第14回中高生1000字小説バトル全作品・結果一覧

#題名作者文字数
1明日のためにその一。トムヤン1000
2Not release the ball(or my love)蔦手672
3ハカイヲトメルモノ外伝戒人914
4私の抵抗瑠璃嬢1165
5暗いnia998
6とある待ち合わせ蒼河香織903
7賽の河原花降華古905
8あるいはうさぎのように高橋アカル946
9無名兵士織葉995
10その缶しゃちめばる940
11狐の嫁入り櫻水嗣郎1000
12あおとみどりのラヂオ。朋己。407
13無題(仮)深谷 章998
14夜空に月をBegan1000
15出会いaiko 314
16軽挙妄動侍小径1000

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Entry1

明日のためにその一。

薄気味悪いオレンジ色の、重たい空。
ぐずぐずと朝日が昇ると、見計らったように月がビル群に消えた。
アイツら、俺と顔を合わせるのがよほど嫌らしい。

今日は久し振りに夢を見た。
高校の時フラレた女の夢。
朝から不機嫌もいい所だ。
昨日買ってきたばかりの缶コーヒーが、もう冷たくなってやがる!

「世の中、どうしてこうクズばかりなんだ」
部屋の片隅で、ゴミ箱代わりのバケツが呟いた。
ただ大口開けてじっとしてるだけのヤツに、社会の何がわかる!

「幸せになりたいか?」
机の上に散らばる紙クズが、俺に問う。
お前が幸せにしてくれるのか?俺を?勘弁してくれ。
お前は所詮何にも成る事の出来なかった、敗北者。バケツの餌に過ぎない。

「なりたいだろ?だったら、俺を握り締めろ」
うるせえ。
クシャッ。

「よし。ここから、一気にスリーポイントシュートだ」

ヒョイッ。

バスッ。

あっ。入った。

「ナイスシュート」
「ごちそうさま。相変わらずクズばっかだな」
部屋の隅から、二つの声が同時に聞こえてきた。
時計の針並みの騒音だ。

「人生ってのはそんなモンだよ。小手先の努力で指先程の幸せを手に入れる。その繰り返しだ。それでいいじゃねぇか」

無機物に説教された。
寝る。俺は寝る。

目覚まし時計を午後十時にセットした。たっぷり十二時間は眠れる。
今晩の月はちゃんと俺を見てくれるだろうか。
かけ布団の上に倒れこむ。
オヤスミ、しょぼい現実。
オハヨウ、かわいい夢。


ッピピピピピピピピピピッ…


ガバッ。

バチン。

ヒョイッ。

ガコッ。

きっかり十二時間後にセットされたはずのアナログ時計は、俺が倒れると、間髪入れず、そして情け容赦なく世界を揺るがした。
何故だ。一体何処で間違えた。
溶けかかった脳みそでは何も考えられない。

「相変わらずマヌケだよな、お前」
部屋の片隅へ放られた目覚ましが俺をあざ笑う。


もう嫌だ。
決めた。バイトする。
コイツら全員買い換えてやる。

とっくに止められたガスコンロを睨みつけると、ありったけの大股でゴミ共を飛び越した。

明日のためにその一。

ガチャリ。

ギー。

ッバタン。

部屋の主が見てもかなり怪しげな空気の漂う部屋に、久し振りにいい音が響いた。

外は思ったほど悪くない天気だ。

さて、これからどうするか。

そう言えば近所のコンビニに、最近にしては珍しい黒髪美人がバイトで入っていた気がする。


決まりだ。


途中、雑貨屋の窓に張り付いたくずかごと目覚まし時計を品定めしてから、俺はコンビニへ向かった。


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Entry2

Not release the ball(or my love)

ああ、なんてきれいなんだろう。

目の前で机につっぷし、すやすやと寝息を立てるこの人を見て、すうっとそんな言葉がうかんできた。
意外に長いまつげ。短い髪。筋肉がつき、しなやかに太い首。しろいTシャツに透けて見える、さらしのように巻かれた包帯。

とくべつ格好いい訳ではない。性格が良い訳でもない。
それでもなぜか、私はこの人に魅せられていて、その姿をこうして見つめている。・・・なんて、きれい。


彼はラグビーをやっている。けして筋肉隆々といった体型ではないが、それでも私の身体とは明らかに異質の肉体。
今は西日に照らされてこんなにも幼く見えるのに、グラウンドに立ったときの彼は「男」の顔をしていて、私は目を離せなくなってしまう。
ラグビーを荒々しいと言う友人を、私は不思議に思った。あんなにもしなやかな動きを、私は他に知らない。
その無骨な手から美しいスクリューパスを投げる彼は、ひどく官能的で妙な色香を漂わせている。
そうしてまた私は、この人に嵌ってゆくのだ。


いつも彼を見つめていたから、その視線の先にあるものに気付いたのは早かった。
私とは正反対の、華やかで明るい彼女。人見知りをせず、話し上手で人を笑わせるのが上手い、誰にでも好かれる笑顔で笑うコだ。
 この人には、もったいないと思った。
それでも彼女もこの人を見ていることに気付いてしまったから、私はたった一人で恋をして、たった一人で失恋することになった。

ひどく心を乱しても、涙を流すこともできずに。
悲愴なほどの想いをこの人の背中に投げ続けて。


そして今も、この人の背中を見つめ続ける。
ああ、なんてきれいなんだろう。


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Entry3

ハカイヲトメルモノ外伝

例えばもし、私が死ねば、彼は悲しんでくれるのだろうか?
悲しんで欲しいと、私はその時思った。

神々の争い。
それは、ひどく非現実的で辻褄が合うといえば合うのだけれどそれでも、偶像としか思えない。
自らは神だと言った彼のことさえ、神だとは…本当は思ってはいない。
信じていいはずがない。信じてしまえば、たった1人の少女のために、私達は無駄に生きているようなものなのだから。
その少女の為に、私達の未来が閉ざされるのは、馬鹿馬鹿しすぎる。―――――小説でも、三流だ。

なぜ私が彼と出逢ってしまったかといえば、それは偶然かもしれないし、彼自身が望んだことかもしれない。
ただ、そんな出逢いが私を狂わせたかと思うと私は彼を恨む権利もあるのだろう。


それでも、私は彼の事が好きなのだ。無理矢理笑っているようにしか見えない顔で、相槌をうつ彼。本当に彼が神なら、なんて「らしく」ない神なのだろうと思う。威厳なんかありもしない。人間だったら、自分のやる事全てに自信が持てない、ただの情けない男でしかないのに―――。神という肩書きが「レンズ」を展開する。

彼は、嫌っている。関与する事もされる事も。誰も知らなければ別れなどないし、誰かといなければ寂しくなる事もないと。
――――それは、私の考えとよく似ていた。だからこそ、私は彼の傍にいたかったのだろう。
だけど、私は聞いてしまったのだ。この世界の宇宙の存在を。何のために人が悩み苦しみ生きているのかを、彼は私に……話してしまった。
聞かないほうが良かった。でも、聞いてよかったとも思う。あの話を聞く事で神の痛みが分かったから。

彼の口から真実を聞いた次の日、私は屋上に来ていた。1人暮ししているマンションの屋上。
今日は、風が少ない。

    生きようと思ったのに。

                   もう大丈夫だと、思ったのに――――。私は何故か……ここにいる。



彼は、どうなったのだろう。
それは、私には知ることが出来ない、気になること。
最後に見せた顔が泣き顔なのは、少し気を悪くさせたかもしれない。



少女は、真実を知り悲観した。
少女は、神の全てを手にしたのだった。
そうして事態は加速していく、破滅へとたどる最後の砦へと―――。


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Entry4

私の抵抗

「何で盗んだの?」

わたしは吃驚していた。
「万引き」というモノはこんないとも簡単に見つかってしまうモノなのだな、と改めて感じたのだからだ。

私は万引きをした。
商品は今持ってるお金で十分手にはいるはずの「コンビニコスメ」だった。
日頃、メイクをする訳でもないのに何故か盗んでしまった。本当に盗んだ理由が私にも分からなかったがそれを店員に見られて警察に連れて行かれたのだった。

私は婦警の質問を受けた。
初めは名前、生年月日、年齢、学校名を聞かれた。そして本題に入っていった。

私は始め、しらを切ってやろうかと考えた。
「やっていない」と言ってやろうかと思った。
しかしそれは発見者がいる限り通用しない事に後から気が付いた。防犯カメラにもはっきりと写っているのだろう。警察を呼ばれる時に店員が言っていたからきっとそうに違いない。

そしてもっとよく考えたら「万引きをした」という罪悪感が無い事に気が付いた。
「万引きをした事への言い訳を考えている」事に気が付いた。
ああ、何だろう。
そしたら急に不安になってきた。
こんな事しか考えられない自分が怖くなってきた。
盗みを犯した意味も分からず、ただ不安が埋め尽くす。
クリーム色の壁が敷き詰められ、濃い青色の服に身をまとって優しく問いかける婦警さえも敵に思えてきてヒステリックに何か叫びそうになった。

あれ?ホントに私は何やっているんだろう。
なんで盗んだんだろう。
なんでこんな事してしまったんだろう。
不安と恐怖と違和感が私を支配していく。

私が真っ青な顔をしていると婦警はそっと言った。

「これは貴方の抵抗だったんじゃないの?」と。

意外な発言に溜まっていたモノが出ていく事に私は初めは気が付かなかった。

私は泣いていた。

そう・・・だったのかもしれない。
最近上手くいっていなかった家族関係。母親と喧嘩していたんだ。
喧嘩の理由は母親の再婚にあった。離婚した時はすんなりオッケイ出来た私は何故か「再婚」と言う言葉を聞いたらイキなり怒り出してしまっていた。
それから母親とは口もロクにきいていなかったんだっけ?
これって只単に、あたしが母親を再婚相手に「取られる」事への嫉妬だったんじゃないかな?私の抵抗だったんじゃないかな。母親に対する自分なりの「抵抗」だったんじゃないか。ただ、強がっていただけだったんだ。

頭を整理して考えてみたら何故か分からない事まで分かるようになっていった。

多分、はっきりとは言えないが私が万引きをしたのも母親に対する「抵抗」の一つだったんじゃないかな?と思うようになっていった。
なんだ・・・そうだったんだぁ・・・。
何故か今さっきまでの不安達はいっせいに消えていった。

カツンっカツンっカツンっ

廊下に響くハイヒールの音。
婦警はフッと笑って「答えは出た?しっかり相手に気持ちを伝えるのよ」と言って母親を呼んだのだった。


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Entry5

暗い

 暗い。起きて頭に浮かんだ言葉は正にそれであった。

立ち上がり、両手を一杯に開いてみたが触れるものはなく、一歩踏み出してみる勇気も無い。

一体どうしてこんな事になってしまったのだろう。俺は昨日の晩を回想してみることにした。

 師走の風が冷たく俺の頬を刺す。

四軒目のバーで飲んだウォッカが効いたのか、やけにハイになっている。

俺は近くにあったゴミ箱を豪快に蹴り飛ばすと、これまた豪快な高笑いを響かせた。

側に居た犬が逃げていくのを見ると、俺は余計に愉快だった。

頭の中では「スター・ウォーズ」のテーマが流れ、俺に冒険を促す。

「らいとせいばぁー!」

俺は棒切れを振り回すと公園を走り回った……。

 俺の記憶はそこまでである。

「くそっ」

俺は座り込むと何とか思い出そうと頭を振ってみた。

「あいたっ!」

二日酔いが俺を襲った。やはり四軒目のバーで飲んだウォッカが効いたらしい。

 とにかくこのまま居るわけには行かない。

俺は目の前の空間をまさぐり、そこに地面があることを確認すると、一歩ずつ進んでいった。

 三十歩ほど進んだだろうか。ふいに手が硬いものに触れた。壁である。

鉄やプラスチックに似た、ひんやりとした感触である。解った所でどうにもならない。

俺はまた三十歩後ずさり、今度は逆方向の地面をまさぐりはじめた。

 三十歩ほど進んだだろうか。ふいに手が硬い物に触れた。壁である。

鉄やプラスチックに似た、ひんやりとした感触である。解った所でどうにもならない。

どうやらここも駄目らしい。俺は三十歩後ずさり、今度は横方向の地面をまさぐりはじめた……。

 もう六回この記述をするのはやめておこう。早く言えば縦横斜め、全ての方向に壁があったという事である。

俺は完全に閉じ込められてしまった。とすると、酸素には限りがある!

今までのあやふやな恐怖は本格的な恐怖へ変わった。生還の望みが完全に断ち切られてしまったのだ!

 一体どうしてこんな事態になってしまったのだろう。公園で何が起こったのだろう。

誰かに恨まれて閉じ込められたのだろうか。犬の尻尾を踏んだことがあった。

公然と悪口を言った奴も居た。そうそう、かなりしごいた部下もいたっけ……。

 考えれば考えるほど事態は悪化していく。とにかく自分は助からないのだ。

俺は一番直感的な言葉を口にした。

「らいとせいばぁー!」

本能的に腕が振り上げられた。 

 …薄いダンボールの板が破れ、師走の冷たい風が吹き込んだ。


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Entry6

とある待ち合わせ

いつもの喫茶店、いつものコーヒー。
わたしは、ガラスごしに外を見ながら、ため息をついた。
「遅いなあ・・・・・」
彼が時間にルーズである、という事は承知の上だ。
いや、遅刻常習犯と言った方がいいかもしれなかった。
デートくらい、たまには時間より早く・・・・時間ギリギリでいいから、約束くらい守ってよ。
心のなかで、つい嘆いてしまう。
ガラスごしには、家族連れや、忙しそうに歩くサラリーマン、それに楽しそうに笑うカップルが見える。
あのカップルは、いつも時間どおりに待ち合わせ場所にきてるのかしら・・・・なんてひねくれた事を考えた。
「遅いなあ・・・・・」
わたしの口から、さっきと同じ言葉がもれる。
ただ今、10時四十分。四十分オーバー。
「お下げしてよろしいですか?」
「あ、おかわりお願いします」
このセリフを、もう三回はくりかえしただろうか。
お茶うけでも頼もうかな。
はじめからテーブルに置いてあった小さなメニューを見てみる。
『クリスマスシーズン!カップルでケーキを買うと三割引です』
・・・・・メニューをもとの場所へ置く。
よけい、むなしい。
早くこい!あのバカッッ!と、奇声を発したくもなってくる。
もう一度、ガラスごしに外を見る。
人通りの多い駅前。クリスマスの飾りがひしめいていた。
そこへ、遠くの方から、見覚えのある人影が走ってくる。
まさか!
街路樹で見えなくなったと同時に、喫茶店の入り口の方を向く。
「ご・・・ごめん、遅れた・・・・」
息をきらして、彼がはいってきた。
わたしの向かいへすわる。
「もう!これで何回目!?おっそ〜い!」
「ごめんってば。ちょっと寝過ご・・・・あ、いやいや、バスがなかなか来なくて」
まだ寝癖のついた髪の毛をかきながら、必死で言い訳をしている。
「まったく!・・・・で、今日は何でおかえししてもらえるの?」
「え!?え〜と・・・前はパフェで、その前はアップルパイだったから、じゃあ今日はケーキでもおごってやるよ。カップルだと、三割引だろ?」
彼がおもしろそうに笑いながら言った。
「あ!反省してない!」
「反省してるって!」
こんななにげない会話と、彼の笑顔がうれしくて。
わたしは、怒って帰るでもなく、待ちぼうけしてるんだ。


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Entry7

賽の河原


「かあさん。だいすきだよ。」

僕をどんなに殴りつけても。
ボクをどんなに傷つけても。

ボクは母さんが好きだよ。

『お前なんか・・!!お前がいるから・・!!』

母さんはそう言っていつも僕を殴るけど。
妹にはまるですがる様に抱きつくけど。

ボクは母さんが嫌いだった事なんて一度もないよ。

でも。

ちょっと痛いなぁ・・。

なんか、赤い水が・・。

出てきてるし・・。

目の前が・・暗くなってきた・・し・・。

あ・・ほんと。

なんだっけ・・。
川っていうのかなぁ・・。

前におばあちゃんと一階だけ見にいった水の一杯あるトコロが見えてきた。
そういえば・・。ボク。

ソウマトウってやつはみえないや。
僕、よく知ってるっておもうでしょ。

ソウマトウなんて。

だって
母さんがいってるじゃない。

相馬 冬はボクの名前。

おばあちゃんが悲しそうに意味を教えてくれた。

母さんは、ボクがはやくしんじゃうようにつけたんだって・・。
自分には止められなかったっていって、泣いてくれた。

だけどね。

おばあちゃんはキライだよ。
だって母さんの事、イジメるんだもん。

ソウマトウは見えないや・・。

まぁ、ボクに見たい思い出なんかないけどさ・・。

『死ねっ!死ね死ね死ね死ね!!!』

痛いよ。母さん。
僕の身体
一杯穴空いてるね。

あ。

だめだ。









あれ。
ここどこだろ。

かわ・・?

子供しかいないね。
みんな、どうして石をつんでるの?

『コレガ、ツミアガッタラ天国ニ逝ケルノ。』

どうして?
ボク、死んじゃったんだ。

でも、じゃあここは地獄?

『チガウヨ。ココハ賽の河原。『親より先に死んじゃった子供』ガ来ルトコ。』

でもさぁ。
石ならはやくつみあがるでしょ?

ほら。
君のだって・・。

ガシャン!

『うわぁああああああ!!』

なんだよ・・!!
今の・・。

鬼?

なんでだよ・・。
なんで崩しちゃうんだよ!

せっかく・・!!
積み上げたのに。

『無駄ナンダヨ。』

え?

『積上ゲテモ。鬼ガ崩ス。ダケドモシカシタラ完成スルカモシレナイカラ。』

そういって、ずっとつんでくの?

『ウン。』

そんなのってないじゃないか。
だって・・。

親より先に死んだって・・。

ジサツした訳じゃないんだよ?
どうして・・。


ボクは石を積み始めた。

積上げながら、ボクは始めてお母さんが憎いと思った。



End


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Entry8

あるいはうさぎのように

それはとても寒い日だった。

吐く息さえも凍りつくように冷たくなって、いつしか雪だって振り出していた、そんな折に彼女は来た。雪をかぶったままの彼女に熱いタオルをわたした。消えそうな声で彼女は「有難う」と言って、着けていた真っ赤なコートと真っ赤なマフラーを掛けた。
「……あの、わたし。」
コーヒーをオーダーした彼女は、カウンター席の真中へと座った。そして少しつっかえるようにして喋り出した。
「……あの、わたし。わたしがなんだかわからないんです。」
彼女はうさぎだった。
「あんたはうさぎじゃないか。」
僕はコーヒーをうさぎの目の前に出した。砂糖を2つと、ミルクを一つつけてやった。
「うさぎじゃないんです。これは本当のわたしじゃないんです。」
うさぎは赤い目をきょときょととしながらコーヒーに砂糖を2つ入れた。
「うさぎでもコーヒーは飲めるのかい?」
少し気になって僕は聞いた。うさぎのお客は始めてだったが、何でもない風を装ってうさぎに聞いた。
「…おかしい、ですか?」
「いや。ただあんたがうさぎだからさ。」
「ただわたしがうさぎだから?」
口の中で転がすように、うさぎは僕の行った事をもう一度繰り返した。酷く苦いキャンディーでも舐めているかのような表情だった。それはあくまで『うさぎ的に』だけれど。
「……」
「……」
コーヒーは静かに冷えていき、店の中は静かにうさぎ色に沈んでいった。
僕は暫くグラスを磨いていたが、コーヒーに口をつけようとしないうさぎに向かって言った。うさぎはずっと僕のほうを見ていた。
「…つまりさ。つまりあんたはコーヒーに砂糖を2つ入れて飲む、本当はうさぎじゃないうさぎ、でいいんじゃないか?」
「つまりわたしはコーヒーに砂糖を2つ入れて飲む、本当はうさぎじゃないうさぎ?」
うさぎはまた繰り返した。僕は大きく頷いた。うさぎも頷いた。
「ありがとう。」
うさぎはそう言って、コーヒー代をお釣りのないように数えてカウンターの上に置いた。なまぬるくなったコーヒーには、結局最後まで手がつけられなかった。そしてまた、うさぎの目と同じ、真っ赤なコートと真っ赤なマフラーを着けて雪の振る中に出ていった。

僕以外誰もいなくなった店の中にはストーンズが流れていた。うさぎもストーンズを聞くのは好きなのだろうか、と僕はぼんやり思った。


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Entry9

無名兵士



大国同士の間に勃発しかけた戦争を、
一人の兵士が両国の首相を説得し、
食い止めたという伝説があるという―――。



「何をしているんだい?」

綺麗な子供。多分、そう言うのが一番しっくりくるだろう。
艶のある長い黒髪。透けるような肌。宝石を閉じ込めたように煌く瞳。成長したら、さぞ人目を引く美女になるに違いなかった。

十歳に満たないその少女は、熱心に枯れ木の枝を組み合わせていた。
何かの形を作っているのだろうか。

見知らぬ男に尋ねられたのを不思議に感じたのか、少女は小さく首を傾げた。

「お墓を作ってるの」
「……誰のだい?」
「お母さん」

母親のお墓。
申し訳なさとやるせなさが、同時に胸に込み上げてくる。

「おじさんは、兵士?」
おじさんと言われたことに苦笑しつつ頷くと、少女はにっこりと笑った。
「お母さん言ってた。兵士さんに会ったら、頑張ってください、って言うんだって。私達の生活が楽になるように、他の悪い国と戦ってくれてるんだからって」

心臓を、槍で貫かれたような気分だった。

「頑張ってください」
笑顔でそう言い放つ幼い女の子に、どうしようもない罪悪感が膨れ上がる。


(言わなくて、いいんだよ)

拳を握り締めた。国蘇ってくる、国を発つ時響いた国民からの声援。敵を蹴散らせと、最後まで叫んでいた隊長。銃弾に倒れていく中間達。
戦火。爆撃。全てを灰にした、敵の容赦ない攻撃。悪夢の一ヶ月間。

(おじさん達は、戦争に負けたんだから)

敗戦。国に戻って来た時の国民の瞳は、冷たかった。
店から弾き出され、暴動が度々起き、何度か殺されかけた。
残酷過ぎる人々の心。
家に残っている筈の妻と息子の姿も見えず。
捜し続けて、街道で炎から逃げ切れず二人とも焼け死んだと解ったのは一週間前のこと。

「おじさん、泣いてるの?」
心配そうに覗き込んで来た少女を見て、良い子だな、と思った。

奪われすぎた命。

絶対に報われない。報われる筈がない。

何を思い、何を信じて死んでいったのだろうか。


「おじさん。お花、いっしょに摘んでくれる?」
優しい微笑みを見せた少女の頭を撫でる。
絶対に守って見せると。
そう、誓った。
哀しみしか生まないその虚しい戦いを、二度と繰り返させるわけにはいかないから。





この出来事が歴史に呑み込まれた未来。

大国同士の間に勃発しかけた戦争を、
一人の兵士が両国の首相を説得し、
食い止めたという伝説があるという。

国の危機を救った彼を、人々が名前で呼ぶことはない。


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Entry10

その缶

 彼は探し物をしていた。
 朝からずっと探しているのに、一向に見つかる気配はない。
 出す前のゴミ袋をすべて開封して中身を確かめて、せまい部屋のスミからすみまで歩き回った。
 だが見つからない。ふと立ち止まって、真っ青な彼は呟く。
「ちくしょう、郁美のやつだな……」
うつろな目は、フォトフレームの中で笑う1人の女をとらえた。

 気がついたのは、郁美が「その缶」を落としてしまったからだ。
「あっ、ごめん裕也。何か落ちちゃった」
裕也は、郁美が拾うより速くそれに手を伸ばした。そして急いで隠そうとする。
 その態度と、彼の気まずそうな顔に、郁美は何かピンときた。
 青い小さなドラム缶みたいだ。彼が動くと合わせてカラカラという音。
「……それ、写真でしょ?」
裕也は眉をよせて、郁美ではなく缶を見た。自分を見つめて「ゴメン」と謝ってほしかった彼女は、憤慨して缶をもぎ取ろうとした。
 裕也はその手を荒々しく払い除けて郁美をにらみつけた。
「前の彼女だよ、触るなってば」
 郁美は嫉妬深い質だ。
 もしかして、私よりもかわいい女の子かしら……
 どうしても、裕也の「元彼女」を見てみたくなった。目は大きいか、髪は長いのか、背は高いのか、自分に劣るか勝るか……。

 自分を抑えきれなくなって、ついに昨夜「その缶」を持ち出したのだった。カゼをひいた裕也の看病という表の名目に、真の目的・「缶を借りる」ことを隠して…。
 勿論、無断である。夕暮れになり人の消えた公園で、彼女は缶のフタを開けた。
 とたんに、彼女の耳に膨大な数の叫び声が飛び込んできた。

 いやたすけてだしてここからだしてあのおとこのろってやるいえにかえしておねがい

 一瞬で、
「きゃあぁぁぁ!!」
郁美は缶へと吸い込まれていった。ありったけ出したはずの声も、缶が飲みこんだから誰にも聞こえなかった。
 いや、彼には聞こえていた。
 裕也は公園の遊具から顔をのぞかせた。
「あーあ…だから触るなって言ったのに。ま、俺は我慢強い女がタイプだから、ちょっとしたテストってところかな?なあ、郁美」
彼は、拾い上げたその缶をカラカラふった。何千何万という大合唱は、ただ乾いた音にしか……それすら聞こえなかった。
 いや、彼には聞こえていた。
 今までに何回も、その声を聞いてきたのだから。


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Entry11

狐の嫁入り

 降り積もった雪はスベテを白く染め上げ、何もかもを呑み込んだ。
白い世界には何の音も無く、静かに雪だけが降り積もっていくだけだった。
吐く吐息も、冷ややかな水蒸気となり天へとのぼってゆく。


 静寂に呑み込まれそうになりながら、
一人の紳士が雪に足跡を残すように雪道をゆく。
肩にも帽子にも真っ白な雪が積もり、身を切るような寒さに震えながら、
紳士は家への帰路を急いでいるのだ。

 忙しなく足を運ぶ紳士の目に、ふと壱つの灯が飛び込んできた。
外套の中に隠した顔を擡げ、男は灯をはっきりと確認した。
少し離れた所に弐つの小さな灯が燈されている。
『何処かの家の灯であろうか』と暫く灯を見つめていると、
男が二人、共に灯の点いた行燈をもって此方へと向かってくるのが見えた。

『行燈とは珍しい』
しげしげと行燈を眺めていると、向かって右側の男が紳士に向かって声をかけた。
「花嫁が通ります。路を開けて下さい。」
『花嫁?こんな日にか?』
紳士は不思議に思った。
「こんな雪の日の夜更けに婚礼など聞いた事もない。いったい何方なのですか。」
紳士の言葉には耳も貸さず、今度は左側の男が口を開く。
「花嫁が通ります。路を開けて下さい。」
隣の男と一言一句同じ台詞をはいた男の顔は、右の男と同じ顔をしていた。

 刹那、『双子なのだろうか』とも考えた。
しかし、それにしてもあまりに男達は似すぎている。
ぞくりと、気味の悪さを感じた。
「わかった。退こう。其れでいいんだろう。」
紳士はは男達に従い、路の横へと逸れた。
それを確認した男達は、また行燈を提げて雪道を歩いていった。

 半強制的に移動させられたことから、紳士の疑問は深まるばかりであった。
『駄目だ。気になって仕方が無い』
紳士は耐えきれず、来た路を戻る為駆け出した。


 もと居た路に戻りついた紳士は、はっきりとその花嫁行列を確認した。
白い世界に響き渡る鈴の音と、白無垢に身を包んだ花嫁は、
この世のものとは思えぬほど美しかった。
雪に見劣りせぬほどに白く滑らかな肌には真っ赤な紅が映え、
また其の眼は何もかもを見据えたような黒く深いものであった。
ふと、花嫁と目が合った。
花嫁は、静かに笑みを浮かべ、柔らかに会釈した。
紳士はただ呆然と、花嫁行列を見送る事しか出来なかった。

 ぼんやりと路を行く紳士の眼にまた灯がとまった。
しかしそれは、婚礼の灯ではなく、通夜の灯であった。
その家では今夜、若い娘が一人、亡くなったそうなのだ。


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Entry12

あおとみどりのラヂオ。

地球からは、宇宙がみえる。
背伸びをしてとどく高さでは、とうてい、無い。

「今日は、オリオンが主役だね。」

「うん、だけど、雲がすこし邪魔にかんじない?」

僕らは真っ赤なラヂオをもってここで宇宙をみている。
それは特別な約束でも、大切な行事でもない。
いつもの、日課。

「うん。だけど、それでも、みえないことは無いね。」

ラヂオのはなしは、もう聞き飽きている。

それでも僕らは、それをとめない。

とめられない?
とめたくない?
とまらない?
いいや、とめないだけ?

矛盾のきたないハ−モニ−。

「あ、雲でみえなくなっちゃった。」

きっと宇宙からじゃ、このほしは綺麗に観測出来ないんだ。

このほしにかかる靄が、それを遮ってしまうから。

アイのうたじゃ、靄は消えたりはしませんよ。

いつまでたってもラヂオは同じはなしだけ。

「あしたは、綺麗にみえるといいね。」

「そう、だね。」

それでも。やはり。

宇宙の光はまだ、僕らをてらしてくれる。

さあ、いいかげんにラヂオをとめにいかないと。


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Entry13

無題(仮)


12月29日 午後8時3分
明は現在では珍しい旧式のワープロの画面を見つめがら、一人唸っていた。
「あと、2日と4時間か……」
QBOOKS“学生1000字バトル”の締切りが刻一刻と近づいている。
深谷章というPNで詩人としてバトルに参加していた明が、初めて学生バトルに投稿したのは第11回の時。しかし、学生バトルに参加したのはそれっきり。どうやら、その後に出した一般1000字バトルの感想の「これは電脳日記だ」という一言が明をスランプへと追いこんだらしい。
そして、今もスランプ中。
さっきから、全くキーボードには触れていないのに、目はお手上げクイズをしている所ジョージにくぎ付けだ。まるで愛の告白でもしそうな勢いである。
「マジカル頭脳パワー復活したのかぁ………」
などと、全く関係ない独り言を言う。
答えを出さなくてはいけないのに、いい案が浮かばない時の明の癖だ。どんな人間でも逃避することがあると思うが、明は人一倍逃げやすい。今もマジカルシャウトをテレビの中の回答者と本気で張り合っている。
『では、似たもの三択です。』
「モリさんって良い声してるよなぁ……」
と、明は呟いた。モリさんの声が今の明を癒しているのだろうか。
『息子 孫 ひ孫 お嫁にいけないのは?』
「息子!!」
明が間髪入れずに叫んだ。回答者の誰よりも速かった。
明の顔に笑みが戻った。
単純な奴だ。だが、人間なんてそんなもんだ。単純なのだ。そして、単純なことは幸せなことでもあるのだ。
「さぁてと。」
明はリモコンを手にすると、電源のボタンを押した。
テレビがカチッと音をたてて、画面から色をなくす。
やっと視線をテレビからずらした明は、私のほうを向くとこう言った。
「姉ちゃん、さっきから何うってるの?」
「文芸部の提出課題だよ。」
「へぇ、終わったら読ませてよね。姉ちゃんがパソ使ってるせいで、俺がこんなワープロ使ってるんだからな。」
「わかってるわよ。」
明は私の返事を聞くとワープロの電源を切った。
「あれ?書かないの?」
「あぁ、今回はやめるよ。無理して書くもんでもないしね。」
そう言うと、明は部屋から出て行った。
私はかまわずキーボードをうち続けた。
題名は何にしよう。
「深谷章ダメダメ日記」だろうか。もしくは「エセ物書き失敗へのプロセス」?
それとも…………


時計を見ると10時を過ぎていた。
「あと、2日と2時間か………」
私はパソコンの画面を見つめながら呟き、一人唸り始めた。


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Entry14

夜空に月を

 小人は帽子を脱ぐと、紳士のようにぺこりとお辞儀した。すると周りの景色がすーっと変わった。そこはあの絵本の世界だった。
 森の中、大きな木の前に小針は立っていた。おそらくその木が、主人公のリスの家だ。
 高校生にもなって絵本の精霊に話しかけられたなんて、友達には絶対言えないな。小針は少しばかりうれしそうに苦笑した。
 絵本の精霊は、赤い尖り帽子をかぶり、それとは不釣合な黒いマントで身を覆っていた。あの絵本の中には出てこなかったはずだ。
 小人はもう一度言った。
「小針ちゃん、君が僕たちの世界を立て直すんだ」
 絵本の世界は崩壊しかかっているらしかった。
 空の青は褪せ、白くなった。緑の木々は、次々に黒く染まっていく。小針やあの大きな木を中心に、その周りの物の色が褪せていく。徐々に、徐々に……
「やめて!」
 小針は叫んで、あの木に飛びついた。ぎゅっと抱きしめる。
 ふと小針は、自分の色も消えてしまうのだろうかと恐怖を覚えた。
 怖々目を開ける。
 小針にはまだ色があった。あの木にも、小人にも。周りは白黒の世界。そこだけに色が残っていた。
 小人はまた、帽子を取ってお辞儀した。
 あの絵本の一場面だった。
 誕生日を迎えた子供のリスが、家族に囲まれて席に着いている。
 子供のリスと兄弟がケーキを取り合ってけんかを始めた。おじいさんリスは椅子にゆったり腰を掛け、目を細めてそれを眺めている。
 そこにはにぎやかな色があった。そこには暖かい色があった。
「準備はいいね?」小人が言った。
「うん。」──私が世界を立て直すんだ!
 小人はマントを広げた。中からたくさんの色が飛び出す。軽くお辞儀しながら、尖り帽子を小針に渡した。
 小針が帽子を持つと、体がふわりと浮いた。色を帽子の中に集めると、空に上がっていった。
 まず、空が黒く塗られた。その上に、赤白黄青が点々とちりばめられる。白くて大きな円も一つ描かれた。
 小針は次々と色を塗った。世界に色を塗り終わると、空から月の光が降り始めた。
 最後、帽子には青が残った。
 小人は青い帽子を手に持つと、丁寧に深々とお辞儀した。木も空もリスたちもお辞儀した。小針は頬を赤らめた。
 周りの景色がすーっと変わり、そこはもとの小針の部屋だった。
 手に持った絵本の裏表紙の隅に、青い帽子の小人が印刷されていた。その出版社のマスコットらしい。
 小針は、この絵本を親戚の子供にあげに行くところだった。


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Entry15

出会い

出会い
人間は、誰でも出会いそして別れるものだ・・・・
それが、わかっててなんで出会うのかな?神様がいるのだったら、聞きたいものだ。私には、たくさんの友達と最高の家族がいる。そして、大切な人もいる・・・。いつかは、別れてしまうのかもしれない。でも、今という時間が1番好きです。このまま、時間が止まってしまえばいいのに・・・そんなことはできないと知りながら。
みんな、そうじゃないですか?楽しいと思っていても、時間はすぐに過ぎてしまう・・・・好きな人がいても、本人の前じゃ素直になれないこの気持ち・・切ないね。人は、素直になれないもの・・・なんでかな?
どうやったら、素直になれるのかな。
ここから先みんなも素直になってみては、どうですか?


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Entry16

軽挙妄動侍

 前略
 「うあああ!!」
 「っつっきゃああ!!!」
 ひしっと、抱き合って叫びあう。
 「マッシーニ!!」
 「キャメロアス!!」
 略。
 「僕の愛を受け止める君の横顔は正に禽獣の如き節目を秀喜せしめん(中略)君はいったね『猫の尻尾から鼻毛が飛び出すとき、また会いましょう』と!!(中略)僕の炎がビザンティンがギリシア火のようにまさかりかつだりんたろう!(後略)」
 「うっつきゃあぁあ!! まさか、あなたが犯人だったなんて的な現われ方をしといてその言い方(中略)的ファンシーをあたしのソウルな魂を激動する様はプリミティブなブロパガンダを要求する功利主義の観念をプレイバック(中略)羽の後尾をさしていったわね『みよ、あれが巴里の火だ』とかなんとか!(後略)」
 マッシーニはその鉤爪(中略)突き激動の夜に蠢く愛を情熱という名のパッションを変更せしめつつ感じた! 世界にはもう二人きりであるかのようなここが実は巣鴨の刺抜き地蔵である事など眼中に無いかのような姿勢でうあああっと! これは伝説のラオ・スペシャルが決まったぁ! 痛みに耐える姿もけなげなキャメロスラブ!!
 「ロザリオ!! (ぼそっと)じゃないわ。キャメロス!」
 キャメロスはそのレヴィタヤンの如く軽挙妄動しその足を金属踏み抜かれたマッシーニに昏迷の過重を想起せしめた!! ああもう僕らは消えることができないと宝塚チックにぬかしたもう彼の霊魂は半分しにかけておったとさめでたしめでたし。
 「マッシーニ! もう離さない!! 君が実は資産家であることなんてちっとも気には留めない!!」
 「キャメロォォォヲヲヲススゥ!!! もおぉずぇったいに身体を離さないわ! 君の号泣をもって判読を不可能とした(中略)あなたが金持ちだ(後略)」
 二人を妨げるものはなにもない! じいさんばあさんの好奇視線など我々の魂がそのシールドとなって反重力光子の障壁を寄越すのだ!!


 二人の抱き合った姿勢は二時間にわたった! キャメロスの背中から血がどばってるとかロザリオだっけかそいつの足がなんだか紫になってるなんてどうでもいいのさ二人の世界は平和そのものなんだからウハハハ! 
 そしてどちらともなくその音は正にハーモニーとなって芸術の中に具有せしめる(中略)によってペルシア湾からの迫撃砲が届いたせいでリビア政府の輸入残高に影響およびたもうた!!
 とにかく、ハモった!

 『金貸して』

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