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第4回高校生1000字小説バトル
Entry4

ラムネ

作者 : 青
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文字数 : 757
 沙知は空を見上げながらため息をついた。
 遠くに方には工場の煙からモクモクした灰色の煙が出ている。
 町の方を見渡すと、重たいカーテンを閉めたようにどんよりとし
た空が広がっている。
 わたし達四人は丘の上を登っている。ちょっと運動しただけでも
すぐに息が切れてしまう。もう昔のように若くないことを痛感させ
る。
「ほらっ急いで」
 綺麗な赤い唇をパクパク動かしている葉子は縁日の時に見た金魚
を思い出させる。彼女に手を引かれた良太が、この前買ってあげた
お気に入りの靴を履いている。その人形のような小さな足を仕方な 
く進ませる。
「ねぇおねえちゃん、ぼく達どこに行くの?」
 上目遣いに黒飴のような瞳がたずねる。不安そうな声。
 葉子が困ったようにちょっと笑いながら首を傾げ、わたしの方を
見た。
 ただ、わたしを見ていた。

 何かを手にいっぱい抱えながら走ってくるのは…沙知だった。
 満面の笑みを浮かべながら手にしている物はラムネの瓶。
 薄い緑色をした瓶をわたしの前に差し出した後、葉子と良太にも
それを手渡す。
 カラン、と涼しい音を残して瓶の中の青いビー玉が落ちる。
「びーだまっ」
 良太は両手でしっかりと持って、ビー玉を食い入るように見つめ
ている。キラキラとしたビー玉みたいに。
子どもは笑っている方がいい。ラムネを飲んでいるときのように。
「おばーちゃん飲まないの?」
 葉子がわたしの横で急かす。  

 ラムネが好き。
 ビー玉も好き。

 でも、もっともっと沙知と葉子と、それに良太が好き。
 沙知が瓶をくわえて一気のみをしている。口の端から滴る雫が地
面に落ちて滲んだ。
 わたしは、ほーっと長いため息をついた。
 三人が美味しそうに飲んでいるのを、目を細めて見る。

 卵の黄身のような形をした太陽が、山の間にゆっくりと身を沈ま
せていく。

 初夏のことだった。






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