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第3回高校生1000字小説バトル
Entry2

白昼夢

作者 : Ruima
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文字数 : 998
 2300年、大日本軍国は世界大戦の真っ只中にあった。
 その首都東京で。平和主義を唱えた「非国民」の息子である僕と、
張り詰めた時代を生きるには潔癖すぎる彼女。僕達は世間から逃げ
るようにして2人きり、寄り添いあって生きていた。
 昼夜関係なく空襲警報が鳴り響く中、幸いにも僕達は全くその被
害に遭わなかった。食料不足、警察からの尋問、周囲の非難の目。
生活は決して楽ではなかったけれど、彼女はいつも笑みを絶やさな
かった。その笑顔が何よりも愛しかった。
 けれど今、彼女の顔に笑みはない。

 貧しく地味な、けれど幸せな生活の終わりは、ある日突然一通の
メールによって告げられた。
 徴兵制度に基づく、「軍事召集」。
 僕は明日、戦場へ旅立つ。多分もう二度と彼女の元へは帰れない。
 僕達はソファーに並んで座り、ただしっかりと手を繋いでいた。
 つけっぱなしのテレビでは、年老いた男が「帝国史」の講義を行
っている。
『1945年、第二次世界大戦終結から、2218年の憲法改正ま
で。この日本が武力放棄していた273年間を、平和主義時代と呼
び……』
 テレビから流れる老人の声が静かな部屋の中に響く。
 僕達は何も話さなかった。言うべき事はたくさんあったけれど、
多くの言葉より君のぬくもりを感じていたかった。

 突然、彼女がポツリと言った。
「ねえ、私達」
 僕は彼女の方を向いた。色褪せたグレーのワンピース。痩せた身
体。まだ20歳とは思えないほど疲れきった横顔。虚ろな、瞳。
「私達300年前だったら、最高のカップルになれたかな」

 その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中に鮮明なイメージが広がった。

 僕達は腕を組んでショッピングモールを歩く。淡いピンクのワン
ピースを着た彼女は、お化粧もしていてとても綺麗だ。組んでない
方の手には化学物質なんかじゃない本物のイタリアンジェラート。
ウィンドウに飾られた輸入物のテディベアを指差し、彼女は楽しそ
うに笑う。
 携帯で話すミニスカートの女子高生。ギターを持った赤い髪の青
年。まだ幼い子供とその両親。誰もが襲撃なんて心配せず、好きな
人と笑っていられる。平和な世界。

 僕は答えた。
「きっと、世界一のカップルになれたよ」
 彼女は笑った。今まで僕が見た中で、1番優しい笑い方だった。
 僕はこの笑顔を忘れない。何かある度にきっと思い出すだろう。
そう、僕がどこか彼女のいない異国の地で、孤独な死を迎える時に
も、きっと。






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