| # | 題名 | 作者 | 文字数 |
|---|---|---|---|
| 1 | ビバップを料理屋から。 | 梅田 小径 | 1000 |
| 2 | 熱っ! | 秋 | 768 |
| 3 | 小心きよし君の朝 | 山本航平 | 994 |
| 4 | 空へ | Began | 999 |
| 5 | ア・ストレイ・キャット ★ | 彩霞 | 965 |
| 6 | セロハンテープ | 隠葉くぬぎ | 1000 |
| 7 | 赤茄子気候 | 駒宮小雨 | 844 |
「なぜ震えているんだ。ミフェール?」 「なぜかって? 2つあるんだ。ジャエル。一つは、今日読んだ小 説で、会話の最後に『私たち終わりね』(爆)って書いてあったん だ。革命が起きたと思ったよ。先住民の大量虐殺だよ」 「フュー。そらすげえや! そいつは革命だね。悪い方の革命だ。 思わず踊っちまうぜ!」 そう言って、ジャエルは阿波パラパラをブルーグラスで踊りだし た。 「踊るなよジャエル。ともかく、それは重要じゃないんだ。むしろ、 もう一つの方が重要だ」 なんだよ。って、今度は1人ワルツを踊りながら、ジャエルは訊 いたんだぜ。ミフェルはぶるぶる震える指を俎板に向けた。指をさ したんだ。詰めたんじゃないよ。 「あのフィッシュが、俺を睨むんだ」 「ヴゥラザー。 そんなことあるわけが無いだろう。あったとして も、向こうは死刑囚。こっちは死刑執行人。君が断然有利な立場じ ゃないか!? 一気にやっちゃえよ」 阿波パラパラ〜ワルツ〜トンガダンスの移行期に入ったジャエル は、そうミフェルを諭した。 「君はウェイターだから言えるんだ。コックの僕は、たくさんの生 命を殺めてきたんだぜ。君は天国いけても、僕は地獄さ。地獄の女 教師2さ。地獄のコップ2さ」 落ち込むミフェルを、ジャエルは、 「そんなこと無いぜ。なんだったら、俺の天国行きを君に譲っても いいよ。」 って、慰めたのさ。いい奴だぜ! ジャエル。たいしたタマだよ。 あんたは。 「じゃあ、もう一度だけやってみるよ」 ミフェルは、が俎板へ向かったんだ。そこには、穴子のようなカ サゴが、桜海老みたいなおめ目をしていたんだ。カタギじゃないら しく、刺青に『喧嘩上等』って、書いてあったよ。 「どうやってするんだ?」 『喧嘩上等』を呆然と見ながら、ジャエルはそう言ったんだ。く そ。俺のトークは小堺の5分の1ぐらいだ! 「許せ水族!」 ミフェルは、容赦なく、力の限り、冬季限定のマックスパワーで、 料理斧を振り下ろした。真っ二つになったよ。容赦なく血を噴いて ね。暴走カサゴの最後さ。穴子も桜海老ももう忘れた。そこはさな がら殺人現場。 2人は、手をたたきあって喜んだ! 血まみれだったけど、ハッ ピーだった。 「やったな! ミフェル! これで君は一人前さ」 「ありがとう。ジャエル。これで、君がいなくてもやっていけるよ」 じゃあ、早いところ料理を作ってくれ。客が待ってる。分かって るよ。そう。 「さあ、僕を料理して」(爆)
――ピッ。 「外」から聞こえてきた電子音に、彼は体を震わせた。 ついにこの時が来てしまったのだ―― 闇の中でそうつぶやいた。誰にも聞こえないことはわかっていた が、つぶやいた。それが、彼がこの世界を生きたという証になると 信じて。 彼は怯えていた。この暗闇の先にある光に。なぜならその光は、 彼の生に終わりを告げるものだから。 ここに閉じ込められてから、はたしてどのくらいの時間が経った のであろうか。一秒、一分、一時間、一日、一週間? 完全に光を 奪われた彼には、それを知るすべはない。だが、もう時間など関係 なかった。もう彼は、買われてしまったのだから。 せめて―― 祈る。 せめて、固めが好きな人でありますように―― しばらくのち、彼は熱の横に置かれていた。そして彼は、この熱 が自分に入ってくるということを知っていた。そしてそれは、彼が もっとも恐れていたことであった。 外から「びりっ」、という音が聞こえる。 ああ、そろそろだな―― 悟る。そして、覚悟を決める。 「びっ」、と、先程とは違った、少し湿った感じの音が響いた。運 命の扉が開かれたのである。 彼は久しぶり――少なくとも彼にはそう感じられた――に光と出 会った。目の前に、「世界」が広がる。ワンルームのアパートらし い。目の前にポットが置いてあ る。そして横には小汚い男。 こんな男に。そう思うが、しかたのないことである。この姿で生 まれてきた時から、運命は定まっていたのだ。もはや何も言うまい。 彼は運命を甘受した。 次の瞬間。彼は頭から熱湯をかぶった。 ――……っ! 声にならない叫び。体中を灼熱の炎が走りまわる。 扉が閉められ、呼吸が出来なくなる。長ければ、三分間の地獄… … そう思った瞬間、彼は意識を失った。 そして、二度と目覚めることはなかった―― 追記:男はやわらかめが好きだった。
大体に於いて僕なんてのは幸せだ。毎日充実している。高校へ通 い、友達もおり、食に困らず、清潔な服を着、金も親からまま貰っ ている。これ以上望むべきことは無いね、うん。ああ、なんて俺っ て幸せ。って手放しで満足できたら、困ることはないのであって、 それができぬから、毎夜寝る前にこうやって自部屋で思索に耽って しまうのである。結局結論は出ぬまま、はあ、またアホなことに睡 眠時間を削ってしまったと、後悔しながら布団に潜る。思索のリセ ットボタン。 希望の朝。日光の輝き。小鳥のさえずり。ステレオから流れる目 覚ましの音楽。そして快適な目覚め。というわけではなく、やはり 寝足りないと眠りを妨害するものは如何なるものも不快に感じられ る。それでも今日一日を良き日にしようってのは、朝のテレビ番組 の占いコーナーの時間に合わせてステレオをセットしていることか ら判る。ところが今日は天秤座が最下位だと抜かしやがる。ラッキ ーアイテムは花柄のシャツだと抜かしやがる。 「どうせえ言うんじゃ、ぼけ。ま、日本男児は占いなど信じんしな」 と、自ら進んで見といて矛盾したことを言う。正に希望の朝である。 今日はどんな一日かしらん。学校は楽しいかしらん。という希望、 ちょこっと不安を胸に階段を降りて食事、磨歯、排便、洗顔、更衣 を済ませ玄関に立った。俺。横にある観音開き式の収納の戸には全 身鏡が張り付けてある。戦いに赴く男の姿。寝癖があってはなら ん。目糞が付いててはならん。制服のネクタイが捻れててはなら ん。よし、決めた。俺は学校へ行く。行くぞ。そしてうねりのある 一日にしてやる。滝を昇る龍のように。 「忘れ物はない?」 「あっ、うん、大丈夫。行ってきまあす。」 母親がいきなり玄関に来て言うもんだから、とっさに応えたら、 やっぱ俺ゃまだ子供だね。うん、だって。うん、僕ちゃん今から学 校へ行ってお勉強してきまちゅでちゅ。と呟きながら自転車に股が り、下り坂を勢い良く下った。 僕は充実していた。満足していた。この心意気を以て、今から僕 は幸せへと成り果てる。友達を笑いの渦に巻き込み、女子にモテま くり、後輩から尊敬され、先公から褒めちぎられる。幸せってのは 人との間に在るものやね、人べんに幸で、倖やね。 って思ってるだけじゃどうにもならず、この素直な気持ちは帰宅 する頃には屈折し、肩には汚れた外気で積った塵や埃。今夜もアホ な夜更かしが止まらない。
俺の父は英雄だった。 子供の頃その話を祖母から聞き、それ以来毎年父の墓参りを欠か していない。 父は、俺がまだ卵の中にいる時に死んだそうだ。 地上に住むために肉食恐竜を倒そう、父の誘いに、他のプテラノ ドンは皆曖昧な態度を示した。その頃から強風の日が多くなり、 確かに空は住みにくかったが、大きな翼を持っての地上生活も困 難に思えたのだ。 父は大きな石を口でくわえ、たった一匹で飛び出した。重い石を 持っているのにも関わらず、すいすい飛んでいった。ある所でぐ んぐん高度を上げて、急に翼を畳み、落ちた。その先には一匹の ティラノサウルスがいた。 次の瞬間には石が頭にのめり込んだティラノが、倒れていた。す でに父は空にいた。 見ていた同輩達が、口々に石をくわえ始めた その時、 空から「赤い拳」が降った。父を影に隠し、一瞬で落ちた。空の 翼も無い。 目で追うと黒く焦げた大岩がひびもなく地にはまっている。すぐ 前まで燃えていたらしいその大岩の表面からは白い煙が出ていた。 「天罰だ」話し終えた祖母は力無く呟いた。 空から降った大岩が、そのまま父の墓となった。威圧感は十分だ。 生まれた時、俺は崖上にいた。そして、今も。何故か。それは俺 達が地上に住んではならないからであろう。天罰と祖母が言った 気持ち、今の俺にはよくわかる。 ぴくんと、空が割れる様な音を、耳が拾った。天を仰ぐと、何か が落ちてくる。直感で「赤い拳」と理解した。 瞬間、俺は墓に尾を向け逃げていた。墓は重くて運べぬと割り切 った。 気ばかり焦って風をうまく探せない。無駄に翼を打つ。打つ打つ 打つ。 父の翼が俺のものだったら! 急に後ろから強い風に押される。どうやら拳が地を叩く音を聞き 逃したらしい。その風で随分飛ばされたようで、次に叩く音が聞 こえた時、風はほとんど伝わってこなかった。 ピンと翼を開き、振り返った。次々と飛来する拳が父の墓を力任 せに殴りつけている。土煙がもうもうと膨らんでいく。ほの赤く 見える物体が、その中に緩やかに流れ込む。拳の群は、とても美 しく、今まさに生まれんとする卵に命が吹き込まれている、そん な光景をも思わせた。父の墓を壊しているというのに、何故か優 しく包み込むように見…… ──いや、そうなのかもしれない。空は父を許したのだろう。墓 場という一点に身を縛られる所から、際限のない自由な空へ、父 を帰したのだ。「空の王者」の名の下へ。 ただ眺め続けた。 俺は翼を持って空にいた。
『にゃあ』 それが今のあたしの名前。 「おい、にゃあ」 「にゃあ」 君はそれまで抱えていたギターをたてかけて、あたしの頭を撫で た。 「今日は出かけないのか?」 雨が降ってるし、別に出かけたって何もないからね。 「暇だろ?」 あそんでくれるからヒマじゃないよ。 「…お前には分かんないんだろうなぁ」 そんなことないよ、ちゃんと分かってる。 君はため息をついてあたしの狭い額から手を離した。あたしがオ レンジ色のギターの匂いをかいでいると、ひっかくなよと言ったき り黙り込んでしまう。 あたしは退屈だから、投げ出されたジーンズの足の上に座った。 裾のほころびを引っかいた。 「猫はいいよなあ」 苦笑いして君は言う、いつものように。そして続く言葉も決まっ てる。 「気楽でさ」 それが最近の君の口ぐせ。 でも、猫にだって悩みはあるの。あたしだってつらいの。 「にゃぁ」 君が好き。 君がぼろぼろに疲れてるとき(そういう日はあたしの夕ご飯も忘 れてる)。電話でケンカしてるとき。服にふんわりいい匂いがつい てるとき。あたしはいつも思う――あたしじゃ、電話の向こうのひ との代わりにはなれないのかな、と。 あたしはあわてて前足で顔を洗った。猫が涙を流すなんて、病気 かもしれない。 「どうした?」 そう言って君があたしを抱えあげたから、思わず上目遣いにつぶ やいた。 どうしてみんなは君にわがままなんだろう? あたしは、嘘つかないよ。 あたしは、約束も破らないよ。 それで、それで、えっと…えっと、ずっとそばにいてあげる。 「…だいすきなのにゃぁ」 細い雨が降っている。雨の中を歩くのはキライだけど、大好きな 君の言いつけだから仕方ない。きっと戻ってきたら、いつもみたい にタオルでくるめてごしごしっと拭いてくれるから、別にいいや。 首にくくりつけられた変な紙切れがちょっとだけ気になるから、 こっそり読んじゃうことにした。意味は分からないけどひらがなな ら少し読める。あは、えらいって褒めてくれるかな。 『か・わ・い・が・っ・て』… 先が折り込んであって読めなくて、引っかいてみたら少し破れて しまった。 『や・っ・て・く・だ・さ・い』 …どういう意味なんだろう。でも、君が書いてくれたことだから いい意味には違いないよね。 まだ君の部屋はまっくらのまま。 早くみみをなでてほしいなあ。
「いりません」 ノイズが入った様な砂嵐の画面が言い放つ。 腕の中の赤ん坊が泣き出した。私は急に厭な気分になる。 テレビ電話が普及してないなんて事はこの国で有り得ないのだ から、意図的に画面を切っているのだろう。 「あの、今日は受け取りに来れない、と言う事でしょうか」 私は少しばかり抵抗を試みてみる。赤ん坊を抱いた事など余り ないから、腕がすっかり疲れている。大体子供など嫌いなのだ。 こんな事なら看護婦を連れてくるのだった。お渡しできますよ、 と私が言い、その後に看護婦に抱かれた我が子と対面、でも構図 は全然問題なかったな。 「違います。そっちでもう処理して欲しいんですけど」 「処理、と言われましても」 腕の中の子供がまたぐずっている。不安定な気分に成る。 「お金、要るんですか」 「ええまぁ。……でもそういう問題じゃないでしょう。あなたこ の子のお母さんなんですから、責任を持って下さい」 卵巣摘出して、試験管育成児だから実感ないかもしれないけど、 と心の中で付け加える。 誰と電話してンだよ、と向こうの電話口から遠く聞こえる。男 の声だった。何でもない、と彼女は答えた。受話器を押さえてい るのだろう、くぐもった声。 「お金は後で払いますから」 「だから、そういう事じゃ……」 だから、誰と電話してンの?さっきより近くで声が聞こえる。 「何でもないってば」 がちゃん。つぅーつぅーつぅー 私にでも、自分の子供宛にでもない言葉で電話は切れた。 「どうするか……」 処理、口の中で呟く。抵抗がない訳じゃないが、もう慣れた。 TB(俗に言う試験管児の事だ)で引き取り手がなくなった場合 (文字通り亡くなった場合も、今回のケースの様に新しく男が出 来る等親が引き取り拒否する場合も)医師に責任が一任されてい るのだ。 どうするか。それが問題だ。里子は余っている状況、回せない な。医学生の実習用に回すか、しかし赤ん坊は余り喜ばれない。 各種臓器が小さいのとやはり成人とは違うのだ。それにこの前裏 から釘を差されたばかりだし(本来禁止されているのは言うまで もない事だろう)。食肉。赤ん坊が一番喜ばれる。好事家は幾ら でもいるのだ。それもお偉いサンばかりに。 赤ん坊がむずがる。腕が痺れる。泣くな。 だから厭なのだ。子供など嫌いだ。 私は反射的に机の上にあるセロハンテープを二枚取ると、 赤ん坊の口に×印に貼りダストシュートに放り込んでしまった
暑い夜だった。季節は未だ夏と云うには程遠く、陽射しも 温く、唯湿度だけが矢鱈に高い日だった。こう云うのを確 か生殺しと云う。 市場は今日も盛っていて人通りが多い。昼開いていた筈の 店は粗方閉まり、今は安いネオンと色とりどりの夜店が軒 を連ねる。名残の様に開いていた八百屋はやる気の無い素 振りで売残りのトマトを前に『二つで一弗』を繰り返して いた。 店主の態度に反してトマトはどれも新鮮そうに艶々と輝い ている。 トマトの旬は夏だっけ? 今では青菜に旬など無いも同然だ。沢山のヴィニルと石油 に頼ってか細く生まれる時季外れな野菜達。それは屹度昔 なら場違いな、そして崇高な物に映ったに違いないのだ。 病床で含む真冬の西瓜の味など最早、有難くも何ともない。 お前も落ちぶれたね。 店先を照らす電球の肌色。先刻迄止んでいた雨が直ぐにも ぶり返しそうだ。店先の親父は百万年も崩した事が無さそ うな仏頂面で二つで一弗をリピートする。ポケットを探る。 一番先に手に触れた硬貨を引っ張り出すと、図った如くに 一弗玉だった。 「頂戴」 剰り出来過ぎているから思わず溜息が出た。古くもなく新 しくもないコインは比較的若い手から老いた手に渡る。職 工の様に節くれ立った指と浅黒く厚い掌はずっと昔に逝っ て仕舞った何かを恣意的に思い出させる様だった。 無造作に突っ込まれた紅い果実は柔らかく、何だか酷く頼 り無い気がした。ピンと張り詰めた表皮一枚で、崩れそう に脆い中身を必死で繋いでいる。 そう云えば、木は切られてからも何百年も生きると聴いた。 木材になっても尚肌の色を保ち、それは建築美と呼ばれ、 脆弱な侵略者達に玩ばれた揚げ句に――彼は一体何時迄生 き続けると云うのか。 然るべき処置を施せば、木材は何時迄でも保つのです。 「丸で手品だよね」 何時迄でも、だってさ。 トマトの入った袋を振り回しながら、遠ざかる太陽と裏腹 に益々明度を上げる酒と色の街を後にした。ああ、熱帯夜 だ。温い空気が頬を撫でる。 二回で一弗、と聴こえた様な気がした。 手品を見せてよ。 口笛が静寂に流れていく。
第10回投稿受付 〜2001年5月31日迄
作品発表 6月3日〜
感想票受付 6月3日〜6月30日迄
QBOOKS第10回高校1000字バトルのチャンピオンは
『ア・ストレイ・キャット』彩霞さん作
に決定です。おめでとうございました。
尚、次回より、本バトルは中学1000字バトルと統合され、
QBOOKS第11回中高共通1000字バトル
として再スタートします。
今までのお引き立てを感謝すると共に、次回以降も作者、読者の
皆様のご参加を心よりお待ちしています。
| 作品 | 票 |
|---|---|
| ア・ストレイ・キャット(彩霞) | 5 |
| 熱っ!(秋) | 1 |