第25回体感バトル詩人部門

※お詫び:赤虎 流歌さん『カラー −Color−』を追加しました(2004/9/9)。
この作品は詩人部門あての投稿でしたが、
当方のミスにより小説部門に掲載されておりました。
申し訳ございませんでした。

エントリ作品作者文字数
1mind the inside嘉手納・璃魅152
2(文字化けのため掲載できません。ご連絡ください)ねぶた58
3騎士小鴨真帆164
4心の空森田まみ288
5お月見ファンクラブ.シルバー242
6さがす李衣105
7腕時計日生藍香124
8黄金の馬車駱 大二郎652
9「いきる」ということ藤原 佳子182
10悪夢諏訪115
11夕刻の鬱椿485
12真っ白;pure whiteBlue Lily133
13冬の向日葵高坂しえ464
14結末利盟110
15stand upkaco145
16嘘の重ね塗りひばな50
17波音忠 美希生287
18去る者追わず泉 利緒133
19うらはら紅粉チコ49
20生きるものには幸せをあおぞら、世界に。1520
21兎の穴に落ちる zumi80
22身もだえる欲望犬木 ヨリ256
23さくら、兄さん元気だよ。492
24空の青さの秘密木下 健悟34
25花火山中臣基353
26自分的意見如月ワダイ640
27マイコメディアン長沢夕162
28あらしのあと日出野テルミ218
29血の音空蝉22
30喧嘩の電気無し藤 八臓313
31カラー −Color−赤虎 流歌(あかとら るか) 557
 
 
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エントリ1  mind the inside     嘉手納・璃魅


僕はいつまでもいたい
君の心の中に

いつまでも
いつまでも

人の記憶はどんどん薄れてゆくけど
君との記憶だけは色鮮やかだ

君とであった日のことをおぼえている?

ピンクの花びらが舞う木の下
笑う君の笑顔はその色に負けないくらい

綺麗だった

そんな君のそばにいたかったけど
もう時間見たいだ

どうか

せめて

君の心の中に
いさせてください






エントリ3  騎士     小鴨真帆


守り抜くのが彼の役目

剣を振るう戦場の中
血の雨が体を濡らしても
大切なモノを守るために命を賭す

たった一人の主君のために

甲冑の奥の瞳は こう語る
「大丈夫です」


盾をかざす日常の中
矢の雨が体を射抜いても
大切なモノを守るために嘘を吐く

甲冑の奥の瞳は こう語る
「大丈夫です」

たった一人の姫君のために


大切なモノに命をかける騎士

守り抜くのが彼の役目





エントリ4  心の空     森田まみ




 辛い時は
空を見るんだよって
だれかに言われた
見てると心も大きくなるんだって
そう言われた

空をあおいでみる
空を見たくなったのは
私は辛いんだろうか
空は
泣いていた
雨は降っていないけれど
声をあげて
泣いていたんだ

私は泣いていないのに
空は泣いている
どうしてだろう

そんな空を見てると
なんだか悲しくなって
一緒に泣いた
私も
空と一緒に
声をあげて泣いたんだ

たくさん泣いたあと
もう一度空をあおいだ
空は赤く染まっている
まるで泣きはらした後の
私の瞳のようだね

私は
いつのまにか
泣き疲れて眠っていた
起きてみると
空も
泣き疲れて眠っていたよ

その空には
綺麗な光が輝いでいた
私の心にも
明るい光が
輝き始めてきたかな・・・



※作者付記: うつ病のまみが書いた詩です。毎日戦っています。






エントリ5  お月見ファンクラブ.     シルバー


街中の
商店街から商店街へと渡る為の横断歩道の前で
綺麗な満月の月を見つけました
僕はついつい見入ってしまいました

僕の隣に居たギャル系の娘が
不思議そうに僕を見ています
そして
僕の視線に習って夜空を見上げた途端に
その娘は満月を目にして「わぁ・・」と歓声をあげました

それがなんだか妙に嬉しくて
僕らはずっと月を眺めていました
でも信号はすぐに青くなってしまって
僕らは急かされるように別れてしまいましたけど

きっとあの娘は
これからだんだん月見にハマっていくことでしょう


お月見ファンクラブ、常時会員募集中.







エントリ6  さがす     李衣


  「探す」

欲しいモノを「探す」

  「捜す」

見えなくなったモノを「捜す」


私達は、食べ物を探す 迷子を捜す

職を探す 犯人を捜す

本を探す 友達を捜す
Dを探す 犬を捜す

なら、真実っていうモノは

 「探す」? 「捜す」?






エントリ7  腕時計     日生藍香


腕についてる羅針盤
羅針盤の上2つの針

私に現実見せつけて
私を縛り付けてるの

毎日同じリズムで
毎日同じ動きで
毎日毎日毎日同じで

針が止まって気付いてみたら
針に振り回されてた過去が
あまりにも薄っぺらいことに気付く

腕についてる羅針盤
今日ははずして出かけよう






エントリ8  黄金の馬車     駱 大二郎


バスコの黄昏を行く金色の馬車を
薄汚れた四頭の驢馬が曳いている。
口に泡の涎を垂らし、充血しきった目で
固い石畳の街に 馬車を曳く。

賑々しいご婦人方は 朝の鳥のようなお喋りをやめて立ちどまり、
さすがバスコの宝石とも謳われる馬車
西日を浴びた姿は聖なる後光を受けているようではございませぬか
付き従われる天使様が見えるようではございませぬか

しかし間もなくご婦人方は眉をひそめ
扇子を、白い手を、ハンカチを口元にあてることだろう。
それにしてもあの驢馬は
ええそぐいませんわね
残念ですわ
まったくですわ
まったくですわ
笑いさんざめき、花のような日傘を揺らして
街のさらに華やかな区画へと歩みだした。

国の内外を問わず
馬が疫病にかかってばたばたと死んでいることはもちろん御存知だ。
しかし、誰一人そこまで意見を差し挟むものはない。
差し挟む言葉はなく、馬車も遠ざかる。

街路樹の枝からこれを見ていた小鳥たちが
次はこちらの番だと語りだすには、
聡明なご婦人方
胸を塞ぐ心配は下僕や羊飼いにまかせ
先週の観劇に 仕立て屋のレースの新作 未亡人とうら若き子爵の逢引を
その身に見合った美しい話題を引き寄せて
遠ざけるべき闇は醜悪な驢馬の背に被せて歩き去る賢明さよ。
献身を 労苦を 四頭のハミの固さを
花と抱えて語るには
小さな体に曳く馬車のよう。

そこで街路樹が干からびた声で口を挟むには、
人語を解する驢馬なら忘れまい
醜悪の意味を忘れまい。
今日のこの日に この馬車に
まこと天の光が宿るなら、
驢馬の背に注ぐ光に他ならぬ。
その輝きは眩しすぎ、
華奢な日傘では用足りぬ。








エントリ9  「いきる」ということ     藤原 佳子


「いただきます」

ゆうげのおかずは
かぼちゃを煮たのときんぴらごぼう
トマトに 辛明太子

ご飯と一緒に明太を口に含んでふと思う
今日はどれだけの命を食らったのだろう
魚の腹をかっさばき
真っ赤な血の中から
たくさんの命が取り出される
一瞬 食欲がうせる

茶碗の目をやると
つややかな色の上の桃色の小さな粒達が
私を誘う

生きる と言うことは残酷で
生きる と言うことはおいしい

「ごちそうさま」







エントリ10  悪夢     諏訪


毎晩悪い夢を見る
キミの夢
ボクがキミを殺してる
何度も何度も殺してる
ボクは赤く染められ
キミも赤く染められ
時が止まる
もう忘れたい
あの出来事を忘れて平穏な生活を送ってみたい
でも忘れることは出来ない
だって君の最期は笑顔だったから







エントリ11  夕刻の鬱     椿


暮れ行く空がどれだけ滲んでも
離れた二人を染めることなく…

遠く霞んだ懐かしい街並みを眺め
過ぎ去った時間の残り香背負う

木漏れ日に隠れて冷たい太陽を
見上げることなく嫌い続けては
戻れはしなかった 甘い夜を見つめ
咲いた涙を止めることもなく…

貴方を抱きしめ 眠れた夜には
いつも違う夢に抱かれて
その腕で抱かれて 眠れた夜には
幸せの夕暮れが二人を見送る時

暮れ行く空にどれだけ願っても
あの時の二人は還ることなく…
街を彩る赤い夕日さえ儚く
離れた二人を染めることなく…

昼と夜の狭間を嫌っては
見つめることなく奪う太陽に
戻れはしなかった 甘い夜を抱いて
咲いた涙も止めはしないから…願い続けてた…

貴方を抱きしめ 眠れた夜には
いつも違う夢に抱かれて
その腕で抱かれて 眠れた夜には
幸せの夕暮れが二人を見送る時

暮れ行く空にどれだけ願っても
あの時の二人は還ることなく…
街を彩る赤い夕日さえ儚く
離れた二人を染めることなく…

掠れる声をどれだけ張り上げ
あの空に届けよと祈っても…
涙に染まる甘い記憶にも届かず
離れた腕だけ虚しく虚空に消え…

もう叶わない夢と思えば
夕刻の鬱に飲まれて
枝垂れる夏の雫に
そっと眠りましょう…






エントリ12  真っ白;pure white     Blue Lily


 透き通るまで…
そう、まっさらになるまで
僕はきっと 色を探してる

見えないんだ
あまりに綺麗すぎて
気づかなくてごめんね
君への優しさの溶けた
愛があって色のない飲み物

そうだったね、天使は
色を持ってる

真っ白

可愛い僕のpure white
色がないんじゃないよ
綺麗すぎて

…見えなかっただけだ


※作者付記: 初めて書きます。白って、色になる時と、そうは見えないときがありますよね。きっとこの詩だけではよく意味が分からないと思います。けれどダイレクトに言葉を感じて欲しいです。時間をかけて選び抜いた言葉なので、何かを感じてくれる人がいれば嬉しいです。





エントリ13  冬の向日葵     高坂しえ


僕は今、道を探している。
君に会うための道、
だけどそれは遠い、遥か彼方に。

羊の群れが道を遮る、
時には険しい丘が待ち伏せて、
丘を越えると見た事もない風景が、
そうして僕が進む道を、
全てが遮っていった。

君の通った道の後には
素敵な花が咲き乱れ、
風は暖かく、
冬の向日葵が咲いていた。

そして広い大きな緩やかな川に流れ着くと、
向こう岸に君が、居た。
それはとても眩しくて、穏やかな、
空気に包まれて。

雪が降ってきた。
冷たく、凍える吹雪が襲った。
それでも君は、
暖かな空気に包まれて、
そっとそこに佇んでいた。

僕は川を渡るために小さな舟を漕いだ。
でも舟は、一向に向こう岸には辿り着かずに
ただ流されるばかりで、
君から遠ざかるばかりだった。

僕は舟から川に飛び込み、魚になった。
銀色の魚。
そして、君の居る岸に辿りついた。

だけど君は、もうそこには居なかった。
小さな冬の向日葵を残して、
君は消えた。

僕は、そのまま川に戻り、
いつまでもそこで泳いでいた。
君の面影だけを記憶に残して。



※作者付記: ばいばい





エントリ14  結末     利盟


一つの結末に怯えて 夢中で走ってた
未来を追い越せるくらい走って 
走り続けてみたけど

けど 走りつかれて動けなくなるうちに
過ぎたはずの未来に追い抜かされて
自分一人 
また 取り残された
また 未来が遠く霞んだ

結末は予想通りだった






エントリ15  stand up     kaco


髪を切った。

まぁ、何かとイロイロあって。

鏡の前で、どんどん姿の変わっていく私を眺めながら、二時間。

何度も涙をがまんした。

不器用なステップで人ゴミを縫う繁華街。

ふと大きなショウ・ウィンドウに目を奪われて、立ち止まる。

いつもと同じワンピースが、全く見違えて映った。

なんだか、背筋がシャンとする朝。










エントリ16  嘘の重ね塗り     ひばな


心配していないのに

大丈夫だよと 優しく言われ

それなりに うなずいて

嘘の重ね塗り。

意外に 奇麗で

見とれた





エントリ17  波音     忠 美希生


僕の背中にそっと触れる君の手、冷ややかな感触が何よりの証
けれど僕はもう、その手を握り返すことができない
固まるこの背中、僕は必死に耐えようとする
君を永く感じていたいと強く願う

思い返せば、この心を許したのは君が初めてだった
君は躊躇せず、真っ直ぐに僕を見つめてくれた
僕は照れてうつむいたままだった

寸前に、僕は君に繰り返し訊ねたけれど
君は迷わずに、はにかんで最期のくちづけを交わした

船底でただ波の当たる音がする

どうやら君はもうまぶたを閉じたようだ
僕もすぐに眠るよ、だってもうこんなに眠たいんだ

けれどもう少し、君を永く感じていたい
まだ、まだ眠りたくない……

遠くで、静かに波音が聞こえる









エントリ18  去る者追わず     泉 利緒


傷付いた。かもしれないが
傷付いた。とは思いたく無い訳で

穏便な別れなど期待しちゃいなかったが
修羅場になる訳でもなく
結局、自然消滅

そんな別れを繰り返す僕の言葉を
呆れもせずに聞く君は
この瞬間だけ僕より大人

去る者を追わず
有る者と語る

いつか変わる時が来ても
今、この時をお大事に






エントリ19  うらはら     紅粉チコ


僕は君の不幸を希った…

そして君のしあわせを心から願う

愛してなんてくれなくていい…

ただ僕を忘れないで






エントリ20  生きるものには幸せを     あおぞら、世界に。


おそらく誰かがこれを読む時は、私はもう生を失っていることだろう。
生を全うできなかったわけではないと思う。ただ、思い残したことはたくさんあったに違いない。
その思いが変わったなら、今のうちに改文しているだろう・・・

こうなるまでにはたくさん思うことはあった。 きっと思うことがありすぎて、煮詰まってしまったのだろう。

「弱い人間だ・・・こんなことをしたって、何の解決にもならないのに。」
あなたはそう考える?
そう、その、あなたのその思いが私を煮詰めていたのかもしれない。
私ではない、今生きている誰かをも苦しめているかもしれない。
どうして弱いと思う?どうして、ダメ人間と決められなければならないので?

私も、あなたと同じ人間だった。
愛する人もいた。
できればもっと、その人と同じせかいにいたかった。会おうとおもえばあえる距離でありたかった。
でも、その想いよりもさらに強く、このせかいに居たくない思いがあったことが悲しい。
そんな思いがなければもっと、あの人と一緒にいられたかもしれないと思うと、本当に悲しい。
あなたに愛する人は? 
愛する人と永遠に離れ離れになることがどんなに淋しいことか、想像したことは?

私だって、「生きていればもっといろんなことができる」と思う。
でもそう強く思っていても、自らを消したい気持ちのほうがより強かったのだろう。
何度も、自分を消したいと思ったことはある。でも、これまでは「それでも、もう少し生きてみよう」
という気持ちが強かった。だから今まで生きてきた。


生前、住民票のことでもめていたことがあった。
家族、ある市役所の福祉課、調布市役所の子育て推進課、そして私。
家族は文句を言いつつも、なんだかんだ言って本当によくしてくれた。
お役所の方々は昔から態度が悪いという先入観と実績(?!)があったけれど、その当時のある市の福祉課の方は本当に
丁寧で親身になって一生懸命だった。申し訳ないと、本当に思った。
その一生懸命な方たちの努力と好意を踏みにじったのは調布市役所の子育て推進課の人間。
今から言う人間がどんなに弁明しようと、決して信用しないで頂きたい。冷たい心と石のような頭は、人の心などはわからないだろう。
どんなに意見を訴えても、状況を説明しても、何も聞き入れてはくれなかった。聞き入れようという気持ちすら見えなかった。
見えたのは、私が帰ったと思ったのか私の姿が消えてからケラケラ笑う二人の姿。平成16年度の保育園担当の男性と育児手当て
などの助成金系担当の女性。
私がその場を離れて姿が見えなくなってからすぐ、二人で首を傾げてはケラケラ笑うその姿は私にとって、どんなに屈辱的だったことか。
そして別の件で役所に行った時にその女性は私に、心無い言葉をかけた。胃がはり裂けるような思いだった。
その時、その女性の前で常薬をためこんで一気に飲んでやりたいと思った。
私がこんな状況に陥ったのも、その2人の影響である。

こんなことをするのは自分勝手だと思われるだろう。
でも、もうここにいるのは耐えられない。

ここはすばらしい世界だとは思う。
どうしてそのすばらしさを堪能できなかったのか・・・
後悔とは、してみないとわからない。
でも、私はおそらく後悔である道をゆくことにする。

人生は自分のものとはいえ、勝手ばかりで申し訳ない。
涙なんかいらない。 泣かなくていい。
ただ、愛する人や生きた姿を見ていた人たちに
この気持ちを感じてほしかっただけのことで。

もうこんな思いをする人間がいてはいけない。
産まれたならば、幸せでいなくてはいけない。
決まりごとは好きではないけれど、
幸せでいて、笑顔でいて、何が悪いか。

今在る生命体、これから産まれてくる命あるもの全てが幸せにあるように




※作者付記: 普通の文章に思える長さ、具体的さですが、多くの方に知って欲しい。
読んで欲しい。最後のほうの詩は、日本人だけでなく世界の人々にその気持ちをわかってほしい。切にそう願っています。不幸にするようなことは当然だけれど、「生きて!」なんて無責任な言葉は、決して言ってはいけない。






エントリ21  兎の穴に落ちる      zumi


いつのまにか
戻れない
ずれ始めた時間軸

すべて夢だったらいいのに
暗い淵を知らずに
太陽の下ですこやかにいられればよかったのに

あまりにも非現実的すぎて
感覚すら忘れてる






エントリ22  身もだえる欲望     犬木 ヨリ


あなたと文通をしてみたい
電子メールという便利で硬質なものでなく
わざわざ封筒やら何やらを買う手間をとらせて
手紙が届くのをじれったく待ってみたい
あなたの字を見てみたい
私の字を見てほしい
何色の封筒が届くだろうか
何色の便箋を使おうか

もしこの願いが叶うならそれは三ヵ月だけがいい
親にさえ言えない悩みを打ち明けたり
親身になって相談を受けたり
私にさえ捉えきれない私を
顔も見ずにあなたへ曝け出してしまいたい
そして
2年経った頃にはそのことを思い出して
私は死にたくなるような恥じらいで頬を焦がすだろう

ああ
私はあなたと文通をしてみたい






エントリ23       さくら、兄さん元気だよ。


親愛なる陪審員の皆様

一羽の鵜として生を受け
鵜匠にお仕えすることは、誉の至り
不服は何も無いのです

ただ、満月の夜に飛んだだけのこと

篝火の下で鮎を喰らう
喰らいながら飢える
飢えては鮎を喰らい
鵜匠に媚びて飢えを凌ぐ

何故、慣例に違(たが)うことを懼れるのか

原告は、飼い鵜に反体制思想が流布した状況証拠を提出する
「昭和36年、喜劇王チャップリン、長良川に鵜飼を鑑賞す」
翌朝、日鶏紙が公判を報道する
「公判は、鳥の基本権にかかる法解釈が争点となった」

飼い鵜は飛ばないとする通説
飼い鵜は飛べないとする有力説
飼い鵜は鳥ではないとする少数説


善良なる陪審員の皆様
衆愚主義(Democracy)と暴力の庇護を受けた正義は
無知なる裁きの免罪符とならないこと、ご存知でしょうか

鵜匠が手縄を捌く
捌く毎に、グルル
鵜は嗚咽する
嗚咽する毎に、鮎を吐く

終に、家禽は飛ばないとする先例が下り、大衆は安堵の息を漏らす

敬愛する陪審員の皆様
デモクラシーが自由を粛清した、この日
わたしの血を捧げましょう

いえ、そんな大袈裟なことではないのです
一羽の飼い鵜が処分された

ただそれだけのこと

鷽日報の小さなコラムに記す
「鵜が鵜であることを裁くことの愚かさ」






エントリ24  空の青さの秘密     木下 健悟


空の青さは渇いた喉をみたさない
 ただ 渇いた僕らのため
空の青さの秘密


※作者付記: 海は魚の涙からできているって 今でも思ってる






エントリ25  花火     山中臣基


 花火が消えた 命も消えた
 あの花は火の如く 儚く散った



 今年もまた火が花の如く咲き誇る季節が終わった



 天空の魔術師が人々を惑わし
 大地をおろそかにしている間に行われる儀式

 今年もまた世界のどこかで行われた

 天空に花開く時、数多の命が消える時
 大地の鼓動が昂ぶる瞬間
 ダレも聴いた事のない声が唸る、その時
 声は爆発音に消え人々に届く事はない

 一体いくつもの命が天へと昇っていったのだろう
 まるで魂を見舞うかのように
 まるで魂を祝福する如く
 火は花開く

 いつか見たアノ花火
 婆さんが死んだアノ日
 火に消えた
 婆さんの声は聴こえず
 巨大な音に飲み込まれて逝った

 ありがとう

 嫌われ者の婆さんを向かいに来てくれて

 ありがとう

 最後まで応援してくれて
 
 ありがとう

 花まで添えてくれて



 婆さん…元気でな





 ありがとう






エントリ26  自分的意見     如月ワダイ


人生には波がある。
いつもいつも、
弱い所を見つけると、
ひつこいぐらいに突っつかれ、
試されるんだ。

これでもか、
これでもか……と。
何度も同じことが起きたり、
一つのことで何処までも深い所まで落ちていったり、
それは場合によるけど、
ほんとイジメの天才だと思う。

だから私は、
悪いことが起きると、
目をそむけ、
自分の世界に入り、
外界をシャットアウトしていた。
そしてそれは、
何時の間にか記憶の中から完全に消され、
また平凡な日常に溶け込めた。

だから過去の記憶は少ない。

そう、
それで良いと思っていた。
何度も繰り返しやってくるけれど、
それは永遠じゃない。
長い人生の中の一時に過ぎないから。

だけど、
今はそれじゃいけないと思い始めた。
悪いことは悪いまま記憶に残す。
人はそれに何の意味があるというけれど、
私はそれが凄く大事なような気がしている。

強くなりたいと願うようになった今、
全てを受け止めようと思った。
まだかろうじて私を試してくれるモノがいる。
試されていることの幸せを感じながら、
イバラだろうが、
何だろうが突き進んでいこうと思う。
自分で選んだものも、
他からの影響できたものも関係なく。

もう先が長くないと思う今日この頃。
強くなることを望み、
いつまで闘えるだろうか?

辿り着く所が何処であっても、
最後まで笑っていられるように……。

だから待っていて欲しい。
ずっと先にいる貴方。
立ち止まる必要はないけれど、
手を差し伸べる必要もないけれど、
後ろからずっと歩いていっている私を、
感じていて欲しい。

それが最大の私のワガママ。






エントリ27  マイコメディアン     長沢夕


「彼女はエプロンの似合う子がいい」

ヒヤリとする
冷や汗
嫌な緊張

通りすがりに偶然聞いた
メールでケンカしてからずっと
話していない彼のひとこと

私は知っている

ちょっと前まで仲良かったし
好きだったから

そのときはショックだったり
ガッカリしたけど

そのあとそこに偉大な魅力を感じたりしたけど

あの人には敵わないわ

秋の空、マザーコンプレックスの彼





エントリ28  あらしのあと     日出野テルミ


わたしの中にうずまく
わだかまりのふきだまり
そんなものひと吹きで
かなたまで飛ばしてやる と
がむしゃらな風が行く
ジャラリラリラ
送電線の六弦 かき鳴らして

からまわりのひるさがり
わたしのかみは
かみひこうきになって
紅い羽ふるふる
ちぎれそうに舞いあがる
ららりらりら
ふきあれる音に巻かれて

風の名残に
さらわれたのでしょう
うずまきは とうに
吹流しになって
きえました

少し身軽になったので
あたらしいほほえみひとつ
まっさらな歌うたいながら
あなたに会いにいきます






エントリ29  血の音     空蝉


台風の夜に枕揉んで眠る
大風の音轟々と懐かし






エントリ30  喧嘩の電気無し     藤 八臓


何度か否定されただろうね、僕の金属とそのあいだのジィィという音とついでの糸のほころびと確かめようもない高まりと

おっぴろげた

モルタルとして生きていたような気がしても ナァ、言葉少なめの懺悔だろ
ほら、しゃがみこめよ、なぁ、なぁなぁ

包む

唾液としてしのいできた気がしてたんだ ヘヘ、離さないけどな、嫌わないでくれよ
ほら、深く、誰も追って来れなくなるまで

貫いて

なんか繋がってないような気はしたんだ わかったよ今日は、住むよ、ここに、誰様のお家か、知らないけれど

掃除屋、やってくる時間か? お前、あの壁は、ないだろうあの絵

いくら黒い線で描いても、可愛くなるってもんじゃないんだろ

帰るよもう、こんな扱いされるなら
帰るよもう、裸の体に帽子だけ






エントリ31  カラー −Color−     赤虎 流歌(あかとら るか) 


僕はあのとき浪人してて
鬱々しながらやってきた
Big Apple, TOKYO
海の見えた僕の町

寮はほんとに男だらけで
気がめいるような狭い部屋
カビだらけの洗濯機
「禁煙か。そうか。」とタバコをふかす

君は僕より頭が良くて
にこやかに試験をパスしてた
一足早いキャンパスライフ
「そばにいるよ。」とさわやかに笑う

朝から晩まで詰め込む勉強
寮ではたわいもないエロ話
僕達は今誰でもなかった
何者にもなれやしなかった

束の間の休息
ビバ 土日
上野の美術館
君の横顔

あの味気ない日常の中で
君だけが僕の色つきだった
別れ際祖師谷の商店街
白黒な景色に交じって
鮮やかに

僕は少しだけ泣きたくなった

気まぐれに行った大学で
君を探してふらふらしてみた
「来年こそは僕だって。」
そんな思いで胸熱くして

遠くに見つけた君を見たのに
足がぴたっと動かなくなる
知らない人々 知らない顔たち
目に見えぬ境界線

男としてどうなんだろう
情けない気分にコンプレックス
遠い存在に見える君は
あまりにきれいで涙がでそうだ

シャットアウトされた世界で
そばにいることが辛くって
携帯もメールもやめた
そんなに強い人間じゃあない

乱暴にたたくドア
部屋の前の友人達
「見ろよ」
窓の外には君が

このドロドロした心の中で
君だけが僕の純粋だった
真夜中の寮大脱走
有刺鉄線を乗り越えた時に
僕は

号泣して君を困らせた

そのとき世界がカラーになった



※作者付記: 江國香織さんのおっしゃった「色つき」という表現と、自分の予備校勤務体験からできた詩です。私の勤めていた予備校には地方からくる生徒さんのための予備校がありました。この詩にも実際モデルがいます。鬱々とした思いを抱きながらも、彼らの青春は、熱かった。








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