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詩人倶楽部

第5回詩人バトル
poem32

オブジェクト

作者 : 暁
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 天頂の青
 四角い枠に囲まれた空の下
 床に転がった僕はようやく
 その単純な事実に気付き始めた

 根元の残雪に向けて
 その扉は開かれているけれど
 木陰の静けさに沿って
 その道は伸びているけれど
 僕は床の上に転がった
 固くて冷たい
 ひとつのピンセットに過ぎなかった
 床の上に転がった
 金属製の小さな
 ひとつのピンセットだった

 中空の銀
 夜闇を登る月の下
 冷たい光を浴びながら
 鈍く輝きもするけれど
 錆びついたその切っ先に
 金糸を摘みもするけれど
 それでも僕は
 ひとつのピンセットだった
 床の上に転がった
 ひとつのピンセットだった

 残雪だったなら
 静けさだったなら
 扉の軋みを聞いたんだろう
 道の往来を見下ろしたんだろう
 床の上からでは
 ピンセットに過ぎない僕では
 四角い青空を信じる事もできなかった

 扉の軋みを聞く耳を
 ピンセットは持てなかった
 道の往来を見やる目を
 ピンセットは持てなかった

 ピンセットは夢を見ている
 ピンセットはいつだって、夢見ていた






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