第9回高校生1000字小説バトル
Entry5
三月のはじめに、落花生を拾いました。ほんの小粒で少しも香りは しません。ポケットの中に入れてたたいても増えたりはしませんで した。 三日たち茶色に変色してきたので少しの間手の中で転がしたりこす ったりしてから割りました。からの中の片方は茶色の皮につつまれ た小さな種。もう片方には小さい、やはり小粒の妖精がいました。 私がじっとみてると妖精もじっとみつめかえしてきました。 「なにが望み?それにしてもこういう訊き方って紋切型よね」 妖精はねむそうに、モーニングコールで起こしてくれたホテルマン にお礼をいうかのように言いました。 「そこにいて辛くなかったかい?」 「少し退屈だけど、とても静かにおだやかにすごせたわ」 妖精は首をかしげ、けど少しも考えた様子はなくそう答えました。 私はもう一つの種をとりだし、ポケットにしまいました。 「ここは、あいてるかい?」 「どうぞ」 落花生の中も悪くはないものです。一日の半分は妖精とおしゃべり をします。好きな色について、夕方の雑木林について、指の先の傷 について。話し疲れたら空想にふけるか、丸くなって種のように眠 ります。 そして私はこのまま落花生と同じように花になるのを待ちません。 はたして花になるのを待つ球根は幸せなのでしょうか? 私は花に なって美しく咲く自信がありません。だから私は花になって枯れる より、種でいることを選びます。ポケットにいれた種ももう、食べ てしまいました。
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