第5回中学生1000字小説バトル
Entry3
いらつしゃいまし。 綺麗な猫を御抱きになつていらつしゃいますのね。 凛々しい騎士のやう。アメリカン・ショウトヘヤアでしたつけ。 ……奥様は甘い闇を御求め? ───さう、紅い硝子瓶のなかですわ。 「『だらだら貴方の傍に居て良いの? あたしが死んでも愛してくれる?』 あの人に聞いてみていいと思う。だって近頃かまってくれやしな いんだもの。あたしだけどきどきしてあたしだけ喜んで。つまん ない。これなら独りで居るのと同じ。傍に来てほしいの。なにを するときもあたしと一緒にしてよ。いつもあたしだけいっぱい話 してるけど、聞いてくれてるのかしら。優しい澄んだ瞳。微笑ん でる口元。真っ直ぐな背中。ながい足。よく考えてみればあの人の ことなんて外側しか知らないのよ。もっと見せてよ。教えてよ。た くさんのこと。いろんなこと。そういえば何か月か前に逢ったとき、 さりげなく最近見かけた可愛い女の子の話をした。うん、あの人の いちばん大事なものが…大事だと思う人間があたしじゃなくても良 いわ。だってあの人に近付く『いまどき』の女の子にあたしより 『大人』の女の人に敵うような躰でも心でもないから。でも傍に居 てほしい。もっと話してほしいの。嘲らない笑った顔をちょうだい。 あたしの頬を伝う孔雀の羽根の色をした涙を拭って。」 いかがでした。いい闇でございませう。 ……あら。いい闇だと思うのですけれどもねえ。 お気に召しませんでしたか。 意味ですか。これには無いのです。 けれども闇なのですよ。お客様。 あゝ触れてはいけませんよ。 ひき込まれてしまいますわ。 さうでせう。 おやめになつたほうがよろしいですわ。 闇ではないとおつしゃるの? …………ぢゃあ、さうかもしれませんわ。
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