インディーズバトルマガジン QBOOKS

第8回高校生1000字小説バトル
Entry6

へびのしっぽに乗る前に

作者 : Began
Website :
文字数 : 993
「今世紀もよろしく」とだけ書いてあった。差出人は不明、宛名さ
え書いていない。おそらく郵便受けに直接入れられたのだろう。
 妙なことに、その年賀状は他の年賀状と一緒に束ねられていた。
他の、宛名を書いたまともな年賀状と一緒に。
 さらに、それはお年玉付き年賀はがきで、2等に当選した。
 我が家では2等は初めてのことなので、年賀状の不審さも忘れ、
素直に喜んだ。母などは、幸運の神様がくれたのだと言い、額に入
れ飾る始末だった。
 早く賞品に換えようと言っても、母は頑としてきかなかった。賞
品では額に入らない、と。

「かぁ〜のッ」
 なるべく明るく、そしてなれなれしく言った。
 友達と歩いていた佳乃は振り向くと、あからさまに顔を歪めた。
あのストレートな性格が好きだったのだが、今は少しつらかった。
 去年の11月、僕は彼女にふられた。僕はただ、彼女の演劇部に
対し、冗談を交えて個人的意見を言っただけなのだが、彼女の性格
はそれを許さなかった。クラスが違うおかげで、彼女とは今まで一
度も会わなかった。会いたい気持ちはあったのだが、どうにも勇気
が出せなかった。
「今、ちょっといいかな?」
 掠れた声になってしまった。
 ふっと、あの年賀状が頭に浮かんできた。
「別に、よりを戻してほしいなんて、思ってないから。ちょっと、
話だけ」
 ごめん、嘘。できたらまたつき合って。
 彼女は少しためらった後、友達に何か言い、僕の前へ来た。
「何?」
 彼女の友達が去っていくのを見ながら、僕はこう言った。
「謝りたくて」
 言いながら、ある考えが浮かんだ。
 あの年賀状は佳乃がくれたのではないか。「今世紀もよろしく」
とは「ずっと一緒に」というメッセージでは?
 彼女の目がそれを否定していた。全く笑っていない。怒っている
のでもなく、悲しんでいるのでもなく、緊張しているような。ある
意味、最悪な状況だ。
「ごめん」
 佳乃に伝わっただろうか。確かめることもできず、僕はずっとう
つむいていた。
 やっと勇気が出た時、もう佳乃はいなかった。
 しかしなんだか、すっきりした気分だった。

 その夜、家でひと騒動起こった。例の年賀状が消えてしまったの
だ。
 新世紀早々運が消えるなんて、と母は今も必死に探している。
 あれは、20世紀の罪悪感が僕に送ったのではないか。僕はむし
ろこう思う。だって、運がなくなってこんなに気分がいい分けない。
僕は罪悪感から解放されたのだ。
 それは、「幸運の2等」より素晴らしいだろう?






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。