| エントリ1 冒険者へ 篠崎かんな
この世界には勇者の物語がある。
クロロは勇者に憧れていた。
いつか自分も勇者になり、この世界を魔王の手から救うのだ、と思っていた。
ある日、クロロの前に見慣れない男が現れた。
「やっと見付けた。君は選ばれし者だよ。」
男は端的にそう言った。
「じゃ、僕は勇者になれるの。」
すると男は鼻で笑って言った。
「この平和になった世界で誰を倒すと言うんだい?」
「それは魔王を……」
「その魔王に君はなるんだ。君が世界を支配し、人々が苦痛に嘆き苦しんだころ、勇者が現れる。今度はどんな物語が生まれるかな。」
「あなた、いったい……」
「神の使者だ……。刺激の無い、つまらないこの世界を面白くするためのね。」
男は手のひらから青白い光を放ち、その光はクロロの体を異様な姿へと変えた。
「嫌だ……。」
心の中で叫んだが、それは言葉にならず、クロロは世界を支配するために暴れ始めた。
「……と、言う訳だ。」
最後の力を振り絞って、やっと話終えた。
「そんなの信じられる訳無いだろ。」
目の前の男は、吐き捨てるように言った。
「命乞いなら、もっと泣ける話を用意するんだな。」
にぶく光る刃がクロロを貫いた。
勇者は魔王クロロを倒した……世界に平和が訪れた……。
エントリ2 ワダ 歌羽深空
ワダを飼っている。
ワダは世話が大変な生き物だ。何より、寒さに弱い。
隣の家のワダは、とても主人になついている。
うちのは、まあなかなかと言ったところかな。
「はやく、太れよ。」
声をかけてやる。
ワダには、言葉が通じない。
まあ、ペットだからしょうがないだろうけども。
何時頃からか、ワダを飼うのがこの世界の常識になっていて。
俺も半ば流行にのせられて飼った形になったが。
別に後悔はしていない。結構、面白い。
早く大きくなれ。
ある日、ワダが逃げ出した。ワダを探した。ご主人ですから。・・・なんて。
ワダは山にいた。
何をしようかと思ったのかもわからなかったが、所詮ペットだ。
下らない事でも考えていたんだろう。はは。
次の週、隣の家のワダは夕ご飯のメインを飾った。
俺も、御呼ばれしてそれを頂いた。
さすが、高級といわれる肉と、隣の家族は絶賛していたが、
俺にはただの脂と骨と皮にしか見えなかった。
初めて食べた肉の味は、少し苦かった。
家に帰り、ワダを見つめる。
お前もいつか食われる日が来るのか、とため息をついた。
”輪(環)から落(堕)ちた”愚かな・・・人間さん。
ワダが、目から水をこぼした。俺は、カァと鳴いた。
嗚呼、素敵な雑食生活。
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