第8回高校生1000字小説バトル
Entry3
「夢を諦め、生きる屍になるより、夢を貫き生きた、死人に俺はな りたい」と健司は熱く語った。 「はっ、くさいくさい」といつもの調子で萩原は茶化した。 「なんだと!」 健司は憤慨し、萩原を追い駆けた。 そして、またかという言葉と共に僕はため息をついた。 健司は身軽な萩原に追い着けるはずも無く、終には膝に手をついた。 そして息を切らしながら、萩原に向かって叫んだ。 「夢はあきらめなきゃ、いつか叶うんだ!」 帰る二人を見送ると、ふと、あの時の事を思い出した。 それは、半年前の冬の事。 ……「ごめんなさい」 そう言い残し、去っていく女の子を見送りながら、健司は笑顔を張 り付かせていた。 「まあ、こんな事も有るよ」 僕の慰めも耳に入らないほど、健司は落胆していた。 ため息の数もやたらと多い。 急に、萩原は健司にこう言い放った。 「ばっかじゃねーの!何時までもめそめそしやがって!」 健司は怒りを押さえ切れず、殴りかかった。 鈍い音が路地に響く。 僕は、何故か違和感を感じた。 萩原がわざと殴られたように見えたから。 それから、二人は暫く殴り続けた。 「…どうだ。すっきりしたろ」 腫れた頬をさすりながら、萩原が呟いた。 「ふん」 そう言った健司の顔は晴れ渡っていた。 「まったく、無茶する奴等だ」 僕は空に向かって、呆れ顔でそう言った…… 二人を見送り、僕は踵を返した。 ふと見た空には、飛行機雲が長い尾を引いていた。 そして、月日は流れ、現実の厳しさが、僕ら三人の前に立ちはだ かった。 何とか就職が決まった僕と萩原は、大学を目指す健司の合格発表を 見に行ったのだった。 『2034』。 その番号は無かった。僕らは、ただ無言で歩くしかなかった。 その状況を壊すかの様に萩原が誰に言うとも無く呟いた。 「夢はあきらめなきゃ、いつか叶うんだろ?」と。 「人間、越えられない壁がある」 健司は力なく答える。 「越えられなきゃ、ぶち抜けばいいだろ」 その言葉を聞くと僕はなぜか無性に叫びたくなった。 「くっそーー!!」 それに続いて二人も叫ぶ。 「くっそーー!!」 数日後、健司は来年再び挑戦することを決めた。 …別れの日。 「がんばって来い!」 健司はそう言うと、僕らの背中をドンと押した。 萩原と僕は苦笑いを浮かべ、「おう」と頷いた。 そして、それぞれ別方向へと歩き出した。 後ろを振り返ると、二人の背中がやけに遠くに見えた。 「変わらなきゃな…」 僕はそう呟くと、荷物を持ち直し、再び……歩き出した。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。