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第6回高校生1000字小説バトル
Entry4

笑わない。笑えない。

作者 : 北条みゆい
Website : http://www7.tok2.com/home/miyui/
文字数 : 980
 芽衣ちゃんはいつもおままごとをしながら私に言うんです。
「はい、あ〜んして」
そういって自分の口を大きく開けます。後ろで見ていたお母さんと
いう人が
「お人形さんおいしいって喜んでるわよ」
「うん! でもね、笑ってくれないんだよ」
笑う・・・・・・?笑うとはどういうことなのだろう。私にはよく
わからない言葉でした。すると、芽衣ちゃんが両手の人差し指を口
の端にのせて吊り上げました。なるほど、それが笑うということな
のか。口と一緒に頬も上がり逆に目は半月の形で下がるんだね。そ
の日から私は笑う練習を始めることにしたのです。芽衣ちゃんとの
おままごとが終わると私の練習の時間の始まりです。丁度私が座っ
ているのは姿見の大きな鏡の前でなんて幸運なんだろうとこの時ほ
ど喜んだことはありません。ですが、私の笑うということの練習は
思いの他容易ではありませんでした。意識してみても私の堅い頬は
ピクリとも動かず蒼い目も形をかえません。なぜ、私には出来ない
のでしょうか? 芽衣ちゃんに私の笑った顔を見てもらいたいのに。

 練習を始めてどのくらいか経ったある日の夕方、芽衣ちゃんが泣
いていました。
「お母さんのばかぁ」
泣きながら微かに聞こえる声でお母さんと喧嘩したことが分かりま
した。芽衣ちゃんは突然私の隣に座っていたもこもこしたねこさん
やくまさんを投げだしました。そして、私も・・・・・・。辺りの
景色がくるくるかわり何かにぶつかった気がしました。ガシャンと
いう甲高い音も聞こえました。その時、私の頬がいつもより堅くな
いことに気づきました。もしかして、私今笑っているのかもしれな
い。急いで鏡を見ましたが辺りが暗く何が映っているのかわかりま
せんでした。
「もう、芽衣ったら・・・・・・」
随分経ってお母さんがやってきました。何をしているのかゴトゴト
と私の周りで音がしました。
「ごめんね、お人形さん」
そうわたしにいって去っていったのです。お母さんは私が笑ってい
るのに気づいていないようでした。
朝陽が鏡を照らしやっと私は自分の笑った顔を見る時がきました。
しかし、そこには何も映っていませんでした。でも、私は鏡を確か
に見ています。そして、気づきました。鏡に映る蒼い二つのガラス
玉に。それは私の目でした。それだけが、転がっていたのです。
あの堅い頬も足も手もそこには無いのです。ただ光に反射され淡く
光る双眸がずっと鏡を見ていました。






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