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第24回中高生500字小説バトル


エントリ 作品 作者 文字数
01金木犀千希500
02 マザコン男の戯言 500
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エントリ01  金木犀     千希


甘い香りが 流れていました。
甘く切ない 秋の匂い。
去ってしまったあの子とか。
壊れてしまった気持ちとか。
そんなものもいっしょに流れる、
静かな静かな曇り空。
金木犀の花香る、
静かな静かな秋の日でした。
雲が割れ、ふと夕暮れに染まる空。
熟れたみかんの、色でした。
並んで歩いたこの道を、
鮮やかに照らす、色でした。

 あの人と通ったこの道に
 金木犀が咲いていた。
 あの人と通ったその時は
 まだ葉ばかりの小さな木。
 でももう今は、花付けて。
 あの時あの木と違う顔。
 僅かな僅かな、時間が過ぎて。
 それでも確かに、季節は巡り。
 たくさんたくさん、変わってしまった。

もう2人、共に歩むことはないでしょう。
2人の道は、分かれ離れてしまいました。

 あの頃と、私は変わった。
 立ち止まる事は出来なくて。
 振り向く事も出来なくて。
 あなたも変わって、しまったの?

もうこの手に、あなたの温もりは戻らない。

 それすらも分からない 
 あなたはもういないから。


わかってる。
それでもひとつ、心残りは、甘い金木犀のその香り。
それが私だけについてしまうこと、
そのことだけで。

静かな静かな秋の日の。
静かな静かな金木犀。
その木の見ていた、
2人の涙。





エントリ02  マザコン男の戯言     音


 人間が子供を作り生むのは種族繁栄の本能の所為でも浅ましき性欲の所為でもない。輪廻を繰り返す為だ。『姦淫は罪である』。故に我々は生まれる前から罪人なのだ。罪人は罪を犯し罪人を作る。「あんたなんて生むんじゃなかった」そんな科白はもう聴き飽きた。御涙頂戴の三流映画で幾度使われたと思っているのか。なァ、マイマザァ。御前も所詮罪人の仔として罪を犯した身だろうに、何故に今更この俺を三流映画の主人公に仕立て上げようとするのだ? 「あたしだって、望まれて生まれてきたんじゃない。あたしは愛人の仔よ」もう良いさ、そんな三流映画。自分一人が不幸だと思うなよ、マイマザァ。白魚のような手にはがっかりだ。せめて白魚は自らの躯を赤く染め上げるべきだったのだよ。どんな自慰よりも性交よりも躯中が悦びに満ち溢れ焼き切れそうな温度で全身が包まれる快感の中、背筋を蟲が這い脳の中に悪寒が走る、素晴らしき痛みで。マイマザァ、僕は貴女を愛しているからその刹那的な極上の感覚を味わわせてやろう。何、痛くはないさ。瞳を閉じている間で良い。あとは僕が――――――――――……そしてもう母は動かない。玄関の扉が開いた。
 あとは、男の叫び声。