第26回体感バトル詩人部門


エントリ作品作者文字数
1ささめ雪182
2喧嘩の電気無し藤 八臓313
3もしも教えてくれるなら愁夜169
4君が見ていた千の星.シルバー0
5(欠番)
6言葉小鴨真帆125
7想いRYU68
8異国的なる香り上原勝治279
9世界の傷痕椿327
10my caloryudai71
11道の見つけ方日生藍香46
12うさぎ182
13もうひとりのおれ竹田道哉297
14あたらしい日ひばな283
15スチュワーデス・ケイコたもつ882
16眠り月の虫181
17杞の国の人へノエ113
18空腹キャンディー嘉手納・璃魅改め絢神林檎78
19キット椿316
20惜春長沢夕106
21「実りの秋」阿部陽子116
22桃の汁あお優0
23青いランプやさぐれOL399
24幻灯澪伽0
25言葉94
26ヒーロー駱 大二郎617
27どりーむジョニー344
28すなお渡邉 美咲84
29海がピアしてるさくら、兄さん元気だよ。363
30暗がりの猫の目九つ151
31未完成keiko147
32ナイトクルージング枯葉チッタ141
33日出野テルミ265
34ドロップ・アウトkaco125
35いつかたれぞ紅粉チコ61
36Seventh Heaven粉雪161
37ちいさなはなテリ還し204
38空蝉84
39台風一家急く転婆96
 
 
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エントリ1       ささめ雪


想えば想うほど 愛しい

どうして、こんな気持ちに?

みんな同じ 人間だけれど
たったひとり、そう思えない。
「特別」な気持ち。

出会いきれない、この世の人々のなかで
唯一の存在

でも、鎖で繋いではいけない
籠の中に閉じ込めてはいけない

はばたく姿を、見ていたい


「どうか、私をすてないで」

あの人を想うたび、そう願う。

足枷にはなりたくない。
でも、ついてゆきたい。

私も、羽の一部になりたい






エントリ2  喧嘩の電気無し     藤 八臓


何度か否定されただろうね、僕の金属とそのあいだのジィィという音とついでの糸のほころびと確かめようもない高まりと

おっぴろげた

モルタルとして生きていたような気がしても ナァ、言葉少なめの懺悔だろ
ほら、しゃがみこめよ、なぁ、なぁなぁ

包む

唾液としてしのいできた気がしてたんだ ヘヘ、離さないけどな、嫌わないでくれよ
ほら、深く、誰も追って来れなくなるまで

貫いて

なんか繋がってないような気はしたんだ わかったよ今日は、住むよ、ここに、誰様のお家か、知らないけれど

掃除屋、やってくる時間か? お前、あの壁は、ないだろうあの絵

いくら黒い線で描いても、可愛くなるってもんじゃないんだろ

帰るよもう、こんな扱いされるなら
帰るよもう、裸の体に帽子だけ






エントリ3  もしも教えてくれるなら     愁夜


もしも教えてくれるなら、聞いてみたいことがある


「いつかきっとまた会える」

あの時、君はそう言った
いつかとは、一体いつのことなのか
教えて欲しい


「どこかできっとまた会える」

あの時、君はそう言った
どこかとは、一体どこのことなのか
教えて欲しい


「いつかどこかでまた会える」

あの時、君はそう言った

いつかどこかで・・・

それは確かな約束なのか?

教えて欲しい








エントリ4  君が見ていた千の星.     シルバー


あの時君は

僕には見えなかった沢山の星を

この夜空に見ていました.


こんな汚れた都会の夜空を見て

『今夜も星が綺麗だねぇ』って

ゴキゲンに夜の散歩.


今では僕も少しづつ

星が見えるようになってきました.


もう君は隣には居ないけど.


君が教えてくれた方法で

今夜もまた一つ新しい星を見つけながら

ゴキゲンに夜の散歩.



※作者付記: 毎晩夜の散歩に連れて行ってくれた父親のことを思い浮かべながら唄った詩です。






エントリ6  言葉     小鴨真帆


喋ることのできない黒猫は
危険を主に報せる為に
主の前を横切った

喋ることのできない犬は
寒さに凍える主の為に
主の傍に寄り添った

喋ることのできない鳥は
不安で眠れぬ主の為に
主の横で歌を歌った

喋ることのできる僕達は
誰の為に何ができて
誰の為にこの言葉を紡ぐのだろう





エントリ7  想い     RYU


 五体突き抜け飛び火する

 気持ち先走り四散する

 銀の原っぱ通りすぎ

 目にするものに惑わされ

 黙しても満たされない

 おの我ために飛び出した






エントリ8  異国的なる香り     上原勝治


9月の台風が過ぎた、
初秋の暑い夕暮れ、
両眼を閉じて、
熱の籠もったお前の胸の香りを吸うと、
単調な太陽の火のギラギラ光り、
安楽の世界が、
眼の前に繰り広げられる。 
 
アンリ・ルソーが描くべきの、
珍しい樹木は自然に生い茂り、
味の濃い果実の自然に生る、
無為の島。
島の男の肉体は、筋肉を剥かずに逞しく、
女の瞳は、純粋無垢に、人を打つ。

お前の香りに誘われて、
愛らしい風土に誘われて、
風帰る方を見れば、
港にが満ち溢れた帆や帆柱、
疲れも重く、遥かな波路を凌いで来た。

その時、
緑の椰子の匂いは空にタユタヒ、 
私の鼻孔を膨らませて、
魂の底で香りに絡み取られて、
水夫の唄と縺れあう。








エントリ9  世界の傷痕     椿


声を上げるすべも知らず
ただ傷つけられ それでも命をはぐくむことを止めない
太陽を見つめ、月に魅せられ
青く息づいて 生きる世界の傷痕は
大地を蝕む 人が犯す 
生きてる限り続く 原罪の螺旋

道を開き 煙を放つ腐る海
やがてすべてを世界に押し付け
罪人に仕上げる 他の誰かを・・・

悲鳴は聞こえない
光に為りたいと思うこの大地が
罪を欲した人間を
今もまだ受け入れている

定め故のものか
存在理由ゆえのものか

ほらそこに 気づけば一輪の花
ほらそこに 気づけば凛とした風
恵みを育むこの大地に
人類の存在はいかに?

途方もなく長い時間を過ごす孤独な大地
命を産み 命を貰い そして奪われ 蝕まれ
命題のない道が 分かつ先に救われるというの?
世界の終わりは やがて われわれの手で下すのかもしれない






エントリ10  my calor     yudai


自分の好きなGREENを
真っ白なノートの1ページにぬりつぶして
そのページを紙飛行機にして
見えぬ未来へなげてみた
どこまでいくか?
それはまだ未知の世界






エントリ11  道の見つけ方     日生藍香


走って

走って

走って

何も見つからなかったら

歩いてみよう

すると空が見えるから

道も見えるから






エントリ12       うさぎ


学校近くの橋から見上げた空は
青くても黒くてもそれ以外何もなかった
あたしの描いた希望も
吸い込んでくれたのだろうか

手をつなけば迷わなかった とか
一緒にいるだけでよかった とかは
子どもじみた絶対の定義だった

つまらなかった話を理解できるようなった今
遠くを眺めて思い出している途中なの
思えばあたしは素直じゃなかったでしょう?
だって貴方よりも知っていたんだもの
絶対などない事を













エントリ13  もうひとりのおれ     竹田道哉


かつて入院したことがある病院に
ぶらりと入った
今では懐かしい思い出となった病室の
ドアをそっとあけると
ベッドの上にもうひとりのおれがいた

窓の方に身体を向けて
横になってはいたけれど
おまえはおれにちがいない
おまえの輪郭は
窓から差し込む夕陽を浴びて輝いていた

お前の思考が手にとるようにわかる
おまえのからだが
ゆっくりと寝返りを打ち始めたとき
おれは慌ててドアを閉めた

さよなら
今はまだとりあえず
もうひとりのおれよ






エントリ14  あたらしい日     ひばな


それほど仲がよくない中では 一番仲のいい友達と
お茶をし

それほど好きではない中では 一番好きな男と
身体を重ね

それほど嫌いではない 上司の 
嫌いな部分を探し 

自分を許しているつもりで
どこかで怨んでいていて欲しいと 願い

頭の上の林檎の存在を忘れた 人間どもが
平和の名のもとに 殺す理由もなかった他人に
銃口を向け 

今日も札束の為に 腰をくねらせ 乳房をゆする

まるで 淋しさを創造するために 
人が生まれたように

そんなことで この地球は回っている

全てが 水に溶けてしまうような 
薄っぺらい紙のようだと 分かってはいても

あたらしい日には 
それが真実になると信じているから





エントリ15  スチュワーデス・ケイコ     たもつ


スチュワーデスさん、とスチュワーデスに声をかけると
私にはケイコという名前があるんです、とそっぽを向かれる
今度こそ間違いの無いように、ケイコさん、と呼ぶのだが
ケイコは押し黙ってしまう
「ケイコさんの実家は浜松で煎餅屋をやってるの」
彼女が耳元で囁く
何でそんなことを知ってるのだ?
「情報化社会よ」
そう言う彼女はこれから会いに行く俺の両親の職業も知りはしない
俺はただ単に機内サービスのアイスコーヒーが欲しいだけなのに
他の人のトレーにはオレンジジュースばかり並んでいる
「何を頼んでもいいのよ」
彼女がまた耳元で囁く
そういう問題じゃないだろうと思うのだ、俺は
確かにメダルの色は銀より金がいいに決まってる
けれどそれこそが元凶であるということを
俺は嫌というほど知っているつもりだし現に知っているつもりだ
いずれにせよ、ケイコにとってそんなのは重要ではない
鉛筆と紙をよこし、とりあえず好きなことを書いてください、とケイコは言う
俺に書きたいことなどあるものか
「好きなことを書けばいいの」
彼女の忠告どおり俺は今までの半生を書き始める
二十二歳の夏、近所の草むらでの出来事にさしかかったあたりで
「死」という言葉を使わずに書いてください、ケイコが言う
冗談じゃない、ここまできてそれはないだろう
猛烈に抗議をするとケイコは悲しそうな顔でアイスコーヒーを持ってくる
仕方なく死に関連するところを消しゴムで消していく
今まで書いたことのほとんどが消えてしまったし
これから書こうとしていたことのほとんどが書けなくなった
何故俺の周りはこんなにも死人ばかりなのだ
人間ばかりではない
ひよこも出目金もミドリガメもヤモリもイモリも飼犬も飼猫も皆死にやがった
「誰もが皆いつかは死ぬのよ」
そうかもしれぬ
だが、それが俺たちの生きていることの理由になるのなら何だというのだ
「好きよ」
ああ、好きだ、ケイコ、俺はおまえが好きだ
ケイコ、何故俺たちはいつも愛し合うことができないんだ
記憶の中で悲しいのはおまえだけじゃない
他に御用は?というケイコの声が色も無くはみ出している
高度41,000フィートの空
ケイコは最早ケイコの体をなしていない





エントリ16  眠り     月の虫


眠りにつく前、真夜中に想う
君は今何をしているのだろうか
幸せな夢を見ているのだろうか
メールをしたくても、電話をしたくても
僕はその気持ちをそっと抑える
寂しさが胸をしめつけても
僕が君を眠りから呼び戻す事などできない
君が僕のものなら、それもできたかもしれない
だけど君は僕のものじゃない
君の心は他の誰かのものだから
君が僕の隣にいる
そんな夢を見たいと願いながら
今日も僕は眠りにつく






エントリ17  杞の国の人へ     ノエ


空が落ちてくると 泣いていた君へ
不安を分かってもらえれば それで良かったんだろう?
ただ一人でも同じように 泣いてくれる人がいたならば
それで良かったんだろう?

私に勇気があれば 君が望む者になれただろう
君を笑うこともなかっただろう






エントリ18  空腹キャンディー     嘉手納・璃魅改め絢神林檎


少しお腹がすいて
大好きなあめを食べた
でも、胃に流れ込んで来るのは
自分の唾液
決して空腹を癒してはくれない
まるでそれは
会えない人の
写真を見ているようで
悲しかった






エントリ19  キット     椿


かつて、誰もが必死に生きた時代があった。
誰もが、命を賭け、必死に生きたという時代が。
傷つけあうことが、それでしか、生き抜くことのできなかった時代が。

我々は死んでいく、死んでいる。
今、ここに、だ。

何を思う事も、
感じる事も。
それさえなく、生き延びることの、
その甘さに、
溺れ、死んでいる。

これ以上、
我々は落ちないであろう。
そして上がれもせず、
死に行く日を
待つのだろうか?

このままでは
死ねず、

死んでいる我々が
生き返ることも
ないのだ。

ある人は
言う。

「生きてゆく強さを」と

そうだ。
そうなのだ。
我々の内の
その骨の
その血管の内の
深紅の液体の
透き通った内。

その内に
我々は
生きてゆく強さの

「モト」を
もつ。


キット
キット
キット

気づかぬまま

なのだろうけど。



※作者付記: 最近、人の死について考える機会がよくあります。
連日のニュースでの、殺人事件とか、戦争映画とか、色々。
そして、毎日、私と同じ位の十代の子達の日常を客観的に見て、
一生懸命生きている事を隠しているんだなと思うことがよくあります。
必死に生きることが、
かっこ悪い時代なのかな?
って思ってこの作品を書きました。






エントリ20  惜春     長沢夕


「オイ」と呼ばれて「キミ」と呼んだ
名前で呼ぶのにお互い照れた

口が悪くて女子に冷たいから
私はいつも恐れていたのよ

だけどあなたがやさしいと気持ち悪い


BRILLIANT
桜の輝きにあてられて

息ができなかった

麗しく騒がしい春だった








エントリ21  「実りの秋」     阿部陽子


秋が来た、食欲の秋・読書の秋・スポーツの秋。
人によって『秋』と言うやつは姿を変える。
そして私には『実りの秋』としてやって来た・・
ずっと片思いだったあの人に想いが届いた。
そう、恋が『実った秋』
今年の秋はいつまでも忘れられない秋になった






エントリ22  桃の汁     あお優


この暑い日は 九月なのであって
空は薄い水色 樹木の涙が落ちる
「まるで夏のよう」とは、
誰がいうのだろう まるで夏は
遠い日々の ほんの端なのに

ひとかけらの 幸せと 愛と 
そのなかに 私も あなたもいた
けれど それなりに叩いた机の傷が
違和感でもって 異国への憧れを
痛いほどに 伝う 神経から 脳へ

儚い愛に翻弄されて いくのは
慎ましい 我が家
帰り着く場所もそこにある

「まるで夏のよう」
言ったのは私だった 九月
大気に浮いた
それから、塵が積もり
秋の空は
えもいわれぬ 桃の汁







エントリ23  青いランプ     やさぐれOL


うちについたのは午前5時

午後1時に目が覚めた。

化粧落とさなかった顔がぎたぎたしている

枕元には光るはずの青いランプがついていない

昨日の夜は何度もきらきら光った青いランプが

ついちゃいない


目尻にしわを寄せて笑った筈なのに

興奮したとき人を指さすくせがあるのもわかったのに

ポテトのケチャップが指についたら紙を渡してくれたのに

車のドアを閉めた時、無い筈の約束を言った筈なのに

確かに目が恥ずかしそうにしてたのに


だから

朝5時の雲が

朝5時の電線が

逆方向に向うサラリーマンが

私の帰り道の足取りを少し安心させてくれたのに

サンダルのぱたぱた言う音が

気持ち良かったのに




どんよりと灰色の、ランプがつくはずの場所
青く光ってなきゃいけない場所が
灰色の灰色の灰色で、いくらみても灰色
灰色

ひかりゃしないひかりゃしないひかりゃしないひかりゃしないひかりゃしない
ひかりゃしないひかりゃしないひかりゃしないひかりゃしないひかりゃしない









エントリ24  幻灯     澪伽


<幻灯>


冬の海 写真が一枚
やってきた
波に流され やってきた

色褪せ 濡れた語部
手にとって
酒のつまみに話を聞こう
と、思ったわけではないが
捨てることも又、出来ず
懐にそっとしまいこむ

別にどうかしようと
思ったわけではないが
長い海岸沿いの片隅で
歩むのやめて

懐の写真取り出し
私はだらしなく笑いだす

どうしてお前を捨てたのか?

今は人肌恋しや十二月
片隅に残った記憶の断片
チクリと痛む









エントリ25  言葉     杏


ことばを紡ごう

気持ちを織り込んで

ことばを紡ごう

あなたに心を伝えるため



言の葉を送ろう

いろんな色を描いて

言の葉を送ろう

あなたの心を彩るため




すべての人が持っている

あなたにしか使えない

あなたの言葉










エントリ26  ヒーロー     駱 大二郎


 機械じみた音で目が覚める夜は、
他所の星から来た巨大ロボットが
この街をぶっ潰しに来てくれたんじゃないかと
必ず期待しちゃうんだ
 朝が来たらこの辺はどこもさら地になっていて
パチンコ屋のネオンも厳めしいトラックが出入りする基地も
空地に立つ「立ち入り禁止」の看板も有刺鉄線も
地主の蔵もベンツも選挙ポスターも
きれいさっぱりなくなってる。

 見渡す限りまっさらで、
風は土と雑草の匂いがして
残ったのはこの部屋と僕ら二人。
できれば角のうどん屋と店のおばちゃんは残っててくれないかな。
早くて安くて美味くて、
たいやきも売ってるから。
バイクは壊れちゃっても我慢する。
走り過ぎたいものは、みんなないんだし。
ゆっくり歩くのは嫌いじゃない。そう、本当は嫌いじゃないんだ。

外の風が強いから
ついそんな話を君にしてしまい
身悶え無性に後悔していたら
「でもそのロボットは
 この街がいくら汚くても
 先に行くべきところがあるじゃない」
そして四つの国の名前を挙げて
「あんなバカバカしいことを
 すぐにやめさせてもらわなきゃ」

「そりゃごもっとも」とぼくは落語家ばりに膝を打ち
さっそく二つの国宛に
巨大ロボットの『優先使用許可証』を
レポート用紙で作成した。
一番上に国名を
ロボットの名前に少し二人で悩んで
賞状みたいな文句を並べ
最後にとりあえず自分の名前を
三年ぶりに使う筆ペンで書く。
墨は出るけど しかし
書きながらってのは
涙を隠すには、ちとしんどい。
この水はなんだろうなんだろう なんだろう。







エントリ27  どりーむ     ジョニー


君が花なら僕はミツバチ
いつも君に寄り添っているよ
だけど「花が枯れそう」なんて葉っぱが言ったなら
僕は雨雲になってやさしい雨を降らせてあげる
愛を込めて

君が涙なら僕はハンカチ
だから誰かが海みたいに泣き虫だって
ひょうきんなピエロも心温まる慰めもいらない
そばにいるよ 変わらぬ愛で
いつだって君を包んであげる

歌のように二人流れてみようか
旋律を共にする僕と君はまるで音符のように

君が昨日なら僕は今日
太陽と月が握手してバイバイ
僕等は隠れてキスをするんだ
切り取った景色が浮かんだ部屋で
明日のことなんてもうとっくに忘れて

雨上がりに空に咲いた虹がはしゃぐよ
水たまりに映った愛が世界をまるで染めそうなぐらい綺麗だから

星のように二人流れていようか
時の狭間で永遠を見つけて微笑んだ君の隣には僕が
ありったけの愛を抱えて






エントリ28  すなお     渡邉 美咲


人は何を考え、

今私は笑った。ココロの奥で・・・
一つの生命が誕生するたび
一つの気持ちも産まれる

あの人今何を考え、

ウレシイウレシクナイ・・・
タノシイタノシクナイ・・・
何で分かる?いつ分かる?

私のココロは何を考え、






エントリ29  海がピアしてる     さくら、兄さん元気だよ。


真夜中に目覚めてしまった君は
大きな瞳で音を追う

「海がピアしてるよ」

それは闇への恐れでなく
海鳴りへの怯えでなく
母不在の悲しみに気づかぬ振りをする
君の精一杯の勇気なのだ

甘えた君は母の腹の上で寝るのが好きだった
「パパのおなかで寝たい」とせがむ
その言葉は 
けれどもそれは僕の空しさを癒すために
君が命と引き換えに天から授かった知恵

暗黒に浮かぶ波頭は二度とは同じに崩れない

おやつにしまっておいたプチダノンを一つと
冷蔵庫の明かりを頼りに探し当てた大小ちぐはぐの匙を二つ
君は 小さな匙を君の口へ
大きな匙を僕の口へ 何度も交互に運んだ


海がピアノを弾いている

ふと母の気配を探すように耳を澄ます
そして
今日の遊びをひとしきり復唱するうちに
深い眠りについたのだった

僕は単調な海の奏でるララバイを聴きながら
決して見ることのない君の成長を思い浮かべていた






エントリ30  暗がりの猫の目     九つ


繰り返されるのは、皮肉な運命
止めようと、留まることばかりだった

思い起こさせるのは、あなたの笑顔
ただ絶えないでいて欲しい、と
そればかりが繰り返される

行動と心情がかみ合わず
空回りを起こし、忘れる

まだ間に合うはず
今、今、今
それを繰り返すだけじゃない
繰り返しはもう、やめよう
たった一度でいいから
勇気を奮い起こせ





エントリ31  未完成     keiko


きっと君も僕も

大した違い等無い様な気がする

優しさも意地悪さも

冷たさも暖かさも内包されていて

純粋でもあり 計算高い

寛大でもあり 何気ない事でも怒る

ヒーローでも悪役でも無く

ずるくて怠慢な小心者

そんな自分を許せなかった事も

そんな君を許せなかった事もあったけれど

今ならきっと笑って包み込んでいけるだろう






エントリ32  ナイトクルージング     枯葉チッタ


「好きなだけもってっていい」
神様の大盤振る舞い Vivre Pour Vivre

土砂降りに追われ マスターにお別れを
子どもがマスターを呼ぶ 何度でも叫ぶ
もうすぐ この街を出るのだ

国道沿い 大声で歌う
皮肉なジョークに 大声で笑う

モノクロームの写真に背中を押されて
すべての料理をインド風味にするハーブで


※作者付記: Vivre Pour Vivreを着メロにした。
モノクロームの写真は森山大道。






エントリ33       日出野テルミ


ひたひたと満ちる月
見開かれた銀の目を盗み
闇の裂け目めがけて走る
はやく
かくれたいのはやく

わたしは小ズルい猫になり
なぉん と
鼻声で鳴いてみる
迫りくる月かわすため

背く予感はメロンの味

文字盤の鋭角に隠れて
潤んだ夜気に胸開く
かじる喉笛
かきむしる肩
引き寄せる脚も
ほどけた耳たぶも
吸いつくせばどこまでも
メロンの味
したたるメロンの味
すこし舌の先が焼けそうな

点々と赤
ランタンのごとく
滲む手がかりふき消したら
なんのことかしら
おもしろいことおっしゃるのね
みたこともきいたこともないわ
へえ めろんっておいしいの
たべてみたいわ

トゲトゲのしっぽたたんで
邪な猫






エントリ34  ドロップ・アウト     kaco


 いつの間にか、この町も変わった。

 小さい頃は、こっから海が見えたのに。

 はるか地上で、仮面を着けた蟻の群れ。

 「もうやってらんねえよ」

 あいつらには届きはしないSOS。ここは風が強すぎる。

 「んじゃ、俺、先いくわ」

 そうして彼は、飛び立った。 

 

 






エントリ35  いつかたれぞ     紅粉チコ


我が身を濡らす晩霜の色は変わらぬ

声に出して呼んではみても

振り返る術も無く

ただてのひらを繰りかえす

もういいかい?まあだだよ…






エントリ36  Seventh Heaven     粉雪


きっともっとずっと綺麗で
きっともっとずっと無垢で
きっともっとずっと輝いて
そんなはずがあるはずはない



否定する術さえ知らなくて
否定する術さえも持たない けれど
肯定する術さえも持たない そのうえ
肯定する術さえ知らなくて



そんなはずもあるはずである
きっともっとずっと輝いていて
きっともっとずっと無垢でいて
きっともっとずっと綺麗な何か






エントリ37  ちいさなはな     テリ還し


たとえば道端の
      もやが立つくらいの温度でさ、
  
  
  あすふぁると溶けて   ぬらぬらで
     
   そんな 場所 に  さ、、


                    花。
  
    小指の先みたいな 青くてちいさくて
   
    そんな花を咲かすように
    そんな花を大切にいきる

                 ような、そんな人に


 そんなひとにわたしはなりたい。



 気がする、多分ちょっと。






エントリ38       空蝉


身を焦がす宿世の夏も暮れむとす
うつせみとほく君の名を呼ぶ

こほひし
こひし
つくつくこひし
こほひし菊千代
きくちいよお

うつせみに君の名を呼ぶ声とほく
鳴かぬ蛍が身を焦がすかな






エントリ39  台風一家     急く転婆


台風一家。
いまどのへんに居るんでせうか。

見上げる空は青空です。
遥かとほくのやうに思い出します。



―― おとうさん。

僕はどうしようもないです。
またはぐれてしまいました。

情けないので無事を祈ります。