| # | 題名 | 作者 | 文字数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 真夏の夜の雪 | 葉月 涙 | 974 |
| 2 | 同じ時を | えむら | 995 |
| 3 | 魂 ★ | Ruima | 995 |
| 4 | 笑わない。笑えない。 | 北条みゆい | 980 |
| 5 | 秘密基地 | AOI | 914 |
| 6 | くされ | Began | 970 |
| 7 | 無冠のチャンピオン | 遊介 | 920 |
何処だろう?バスルームからかそれともキッチンからか……蛇口 から滴り落ちる雫の音さえ耳に残る静かな夜。僕は今日も眠れずに ベッドでただ寝返りを打っていた。 窓をノックする音が聞こえる。ベッドから躰を起こすと月明かり の中、窓にシルエットが濃く映っていた。それを待っていたかのよ うにベッドを降りて窓を開けると、青白い月に照らされて、透き通 るように白いスピカの顔がいたずらっぽく微笑んでいた。 「いいものが見れるよ」 裸足のまま、露に濡れて黒々と光る柔らかい草を踏み進む。昼と は別世界の森の中をゆくと、徐々に月の光さえ届かなくなってくる。 暫くすると小さな沼が眼前に見えてきた。近づこうとする僕を制す と、彼は沼の向こうを指差す。その先を目で追うと、無数の緑青色 を帯びた光がゆっくりと飛び交っていた。 「蛍だ」 その光は微妙に強まったり弱まったりを繰り返しながら、沼の周り を泳いでいるように見える。 「座れよ」 スピカの声ではっと我に返り、彼の隣に腰を下ろした。じっと蛍の 群を見つめる彼を横目に、何か話掛ける言葉を探そうとした。けれ どそれは結局徒労に終わった。光が一つ、二つと増えてゆく。それ を眺めるだけで十分だったんだ。 暫くして、ふと彼の口からこんな言葉が零れた。 「蛍ってさ…真夏に降る雪…みたいだよね」 怪訝な顔をする僕を見て取り、彼はこう続ける。 「蛍ってそう長くは生きられないんだ、それに雪も手にすればすぐ に溶けてしまう……」 少しの間、沈黙が僕達を包んだ。その間にも、音もなく蛍はだんだ んとその数を増してゆく。 そして、その輝きに少し目を細めながら彼はゆっくりと口を開いた。 「生命って、すごく壊れやすいものなんだよ。けど……」 「なに?」 ちょっと俯いて、目を伏せた横顔に問いかける。 「ううん。……なんでもない」 そう言って彼は微笑うと、スッと立ち上がり向こう岸を見つめて 「帰ろうか」 とだけ言った。 途切れた言葉の続きが、僕には解った。 『けど……だからこそその輝きは何より綺麗で、貴重なんだよ』 帰り道。暗い森からぬけると、僕よりも歩くのが速いスピカの背 中を、月が照らしていた。 「もう……死ぬなんて言うなよ」 「うん……」 彼の真っ白いシャツがぼやけて見えなかった。思わず空を見上げる と、白みがかった群青色の雲が西へと流れていた。 この小さな小さな命の灯火を、胸に燈そうと思える夜だった。
夏はもう終わった、暑い中、僕の中で僕はどれだけ変わったのだ ろうか。何も変わってないのだろうか。何も変わっていないのでは ないか。僕がいつも抱く疑問、何年前からだろう、変わらなければ ならないと思って、結局何も変わらなくて。 ある夏の日、僕は目覚めた、幻のような朝、いつも日は幻だと感 じていた僕。一日で何かが変わり、時は過ぎ、また一日時が流れ、 また元に戻る。そんなことが繰り返されていて、人は眠れば違う生 き物になるかのように思えていた。目覚め眼でいつものようにダイ ニングに向かう、いつものように母親の声が聞こえ、また、いつも のように朝食をとる。一日が過ぎて前日の喧嘩の痕もまるで無かっ たよう、虚しささえ感じる。「今日は部活あるの?」母の、そう、 いつもの問いかけだ。その問いかけにいつものように僕も「あるよ」 と答える、朝食が終わり僕は制服に身を包んだ、今から学校へ向か う、部活をしに、この部活の人間間係が今の僕にとっては最も複雑 で、最も厄介なものだ。 学校へ向かう電車の中、僕はいつも思う、僕は何を見ているのだ ろうと、焦点はどこにも合わず、宙ぶらりんな僕の眼差し、何かを 考えているようであり、実際何も考えずに「どこか」を見ている眼。 知らない間に学校につく、体がかってにそこへ行こうとするのだ。 何も思うことではなく、別段そこに行く願望も無いと言うのに。 体育館の扉を空け、同級生達と挨拶を交わす、昨日は仲が良かっ た、今日はどうなのだろう。おかしな話だが、僕はいつもこう思っ て友人達と挨拶を交わす、いつもがいつもとは明らかに違う僕の立 っているこの社会。昨日の意識を今日に持ち越すことは許されてい ないのだ。安定など無い、常に移り変わる仲の良さが毎日変わる、 この不思議な小社会。 コートへ向かった、また違う友人の姿、同じように思いながらま た挨拶を交わす。もちろん、昨日という日の話題などでる筈が無い。 しかし、僕達は別段仲が悪いわけではなく、むしろ他人目では仲が いいとも移っているらしい、とても不思議な感じ、そこに先輩が現 れ、号令がかかる、そうすると練習が始まるのだ。 何も変わらず、何も起こらず、次の日には全てが消えていて。た った一ヶ月の間に、何が変われるのだろうかと僕はふと思ってしま う、結局、何も変わらなかった、次の日がくれば、今日は継続して はいない、違う社会が始まっているようなとても虚しい気に、僕は いつも晒されていた。
夏休みの初め、僕の父さんと母さんは死んだ。「お土産買ってく るね」って言ったきり、2人とも帰って来なかった。交通事故。 僕が理解するより早く、黒い服の大人によって父さんと母さんは 冷たい墓石に変わっていた。そこで初めて僕は泣いた。父さんと母 さんはもっと温かいよ。こんなんじゃない。2人はどこ? 両親のいなくなった僕はおじいちゃんとおばあちゃんに引き取ら れた。休みの間はどこにも行く気がしなかった。みんなの中にいる と孤独さを感じてしまいそうで。 でも新学期になっても学校に行こうとしない僕を見かねたんだろ う。9月半ば、おじいちゃんと田舎に行くことになった。「田舎」 は新潟の山の方で、普段はおじさん――おじいちゃんの弟が1人で 暮らしている。おじさんは僕をいろいろな所に連れて行ってくれた。 楽しかったけど、楽しくなかった。前に来た時は、父さんも母さん も一緒だったから。思い出して涙ぐむと、おじさんはちょっと困っ た顔をした。 ある晩、僕はふらりと家を出て歩き出した。ただ、なんとなく。 秋になり始めた田舎は、すでに夜は半袖じゃ寒い。しっかりとブラ ウスの前を止め、僕は気の向くままに歩いた。夜の静かな空気を伝 い、川の流れる音が聞こえてくる。 橋の上から川を見下ろし、ふと考えた。 死って何だろう? 父さんと母さんはなぜ僕を置いて消えちゃっ たんだろう? その時、視界の隅で緑白色の光が点滅した。何だろう? 僕は辺 りを見回し光を探した。 すると、川岸の草の陰から再び光が現れた。点いたり消えたりし ながら、ふわふわと漂うように飛んでいる。その数は僕が見ている うちにだんだん増え、たくさんの光が暗闇の中を舞い出した。その 光景を見て、僕ははっとした。 「ここにいたんだ……」 光の一つ一つは、きっと死んだ人の魂。ここは死者の魂の集う場 所なんだ。 ああ、何て美しいんだろう。 思わず涙が込み上げてきた。 光が2つそばに寄って来て、僕の周りを飛び回る。 「父さん、母さん。僕、もう平気だよ。安心していいよ」 だって、父さんも母さんもここにいたんだ。僕を置いて消えちゃ ったんじゃない。僕は1人じゃないから。 僕は光に向かって笑ってみせた。 翌日、急に元気になった僕にみんなびっくりしていた。例の光の ことを話すと、おじさんは笑いながら「それはホタルだよ」と言っ た。でも、昨日の晩、僕はあそこで確かに父さんと母さんに会った んだ。
芽衣ちゃんはいつもおままごとをしながら私に言うんです。 「はい、あ〜んして」 そういって自分の口を大きく開けます。後ろで見ていたお母さんと いう人が 「お人形さんおいしいって喜んでるわよ」 「うん! でもね、笑ってくれないんだよ」 笑う・・・・・・?笑うとはどういうことなのだろう。私にはよく わからない言葉でした。すると、芽衣ちゃんが両手の人差し指を口 の端にのせて吊り上げました。なるほど、それが笑うということな のか。口と一緒に頬も上がり逆に目は半月の形で下がるんだね。そ の日から私は笑う練習を始めることにしたのです。芽衣ちゃんとの おままごとが終わると私の練習の時間の始まりです。丁度私が座っ ているのは姿見の大きな鏡の前でなんて幸運なんだろうとこの時ほ ど喜んだことはありません。ですが、私の笑うということの練習は 思いの他容易ではありませんでした。意識してみても私の堅い頬は ピクリとも動かず蒼い目も形をかえません。なぜ、私には出来ない のでしょうか? 芽衣ちゃんに私の笑った顔を見てもらいたいのに。 練習を始めてどのくらいか経ったある日の夕方、芽衣ちゃんが泣 いていました。 「お母さんのばかぁ」 泣きながら微かに聞こえる声でお母さんと喧嘩したことが分かりま した。芽衣ちゃんは突然私の隣に座っていたもこもこしたねこさん やくまさんを投げだしました。そして、私も・・・・・・。辺りの 景色がくるくるかわり何かにぶつかった気がしました。ガシャンと いう甲高い音も聞こえました。その時、私の頬がいつもより堅くな いことに気づきました。もしかして、私今笑っているのかもしれな い。急いで鏡を見ましたが辺りが暗く何が映っているのかわかりま せんでした。 「もう、芽衣ったら・・・・・・」 随分経ってお母さんがやってきました。何をしているのかゴトゴト と私の周りで音がしました。 「ごめんね、お人形さん」 そうわたしにいって去っていったのです。お母さんは私が笑ってい るのに気づいていないようでした。 朝陽が鏡を照らしやっと私は自分の笑った顔を見る時がきました。 しかし、そこには何も映っていませんでした。でも、私は鏡を確か に見ています。そして、気づきました。鏡に映る蒼い二つのガラス 玉に。それは私の目でした。それだけが、転がっていたのです。 あの堅い頬も足も手もそこには無いのです。ただ光に反射され淡く 光る双眸がずっと鏡を見ていました。
孝志は走った。家まで続く直線を。とにかく急がなければならな かった。ランドセルを家へ投げ捨てるように置くと、すぐさま出て 行く。これが日常になっていた。 「孝志、早く帰ってくるのよ」 「は〜い」 孝志は母の問いかけに生返事をし、急いで自転車に向かって駆けて いく。自転車を勢い良く……一踏みした。 風はいつものように心地よく吹いている。空は、目の奥が痛むよう な青空で孝志を高揚へといざなった。 ……目的地に着いた。自転車はブレーキをきしませた。 そこは、普通の草原だった。その普通の草原には一本の大木がいつ ものように立っていた。 そして、いつものように声が聞こえる。 「孝志。遅い。なにやってたんだよ」 「ごめんごめん」 孝志も笑いながらいつものように答えた。 空が赤く染まる。孝志にとってこの時間が一番嫌いだった。帰ら なければならない。 「あと一週間もあれば完成だな。順一」 「おう」 「あとさ。看板ほしいね。」 「おっ、それいいな」 孝志たちは、長くなった大木の影を見ながらいろいろな事を話し、 共有しあった。そう……それは秘密基地と共に……。 時に……運命は残酷になる。 その日、孝志が帰ると珍しく父親が早く帰ってきていた。 そして、「引っ越す事になった」と告げた。 孝志にとって、最もつらい言葉だった。 「どうしてだよ! なんで行っちまうんだ」 順一の声がローカに響き渡る。 「……」 孝志は無言のまま、うつむいた。 いつまでも続くような無音の時間……。 それに耐えかね、順一は「もういい……」と呟き、行ってしまった。 出発の日、孝志をあざ笑うかのようにその日もいつものように青 空だった。 全てが家の中から無くなり、床の傷だけがむなしく残っていた。 車に乗り込む。……その時だった。 順一が息を荒立たせながら走ってきた。 そして一言だけ……そう、一言だけ孝志に言った。 「いつまでも……いつものように待ってるからな」 そう言うと車の中へ木切れを投げ込み、去っていった。 「いつものようにか……」 「……行き、まもなく出発します」 アナウンスが空港内に響き渡る。ロビーには一人の青年が立ってい た。 「……行くか」 青年は一言呟くと歩き出した。 持っていた木切れをもう一度、握り締めながら……。
放心状態の祖父に一応声をかけた。 「じーちゃん、2階で本読んでくるね」 やはり祖父は気付かなかった。祖父はこんな時が多い。縁側に座 り、考え込んだふりをしている。空を見てるのか、庭の木を見てい るのか。全くの謎である。 −私はくされガキと共に生きてきた。青春も朱夏もすべて。たぶん これからも…… 「くされガキ」その本を読もうとした理由は題にある。ガキとは 餓鬼なのか。それともカキに濁点が付いたのか。 題で中身がわかる本は駄作だ。そんな思想をもつ祖父の家には、 変な題の本ばかりある。それがうつったのか、僕も題で本を選ぶよ うになった。作者はどうでも良い。題名良ければ全て良し。 −結婚の時もくされガキに頼った。恋に関するくされガキが一番精 気を要する。少なくとも私は、それが損だとは思わない。 しかし、人の中で最も大切な心を操るのだ。それだけの代償で済 むはずがなかった…… くされガキとはつまり腐れ柿のことであった。呪いをかけられた 柿のことをくされガキといい、様々な種類のくされガキを解説する のが、この本であった。 −二人目の子を産んだ後、妻はこの世を去った。退院直後、交通事 故に巻き込まれたのだ。 もう二度とくされガキは使うまい、と決心した。もちろん決心だ けで終わった。私にとってそれは、親友との縁を切るのと等しかっ た…… 題通り作者も変なのか。いや、くさっている。初めて作者という ものが気になった。 いかにも自費出版といった体のその本を、裏返し表紙を見たが作 者名がない。 それは最後のページに書いてあった。猫に追いつめられた鼠に似 ていた。…若尾功……祖父の名前だ。……確かに僕には祖母がいな い。 −自然のまま、つまり何の細工もせず、柿の実を百日間木に付けっ ぱなしにする。そうすると、くされガキのくされを取ることができ るらしい。私は試したことがないので詳しくわからない。今ある柿 だけに有効なのか、過去の柿にも作用するのか。そして結果はどう なるのか…… 階段の途中の窓から下を見た。祖父の視線の先は、やはり柿の木 だった。てっぺんになった赤い柿。 くされを取る法とは祖父の作り話かも知れない。他に助かる道が ないから? 「じーちゃん。あの柿食べよ。てっぺんになった赤い柿……」 僕の呟きは秋の風にむなしく響いた。
「ワーン、ツー.. 「私のチャンピオン、それでいいじゃない」 妻の言葉。照れくさかった。また、ありがたかった。 「だからもう...」 すまない。でもこれだけは譲れないんだ。 「これで終わりにするから、さ」 「スリー.. 十年、やっとつかんだチャンスなんだ。 勝てば妻との結婚式を挙げてやれる。 そして... 「フォー、ファーイブ、 ガキの頃よく馬鹿にされた。 その度に自分をごまかした。でも、 絶対に見返してやる。拳一つで身を立てると決めた。 「シックス、セブン、 自分より年下のチャンピオン。だがテクもスピードも上だ。 周りから天才だと騒がれている。無謀な挑戦だと誰もが言う。 でも、それでも、闘わなきゃダメな時ってのがあるんだよ。 そして、今がその時だ。 「エーイト、ナーイン! まだ、いける!! 「歓声とともに挑戦者が立ち上がりました!! 最終ラウンドも残りわずか栄光のベルトはどちらの手に、 ぉおっと挑戦者の猛突進です! チャンピオンのパンチを物ともしませ、ぁあ、遂にダウ−−ン!....」 ....。 どれぐらい時が経っただろう? 「うー〜ん、試合、は....?あぁ!?」 男が目覚めたとき、彼の元へおいてあったモノそれは....
第6回Q書房高校生1000字小説バトル
作品受付───9月1日〜9月28日迄
作品発表───10月1日(4日に変更)〜
人気投票受け付け───10月3日〜10月28日迄
投票結果発表───10月31日(予定)11月4日に変更
第6回学生1000字小説バトル結果発表
『魂』Ruimaさんがチャンピオンの座を射止めました。
Ruimaさん、おめでとうございます。
投票をくれたみなさん、ありがとうございました。
| 作品 | 票 |
|---|---|
| 魂(Ruima) | 3 |
| 笑わない。笑えない。(北条みゆい) | 2 |
| 真夏の夜の雪(葉月涙) | 1 |
●魂(Ruima)
●笑わない。笑えない。(北条みゆい)
●真夏の夜の雪(葉月涙)
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