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第5回高校生1000字小説バトル
Entry4

夜空の月は黄色とオレンジ

作者 : Began
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文字数 : 994
 今、月を見ている人は地球上に何人いるだろう、と僕はもう半分
に欠けた月を見て考えた。数えるほどしかいないに違いない。僕以
外では天文学者ぐらいだろう。科学が進んだ世の中では地球から月
を見るのは時代遅れだと言いたいのか、たくさんあるテレビチャン
ネルのうちそれを写しているのは一局のみ。
 見て、と言ったが実際には見ていない。構想マンションが立ち並
んだこのあたりで、空を見ることは難しい。仕方なく僕は、目を閉
じて空想するだけだ。

 僕はこの月食のために随分調べた。ネットを通して、昔の新聞や
書物を探し出した。
 今日の月食は皆既の時間が長い。月食は月が地球の陰に入って欠
ける現象で月全体が陰に隠れて無くなってしまうのが皆既。その
皆既、今日のは一時間四十六分四十二秒もある。百二十年くらい前
の月食には劣るが今世紀最長の皆既月食である。

 下調べを十分した上で想像する。黄色に光った月がどんどん欠
けて行く。皆既の間、月はオレンジ色に見えるという話もあった。
 僕の頭の中には幻想的なオレンジの月が広がっていた。ずっと見
つめていると吸い込まれそうな。空を飛べそうな気さえしてくる。
昔の人は、あの月に世界があると考えたのか。それもわかるな。き
っと顔も心も全てが美しい人たちがいて……。

 翼が生えた僕は大空に、あの月に向かって飛んでいる。その道に
は綺麗な花が咲き、踊っていた。花の絵を描く人、花々の間で寝て
いる人などいろいろな人がいる。遙か彼方に、月のシルエットと重
なってこちらに向かってくる一団が見える。手を振っていた。僕を
招いて……。

 ベットが優しく揺れ、僕は気づいた。どうやら、空想は夢に変わ
ってしまったらしい。窓辺にいたはずの僕はベットの中にいた。部
屋が僕を運んでくれたらしい。僕はこの全自動の部屋が大嫌いだ。
便利さを追求した結論と言われ大人気の部屋。
 頭の中には、黄色い月とオレンジ色の月が混在していた。
 昔の人たちはいいな。目覚まし時計という物で起き、人が作った
ご飯をたべて。日照権、空を見ることのできる権利なんてものまで
あったらしい。人口の多いこの時代には到底無理なもの。
「ゴハン デス」
 無機質な声が部屋中に響く。それを聞き、僕は頭の中の月を捨
てた。
 自分以外の人間が現実に生きようとし、夢を見る自分を軽蔑する
時、思想の自由なんて意味をなさない。
 今、僕は夢を裏切り、現実に生ようとしている。






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