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第2回高校生1000字小説バトル
Entry5

価値観

作者 : どんぐり
Website : http://www.geocities.co.jp/Bookend/1067/index.html
文字数 : 999
 朝6時。こんな時間に起きてしまった自分を呪いながら、ストー
ブを付けるために居間へと向かう。ストーブを付け、カーテンを開
けると、外は白一色に包まれていた。大抵の日が氷点下の故郷なら
ともかく、この地では非常に珍しいことだった。
「……寒いわけだ」
 心底嫌そうに毒づく。と、その時、電話の呼び出し音が聞こえて
きた。
「もしもし」
「あ、宏昌くん? 佐賀ですけど」
 宏昌は一瞬考えたが、すぐに相手のことを思い出した。
「なんだよ、こんな早くに」
 今日は日曜日。いつもならまだ寝ている時間だ。
「外見た? 雪だよ、雪!」
 宏昌は再び窓の外に目を向ける。相変わらず、目に飛び込んでく
るのは白い景色だけだ。
「で?」
 さめた口調で答える。
 宏昌は雪が好きではない。
「遊びに行こうよ。せっかく雪が降ったんだし」
 それとは正反対に、彼女の言葉は弾んでいる。
「こんな寒い日にか? せっかく誘ってくれるんなら別な日にしろ
よ」
「だって……」
 歯切れの悪い返事。少しためらった後、彼女は再び話し始めた。
「私、雪を見るのが好きなんだもん」
「寒いだけじゃねえか」
 またしても反論する宏昌だったが、彼女はクスクスと笑うと、優
しい口調で語りかけた。
「あのね……、たぶんまだ言ってなかったと思うけど私、北海道で
生まれたんだ」
「……ふーん」
 素っ気なく答えた宏昌だったが、少し動揺していた。
「想像できないかもしれないけどさ、冬になると道路から雪が消え
る日なんて滅多にないんだ。それこそ、嫌いになるくらいに」
 わかるさ、と喉まで出かかったところで必死に止めた。
「嫌いにならなかったのか?」
 その質問を予期していたかのように、すぐに答える。
「辛いなって思ったことはあるよ」
 少しの沈黙の後、だから……、と続けた。
「雪を見てそのころのことを思い出すんだ。そうすれば、また今年
一年頑張ろうって気になれるから」
 宏昌はその言葉を聞くと、戸棚から一冊のアルバムを取りだした。
そして、少し微笑む。
「どうしたの?」
 佐賀が、訝しげに尋ねた。
「いいぜ」
「え?」
 だから、と言う言葉を溜息と一緒に吐き出す。
「遊びに行こう」
「……うん!」
 待ち合わせの時間を決めると、電話を切った。
「……なんで、オーケーしたかな」
 少しあきれたように呟いた。しかし、彼の顔には微かな笑顔が覗
いていた。
 ふと、先程出した写真が目に入り、そっと指でなぞる。その写真
には、笑顔で雪山を登る少年の姿が写っていた。






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