インディーズバトルマガジン QBOOKS

第8回高校生1000字小説バトル
Entry7

Dragon Quest

作者 : KAZU [カズ]
Website :
文字数 : 993
 ドラゴンは巨体を太いオークの木にもたせかけた。彼女は傷つき、
そして疲れていた。
 たくましい右足の付け根はばっくりと裂け、赤い肉が顔をのぞか
せている。血はすでに止まっていたが、焼けるような痛みは彼女の
体力をじわじわと吸い取っていた。
 来る。夜の空気にはかすかに松明の煙のにおいが混じっていた。
ドラゴンは赤い目を閉じ、深く湿った空気を吸い込んだ。
「ここにいたんですか」鋼鉄の鎧に身を包んだ長身の若い騎士が、
草陰から現れた。長い槍の穂先には新しい血が付いている。黒く光
るドラゴンの血が。騎士はゆっくりとドラゴンに近づいていった。
ドラゴンに触われる距離まで近づくと、騎士は辺りを見回した。誰
もいないことを確認すると、騎士は槍と松明を地面に放り投げて、
腰の小袋から薬草と包帯の束を取り出した。
「良かった……。本当に死んでしまったかと」
「あんたの槍術で死ぬほどヤワじゃないわよ」
 ドラゴンは小さな炎を吐きながらニヤリと笑った。「でもちょっ
と痛かったかな」
 騎士は薬草をドラゴンの傷にのせて包帯をまいた。
「すいません。村の人達が近くで見ていたので、つい力一杯……」
「いいのよ。むしろ今回みたいにやらないと、みんなあたしが死ん
だと思わないわよ」
 しばらくの間、騎士はドラゴンの治療に専念していたが、やがて
ぽつりと言った。
「本当に、こんなことする必要があるんでしょうか」
「んッ?」
「私たちですよ。あなたが村の空を飛んで村人を脅かす。そこに私
がやってきて村人達と一緒にあなたを退治する。こんなお芝居にな
んの意味が──」
「あのねぇ」ドラゴンは体を騎士の方に向けた。「私たちのおかげ
でみんなは平和なのよ。私っていう『敵』を倒すためにみんなはま
とまらなくちゃいけない。実際に今までの全部の村で、私を倒すた
めにみんなまとまったじゃない」
「でも、そんなの──」
「もちろん、私だってそのやり方が絶対だとは思ってないわよ。で
も、いつか人間も気付くわ。本当の敵は自分自身の中にいるってこ
とを、ね。それまで、このお芝居は続くのよ」
「でも……、なんで人間なんかのために? あなたは傷つくだけな
のに」
 ドラゴンは何か言おうと口を開きかけた。が、首をふってその言
葉を飲み込んだ。
「そんなことより早く逃げましょ。私が生きてることがわかったら、
あんたもただじゃすまないわよ」
 騎士はドラゴンにうながされるまま、不満げな顔で翼をよじ登っ
て背中にまたがった。背中に騎士の重さを快く感じながらドラゴン
は大きな翼を広げた。






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。