第27回体感バトル詩人部門


エントリ作品作者文字数
1ジパング伝説日生藍香136
2四等星Wish246
3貝殻あや010
4シンデレラのガラスのくつ=私の忘れ物ナツコ169
5最後に夢不忘136
6みぎすとれーと飴色506
7台風22号文月 スイ109
8やさしい嘘さくら、兄さん元気だよ。624
9傷ついたキャンディー絢神 淋檎140
10峯田梓97
11It is deep.トモミ1712
12無題(72)yandi377
13月のような人武藤あかね-
14青の世界綺有410
15コロコロ玉あげる日出野テルミ485
16受け皿うさぎ212
17あの頃に戻りたいぱぴ〜346
18せん光鵯 砂弐依72
19過去へ方条あき152
20赤い糸あお優131
21黄色、い。犬木ヨリ289
22冬と雪と温もりと二人椿-
23紅粉チコ76
24不可欠八白-
2511月長沢夕32
26月光浴ひばな115
27白い紙菊ヤ椿294
28あたしの帰る家わに-
29少年惨歌能弁婆77
30究極なんです竜宮亭113
31ハムレット芳也358
 
 
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エントリ1  ジパング伝説     日生藍香


その昔
華やか大好き西洋人は
質素な生活好む日本を
黄金の国ジパングと呼ぶ

西洋人は想像した
金の家
金の道
金の街
金の暮らし

1度ジパング来てみれば
質素な街に質素な精神
ジパング伝説見事に消える



9月には金の穂のなる田んぼ広がる
質素な街に質素な精神
質素な稲は黄金だった

ジパングここに存在する






エントリ2  四等星     Wish


昨夜の悲しみに滴る

夜空に堕ちてゆく自分の影を眺めながら

愛を探し

小さく光る星が瞬く

あなたを見つけたよ


もうこんな暮らしはごめんだなんて言いながら

夢に付き合い

自由を求めてる

そんな世界のちっぽけな場所で

必死に足掻いてる

私には必死に光る4等星のあなたが

誰よりも大きな存在だって信じてる


だってそうでしょう

その光はスポットライトではないけれど

私を乏しく灯してくれる

優しい光

何年先になるのかな

夢に手を伸ばし続けてるあなたの分身が

あなたに光を届けているよ


夜空よ

あの人をあなたのもとへ堕としてください

きっと

きっと






エントリ3  貝殻     あや01


もういいんだと思って捨てた貝殻を
いまはなんてことしてしまったんだと
海へ探しに行くんだ
これでもあれでもなくて
海の中でわだつみの神が
おまえも一人なんだなぁと
ざざぁんざざぁんざぶざざんと
一緒になって泣いてくれるものだから
その嵐をどこかで聞いているだろう貝殻を
探しているんだ 見つからず それでもなお
一粒一粒砂を指に掴んでは
この感触ではないと捨てるんだ
一度海へ返したものは二度と返ってこないんだと
知ってもなおあきらめきれなくて






エントリ4  シンデレラのガラスのくつ=私の忘れ物     ナツコ


シンデレラってガラスの靴落としたわけじゃないんだよ

だって普通おとす?おとさないでしょ

あれだよ、計画してたんだよ

だって落としたらまた王子様に会えるじゃない

え?そんな計画的な女じゃない?

ばか。女の子はそんなもんなの

また会えるためならしちゃうよ

私だって毎日あなたの家に忘れ物してくでしょ?

そーいうことよ

かわいいでしょ?

うん。そりゃーもう、ありえないぐらいあなたが好きよ








エントリ5  最後に     夢不忘


ほんの少しでかまいません
私に時間をください

ほんの少しでかまいません
私に光をください

ほんの少しでかまいません
私に音をください

ほんの少しでかまいません
私に言葉をください

ほんの少しでかまいません
私にぬくもりをください

ほんの少しでいいんです
最後に私が生きたことをかみしめさせてください


※作者付記: 誰だって一生懸命に生きてるんだ。







エントリ6  みぎすとれーと     飴色


私の言葉には真がないという

私の言葉には嘘はないが真もないという
私の言葉には意味はあるが力はないという
私の言葉には義務はあるが感情はないという

確かに
彼女の言葉には真も力も感情もあまりあると思う
しかし
彼女の言葉には嘘も意味も義務もない

私の言葉が彼女に不快であるのと同じように
彼女の言葉が私には不快であった
同じことをしているのに
被害者面な彼女が気に入らない

「パトカーは違反を起こしても違反者を捕まえる権利がある」
誰かがいっていた
違うと思う
正義は100%正義でなければ正義といえないのではないか
1%でも正義でないなら私はそれを正義とは認めない
100%正義なら
「パトカーは違反を起こしても違反者を捕まえる義務はあるが権利はない」
が正解だろう
違反者を捕まえたら違反者と共に刑に服すべきである
それでは警察官がいなくなってしまう
だから
「パトカーは違反を起こしても違反者を捕まえる権利がある」
になるのだろう
つまり
警察は100%正義ではない
なのに絶対正義を疑わない彼女が不快である

彼女の鼻に右ストレートをたたき込む
たしかに私の言葉には真も力も感情もないが
渾身の右ストレートは真も力も感情もあっただろう
彼女の鼻血に少し頭がくらくらした







エントリ7  台風22号     文月 スイ


台風が
やってきた

それは
大きくて
強くて

巨大と呼ばれて
いるそうです

家の中に
閉じこもれ!

何でも
飲み込む
雨が
好きです

何でも
吹き飛ばす
風が
好きです

月も
星も
見えないけど

雨と風の
行方を
窓から
眺めて
いました

窓から
じっと

アメ
アメ
フレ
フレ







エントリ8  やさしい嘘     さくら、兄さん元気だよ。


夜鳴きラーメンのチャルメラを夜汽車の響が刻んでる
鉄橋下のおんぼろ長屋、裸電球が指揮してる
破けた畳にちゃぶ台一つ、影がワルツを踊ってる
貧しいけれど、正直です
学は無いけど、頑張ります
身寄りも無いが、幸せです
今日は嘘をつきました
小さな嘘

訪問販売してみたけれど、口下手なので辞めました
紹介された町工場、体がきつくて逃げました
やっと作った借金で始めた飲み屋も営業停止
一生懸命やってます
だけどなんだかついてない
やる気ばかりが空回り
今日もまた嘘をつきました
見え透いた嘘

ゲーセンのちんけなパンダの縫いぐるみ
深夜の茶店(さてん)でこっそり泣いてる女にやった
やさしいのねって、女房になった
大事にするさ、昔のことは忘れなよ
嘘だと知らずにつきました
夢という名の嘘

いきつけの居酒屋で顔がきくのが自慢です
人の気持ちが分かるのね、いい人だって言われます
気前も良いし、明るし、親身に話を聞いてます
所詮は女房の稼いだ金です
職もないから時間もある
嘘で洗った嘘です
通りすがりの嘘

それでもいいじゃないですか
飲み屋に集まる常連なんて刹那刹那の仲間たち
どこに帰るか知りもせぬ
ありがとうなんて言われたら
なんだか嬉しいじゃないですか
やさしいねなんて囁かれたら
とっても気持ちいいじゃない

どうでもいいじゃないですか
みんなでついてる嘘なんだから
優しさごっこもいいじゃない
誉め合いっこもいいじゃない

夜鳴きラーメンのチャルメラを夜汽車の響きが刻んでる
ここから出たら夜風が冷たいから
だから、いいじゃないですか






エントリ9  傷ついたキャンディー     絢神 淋檎


あめを舐めていると
舌に痛みを感じて
甘いあめの味と赤い血の味が混じる
急いであめを取り出すと
あめがクレーターのようにへこんでいた
そこで舌を切ったみたい
傷はいつの間にか癒えていた
まるでそれは愛していた人に裏切られ
傷ついた心のようだけど
それがそんなに早く治らないということぐらい
知っている







エントリ10       峯田梓


安らかな寝息たてて向こう向いて寝るあなたにこの距離が

これ以上遠くならないようにとせめて

私の鼻の目の前にあるごつごつした手の甲に指の先だけ触れた

それは偶然左手の薬指でそれが偶然なだけでうれしかった







エントリ11  It is deep.     トモミ


沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。崩壊していく精神みたいに。虚無。失笑。絶望。海にまで埋もれし見苦しい醜い心境。埋め尽くしてしまうよ、、全部(埋まってしまえよ。)海は汚れし世は嬉し憂い。何か大切なものまで海に沈んでしまった様で、何かが無い。何も無い。そんなもんだ。それを人はこういう。沈没。




沈んで仕舞えば終りなのです。其れを知らずに人は自ら沈没してゆくのです。それを後悔と云う。



※作者付記: 気持ち悪いくらいに深く沈んでゆく。そして人間は結局それの繰り返しなのだと思う







エントリ12  無題(72)     yandi


貴女の選んだ香りを身に纏い、
日長一日街を彷徨う。

道行く人々には何の事は無い人ごみの一香に過ぎなくとも、
僕には特別な香り。
貴女の髪の香りも胸の柔らかさも、
手の届かぬ至高の宝。
近づく事さえ出来ぬのであれば、
せめて記憶の海へ漕ぎ出すしかない。
厳冬の街角で、必死にマッチを擦った少女のように。

酔いそうな程たくさんの人がいるというのに、
何故貴女だけがいないのか。
この香りに導かれて貴女が姿を現すなんて甘い幻想も、
喧騒に掻き消されて、
肩も触れんばかりの人出の中で、
僕はいつまでもたった1人なんだと思い知らされる。

向上すべきは心か魂か?
貴女を失うこと無しにそれは適わなかいことなのか?
貴女を失った今、一体僕はどれほど向上したと言うのか?
貴女の本意は、ただ逃れたかっただけなのか?

貴女の選んだ香りを身に纏って街を彷徨う。
特別なその香りにも記憶の中の貴女を現実にする力はない。







エントリ13  月のような人     武藤あかね


三日月、十三夜、十五夜、十六夜、…
昨日まではよく見えていたのに今日は雲の中。
あなたは月のような人。






エントリ14  青の世界     綺有


気味の悪い程の鮮明さの
空の青と、学校の屋上との境界線
まるで違うものなのよと嘲う、雲

結局私はこの灰色の校舎にとどまる
どこにもいけないのだ
私にいける場所など限りがあって
それが余計に
私という小さな存在を証明して

羽なんてあってもなくっても
飛んでる感触なんて、ない
ただ落ちているだけ
今に地面に叩きつけられて
姿さえ見えない太陽に嘲われる

いらない、もう
愛していたものも
憎んでいたものも
心を散々荒らして風のように消えてった
君も

今度こそ
ここから全て捨てられるだろうか
灰色と青の境界線に踏み込んで侵すの

お願いだからどうか。
君の存在のない場所へ
灰色の世界には
君はいるけれど
私の前にいない、私のモノじゃない
青の世界には
君はどこにだって存在しないから

早く、早く、この世界を飛び出して
私は青の世界へと。

青い、青い、刹那の世界
背中にひどい痛みを感じて
私がたどり着くのはきっと
土色の茶の世界
あぁけれど
この目にはただ青の世界しか映らないから

ここは青の世界








エントリ15  コロコロ玉あげる     日出野テルミ



みたいなものですが
鈴よりずっと簡単に
コロコロ鳴る優れもの
歯ごたえは
たいして期待できませんが
つるりと飲み込めば
あなたの中で
コロコロ鳴ります
その辺に転がしておけば
けつまずいた時にも
うれしそうに
コロコロ鳴ります
寒い日も
コロコロ玉ひとつで
あったかくなれます
転がってきたコロコロ玉を
つき返してはいけません
火炎瓶ならともかく
ただのコロコロ玉ですから

「コロコロ玉にまつわる衝撃の真相!」
と騒ぐほどのこともなく
そのまんまのコロコロ玉です
「ほんとうは怖いコロコロ玉」
あんまり飲み込むと
しゃっくりが出るとか出ないとか
わぁ なんて恐ろしいんでしょう
「戦国コロコロ玉に学べ!」
学べないこともないでしょうが
あまり実用にはなりません
「お腹が空いたらコロコロ玉」
余計に空くような気もしますが
ごはんが少しだけおいしくなる
かも
しれません

そんな
はじけるコロコロ玉あげる
わたし底抜けだから
いくらでもあげる
いらなくてもあげる
余ったら
猫の首に下げてもいいし
もしかしたら
アメ玉のかわりにもなるし
キャッチボールだって
できる たぶん
だから
両手いっぱい
コロコロ玉あげる
他に何もあげられなくても
コロコロ玉あなたに
あげる






エントリ16  受け皿     うさぎ


愛など形の無いもの
どう信じろというのだ
証をくれ でなければ信じない
何でもいい 与えて欲しい
だけど欲しがってはならぬ 冷めるだけだ

貴方の言葉は難解だ
私の脳では理解に苦しむ
だが私の心は理解に応じる
貴方は寂しいだけなのだろう

空の器ならば入れる水を探せばいい
今のままでは零れ落ちるのだから
留める術など自分で探せ
そこまで私は庇えない

証が欲しい
自分だけに与えて欲しい
それはわがままだろうか?
せめて言葉ぐらい自由にさせてくれてもいいだろう







エントリ17  あの頃に戻りたい     ぱぴ〜


早い早すぎる 月日の流れが
まだ若い それでも、もう少し若かったアノ頃に戻りたい
友達と遊んで時間を経つのを忘れてバカしてた日に

何をしても楽しくって悲しい事や嫌な事があってもスグ忘れ
前へ前へと日々前進していたアノ日々へ

人間としての器が小さく何を言われても腹を立てていた
自由を求めていた 早く学校なんて卒業したい
強がってはいたが毎日毎日、本当は怖かった

もっと楽に過ごせないか もっと自由に暮らせないか
金が欲しい 時間が欲しい 友達が欲しい
欲しい欲しい欲しい 何もかもが欲しい
不安なんてイラナイ 勉強なんてイラナイ

まだ16何でも出来るさ まだ17コレからさ
まだ18・・・もう18・・・

早い早すぎる 月日の流れが
まだ若い それでも、もう少し若かったアノ頃に戻りたい
友達と遊んで時間を経つのを忘れてバカしてた日に


※作者付記: 仕事で疲れ帰ってくる度に思います。
半年前は疲れて帰ってきても友達と遊んだものです…もう戻れないのかな、、、







エントリ18  せん光     鵯 砂弐依



 香る煙を辿ると
 君に落ち着く

 僕を見上げて笑うけれど
 セピアが濃度を増し
 蒼く、残像は浚われて行く
 
 今、陽が暮れたのでしょうか

 崩れた灰が最期に息を吹いた
 目に沁みる、ね







エントリ19  過去へ     方条あき


時の果実がなる樹さん 
一つ私にくださいな
たとえ逃げだと言われても
私は過去に戻りたい

今は冷たい風が吹き
未来は私に味方しない
過去はやさしく迎え入れ
私の全てを受け入れる

甘い香りのする果実
私を誘惑する果実
人の命でなる果実
それは魅惑の人面果

時の果実がなる樹さん
一つ私にくださいな
たとえ誰かの命でも
私は過去に戻りたい






エントリ20  赤い糸     あお優


ゆっくり歩いている
風向きは気にしていない
未だ あなたの髪の毛のしつは
解らないはずなのに
触れないのに

しっかり前を向いている
風向きも気にせず
もはや 風任せのあなたの髪の毛は
解るはずが無い 
触れられるはずが無い

それなのに
なのだけれど

きっと柔らかなのだろうと
信じています






エントリ21  黄色、い。     犬木ヨリ


星が滑って夜に刺青が泳ぐ
願いを唱える間もなく、
感嘆!
きみはぶどう酒を撒き散らした

立ち昇る日が新しい朝を呼ぶ
花が露に揺らめき、もう一回
草むらに蛇が忍び込んだ

射抜けイエロー、
きみは居候の身にして美しいダンスを踊る
たとえるなら管楽の、いや、別珍の天蓋の、ええい、ままよ!
見抜けば誰でもご一緒に
素晴らしい音楽を記譜だけで表すのかい?
なんて正気の沙汰でない土曜の夜
「さあ、笑えよ!」

猫の夫婦が笑っている
なんだか似ているね、と笑い合った
もういいかい
草むらの蛇が卵を吐き出した

煙を食んで腹を満たしても私は仙人ではない
射抜けイエロー
それで自分は二人になってしまう算段

間抜けはどっちだ
言ってみせろ






エントリ22  冬と雪と温もりと二人     椿


風が冷たくて

太陽が少し早く暮れて

ネオンライトが灯り始めて

やがて賑やかになっていく街の中で


風が冷たくて

貴方が少し強く抱いて

繋いだ手がいつもより嬉しく思えて

やがて賑やかな街から静かに二人は・・・


雪が降り出して

私が少しだけ願っては

見つめてる貴方が微笑んで

やがて二人だけの冬に二人が・・・


深々と 降る雪眺め 離れない
見上げた空の 白い雪よ


詠んでも上手くいかないけれど

風は冷たいけれど

雪は小さいけれど

二人はこんなに・・・






エントリ23       紅粉チコ


闇に変わりたい燈の中で強さを抱き

ひたすら想いを押しあてて転がる

日常を掬い上げた髪を口にし

その輝きと触感に眩暈する

ただ それらの事柄を夢のゆめと我説くのみ






エントリ24  不可欠     八白






























































エントリ25  11月     長沢夕


君は

怪我した背中が痛いと言う

寒くなってきたからねと

ひそひそ耳打ち






エントリ26  月光浴     ひばな


裸になって 黄色い光を浴びる

おなかの真ん中に

まあるいかたちの 月焼けできて

その上を 白うさぎが飛び跳ねるから

こそばゆくって 笑っちゃった


もう帰りたい って鼻水まじりのつぶやきに

いつもの返事は まだだよって  

やさしい月の波







エントリ27  白い紙     菊ヤ椿


白い紙

まだ…何も書いてない。
いや、
書こうとしたんだ。

何度も何度も
書こうとした。

(簡単なことだよ。)

(自由なことだよ。)

そう、そうね。

私が私であるために、
とても必要なこと。

(でも・・・。)


バスから降りた。

いつもの
高い高い空・・・。

私は首をうんとそらしてみる。

空気は澄んでいる。

空は朱色。

私の両手は
空いている。

(ああ、そうだ。)

夢見ることは、

きっとこんな感じだ。

感じていることは

真実なんだ。

かっこつけじゃないんだ。

確かにはツカメテイナイ。

(そう、そうそうそう!!)

(そうなんだ!)


足が坂道の上に私を引っ張ってく。

私はつかめない空気を
決してつかむことはなかった。

けど

シバレタ手には
感触があった。



※作者付記: 最近ずっと、私は私を疑います。
自分で自分を欺いてるような気がしているんです。
でも、
案外とそうではないようです。
そういう気持ちを書いたつもりですが…。







エントリ28  あたしの帰る家     わに


うちの実家に
赤い紙が張られました
もう人が住めません
壊れそうなあたしの家
余震は止めを刺す

築100年というすごい古い家
雪が何メートルふっても耐えてきた家
そこにひいおじいちゃん達は引っ越してきたのは
まだその家が幼い顔をしていた頃
おじいちゃんの兄弟が騒いだ家
家族とお手伝いさんと会社の人と
賑わっていた家

おばあちゃんはそんな大家族のところに嫁に来た
結婚式で初めておじいちゃんの顔を見たって
高島田を結った頭で眠るのは難しかったって
昔話大好きなあたしに教えてくれた
かわいがってくれた両親から離れて悲しくても
影で泣く暇もないほど忙しかったって
やがてすぐ戦争は激しくなる
会社は軍事工場になった
もののない戦時中
ひいおじいちゃんが人望と商才を生かして
闇屋をしていたっておばあちゃんがこっそり教えてくれた
お父さんが生まれた家

お父さんと兄弟がいっぱい喧嘩をしてた家
悪がきだったお父さんがひいおじいちゃんに閉じ込められて泣いた蔵
お正月にはいっぱいの親戚が来て、子供自慢をしていた居間
こっそり芸者遊びをしたひいおじいちゃんに一喝入れたひいおばあちゃんの定位置は囲炉裏の正面

ひいおじいちゃんが死んで
いっぱいに並んだ花は町の誰よりも多かった
ひいおばあちゃんが死んだとき
病院からタクシーでおじいちゃんは抱きしめたまま運んだ

綺麗な着物が売れたから
うちは裕福になったって
町一番のうちの会社
その会社の上司と部下として出会ったお父さんとお母さんは
やがて恋に落ちた

お母さんが家にやってきた
そこにあたしが生まれて妹が生まれて弟が生まれた
お父さんの兄弟は各地に離れても
お盆には増えた家族を連れてきた
広い家が狭く感じる 楽しかったとき

お父さんとお母さんが喧嘩して
布団かぶって泣いた夜は毎日
お互い頑固で譲らない似た者同士
会社はうまく行かなくなって
お父さんはお酒ばかり飲むようになった
いつもいつもお母さんを殴るお父さんを
あたしは憎んだ

会社も倒産して
息苦しい我が家
出来損ないのあたしに居場所はなかった
勉強の出来る妹と弟は殴られることはなかった
家出したあたしへの分の暴力は
全部お母さんに行って
そしてお母さんもどこかへ消えた
まもなく妹も弟も
進学のため家を出た

お母さんを失ったお父さんは
みるみる痩せてゆき
病気になった
入院のしたくはあたしがした
家出しててもここはあたしの帰るところ
お父さんはお父さんだった

お父さんの倒れていた二階
今ではあたしの近づけない場所
触れた脈は感じられなかった
人工呼吸でいれた息はそのまま返ってくる
心のどこかで駄目だと分かっていた
心臓マッサージをしながら出た家に
お父さんは生きて帰ってこれなかった

おじいちゃんとおばあちゃんだけになった家
息子を早くなくして
だいぶ老けてきたけど二人で喧嘩しながら
広い家を支えてきたけど

もうすぐ寿命のあたしの家
それを早めた神様のいたずら
もうあたしの帰る家はない


※作者付記: 地震・台風被害のいち早い復興をお祈りしています







エントリ29  少年惨歌     能弁婆


よこしまな
心に芯は揺れ揺られ
炎はほそく
たよりなく燃ゆ

夢のさき
行く末怖じてすすまぬと
月日のはやさに
老い越されゆく

少年夢見難く
老い易し
なれの果ては
うそざむき哉






エントリ30  究極なんです     竜宮亭


脳漿澄み渡る そこは奇跡の星だって?

華麗にして饒舌 端麗にして一本気
リアルは残酷で正直 本当だから

誰も変わってはくれない
誰も教えてはくれない

片足で綱渡りしてる気分

やっとつかみ掛けた
離すな 止まるな 
日の出 日の入り 陽光浴びて






エントリ31  ハムレット     芳也


 この世は善なのか? この世は悪なのか?
 そういう質問は、その世のものだ!
 天国と地獄、ヘブンかヘル、
 そのどちらか一方にしか住めないのが「あの世」だ。
 この世は天国と地獄、ヘブンとヘル、善と悪、美と醜、信実と虚偽、
 それらが交錯する唯一の場所が「この世」だ。
 森羅万象の楽しい世界を、単純な二つの、
 そう、お前の、その小さい頭の中で作り上げた、
 二項対立の、ママの下着にくっ付いたペーパーの回答のような、
 つまらないものにしたけらば、お前だけやれ。
 Do it Do it Do it
三回聞こえてきたなら、すぐ、やれ!
「生きるべきか? 死ぬべきか? それが問題だ」
 ママをパパの弟に寝取られた、陰気くさいベイビーの声が、
 今夜も天井裏から聞こえている。
 それの何が問題なんだ。
 ママの愛し方を間違ったベイビー、お眠り。