第1回学生課題小説バトル
Entry2
彼の記憶は常にその白に近い金色の輝きと共にある。 最初に、「それ」に気がついたのはいつの事だったか。 十歳? 十二歳? 最初は、可愛がっていたハムスターだったから …そう、小学四年生のころだ。 その次は、猫。そして、犬。田舎のおばあちゃん。おじいちゃん。 近所に住んでた幼馴染のアイザワ。初恋の相手の、エミちゃん。姉 貴。弟。そして、お父さん。お母さん。その後も、たくさん。 彼はその白金の光を見上げるたびに、疼きを感じた。罪悪感を覚え た事は無いが、不安を感じたことはある。自分は、くるっているの ではないか、と。だが、そんな不安は光に包まれると消滅した。要 するに、自分はそういう生き物なのだ。ただ、それだけの話。 彼は闇夜に浮かぶ「それ」に、自分が抱えているものをつきつけた。 あたかも、捧げるように。 彼の周りには、自然に誰も寄り付かなくなった。当然だ。彼に関わ る人間は次々と死んでいくと言う事実は、人を避けさせるのには十 分すぎる理由だった。だが、彼女は違った。そんな話を聞くたびに、 笑いとばした。それがなんだっていうの? と。 愛しくて、愛しくて、何よりも大切なものに思えた。その分だけ、 喜びも大きかった。こんなに疼いたのははじめてだった。 彼は誇らしげに掲げたそれを、また自分の胸にかき抱く。もうあの 笑顔が見られることは二度と無い。だが、その静かな表情が崩れる ことも二度と無い。これだけの喜びをくれた彼女に感謝して、せめ て苦しまないようにしたのだから。 彼は冷たくなった彼女の唇にくちづけをする。長い長いキスの後、 耳元で静かに囁く。 いまからつぎがまちどおしい。はやくきみのところへいきたい。 彼女の首を抱きながら、彼は座って「それ」を見上げる。もう彼に 残されたものはなにもない。ただひとつ、彼の生命の他には。 夏の夜空に浮かぶ月は、何一つ欠けることが無い美しき己の姿と、 「それ」自身が放つ白に近い金色の輝きを以って、 漆黒の天空を支配していた。
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