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詩人倶楽部

第4回詩人バトル
poem23

朝の影

作者 : 暁
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空の詩に
その空の詩に
私はその空の詩に、
無音を捕らえてばかりだった耳をそばだてる。

車窓からは斜めの光が差しこむが、
我夢に汚れた床に落ちるのは孤独な細長い影。
鈍い光に目を細めている。

空に澪なすあの雲の理について、
私は問い掛けて見たかったのだ。

見晴るかす山並みに魂を映しても、
やはり私は二本の撓んだ鉄板の上を走っているのだ。
一握りの意識を背負って、銀色の箱に乗ってだ。

我らが孕む全ての幻想が、
いずれか現実と引き換えにあるのなら。

靄がかる稜線を見つめて、鴉は杉の梢にとまるだろう。
川面に落ちる影を見つめて、鉄砲玉の夢から覚めるだろう。
彼は孤独だ。彼は局外者だからだ。

仮想現実は
所有する仮想現実は
我らの所有する仮想現実は、
一体どんな真実と引き換えにあるのだろう。

私は空の詩に耳を傾ける。
朝が来るたびに橋げたと鉄板の間には我夢が吐き捨てられるが
その黒の上でなお黒光りする斑点をだれが認めるだろうか。

梢の鴉に聞け。
あの孤独な鳥に聞け。

武蔵の平野を朝風はなめてゆく。
靄は晴れる様子もなく山並みを白く閉ざす。
つばさに似た雲が小波を立てても。
陽光が枝葉の網目を厭わず地に落ちるとも。

梢の鴉に聞け。
連なる雲の公理について聞け。

決して途切れることのない空の詩を聞く術を。
名を持たぬあの神々の名を。

車窓から斜めの陽が差していて、
やはり私は二本の鉄板の上をひた走っているのだ。

鉄塔を、
檻の如き鉄塔を、
空を隔離する檻の如き鉄塔を、
ぼんやりと見上げてみた。

鴉は飛び立つも雲を目指すことはなく、
今日は朝靄のせいか富士は見えなかった。






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