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第5回高校生1000字小説バトル全作品・結果一覧


#題名作者文字数
1私的哲学もどき?中田 清887
2_ほくろ -
3白い友達神條あかね 994
4夜空の月は黄色とオレンジBegan 994
5Ruima 996
6走る桐原 989
7Do I believe you? 隠葉くぬぎ 999
8蛾の戯れる場所北条みゆい 993
9魔王の涙トト♂ 699
10そら青葉 大地 782
11ヒョウタン池より 愛をこめてKAZU 992

第5回高校生1000字小説バトル
Entry1

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私的哲学もどき?

作者 : 中田 清
Website : http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/1330
文字数 : 887
 一昨日21歳を迎えて最近に思う。なぜか一人になると哲学的思考
にふけっていることが多くなった気がする。なんなんだろ。この年
でまだ大学1年じゃ、先を考えれば疲れもするかなぁ。このごろ外
がやたら暑いのと関係してるのか?はぁ、やっぱ疲れてるのかな。
人生に。……。
 うーん、そもそも人生ってなんなんだろう、ってまたこんな考え
が頭をよぎる。まぁ暇だからいっか。
  とりあえず人生って未来には存在しない言葉だと思う。人生って
言葉は過去を振り返って自分を確認するときだけに必要で、過去に
しか成立しないものだろうから。過ぎ去った時間、つまり過去を積
み重ねてきて残ったもの、ていうかよかれ悪かれ後からついてくる
うっとおしいもの、それが人生っていうものじゃないかな。だから
未来には人生って言葉は存在しないだろう。もし未来に人生が付き
まとうんであれば、今の自分を変えようといったことができなくな
るし。イコール人生が決まっちゃってることになるだろうし。仮に
そうだとしたら、未来の決まった時間を過ごしてることになるから。
そんなつまんない事があるとしたら、俺はもうこの世に未練がなく
なっちまうよ。だから、失望しないようにって意味も含めて、未来
には人生なんて存在しないと思う。
 現在には人生ってあるのかな。ないだろう。人生って戦略と共通
するトコがあると思う。もちろん戦略を立ててる過程じゃなくて、
結果からみた戦略のこと。見やすいのは全体なんだけど、細部を全
てまとめたものが結果、つまり全体だっていう面において。だから
現在に人生って言葉を存在させると、その言葉に依存したりして細
部細分にベストなものをはめ込めなくなってしまうと思う。つまり、
妥協を生むと思う。だから現在にも人生って言葉は必要ない。
 でも俺は実際には、人生なんだからと何度他人に妥協を強要され
られたことか。困ったものだ。なによりその言葉を待っていたかの
ようにすぐ根をあげてしまうてしまう俺が全く許せない。
「大輔く〜ん、またなんか考えてるの?気にしちゃだめだよ、人生
なんだし」
 それでも俺は優しいこの声を聞くと、ついつい簡単に妥協してし
まうのであった。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry2

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作者 : ほくろ
Website :
文字数 :
春先、わたしは温かい風を送りに旅に出ます。わたしはとても優柔
不断な性格なので、予定が変わることはしょっちゅうです。例えば、
寄り道してお花畑さんとお喋りしたり、蜂さんに頼んで、おいしい
ハチミツを分けてもらったりと、仲間には「給料泥棒」と呼ばれる
くらいなのです。何度かクビになりそうなことはありました。でも、
わたしはぷらいどのかけらもないような「存在」なので、土下座し
てなんとか切り抜けてきました。
「ごめんなさいよ ごめんなさいよ わたしが悪かったよ これか
らはこころを入れ替えて精一杯働きますから、どうぞクビだけは許
してもらいませぬか」
わたしがそう言うと、所長さんは、人のいい所長さんは決まってこ
う言ってくれました。
「分かった、お前を信じるよ。これからはきちんと働くんだぞ」
いつもわたしの思うつぼでありました。でも、先日、所長さんは、
人のいい所長さんは天国へ行ってしまいました。
今年はまじめに働こうかな....そうおもう今日このごろのわた
しであります。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry3

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白い友達

作者 : 神條あかね
Website :
文字数 : 994
  彼を見たのはちょうど7年前の今日だった。
  たしか小学校3年生の時。
  彼は寂しそうな目をしていたっけ。
  私が側によるととても喜んで近づいてきたなぁ。
  でも、どこに住んでたのかわからない彼を家に連れて行く事は出
来なかった。
  その日、お母さんに彼の事を話してみた。
「だめよ家では。面倒見れないでしょ」
「やだ!  放っておくの、すっごく辛かったんだから!」
  その後お母さんの事が嫌になって家を飛び出した。
  もちろん、向かった先は彼の居た公園。

「ごめんね、さっき置いてっちゃって。でももう大丈夫だよ。
ずっと一緒にいてあげるからね」
  そして、白い小犬を抱きかかえたんだ。
  そう、彼は捨てられた子犬。公園に来てすぐだったんだろうな。
  毛並みが奇麗だったのを覚えてる。
「あなたは今日からシロだよ。あたしの大切なお友達」
  その日は夜遅くまでシロと一緒に居たんだ。
  家に帰りたくない、そんな風に思ったの初めてだったなぁ。
  もう真っ暗になった頃、お母さんが心配そうな顔をして私の名前
を叫んでたっけ。
「アヤ!  よかった無事で・・・・」
「・・・・シロと一緒にいるもん。1人にしたくないもん!」
  その時は必死だったなぁ。
  やっと大切な友達が出来た気がしてさ。
  離れたくなかったんだよ。
「アヤ、あなたの気持ちよくわかったわ。そのワンちゃん家で飼い
ましょう。新しい家族のシロちゃん、よろしくね」
  あの時はとっても嬉しかった。小さな彼を小さな私がきゅっと抱
きしめる。
  自然に涙が出てきた事も覚えてる。
  でも、彼は・・・・シロはあの時に・・・・

「シロー、どこにいるのー?」
  私が散歩に連れていった時に、前から走ってきた自転車に驚いて
彼は逃げてしまったの。
  体育が嫌いだった私は当然のようにシロを見失った。
  泣きながら探した。あの日と同じように、夜遅くまで外にいた。
  それでも見つける事はできなかった。
  あれから5年、私の部屋にはまだ彼の写真が飾ってある。
  いつ戻ってきても良いように。

  私はいつの間にかあの日彼と出会った公園に来ていた。
「くぅ〜ん」
  小犬の泣き声?
「わんわん!」
  小犬が駈けてった先に一匹の犬がいた。
  私の目にたくさんの涙がたまった。
  そこにはシロがいたのだ。私達が出会った場所に彼は戻っていた
のだ。
  でも、私にはわかった。彼がもう息をしていない事を。

  私はシロを埋め、彼の子供を飼う事を決意した。
  大好きだよ、シロ。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry4

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夜空の月は黄色とオレンジ

作者 : Began
Website :
文字数 : 994
 今、月を見ている人は地球上に何人いるだろう、と僕はもう半分
に欠けた月を見て考えた。数えるほどしかいないに違いない。僕以
外では天文学者ぐらいだろう。科学が進んだ世の中では地球から月
を見るのは時代遅れだと言いたいのか、たくさんあるテレビチャン
ネルのうちそれを写しているのは一局のみ。
 見て、と言ったが実際には見ていない。構想マンションが立ち並
んだこのあたりで、空を見ることは難しい。仕方なく僕は、目を閉
じて空想するだけだ。

 僕はこの月食のために随分調べた。ネットを通して、昔の新聞や
書物を探し出した。
 今日の月食は皆既の時間が長い。月食は月が地球の陰に入って欠
ける現象で月全体が陰に隠れて無くなってしまうのが皆既。その
皆既、今日のは一時間四十六分四十二秒もある。百二十年くらい前
の月食には劣るが今世紀最長の皆既月食である。

 下調べを十分した上で想像する。黄色に光った月がどんどん欠
けて行く。皆既の間、月はオレンジ色に見えるという話もあった。
 僕の頭の中には幻想的なオレンジの月が広がっていた。ずっと見
つめていると吸い込まれそうな。空を飛べそうな気さえしてくる。
昔の人は、あの月に世界があると考えたのか。それもわかるな。き
っと顔も心も全てが美しい人たちがいて……。

 翼が生えた僕は大空に、あの月に向かって飛んでいる。その道に
は綺麗な花が咲き、踊っていた。花の絵を描く人、花々の間で寝て
いる人などいろいろな人がいる。遙か彼方に、月のシルエットと重
なってこちらに向かってくる一団が見える。手を振っていた。僕を
招いて……。

 ベットが優しく揺れ、僕は気づいた。どうやら、空想は夢に変わ
ってしまったらしい。窓辺にいたはずの僕はベットの中にいた。部
屋が僕を運んでくれたらしい。僕はこの全自動の部屋が大嫌いだ。
便利さを追求した結論と言われ大人気の部屋。
 頭の中には、黄色い月とオレンジ色の月が混在していた。
 昔の人たちはいいな。目覚まし時計という物で起き、人が作った
ご飯をたべて。日照権、空を見ることのできる権利なんてものまで
あったらしい。人口の多いこの時代には到底無理なもの。
「ゴハン デス」
 無機質な声が部屋中に響く。それを聞き、僕は頭の中の月を捨
てた。
 自分以外の人間が現実に生きようとし、夢を見る自分を軽蔑する
時、思想の自由なんて意味をなさない。
 今、僕は夢を裏切り、現実に生ようとしている。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry5

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作者 : Ruima
Website :
文字数 : 996
 初めて少女と出会ったのは、僕が精神科の医師となり2年がたっ
た頃だった。彼女はまだ10歳。大人達に囲まれて俯いていた。
 意外だった。年不相応の暗い表情を除けば、彼女はどこにでもい
る普通の小学生に見えた。本当にこの子が、1クラス分の生徒と教
師を病院送りにしたというのだろうか?
 資料によると、この少女は不思議な声の持ち主だという。いや、
正確には歌声の。
 彼女が小学校に入学してすぐ、音楽の授業中に皆が倒れたと言っ
て彼女自身が119番通報してきたらしい。全員の診断結果は「麻
薬中毒の症状に酷似している」。それから、回復した者の話などに
より原因が少女の歌声にあったことがわかった。
「この薬を飲んでから、ヘッドホンを耳に当ててください」
 僕が言われた通りにすると、ヘッドホンから歌が流れ始める。
 それは、とても綺麗な歌。全てを忘れてしまうほど。
「この少女が歌ったものです。薬は、抗麻薬剤のような物です」
 なるほど。僕は一瞬で納得した。この声なら、それだけの力があ
っても不思議じゃない。

 少女は当然かもしれないが歌うことを禁止されていた。歌いさえ
しなければ、彼女は普通の子供と同じだったから。
 けれど歌を禁止された少女は、一緒に笑顔もなくしてしまった。
飛べない鳥のように元気を失っていった。だからといって自由に歌
わせてあげるわけにもいかず、少女はここに連れて来られた。
 けれど僕も先輩達も少女を助けることはできなかった。僕達が薬
を飲んだ上で少女に歌わせてあげようとした時も、彼女は頑なに首
を横に振り、歌おうとはしなかった。

 そんな彼女が、ある日満面の笑顔を浮かべて僕の診療室に訪れた。
出会って1年。初めて見る笑顔は眩しいほど明るい。
 驚いた。それに嬉しかった。けれど何があったかすぐにぴんと来
て慌てた。
「歌ったんだね? 一人で?」
「違うよ、聞いてもらったの。涼ちゃん!」
 少女に呼ばれた青年は部屋に入るなり言った。
「僕は耳が聞こえません」
「え?」
「涼ちゃんが、私の歌を聞いてくれたの」
「……本当は聞こえていなくても、君は満足なのかい?」
「ううん、涼ちゃんは聞いてくれたよ。今までの誰よりも」

 僕は少女が青年に向かって歌う様子をガラス越しに眺めた。
 嬉しそうな少女と青年。
 ああ、本当だ。確かに彼は聞いている。
 耳が聞こえなくても、彼は心で聞いているんだ。

 ……もう、彼女がここに来る必要はないだろう。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry6

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走る

作者 : 桐原
Website : http://www.tokyo.jcom.ne.jp/~c4162230100/
文字数 : 989
 いくぶん暑さも緩んだ夕方、俺は彼女と会うために待ち合わせの店
へ歩いていた。
 高校卒業以来会っていなかった彼女から、会わないか、と電話がか
かってきて、高校の頃に俺がよく友人を連れて通っていた、夜に酒を
出すジャズ喫茶を指定されたのは、ちょうど夏休みが始まってすぐの
ことだった。

 「あそこ、演奏が始まるのって何時だったっけ?」
 「えーと、六時」
 「じゃ、五時にお店ねー」

 この店に来るのも久しぶりだなあ、などと考えながら、俺は店へと
続く階段を降りていった。俺は、俺がいつも座っていた店の奥の席に
彼女が座っていることを確認すると、彼女に近づいていった。彼女は
黒のワンピースにミュールをつっかけて、長い栗色の髪を指先でもて
あそびながら、ピアノの音の流れにのっていたようだった。

 「わー、久しぶりー。変わってないね」
 「お前は・・・変わったな。なんか綺麗になった感じだ」
 「ありがと」

 彼女が恥ずかしそうに微笑むその仕草を、俺はじっと見つめていた。
何を隠そう、俺は卒業式の日に彼女に告白しようとしたのだ。結局、
その勇気がなくてできなかったんだけど。
 彼女は俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、気を取り直すように
して俺の方に向き直った。やがて、演奏が始まった。

 「実はね、私、留学するの」
 「留学? へー、おめでとう。で、どこに?」
 「イギリスよ。それで、あなたには言っておこうと思って」

 俺はその時平静を装っていたけれど、彼女に思いを伝えるべきかど
うか、決めかねていた。これが最後のチャンスだ。どうする? 俺はど
うすればいい?

 フラれてもいい。俺の想いをきちんと伝えておきたい・・・・・・。

 「なあ、俺、お前のこと好きだ」
 「え・・・・・・」
 「今更って思うかもしんねーけど、ていうか俺も思ってるけど・・・・・・」
 「え・・・っとさ、私、男で親友だったら、あなたが一番近いかなーなん
て思ってたんだけど・・・・・・」
 「いや・・・ただケジメつけときたかっただけだから、あんま気にしない
でよ」

 卒業式にフラれるのを先延ばしにしてきただけだろ、くそっ、落
ち込むな! フラれるのは覚悟の上だったはずだろ。フラれるの
は・・・・・・。
 気持ちの悪い沈黙が続いた。二人の間に、ジャズ・ピアノの流れ
るような音色だけが響いていた。
 
 俺は彼女に、悪いけど用事があるから、と言ってその場を去った。
彼女は小さく、あっ、と言ったけれど、俺はとにかくその場を離れ
たかった。
 店を出て、俺はただがむしゃらに走った。途中、転がっていた空
缶につまずいて派手に転んだ。

 「あーっ、もう、人生やめてぇーっ!」

 それでも、人生は続くのだ。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry7

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Do I believe you?

作者 : 隠葉くぬぎ
Website : http://www.geicities.co.jp/PlayTown-Denei/1955
文字数 : 999
 どうしよう。笑いが止まらない。
 わかってる。わかってるんだ。さっきの、あのことが原因だって
事。
 
 「一緒に帰ろう」
 この言葉を言う時だけ、馬鹿やれる友達で良かった、と思う。あ
いつの取り巻きがいつもの様にざわりとしたけれど、気にもとめな
いで、良いよ、と笑う。眩しい。
 「えぇぇ。翼くん帰っちゃうのぉ」
 甘ったるい声でいう取り巻きの一人が、翼の手を取りつつ言う。
ああ、じゃあな、とその手をかわして私の方へ歩いてくる。その時
にいつも思う。神様ありがとう。私にはあんな風に手を取ることは
許されていないけれど、馬鹿な冗談を言って笑う権利がある。
 翼とこうして帰れるのは電車が一緒だからなのだ。学年でも私と
翼しか使っていないマイナーな路線。
 がたんと揺れた電車の中でも翼は浮いている。私のひいき目で何
でも無く、翼は格好良い。光を放っている。翼、なんて凄い名前も
あいつだから名前負けしない。取り巻きなんてのがいるのもこいつ
ならわかる。男に使う言葉じゃないかも知れないけど、美人なんだ。
 何ボーっとしてんだよ。笑って言う。いつもと同じ馬鹿にした調
子で。取り巻きの娘にはこんな事言わない。もっとずっと優しい言
葉を掛けてやるんだ。何でもないっつーの。私も笑って言う。ずき
んと心が痛む。
 またな、と笑って手を振って翼が遠ざかる。毎日の当たり前のこ
とだ。翼はここで乗り換えて、私はバスに乗って帰る。小さくなっ
ていく翼の背中が耐えられなくて私は走った。追いかける。信じら
れない。私は大丈夫ですか、神様。翼の手を……私は大丈夫?この
居心地の良い空間を壊してしまうかもしれないのよ。でも、翼は私
を違う扱いをしているじゃないの。でも、こうして帰ることは二度
と出来なくなるかも知れない……。
 私は翼の無防備な手を追いかけて、触れた。何気なく翼が振り返
る。少し驚いたような顔をして、どうしたんだよ、とすぐにいつも
の顔で訊いた。
 「翼が好き」
 目を見られない。翼はどんな顔をしてる?返事は? 少女マンガ
みたいな答えはしなくて、良い。私とわざわざ目を合わせて俺もだ
よ、とか。期待していないわけじゃないけど、しなくて良い。ただ、
頷く気配があるだけで良いのに。
 ああ、神様。私にはやはり、手に触れる権利はないんでしょうか。 

 どうしよう。笑いが止まらない。
 布団に突っ伏して肩を震わせるくらい。
 どうしよう。止まらないのは、笑いなんだろうか、涙なんだろう
か。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry8

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蛾の戯れる場所

作者 : 北条みゆい
Website : http://www7.tok2.com/home/miyui/
文字数 : 993
 『後の世も共に』
『……はい、必ずや会いに参ります』

 僕は夢をみた。なぜあんな夢を見たのかは今もわからない。そこ
は悲恋の場所といわれ悲しげに蛾が舞っていた。

 一組の男女が一本の樹の前に立っていた。辺りはもう真っ暗で月
明かりすら飲み込まれてしまいそうだ。虫の鳴き声があたりに響き
静けさをよりいっそう際立てていた。
「信利さま」
女が信利と呼んだ男を不安げに見上げた。
「大丈夫だ、小夜。大丈夫だから」
信利はそういって小夜をぐっと抱き寄せた。信利の言葉はある意味
自分に言い聞かせているものでもあった。
「私達、一緒に極楽に行けましょうか……? 」
小夜はその態勢のまま小さくいった。信利の答えはない。それが小
夜の心をより不安にさせる。
「ああ、もし行けなくとも後の世で必ず会おう」
信利は微笑みながら彼女にいった。
彼の顔と言葉に小夜は穏やかな気持ちになっていくのを感じた。
やはり、この人が好き――

改めて知る自分の感情。
私は信利さまと共にここで果てよう……。
二人は高く聳え立つ木を見上げこれからの運命を願わずにはいられ
なかった。そして二人の命は静かに消えおちた。

――暗転――

一匹の蛾がひらひら目のまえで飛び回っている。その様子は不安定
であっという間に息絶えてしまいそうなものだった。
不思議だ……、虫なんて見るのも嫌ってぐらい嫌いなのになぜか今
は嫌悪感がない。

「どうしたの、とても悲しそう」
自然に言葉が口をついて出てきた。
虫が答えるわけないか――

蛾は大木の枝に静かに降り立った。
次の瞬間、僕は我が目を疑った。蛾の姿が一瞬かすんで見えたかと
思うと人の形に重なって見える。
<私はずっと待っている、あの御方を>
声が頭のなかにずんっと響く。その声には聞き覚えがあった。小夜
だ。
「信利……を? 君達は出会えなかったの? 」
<はい、御仏は私達を引き合わせては下さらなかった>
彼女の言葉には深い深い思いが眠っていた。
<いえ、もしかしたらそれが正しいのかもしれませぬ。死は何も生
まない、誰かを悲しませるだけだった>
「今の姿は転生した姿なの? 」
蛾は羽を風にふかれるままなびかせた。
<これは罰です。己の犯した罪をこの姿をもって償っているのだと
思っております>
「……」

<姿が似ていようとも、所詮、私は蝶にはなれない……>

 彼女は今も待っている。自身が信じ、慕う彼を。そして僕も信じ
ていた。いつか彼女を蝶に変身させる者が現れると。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry9

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魔王の涙

作者 : トト♂
Website :
文字数 : 699
「本当に欲しかったのは世界なんかじゃなかったんだ。」
薄れいく意識の中で魔王が囁いた。私は戦いに敗れた。後は死を待
つばかりだった。
「……本当に欲しかったのは、君と共有する時間だったんだ。」
そう呟いて魔王は仮面をはずした。仮面の下には私と同い年程度の
少年の顔があった。私は夢を見ているのだろうか? 今まで命がけ
で闘っていた魔王が、こんな少年だったなんて。魔王は、横たわる
私の側まで歩み寄ると、膝をつきそっと私にキスをした。
「………何すんのよ。」
最後の力を……本当に最後の力を振り絞って私は、叫ぼうとした。
リーン、リーン、リーン………
耳鳴りがする。もう長くは無いようだ。
(あぁ、もうすぐ死ぬのね。)
感情が高ぶるだけの元気も無く、静かに自分の死を認めていた。魔
王と見詰め合ったまま。なぜか魔王の目は潤んでいる。
(リーン、リーン、リーン………君の事…リーン、リーン、ほんと
うに……して…リーン、リーン)
魔王が何か話したような気がするが私には聞き取れなかった。最後
に、頬に僅かな感触を感じながら、私は…・…・…・…。

リーン、リーン、リーン、リーン、リーン、リーン。

死んだ……。

リーン、リーン、リーン、リーン、リーン、リーン、リーン、リー
ン…………

「うぅん…。」
目覚し時計の音で目を覚ました。はっきりいって目覚めは最悪だ。
「ふぅ、何が悲しくて勇者になった夢を見るかな? しかも魔王に
負けるし……。どうせならお姫様になって王子様に助けてもらいた
かったわ。」
すでに夏休みに入って数日。どうでもいい時間にセットした目覚ま
しで目を覚まし、私の一日が始まる。
 唇に、魔王のキスの感触と、まだ渇かぬ涙のあとを残して。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry10

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そら

作者 : 青葉 大地
Website :
文字数 : 782
 私とあいつがはじめてあった場所は病院だった。
 あいつは、とても寂しそうだった。


「ねぇ、何してるの?」
「空を見てるの」
「そら?」
「そう、空」
 あいつの答えはいつも一緒だった。雨だろうと曇りだろうといつ
も決まって言うのだ空を見ていると。



 私は、いつもあいつが消えていってしまいそうな気がしていた。
あいつが、治らないことは知っていたから。きっと、多分あいつも。
誰も言わなかったけど気付いてたと思う。自分は治らないと。


「さつき、死ぬってどんな感じなのかな?」
 私をひやりとさせることも多々あった。けれど、最後は冗談よ。
で終わらしていた。あいつの真剣な目を見れば冗談の筈はないって
わかっていたけど。


「ねえ、さつき。何時か病気が治ったら、さつきの家に遊びに行っ
てもいい?」
「勿論、当たり前じゃない。楽しみにしてるね」
「ありがとう。約束よ」
「うん。わかった約束だよ」
 結局、果たされることはなかった約束。あいつは、空に飛び立って
しまったから。





 その後、私は引っ越しをすることにした。
 この街に止まる理由が無くなったから。そして、離れたい理由が
出来たから。






「わすれものはないですか?」
「ええ、ないです」
 引っ越し屋さんと私の声が何もない部屋に響く。
 改めて確かめて私は部屋の扉のノブを掴んだ。
「さつき!」
 あいつの声がしたような気がして、思わず振り返る。でも、勿論
あいつはいなかった。そんな自分に嘲笑して呟く。
「ほんっとにバカだよね。あいつはもう、居ないのに」
 でも、これが最後の忘れ物だったのかも知れない。私が忘れよう
としていた。
 勢いよく扉を開けて外に出た。ノートいっぱいに、青という漢字
を書いたとしても書き表せないよう様な空が広がっていた。


 羽ばたいたあいつの翼は今頃どこを飛んでいるんだろう?


 そう、空に問いかけてみる。
 決して答えることのない広すぎて美しい薄情な空に。

第5回高校生1000字小説バトル
Entry11

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ヒョウタン池より 愛をこめて

作者 : KAZU
Website :
文字数 : 992
 涼しい夜風が僕を吹き抜け、公園の木々を軽く揺らした。
 肩にかけた愛用のフォークギターをジャンと荒く鳴らしてみる。
森のざわめきに混じって、音色は長く長く響いた。
 まだ七瀬は来ない。
 午前零時まであと10分。いつもなら七瀬が真夜中の散歩がてら
ギターを聞きに来てくれる時間なのに……。
 せっかく練りに練ったこの作戦も、七瀬が来てくれなけりゃ全部
おじゃんだ。
 僕はベンチに腰を下ろして、ヒョウタン池に映る満月をぼんやり
眺めた。
 今日に限って来ない? まさか……。

 「まだ弾いてないの?」
 振り向くと、濡れた髪を背中まで垂らした七瀬が笑っていた。
 風呂上がりなのだろうか。ちょっぴり汗ばんだ感じの七瀬は月明
かりの下ではやたら色っぽく見える。肩のあたりとか……。
 「コラ、何赤くなってんのよ! はい、これ差し入れね」
 七瀬は二本の清涼飲料の缶の一本を僕に渡すと、僕の隣に腰掛け
て自分も缶を開けた。石鹸のにおいがふわりと鼻をくすぐる。
 僕は慌てて中身を飲みほしたが、味はさっぱり分からなかった。

 あと3分。高鳴る胸を押さえて、作戦開始。
 「俺、昨日さ、新しいの一曲作ったんだ」
 おし、さりげなく決まった。
 「へー、新曲? じゃあ聞かせてよ」
 僕はおもむろにベンチから立ち上がり、七瀬の前で芝居風に深々
とお辞儀をしてみせた。
 「その前にクイズにお答え下さい」あと1分。
 「問題、明日は何の日でしょうか?」
 「何、それ?」
 「いいからいいから」
 「んー、甲子園開幕?」
 「ハズレ! もっと大切な日です」 30秒。
 「大切な日ね…。その曲と何か関係ある日なの?」
 「大ありです。七瀬に関係ある日だよ」 10秒。
 「あたしに? あ〜、何かあったような……」
 突然、腕時計のアラームが鳴った。続いてクラッカーの音が公園
に響く。午前零時。明日が今日になった。
 「七瀬、誕生日おめでとう!」
 あっけにとられる七瀬の顔。僕は隠しておいたクラッカーをポケ
ットに戻しながら言った。
 「今日は七瀬の誕生日でしょ、ダメだよ忘れちゃ」
 七瀬の瞳の色が驚きから喜びに変わる。作戦成功!
 僕はもう一回深々とお辞儀をした。
 「ギターだけの俺だけど、この新曲、七瀬に贈ります」
 やっぱし七瀬の笑顔が一番! 僕は大きく深呼吸してギターを構
えた。
 「じゃあ、今日の一曲目!」
 流れ星が一つ、ヒョウタン池に映った。

バトル結果

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第5回Q書房高校生1000字小説バトル
作品受け付け中!!───7月4日〜7月28日迄
作品発表───8月4日〜
人気投票受け付け───8月4日〜8月28日迄
投票結果発表中───8月30日



第5回Q書房
高校生1000字小説バトル
結果発表第5回チャンピオンは
隠葉くぬぎさん作『Do I believe you?』に決定です。
おめでとうございます。



作品
Do I believe you?(隠葉くぬぎ)4
夜空の月は黄色とオレンジ(Began)3
(Ruima)1
そら(青葉大地)1
ヒョウタン池より 愛をこめて(KAZU)1

お詫び:最終票1票が掲載漏れしていました。よってKAZUさんの倶票数は1票になりました。 投票された方、KAZUさん、並びに読者の皆様にお詫び申しあげます。



Do I believe you?(隠葉くぬぎ)

夜空の月は黄色とオレンジ(Began)

(Ruima)

そら(青葉大地)

ヒョウタン池より 愛をこめて(KAZU)







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