第4回高校生1000字小説バトル
Entry14
7月のある夜、石の姿の精が2つ、地上に降りた。織姫という名 の石と彦星という名の石。2つの運命は出会い。そして……。 朝、道路に石が落ちている。先程カラスに運ばれてきた。日陰に ありながらもキラキラ光っている。多くの人はそれを見過ごしてい く。 星野明彦は道路で孤独に光っている物を見て確信した。金だ。拾 ってみると七色に輝く石だった。金ではないがきれいなので、ポケ ットに入れた。見かけより軽かった。 彦星はこうして運命の流れに乗った。 その日の夕方、織姫と彦星は再会を果たした。 「星野君」 「あっ、沙織……さん」 姫崎沙織と明彦は幼なじみで同じ小学校に通っていた。沙織は私 立中学に行ってしまったので、中学は別々だった。昔と同じロング ヘアーだったが、ずっと大人びていた。 「そばに住んでるのに全然会わなかったね」 昔は明彦、沙織、と気軽に呼んでいたのに。 「星野君、身長延びたね」 小学校の時は明彦の方が十センチ位低かった。その時は沙織が怖 いぐらいに思えていたが、今はかわいいと思える。 「元気? 」 「うん、元気。星野君は? 」 「元気だよ」 平凡だった。しかし、心が震え出すのを感じた。前はこんな感じ はなかったはずだ。 もっともっと話がしたくて、思い出の話を持ち出した。今、二人 の共通の話題といえば限られてくる。幼稚園、小学校の時の先生や 友達とのこと。沙織はまだ好きなバスケを続けているのだろうか。 「小公園のブランコ覚えてる? 」 「みんなで乗って壊しちゃったんだよね」 「そう、それでみんなで怒られて」 明彦は心が体を飛び出そうとするのを抑えられなかった。そうだ。 二人で小公園に行こうか。 「そういえばね、あそこにマンション建てるんだって」 「えっ」 「今小公園で遊ぶ子が少ないんだって」 少子化……。 思い出の場所にもう一度沙織と行きたい。 「こんにちは、沙織ちゃん」 明彦の決意を邪魔したのは、明彦の母親だった。 「明彦、まだテスト中なんでしょ」 テストなんて。 「頑張らないと、本当に落第しちゃうわよ」 テスト。思い出。落第。沙織……。それにしても沙織の前で落第 なんて言葉を使うなんて。 「じゃあね、星野君。テスト頑張って」 地面にたばこの吸い殻が落ちている。弱弱しく火が残っていた。 だめだ。今の僕には、この流れに逆らうことができそうもない。 「ありがとう。バイバイ」 ポケットの石が僕の心を押しつぶすかのようだ。 沙織……。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。