第29回体感バトル詩人部門


エントリ作品作者文字数
01スワン鵯 砂弐依183
02劣情さくら、兄さん元気だよ。94
03ひとりごと蕾亜248
04Life橘 深音281
05amicoナツコ241
06墓地の名は情けなくてバカで以下略駱 大二郎561
07無題綺雪130
08いいわけうさぎ269
09無題ノエ359
10ガラクタ街歌 結夢327
11非会社人間小鴨218
12偶然日生藍香79
13椿※データ無
14ぱんだあそび日出野テルミ121
15ピンクブラックホワイトクリームあお優170
16砂にまみれて紅粉チコ66
17狭間八白63
18自意識のうた邪二割89
19不適切な言葉井伊寛治108
20静寂竜宮亭177
 
 
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エントリ01  スワン     鵯 砂弐依



 盃一杯程のを どうか
 苦しみながら、溺れて果てた此の人に 

 唇にそっと、あてがって上げて下さい
 身体の腫れも大分ひいてきました 
 曲が聴こえますか、貴方の旋律が
 返事を下さい 聴こえているのでしょう

 「先生、身体から溢れた水分が
  器官の隅々まで伝って、涙をくれるってことは
  まるで、無いのですか」



 ああ、湖で もう一度きり 

 僕とバレエを踊っていただけませんか









エントリ02  劣情     さくら、兄さん元気だよ。


桃色から発泡するフィズの溜息
デジタルだから時間は無口


テールライトはコミカルに流れる
いつわりの赤外線たち


浄水とメタルの瞳
無機質だから温度はない


愛はよくわからない
指先の記憶していることだけ









エントリ03  ひとりごと     蕾亜


夢を書き綴った紙切れに
 僕らは何を書き足すのだろう。

前に進むことを恐れる僕らは
 後ろを向いて 後ろ歩き。

愛想笑いの内面は?
 本当は気づいてほしいのに。

あの日のちょっとした忘れ物
 実はずっと 探しているんだ。

僕がついた やさしい嘘
 嗚呼なんで君は 泣いているのだろう。

伸ばしかけた右手と 君の背中
 ごめんね その場面を絵にしてしまったよ。

「好き」っていう言葉だけは
 軽々しく口にしたくないの、か。わからないよ。

あの紙切れに君は 結局
 「バイバイ」って書き足したんだね。

僕はなんて 書こうかな・・・。









エントリ04  Life     橘 深音


 今という時間が余りにも長すぎて

 途方に暮れて動けなかった

 続いていく想いに気を取られて

 歩みを止めた


 諦めた訳ではない

 けれど保証は出来ない

 優しい鎖に繋がれたまま

 変わらない今日を明日に願う

 
 何をする気も起きない

 そんな毎日を飽きもせずに繰り返す

 もう優しさは要らない

 忘れて欲しいと願うよ


 同情を掛けなくても良い

 そこまで弱いとは思っていないから

 無理に話さなくても良い

 話したい時に話してくれれば


 無駄な決心をしても

 いつも覆される

 自分で決めたことでも

 駄目と言われれば駄目


 ごめんなさい

 いくら謝っても謝り切れない

 ありがとう

 もう此処には戻らない









エントリ05  amico     ナツコ


ごめんねアミコ
いつもいつも迷惑ばかりかけちゃって
ほんとに私はなさけなくて
あなたがいないとさみしいの
優しいあなたが好きですよ

はなれる日がやってきたわ
さいごにもう1度いっしょに遊びましょ
ほんとは行かないでほしいけど
あなたのために笑うわ

泣いてる私をお願いだから見ないでおいて

好きよ アミコ
ついに行ってしまったね
たまには手紙を書いてね
あなたがいなくてもがんばるわ
とりあえず部屋を片付けて
カーテンをかえてみようかな

私がんばるから 次にあなたに会えるまで
だからあなたもお元気で

アリヴェデルチ!!









エントリ06  墓地の名は情けなくてバカで以下略     駱 大二郎


昨日見つけた部屋に置いてきたのは、
君の亡骸
青筋を立てて僕をこれでもかと罵り、
泣き崩れたと見せかけて裏拳を放ち、
本当に泣き崩れちゃった君の亡骸

匂いがきつすぎると、タバコの銘柄にまで牙を剥き、
僕のTシャツの柄を罵倒し、
昔好きだったアイドルの両親まで責め、
謝る僕に蹴りをいれて、玄関から飛び出した君の亡骸。

夜中にそりゃないよ。
コンビニぐらいしかやってないんだから。
女が外へ着てくには、
あの緑の花柄シャツはダサすぎる。
足にひっかけたのはミュールのつもりだったろうけど、
玄関から無くなっているのは
僕がコンビニへ行く時に履く健康サンダル。
変な男に連れ去られたらどうするんだよ。
いくら服がダサくても、健康サンダル履いてても
気にしない男だっているんだぞ。

 とばっちりを受けたタバコは、風呂場の床で水を吸った。

青筋って、
女でも本当に立つんだなあと思っていた僕の亡骸も、
食器棚のガラスにガムテープを張る僕の亡骸も
ついでに置いてきたから大丈夫。
目尻のアザと、
食器棚にぶつけた傷は軟膏じゃ消えなかったけど
痛みは置いてきたから大丈夫。
もう二度とバカはしないと決めたから、
美術雑誌で見たスペインのあのホテルから、
品と風格の毛を抜きまくった代わりに、
ストーンズの曲と蛍石を溶かしたぐらい、居心地いいはず。
あと二、三ヶ月もしたら、きっと墓参りもできるさ。









エントリ07  無題     綺雪


成績を伸ばせ
感受性を育てろ
倫理を身につけろ   おかあさんはいいました

でも

何もしなくても私の

髪は
爪は
身長だって

少しずつ,伸びてゆくのです

だったら,

周りに向けて微笑む度に削られていく

私の心臓は

それ以下の存在なのでしょうか
誰か私に答えを下さい,原稿用紙三枚以内で。









エントリ08  いいわけ     うさぎ


生きる限り続く悩みを抱えるか捨てるか
寝て起きるだけの毎日が退屈で仕方ないのに
迷うだなんておかしいだろ?

逃げ切れなかったからここに居る
佇んだまま動いていない
誰かの背中を追って走っていたのに
見失ったからここから動けない
人にもたれかかってばかりの僕を否定する人もいるだろうが
その方が今よりもずっと生きていたんだ
誰も自分以外の事など分からないくせに好きなことを言うな
そもそも自分の事だって分かっていないくせに好きなことを言うな

強がりだと分かっていても
僕は言いつづける
でなければ寂しさに潰れてしまう
僕は何を怖れる?
何に怖れるのかわからないそれが怖い









エントリ09  無題     ノエ


吐き出す術も知らぬまま剃刀の刃を飲んだ
ただあの人の目から隠せればよかった
誰に気づいて貰えなくても
嗚咽さえ消えていく彼方の海
誰の涙と問うことさえ恐ろしくて出来ない

靴を脱いで髪留めを外し、同じようにこの眼さえ外せたなら
肉を脱いで血を洗い白い骨だけになれたなら、きっと清潔になれるのに

沈黙の灰に埋もれた声達の骨を拾う弔い人
憧れは何一つ動かさず温い日々に溶けていく
血の匂いは確かに嗅げるのに傷がある場所が分からない
滑らかな肌を残らず撫でて息苦しさに嘔吐する

骨を抜いて灰に還り風に乗れたなら
どこまでも遠く塵に消えることが出来たなら

弔い人になるためなら何を捨ててもいいのだと
そう誓った遠い日に今も帰れるのだろうか
治らぬ傷をもう一人に移植した
いつどこで知ったのだろう、そんな術を
いつどこで忘れるだろう、その日の痛み
移植されたもう一人









エントリ10  ガラクタ     街歌 結夢


      手にしみる 冬の風
     誰よりも キミを 一番
   世界で 一番 幸せにしてあげたい
     
       こんな姿でも

   時を 刻むことしかできない 僕を
     大切そうに 抱きしめる
     誰かからの 贈り物・・。

    世界で 一番の 幸せモノは
幸せにして あげたいと想う 人の存在(い)る
     僕なのかも しれないね

     キミが 誰を 想おうとも
   たとえ 誰を 愛して いようとも
    僕は キミを 幸せへと 導きたい
  時を 刻む事しかできない ガラクタでも
     負けない 想いを かみ締める
   キミを 抱きしめられなくても いつも
      キミを一番に 想ってる

     誰より もっと 幸せに・・・









エントリ11  非会社人間     小鴨


例えるならロボット
登録された情報以外の行動はできない
それが僕の仕事状況

毎日データを更新しても
お客様の言動は予測不可能
それらしい受け答えも僕には不可能
頭の中は真っ白
口内はカラカラ

焼き切れた思考回路
役立たず思考迷路

例えるならパペット
命令された内容以外の行動はできない
それが僕の勤務体勢

毎日ルールが更新されて
上司様の発案は予測不可能
それらしい賞賛など僕には不可能
頭の中は真っ白
視線はフラフラ

焼き切れた思考回路
役立たず思考迷路


苦情電話で思考停止









エントリ12  偶然     日生藍香


いつからだろう
君に偶然出会うため
学校帰りに遠回りするのは

今日もまた
計算された偶然に
驚いたふりして笑ってみせる

ねぇ気付いて
でも気付かないで
君いっぱいの私のココロ









エントリ13       椿


深々と

降り続けては

心身へ

滲み溶けます

ゆらゆらと

風と共に揺れ

癒羅癒羅と

業を映し出す

そんな雪はいりませんか?

寒々と

凍える空から参る

むざむざと

消えるためだと知ってます

それでも在るのは冬に導かれる罪と「…」

灰色の

雲が嘆いてやがて黙

這い入ろの

引きずる想い出底出る

それは儚きかな人々が愛する瞬と旬の美学でしょう









エントリ14  ぱんだあそび     日出野テルミ


それは垂れ目のフリするパンダ
これは焦げ目のついてるパンだ
なんだときかれたら
パンだと答えるパンダ
かんだの誰ときかれたら
パンダと答えるパンだ
なんだパンだかんだパンダ
かんだパンはのんだパンダ
三次元パンダは
パン見ても知らんぷり
眠そうなお尻向けて
ごろり









エントリ15  ピンクブラックホワイトクリーム     あお優


あたくしの身体は 真っ白なわけでは無い
純白の天使時代は とうの昔に捨てました
しかしながら真っ黄色に染まっちゃいない
少しだけ黄ばんで すごく優しいクリーム色

あたくしの洋服は 濃い桃色なわけが無い
華やかな咲き頃は 終わってしまいました

そして黒ずむ洋服を
それでもクリーニングには出したくない

ピンクブラックホワイトクリーム

どんな時代も ハートは緋色









エントリ16  砂にまみれて     紅粉チコ


振り返る術も無ければ

避けて通る術も無い

真夜中に摘む花は

伝い流れ堕ちる雫を乞い

指し示す標に絶望する

どうか今すぐに

砂にまみれた君のもとへ









エントリ17  狭間     八白


気持ち悪い
その事を
例えば
外連味の
死体は
気にするから
無くして
ならば
戸惑うには
その場凌ぎの
また空を
突き指が
目を
踏み鳴らし
通り過ぎた









エントリ18  自意識のうた     邪二割


- その壱 -
頬染めて寂しく歩く冬空は
星輝いて我を見ている

- その弐 -
月がまた追いかけてくる夢を見る
怖れて走る足掻けど醒めず

- その惨 -
旅の空流るゝ雲に身をまかせ
触れ得ず眺む浮世の恋か









エントリ19  不適切な言葉     井伊寛治


我々はいつか言葉に仕返しされるだろう。

なにが不適切?
なにがいいかんじ?

言葉に差別はない。
差別は精神に宿る。

不適切な言葉など存在しない。
不適切なのは言葉を吐く者の精神にある。

言葉のなかの魂を捨てて
平等平和はあり得ない。









エントリ20  静寂     竜宮亭 



 ぬめりという感覚が頬をつたう
 
 ポタッ 滴に怖れが混じる

 ボタッボタボタッ 

 いつからだろう

 窓際から赤紫の雲が漂う

 かすかに聴き覚えのある音がさまよう

 チンチロリン チロチロリン

 まぶたの裏に熱さが込み上げる

 なぜだろう

 宙を浮かんでるそんな感じ

 体を煙が纏わりつく

 チンチロリン

 この音だけが聴こえてくる

 チンチロリン

 この音だけがまともに聴こえる