攫って吹きすぎます


Entry39
いろんなカタチ
香月朔夜

僕の目の前には、とても大きなボールが浮かんでいる。
だけどおかしいんだ。
ある人はサイコロだと言うし、またある人はトゲトゲだと言うんだ。
なんでかな?
まったく同じモノを見ているのに。
だれも同じカタチに見えないんだ。
だから戦争(ケンカ)するのかな?

ねぇ。君には何に見える?


Entry40
笑み
WAKA

そっと触れ合ったその手と手が
二人の胸の鼓動をはずませた
顔には出ることの無い
かすかな喜びが
今 二人の中にあった
二人はまだ未来を知らない
夢でみるだけの握られた手が
相手と自分の手であることを
その場を離れる二人

そして この日はいつかは消える思い出となる

もう1度触れ合ったその手と手が
結ばれるその時まで