第10回高校生1000字小説バトル
Entry6
「いりません」 ノイズが入った様な砂嵐の画面が言い放つ。 腕の中の赤ん坊が泣き出した。私は急に厭な気分になる。 テレビ電話が普及してないなんて事はこの国で有り得ないのだ から、意図的に画面を切っているのだろう。 「あの、今日は受け取りに来れない、と言う事でしょうか」 私は少しばかり抵抗を試みてみる。赤ん坊を抱いた事など余り ないから、腕がすっかり疲れている。大体子供など嫌いなのだ。 こんな事なら看護婦を連れてくるのだった。お渡しできますよ、 と私が言い、その後に看護婦に抱かれた我が子と対面、でも構図 は全然問題なかったな。 「違います。そっちでもう処理して欲しいんですけど」 「処理、と言われましても」 腕の中の子供がまたぐずっている。不安定な気分に成る。 「お金、要るんですか」 「ええまぁ。……でもそういう問題じゃないでしょう。あなたこ の子のお母さんなんですから、責任を持って下さい」 卵巣摘出して、試験管育成児だから実感ないかもしれないけど、 と心の中で付け加える。 誰と電話してンだよ、と向こうの電話口から遠く聞こえる。男 の声だった。何でもない、と彼女は答えた。受話器を押さえてい るのだろう、くぐもった声。 「お金は後で払いますから」 「だから、そういう事じゃ……」 だから、誰と電話してンの?さっきより近くで声が聞こえる。 「何でもないってば」 がちゃん。つぅーつぅーつぅー 私にでも、自分の子供宛にでもない言葉で電話は切れた。 「どうするか……」 処理、口の中で呟く。抵抗がない訳じゃないが、もう慣れた。 TB(俗に言う試験管児の事だ)で引き取り手がなくなった場合 (文字通り亡くなった場合も、今回のケースの様に新しく男が出 来る等親が引き取り拒否する場合も)医師に責任が一任されてい るのだ。 どうするか。それが問題だ。里子は余っている状況、回せない な。医学生の実習用に回すか、しかし赤ん坊は余り喜ばれない。 各種臓器が小さいのとやはり成人とは違うのだ。それにこの前裏 から釘を差されたばかりだし(本来禁止されているのは言うまで もない事だろう)。食肉。赤ん坊が一番喜ばれる。好事家は幾ら でもいるのだ。それもお偉いサンばかりに。 赤ん坊がむずがる。腕が痺れる。泣くな。 だから厭なのだ。子供など嫌いだ。 私は反射的に机の上にあるセロハンテープを二枚取ると、 赤ん坊の口に×印に貼りダストシュートに放り込んでしまった