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第5回高校生1000字小説バトル
Entry10

そら

作者 : 青葉 大地
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文字数 : 782
 私とあいつがはじめてあった場所は病院だった。
 あいつは、とても寂しそうだった。


「ねぇ、何してるの?」
「空を見てるの」
「そら?」
「そう、空」
 あいつの答えはいつも一緒だった。雨だろうと曇りだろうといつ
も決まって言うのだ空を見ていると。



 私は、いつもあいつが消えていってしまいそうな気がしていた。
あいつが、治らないことは知っていたから。きっと、多分あいつも。
誰も言わなかったけど気付いてたと思う。自分は治らないと。


「さつき、死ぬってどんな感じなのかな?」
 私をひやりとさせることも多々あった。けれど、最後は冗談よ。
で終わらしていた。あいつの真剣な目を見れば冗談の筈はないって
わかっていたけど。


「ねえ、さつき。何時か病気が治ったら、さつきの家に遊びに行っ
てもいい?」
「勿論、当たり前じゃない。楽しみにしてるね」
「ありがとう。約束よ」
「うん。わかった約束だよ」
 結局、果たされることはなかった約束。あいつは、空に飛び立って
しまったから。





 その後、私は引っ越しをすることにした。
 この街に止まる理由が無くなったから。そして、離れたい理由が
出来たから。






「わすれものはないですか?」
「ええ、ないです」
 引っ越し屋さんと私の声が何もない部屋に響く。
 改めて確かめて私は部屋の扉のノブを掴んだ。
「さつき!」
 あいつの声がしたような気がして、思わず振り返る。でも、勿論
あいつはいなかった。そんな自分に嘲笑して呟く。
「ほんっとにバカだよね。あいつはもう、居ないのに」
 でも、これが最後の忘れ物だったのかも知れない。私が忘れよう
としていた。
 勢いよく扉を開けて外に出た。ノートいっぱいに、青という漢字
を書いたとしても書き表せないよう様な空が広がっていた。


 羽ばたいたあいつの翼は今頃どこを飛んでいるんだろう?


 そう、空に問いかけてみる。
 決して答えることのない広すぎて美しい薄情な空に。






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