第1回中高生3000字小説バトル
Entry5
最近ネコ科人種領は慌ただしい。出産ピークらしい。おれも一年 前はああだったのかなあ。ネコ科人種はヒト科と違って子供がわん さか生まれる時期がある。なーんてどうでもいいか。 おれは地上に一人で遊びに出かけることにした。一週間ぐらい前に 母ちゃんと買い物で地上に降りた時に供ができた。 昔はネコ科の奴は手と足を使って4本で歩いてたんだって。母ちゃ んと父ちゃんがいってた。その上ヒト科の奴らに飼育されていたら しい。ばあちゃんは飼育じゃない、奴隷にされてたんだって今でも 訴えてるけど・・・・・・。今じゃ2本の足で歩くしネコ科はネコ 科でちゃんと生活してる。ちょっと耳がヒト科と違うけどな。 「ミウ、何処へ? 」 「うん? 地上に降りるの」 「そ、気をつけなさいよ、ヒトばっかりなんだから」 「うん」 母ちゃんはなんであんなに心配しょうなんだ。おれ、もう1歳なん だぞ。ぴょんっと枝を伝いながら最後は一回転して地面に着地する。 と、目の前にピンクのスカートがあった。沿う様に上を見上げると 顔が現れた。 「よっ、ネコ科グレー」 おれは供に挨拶をした。 「おっす、ミウ」 ネコ科グレーは笑ってお巡りさんみたいな敬礼を返してきた。 「にゃあにゃあ、ネコ科グレーよぉ・・・・・・」 「ねえ、その呼び方なんとかならない」 おれの耳をネコ科グレーがひっぱる。 「じゃあ、名乗れ」 「イヤ」 「だったらネコ科グレーだな、やっぱり」 「違う呼び方とか・・・・・・」 「ない」 「あっそ」 ネコ科グレーは頭を掻いた。こいつ、なぜか何を聞いてもまともに 答えてくれない。名前もそうだけど住んでるとことかもいわない。 何科人種か、もだぞ。聞いたら『さあ、何科だろうねー』って笑う んだ。でもおれ知ってる。ネコ科グレーはおれと一緒のネコ科だっ てこと。いっつも被ってる帽子のせいでネコ科特有の耳は見えない けど帽子から出た長いグレーの髪はつやつやでめちゃくちゃ綺麗な んだ。これって、絶対ネコ科だよ。こんな綺麗な髪ヒト科にはいな いよ。他の科にもちょっと当てはまらない。 「今日さ、海行かない? 」 ネコ科グレーが正面を指差していう。草だらけのここからはよくは 見えない。 「んん・・・・・・? うわぁぁ!? 」 急に体が宙に浮いて目の前に青い水が見えた。 「ほーら、みえる? ちびミウくん」 ネコ科グレーの仕業だった。おれのお腹にネコ科グレーの腕がぴっ たりついていた。ようするに抱っこされていた。はあ、こんなとき ご先祖さまが羨ましい。ばあちゃんがいうには昔のネコ科は鋭い爪 が生えてて悪いやつらをやっつけたらしい。ネコ科グレーは悪い奴 じゃないけどこういう時はやっつけたい。 「もう、そんな目でみないでよ。ミウが見えなさそうだったから親 切でやっただけじゃない。決して悪意はないわ」 「・・・・・・うそつけ。じゃあ、なんだよその吹き出しそうな 顔は! 」 「失礼ねえ、乙女の顔をそんなふうにいうだなんて」 「ほう、お前は乙女だったのか。こりゃ、初耳だ」 「服見ればわかるでしょ! 」 「だって、お前口悪いもん。おれはてっきりそういう趣味の奴かと ・・・・・・」 「あの海に沈めちゃうわよ」 そういってネコ科グレーが突然おれの体を揺らしはじめた。まだ ずっと歩かないといけない海にここから落とされるわけはないと 思ってはいてもこの宙ぶらりんの態勢は気分が悪い。なんたって足 が地面についてないんだから。 「許して」 素直におれは謝ってやった。ついでに気になってたことも聞いてみ る。 「でも、な〜んで海行くの? 」 「・・・・・・。ついてから教えてあげるよ」 「ふーん」 ネコ科グレーの内緒はいつものことだから気にしなかったけどちょ っとだけ淋しそうな顔をしたのは気になった。珍しい。雨でも降ら なきゃいいけど。 海は風がビュービュー吹いてた。頭の上の耳の毛が逆立っちまう。 「にゃあ。ここで何して遊ぶの」 「遊ぶ前にさ、ちょっと付き合ってよ」 「何に? 」 「いいから、ほら。来い」 手を引っ張られて、言うがままに砂浜の真ん中ぐらいに連れて来ら れた。何もないこんなとこで何すんの? 「ほら、手をあわせて。お願いよ」 「う、うん・・・・・・」 訳もわからずおれは手をあわせた。ネコ科グレーの小さな声が聞こ えた。 「純也、今日はね、姉ちゃんの友達連れてきたの。ミウっていうの」 「? 」 周りには誰もいない。おれとネコ科グレーだけ。一体誰に話しかけ てるんだろう? じゅんや? 「あんたにそっくりでさぁ。すっごく、かわいくって仕方ないの。 純也が今もここにいるみたいで・・・・・・」 「にゃ!? どうしたんだよぉ。おれ、なんか悪いことしたのか!? 」 ネコ科グレーが突然泣き出してしまった。訳がわからないけどこん なの初めてだ。ネコ科グレーはいっつも笑ってて、意地悪いけど性 格はよくって・・・・・・。だけど、今のネコ科グレーは。 「ご、ごめん。別にさ、ミウは悪くないの。ちょっと、弟のこと思 い出しちゃって。あのね、私の弟、二ヶ月前に友達の船で釣り行っ たっきり帰って来なかったの・・・・・・」 びっくりしておれは聞き返した。 「・・・・・・死んだの? 」 ネコ科グレーは涙を拭きながら首を横にふった。 「わかんないのよ。でも、きっと・・・・・・」 「なんでだよぉぉ!わかんないのにさ、どうして諦めちまうわけ? どこかで生きてるかもしんないじゃん。おれ、ネコ科グレーっても っと、もっと・・・・・・」 なんでかおれまで泣けてきて何いってんのかわかんなくなっちゃっ た。細い腕がおれの体に巻き付いてぎゅっ、てした。 「・・・・・・そうだよね。お姉ちゃんのわたしがこれじゃあ駄目 だよね」 「そうだそうだ! お前姉ちゃんだろ」 「うん! 」 ネコ科グレーはウサギ科のやつみたいに目が赤かった。でも、ちゃ んと笑ってた。 さんざん遊んで家に帰ろうとしたとき、おれはさらにびっくりす ることになった。一発強い風が吹いてネコ科グレーの帽子が吹っ飛 んだ。 「あああああ! 」 「な、なに!? 」 おれは思わず叫んだ。ない!? ネコ科グレーの頭に耳がない! 「おいっ! お前耳どこいったの」 「みみぃ? あるじゃないここに」 た、確かにネコ科グレーの耳は顔の横についてた。と、いうこと は・・・・・・。 「まさか、お前ヒト科!? 」 「うん、そうだけど」 「そんなぁ! じゃあ、その綺麗なネコ科みたいな髪の毛はなんだ よ! 」 「髪? ああ、これ毛染め剤よ。今ヒト科で流行ってるネコ科色な の」 言葉がでない。こいつネコ科じゃねーのか!? 「ま、ネコ科だろうが、ヒト科だろうがいいじゃない。仲良しには 変りないでしょ」 「う、うん・・・・・・」 頷いたけどこれってちっとも良くない。 来年の花嫁どうしよう・・・・・・。 おれ、ネコ科グレーと結婚しようと思ってたのに!
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