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第4回高校生1000字小説バトル
Entry12

走り続けて

作者 : ナナオ
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ジャージに着替え、スニーカーの紐をきつく縛ると、まっすぐに見
据えて私は走り出した。優しい風を全身に感じた。空は青く晴れ渡
り、白い雲が薄く空にかかっている。風に乗って香る緑がおいしく
て、私は大きく息を吸い込んだ。体中に充満する緑、地を力強く蹴
るリズム、髪をなびかせる優しい風。懐かしいこの感じに、体中か
ら喜びを感じた。
家を出てしばらく人家の並んだ通りを走ると、草や木の生い茂った
茂みがあり、そこに目立たない小さな小道が伸びている。なだらか
な上り坂になったその道を、一気に駆け上る。その道の果てにみえ
る、あの景色を頭に描きながら。
坂を上り切り小さな丘にでた私は、ゆっくりと足を止めた。視界一
面に広がったのは、大きな大きな青い空と、大きな大きな青い海。
春の空の薄い青が、波打つ海の深い青に反射して映ってている。ど
こまでも続く空と、きらきら揺らめく海。空が海を包み込むようで
もあり、海が空を包み込むようでもあった。
私は息を弾ませながら、言葉も出ずにそれを見つめた。涙が出そう
だった。背中にじんわりと汗を感じた。風が心地よく私を吹いた。
太陽が眩しく暖かく照っていた。胸がいっぱいだった。
「そう・・・これが、見たかったのよ」
その場に立ち尽くし、いつまでもそこにいたかった。この壮大なる
自然。こうしていると、私もこの一部なんだという感じがしてきて、
何とも言えない感動に包まれる。これが見たかった。感じたかった。
包まれたかった。
明日、私はこの街を立つ。両親の都合で引っ越すのだ。勝手な両親
に必死で抵抗したが、私に選択の余地はなかった。大好きなこの街
から、遠く離れた都会へ。そこに、海は、ない。
「ここに来れるの、久しぶりだったのにね。もう、これで最後にな
っちゃうみたい・・・」
涙が溢れた。拭っても拭っても、とめどなく溢れた。悔しくて、腹
立たしくて、悲しくて、切なくて、この海が愛しくて。この場所が、
この偉大なる自然が、たまらなく愛しかった。
風が優しく涙を拭った。太陽の光が暖かく撫でた。波のきらめきが
ささやき慰めた。空が大きく大きく包み込んだ。
いとおしかった。全てが。
「私、走り続けるよ。どこまでも、いつまでも。そして、きっと・・・
ここに戻って来るから・・・」






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