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第4回高校生1000字小説バトル
Entry13

梢と微笑み

作者 : 奏筍[そうじゅん]
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文字数 : 907
彼女の微笑みは梢だった。
銀白の輝く冬でもなく、物悲しく木の葉の舞う秋でもなく、緑萌え
たつ春の梢だった。その年に生まれたばかりの小さな新緑を思わせ
る春の梢だった。それはいましも折れてしまいそうに儚く、いつも
僕を不安にさせた。
だから僕は細心の注意を払って、彼女に接した。
いついかなる時も彼女の柔らかい幹を傷つけぬように、その梢が折
れてしまわぬように。
彼女はそんな僕の心がけに気付いているようだった。二人で付き合
おうと決めた時も「ごめんなさいね。気を遣わせちゃって」が彼女
の恋人として発した第一声だった。このことからして間違いない。
僕は笑って「そんなことないよ」と返しながら、弱々しく笑みを浮
かべる彼女絶対傷つけまいと心に誓った。

僕たちの生活はそれなりに幸せだった。僕らは他愛もない雑談に花
を咲かせ、世間の恋人達と同様によく笑い、遊んだ。僕がくだらな
い冗談を飛ばすたび、彼女は梢をふわりと揺らし、僕はそれが激し
くなり過ぎやしないかと肝を冷やした。

だが、終わりは速かった。
無理だったのだ彼女を傷つけずにいることなど。たとえそれが可能
だったとしても、僕はまだ若すぎた。年取った賢人のように彼女の
全てを受け入れる器がまだ僕にはなかった。
実際、彼女との間に亀裂が生じたのではなく、僕がこの状況に音を
上げてしまったのだから。

僕は包み隠さず彼女に話し、そして「別れよう」と言った。
言い終えた途端、ひどく後悔した。
僕は無慈悲な子供の手となり、無造作に、若い小枝を折ってしまっ
たのだ。本当に、なんのためらいもなく。こんな無価値な意気込み
はあるのに、そのくせ、僕は彼女と目を合わせる勇気すらもてず、
足元ばかりを見つめていた。無残に折れた小枝を見るのが恐かった。
しかし、意に反して、梢は折れやしなかった。それどころか、強い
風に煽られながら踊るように揺れた。暴風の中、美しく舞った。
僕は失念していたのだ。若葉は強い。いくら風に吹かれようが、踏
まれようが、あんなにもたくましく生きているではないか。
結局は僕の勘違いだった、梢のことも彼女のことも。
「いやよ」
そう言った彼女の微笑みは光を受ける若葉のように明るく眩しかった。






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