第2回学生課題小説バトル
Entry1
サンタは大げさにため息をついた。トナカイ達は尻尾にその気配 を感じ、顔をしかめつのを振った。 私は一体何をしているのだ? そりに引かれ冷たい風を頬に感じると、サンタは毎年思う。 何かを探していた記憶はある。プレゼント配りも気乗りしないま ま始めたような。 そうだ、忘れ物をした。何時どこで何を? 忘れ物探しをカムフ ラージュするためにプレゼントを配り始めた。 忘れ物も見つからぬままクリスマスは回を重ね、もはや習慣と化 してしまった。それと同時にサンタの記憶も曖昧になっていく。 サンタは忌々しそうに肩に積もった雪を払いながら、その家に降 りた。トナカイ達は雪をかぶりながらも、静かに空に止まっている。 そこはちょうど、子供部屋だった。慣れや勘といったところだ。 部屋の感じから男子部屋とわかる。部屋中に、紐が膝の下の高さ に張り巡らされている。 兄弟で縄張り争いか? ふんっ。 紐を目で辿っていくと、フォークやスプーンなどが束ねられてぶ ら下がっていた。 泥棒よけか。紐に足を引っかけると音がなり、主にそれを伝える。 用心深いこった。私にとっては、邪魔で仕方ない。 サンタは足を高く上げて歩いた。別に睡眠の妨害をしても良かっ たのだが。 ベットにたどり着いた時には、もう股のところがひりひりしてい た。 ベットが2つ。 ????いない。子供がいない。暖かそうな毛布からは、熊の人 形が顔を出していた。 ふっと殺気を感じたサンタは、背をかがめあたりを見回した。 広めの部屋には、クローゼット、本棚、椅子、机。 サンタは急に吹き出した。 そうか、なんだ、そうなのか。 机の下で二人の子供が首を垂れているのを認めたサンタは、全て を理解した。すなわち、彼らはサンタを捕まえようとしたのだ。も ちろん彼らが、こんな夜更けまで起きていられるはずもないが。 どうやら、よほど気が立っていたらしい。寝ている子供から殺気 を感じるなんて。 何故かとても楽しかった。うれしくてたまらなかった。 どうやら、何かを思い出したようだ。心の底からあふれるこの気 持ちを表せば、「子供心」とでもなるだろうか。年を取って、子供 から成長するのではなく、子供よりくだらない人間になっていた。 このクリスマスという行事は、ただの忘れ物探しではなかったら しい。もっと大切な私の旅。 プレゼント配りも、私が子供にプレゼントをあげるのではなく、 子供達が私に何かをくれていたのだ。ただそれに気づかなかっただ けで。 私はこれからもプレゼントを配り続けよう。ずっとずっと、何か を探し続けて。ただ子供達が許してくれるかが気がかりだ。 トナカイの鈴の音が聞こえた。サンタはプレゼントを置くと、急 いで窓に向かった。途中、紐につまずいた。その音は、トナカイの 鈴より遙かに綺麗だった。サンタの心にまでも届く音だった。 プレゼントを配り続けよう。 降りしきる雪を見て思わずつぶやいた。 「メリークリスマス」
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