第3回高校生1000字小説バトル
Entry1
こんなに星がきれい 今君は何処にいるんだろ 光を失った“星”がもういくつか在る。いつもは瞬きを失う前に 眠ってしまうのに。“星”を眺めていたのが長い証だ。 ここでは星をつなげる線なら判る。例えその形が意味を成さなく とも。 どうして古代人はあの形を見て、ハクチョウだのオオクマだのと 思ったのだろう。大体どうしてあの星たちをセットにして見、形を 想ったのだろう。ここでは同じ大きさ、同じ輝きの星も、空では小 さく、見付けるのが困難な程のものさえ在るというのに。 唯一、空できちんと星座の全ての星を見付け、線で結べるのはオ リオン座くらいだろう。――それにしたってあのたった7個の星が 棍棒を振りかざした大男にはどうしたって見えないが。――そのオ リオン座もここでは三連のうち二つが瞬きを失ってしまっていて、 見付けるのに時間がかかった。 立ち上がってぱちんとスイッチを押す。“星”の全ては輝きを失 った。辺りが電気の光であふれて、今まで“星”があったところに は、くすんだ薄緑の押しピンがただ刺さって居るだけ。 子供の頃、星座表を見ながら、ここで良いの?と、何度も父の方 を振り返りながら、ひとつひとつ押しピンを壁に刺し込んだのだ。 このくすんだ緑の押しピンが、どうして光り輝く“星”に変わる のかがとても不思議だった。そして何故、本物の星のように朝には 消えてしまうのかも。 確かに蛍のように不思議に光って、部屋を“夜空”に変えていた はずだった“星”は、眠りこけ、目覚めたら居ない。緑色のピンは 貼り付いているのに。 その時の淋しさと云ったら。その時の喪失感と云ったら。 ――もう今は居ない。思い出ばかりは貼り付いているのに。 反吐が出る想いだ。子供の頃のおさがりのようなニオイも。最早、 思い出なんて陳腐な言葉で片づけてしまわれそうな“星”たちも。 リビングにのろのろと出て行く。本物の星を見るために。 戻った方が良い?この身体に染みついた柔らかな匂いまでを失う 前に。 彼処なら星が見えるよ。それが偽りに根差したものであっても。 彼処なら星が見えるんだよ。 カーテンさえも引いていない窓から、暗い暗い夜空がぽっかりと 浮かんでいる。 ささやかな雨のニオイが身体の芯を激しく吐いた。 だってきっと星は見えない だってきっと君は見えない。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。