第16回中高生1000字小説バトル Entry5
「お墓のお供えの花は、コスモスがいいな」
雲一つない晴天の日。
車椅子にのりながら、まなが言った最後の願い――――
「へ?コスモス?なんで」
「あなたから、最初にもらったプレゼント!あの日から、わたし、コスモスが大好きになったのよっ」
そう言ってまなは、花壇にうえてあったコスモスを手でなでた。
「冬とか夏には、無理な注文かもしれないけど・・・・コスモスがいいなあって・・・・・」
僕は、車椅子をおしながら、花壇のコスモスをながめていた。
コスモス―――そういえば、誕生日プレゼントに、あげたことあったっけなあ。
「いいけど・・・・まなは、そんなにすぐには死なないだろ!あと二十年も三十年も先も、お前その約束覚えとけよ」
「・・・・うん」
まなの、嬉しそうな、でもどこか寂しげな声がかえってきた。
そうだ、こんなの嘘なんだ。二十年も三十年もなんて。
僕は知ってる。きっとまなも気づいてたはずだ。
まなの命は、秋しか咲かないコスモスのように、儚いと―――
ちょうど一年前の、秋のことだった。
『お墓のお供えの花は、コスモスがいいな』
僕のにぎったコスモスの花束から、そんな声がこぼれているような気がした。
石の階段をあがる。
かなり急で、バランスを崩そうものなら、すぐに落ちてしまいそうなくらいだ。
あまり丁寧に手入れされていないのか、雑草がはえほうだいで、うずもれて見えない石まである。
それでも、きちんと手入れされている所もあるし、そうでない所も。
「ここだ・・・・」
僕は、お墓の前へしゃがんだ。
前においておいたコスモスは、もう半分枯れている。
ま、何週間もこのままだったしな。当然といえば、当然か。
古くなったコスモスを出して、水をかえた。
そして、今日持ってきた新しいコスモスをいれた。
風にゆれて、コスモスがゆれる。花弁が、数枚ヒラヒラと舞い落ちて、僕の目の前を風にゆられて飛んでいった。
「元気にしてるか、まな。コスモス、きれいだろ?」
手をあわせて、僕はつぶやいた。
そして空を見上げた。あの時と同じ、雲一つない晴天。
線香の煙が、けむたい。僕は、石段を下りて、家路につこうとした。
そして、もう一度、空を見た。
「そっちも晴れてるか?まな――――」
コスモスは、まだ風にゆれていた。