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第4回高校生1000字小説バトル
Entry15

紅でもなく、蒼でもなく

作者 : トト♂
Website :
文字数 : 931
 『紫成』。それがこの星の名前。表面半球は常に恒星に面してい
るため、生物の住む事が出来ない。生き物はすべて陰に隠れた背面
半球に住んでいる。『紅月』と『蒼月』が恒星の役割を果たし、背
面半球を照らしている。紅月と蒼月はその名の通り紅い月と蒼い月
である。空には常にどちらかの月が昇っていた。月の色は光にも影
響し、紅と蒼の光が交互に大地を照らしている。夜がないせいか、
もしくは月の光のせいなのか、人類全体が視力障害にかかっていた。
障害には2種類あり、蒼い瞳を持ち紅月には視力を失う、蒼可視人
種と、紅い瞳を持ち蒼月には視力を失う、紅可視人種に分かれてい
る。
 昔から争いもしばし起こったが、ここ400年近く大きな争いは
起こっていない。だが、未だに両人種の婚姻だけは堅く禁じられた。
歴史的背景からの理由もあるが最大の理由は子供の持つ瞳に問題が
あった。両人種の間に生まれた子供は例外を除いて必ず左右の瞳の
色が異なって生まれるのだ。そのため子供は生まれた月の色によっ
て片目を抉り取らなければならなかった。そんな子供を悲惨に思う
ために両人種の婚姻は禁止されている。子供の瞳を恐れて……。

 年に一度の『紫空』の日。二つの月が両方空に昇りすべてを紫色
に染める。この日は紅可視人種も蒼可視人種も視力を失う。見える
のは僕たち紫色の瞳を持つ人間だけだ。『紫(シ)』、僕らはそう
呼ばれている。両人種の間に時々生まれ、人々からは異端児として
嫌われていた。僕らはシ(死)を意味する子供だからだ。
 この施設は紫だけを集めている。僕らに汚い仕事をさせ、地下に
押し込めていた。僕らに人権はなかった。ただ紫空の日にだけ、外
に出ることを許された。
 ここで僕はメイと出会った。ばさばさの髪をしていつもうつむき
加減にしゃべる彼女。そして誰よりもきれいな紫の瞳持ち主だった。
『どうして私は生まれたの?』
そういって彼女の瞳は輝きを増す。彼女はここに来て半年もせずに
自殺してしまった。両目を抉り取って死んでいた。

 階段を上り、閉ざされた扉を力いっぱい開いた。その先に広がる
空。目にするのは約1年ぶりだ。
「空だ。僕は空を見ている」
空には紅月と蒼月。流れる涙さえ紫色に染まる。紅でもなく、蒼で
もなく。






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