第32回体感バトル詩人部門


エントリ作品作者文字数
01天雪ヒコーキ鵯 砂弐依196
02虹色椿※データ無
03判決の夜さくら、兄さん元気だよ。397
04+ flower +月夜野 柊274
05おもいイロ103
06幻の君新葉 久実199
07恋・愛バイオラッド125
0814歳の告白黒羽 奏37
09道の中程明日より※データ無
10アナタは行き道帰り道?神上小鳥140
11しるべ月夜220
12無題Ed Smith Jr504
13複雑な単純。音歌272
14ね、かんこ51
15乾燥長月64
16人間小鴨※データ無
17セントポーリアライラック※データ無
18人生国士無双68
19やわらかアッパーカットマスイジュウ699
20化けものメソポタ236
21灯心駱 大二郎234
22紅粉チコ66
23見るよ?やさぐれOL659
24希い望むカノイ315
 
 
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エントリ01  天雪ヒコーキ     鵯 砂弐依



雪の降る少し前の季節
貴方は空高く行って仕舞った

「僕は、空に成るんです
 貴方の指先が凍える季節
 僕は又、帰って来ますよ」

そう言って差し出した
貴方の小指こそが
冷たかった

追撃され砕け散った真っ白な船体は
此の世のものとは想えない程
美しかったそうだね


 
あ、雪が降って来ました


唇の雪は、暖か過ぎて
髪を撫でる手が優し過ぎて
抱きしめる腕が懐かし過ぎて
確かに貴方、帰ってきたんだね


「ただいま」

「うん、おかえり」







エントリ02  虹色     椿


青く晴れた空が憎い
曇り続けて塞がる空がいい
バケの皮を剥がそう
他者が僕に近づくのなら…

こんな弱い僕だけど
誇れるもののないこの手は
数え切れない幸せ(不幸)を手にしてる
笑えない晴れた日の隔離病棟

断絶された心の糸は
やがて歩み寄る作り笑いの豚共が
繋ぎ合わせようとするけれど
それはただ偽証に満ちる面会刻

誰か助けてください 僕はまともな人間だから
重いナイフを手にする右手は震えてる
それは幼きがための卑怯?悲鳴?
心の排泄・安定・嘔吐は 夜中の絶叫サイコな僕のもの?
たった一度だけ それだけを見せてほしい
誰も与えてくれなかった 本当の愛を…

誰かに見つけて欲しいのです
それは僕の偉業を見ればわかるはず
首だけで自己を主張した被害者(あのひと)のように
誰かに見つけて欲しいのです…この心のバグを…

重いナイフを手にする右手
投獄・隔離・診察・実験
見えますか?虹に光る人の心の風景画
異端の道は僕に何を贈るのでしょう?

隔離病棟304号室のサイコな虹色の僕








エントリ03  判決の夜     さくら、兄さん元気だよ。


教壇の老師は
万物に融点があるよう真実はひとつ と教えを残し
書架の城に引き篭もってしまった

以来わたしは太陽と月の眠らぬ引力の間で
罪と償をあの石に刻み続けている

わたしは問う
この手を疑念の血糊で黒く汚したときに
事実と事実の狭間に真実を見失ったときに

  あなたの秤はどんな刹那にも
  かすかに震えもしなかったのか と

少女が証人席に真実の涙を流す
涙に染まった聖書はもうひとつの真実を見つめている

それなのに 
今 わたしに見えるのは言葉だけだ

わたしは知っている
判決の夜 
陪審員たちは 獣のように愛し合うことを

わたしは知っている
判決の夜
裁判長が あなたさえ口にしたことがない
芳醇なワインに我を失う姿を

わたしは知っている
判決の夜
壁に静止し 呼吸に腹を波打たせる少女のことを

それなのに
今 わたしに見えるのは言葉だけだ

太陽はなぜこの午後の瞬間にも眩しいのか
きっと懺悔のかけらなくただ石を刻む わたし自身の
裁きの日にも








エントリ04  + flower +     月夜野 柊


突然の誘い   好き
左の薬指にしている指輪   きらい

サラダを取り分けてくれること   好き
たくさん愛撫してくれること   好き
子供との約束があると言って逢えないこと   きらい

ちょっと辛そうな顔しながら歌う甘い声   好き
空いた時間を私に充ててくれること   好き
果てたあとにティッシュで拭ってくれること   好き
次の約束をしてくれないこと   きらい

眼鏡をかけた横顔   好き
耳元で囁いてくれること   好き
何食わぬ顔で書類を渡してくること   好き
運転中に手をつないでいてくれること   好き
ネクタイを締めて夜な夜な帰ってしまうこと  きらい




※作者付記: まだ、「好き」の方が多いみたい。







エントリ05  おもい     イロ


涙の肩に
するするすべる
1つ1つの音のない雫

語るような指の音
探してる瞳

問いかける夢が
風のように透る


すこし休もう
頭の個室で


手の中で包まれるべき
やわらかな光を
吐き出す重みで潰さぬように

すこし眠ろう
日が瞼を撫でるまで








エントリ06  幻の君     新葉 久実


通学途中の桜の木
秋風の中、なぜ葉を落とす
夏はあんなにきれいだったのに
夏はあんなに暑かったのに

黄緑色のつながりは 城を守る城壁となる
私がもしも桜の木だったら 城はあなたよ
私があなたを守ってあげる いつまでも一緒だから

葉はもうない 君ももういない
葉と葉のつながり とうに消え
後に残る 秋風の隙間
間からは城が見える

隙間から城が見たい
城が本当に君ならば

冬が過ぎ 春が来た
私の心は
誰がピンク色にしてくれるのか








エントリ07  恋・愛     バイオラッド


「恋」って何?
それは誰かを好きになること
いつ 何をしていても
その人の事ばかり考えて
いつ どこにいる時も
その人にそばにいてほしい

「愛」って何?
それは誰かを大切に思うこと
いつ 何をしていても
その人の事ばかり考えて
いつ どこにいる時も
その人を見守っていたい




※作者付記: 同意してもらえれば嬉しいですけど
それは違うという意見も有ればお願いします。







エントリ08  14歳の告白     黒羽 奏


ペンの先から溢れるインク
爪の先から溢れる言葉

あなたの事がね、
大好き
大好き!








エントリ09  道の中程     明日より


いつのまにか、あいつの家が見えてきた。




※作者付記: 詩か超短編なのか自分でもわかりません。







エントリ10  アナタは行き道帰り道?     神上小鳥


その日星が輝くと知っていたなら

あたしは走ってアナタのもとへ

滑り堕ちる闇を超えて

たどり着いたはずなのに


それは今生まれる光…

それとも朽ちる光だったの?


あの日あたしはアナタを求めて

奈落の底に二人で羽ばたき

きっとアナタはその時闇に

一人のまれてしまったのね


目覚めたら


永遠を告げる


電話が響く。










エントリ11  しるべ     月夜


自分以外の何かに
先行きも知らぬ何処かに

叶うわけもない
明くる日は狙いを違えずやって来る
静寂に抱かれたまま
耳を塞いで踞っていても

追い求める光の先に何があるというの
羽虫たちが集うのを嗤うというのに
薙ぎ払うというのに
誰もが手を伸ばし掴もうと
必死になって 滑稽なほどに

自分ではない者へ
先のない明日へ

泣けない弱さを捨て去りたい
なりふり構わず喚くような
いつの間になくしてしまった
あの頃の

願いはささやか
祈りはひそやか
ただ ただ静かに息づいていたいだけなのに








エントリ12  無題     Ed Smith Jr


青に白の水玉の
ワンピースの少女が草むらを
走り抜ける。
何処に行っているのやら、
方向は定まらず、
うろうろしている。
50m走5秒36の彼女。
茶色になった井戸が現れ、
あっという間に消える。頭上に浮かぶ、
月みたいな丸には、青空が映り、移りゆく雲が
微笑。
足から電気が走って、髪の毛が
逆立つ彼女。
涙と思われる水は、
汚れた水。
夜で、月が埋められるまで、
泣いて過ごすことになる。
飲み込まれたという気分だが、本当は、
ずっと飲み込まれていて、
今、気付いただけ。
空が、水の鞭を打つ。
あら、まあ。みかんが暗いお空にあるわ。
みかんの上に
カーカーと、害虫がつきだす。
みかんから、虫を取ろうと、
足を一歩ふみ、
手を伸ばす。
届かない手を、鎖骨あたりに置き、
足に当たった、猫の
死体に気付く。
驚いて、逃げ込み、
錆びた、森色のペンキが剥がれた、扉を、
泣かせる彼女。
喧騒。
後悔。
唾液、落書。
真っ赤な
アイスクリームパーラーに入ると、
寝ている誰かさんが、
天に人差し指を掲げ、涙を流している。
誰かさんが去っていった方向を見上げると、
青空に、羽ばたいていく、
青いビニール。
白い水玉模様のビニール。
ひらひら、落ちて、
ひらひら、
落ちて、
ひらひら、
落ちて、
ひらひら、井戸に










エントリ13  複雑な単純。     音歌


あなた

だいすき。


大好きだから。
言葉は 並び変えるほど単純化
そして 複雑になっていった
足の踏み場もない程に言ったその一言は 一番単純だけど
伝えるのは困難だった


うん。知ってる


そう言われると 余計に頭を抱える
蛇口から滴る水滴 光りもしない
そんな 想像
(それか妄想)


ただ それだけなのに
今まで失ってきたものの 何百分の一くらいしかないのに
青い景色は 灰色になってしまう



だから、傍に居て。

…いいよ。



この先を二人きりで見つめる方が
今より酷く困難なのかもしれない

それでも 私たちは少しだけ
冷たい海に足先を浸した



あなた 

だいすき。




※作者付記: 初めての投稿です。宜しくお願いします。
メールマガジンで発行したものをこちらでもう一度使用してみました。







エントリ14  ね、     かんこ


いつも、おかしな現実が目の前にあって
逃げるスキをあたえない
そしてまた
時間がくれば責任を果たしに行くのね








エントリ15  乾燥     長月




  「さよなら」


 と 貴方に伝えようとした


 でも 喉がはりついて


 掠れて


 微かに空気を震わして



 唇だけが 言葉を伝えようと



 動く








エントリ16  人間     小鴨


今日という日を歩き終えた
くるりと振り返る
そうっと屈み込む

足跡は何も言ってくれなかった

それが少し寂しくて
ほんの少し泣きたくなって俯いた

あ、百円見つけた

それで上機嫌になる自分は
文字通り現金な生き物なのだろう








エントリ17  セントポーリア     ライラック


セントポーリアの望みは
いつもくだらない
ママのドレスが欲しいとか
パパのパイプが欲しいとか

セントポーリアの想いは
いつもとどかない
あの子とキスしたいとか
かれの子供が欲しいとか

小さなセントポーリアは
誰からも相手にはされない








エントリ18  人生     国士無双


人生ってのは知らぬ間に与えられたものから1つずつ卒業してゆくことなのかもしれない

誰もがそこから卒業してゆくために闘っているんだと俺は思う








エントリ19  やわらかアッパーカット     マスイジュウ


つかめ
つかんだら離すな
そして握りつぶせ
と福本伸行は言った 

雑踏の中を行く
私の周りで
瞬間的に温度が上昇する 

だって乾布摩擦してるんだもん!
ゴッシゴシゴシゴシ
ゴーシゴシゴーシゴシゴシ
ゴシッゴシッゴシッゴシッ 

交差点を渡って20メートルほど行った先
右に曲がると
ゴチックロリータがいた 

私は「下妻物語」ネタでナンパを試みたんだ
結果的にただのカツアゲだったんだ
タオルも取られたんだ 

カツアゲ君(ただ言いたかっただけですごめんなさい) 

どうしても
リアルに見えてこない
立体感がない 

19インチのナナオに映る少女は
「あたしパスタ食べたーい」と言った
今日も
明日も
明後日も 

要するに
それしか言わないのだ 

私は言う 言える
「そこのポスター全部ください あ 二枚ずつ」と

リュックサックにあふれるポスターが
まるで私の後光のように
道行く人たちも畏れ多いのか
誰も近寄らない 

夢のようだった
アタック25に出たんだ
私は青の席だった 

早押しボタンが硬くて
問題に答えようとするたびに
私は「心臓マッサージをしている人」
のようだった 

ここでそのときの
私の回答をお見せしよう 

「40%!」
「ニーチェ!」
「思い出!」
「太平洋ベルト!」
「ボン・ボヤージュ!」
「由紀さおり!」
「マリモ!」
「国民総背番号制!」
「40%!」
「文金高島田!」 

応援席のゴチロリが
私に向かってタオルを投げる
もうこれ以上見ていられない、と 

おまえ このタオル!
あの時のやつじゃないか! 

もう途中からクイズなんて
どうでも良くなっていた
結果は1枚だった
だけど最高に幸せだったんだ 


いうことを
「焼きそばバゴーン」を食べつつ
想像しては震え
震えては想像し 

そのうち朝になるのでしょう








エントリ20  化けもの     メソポタ



  だらら だらだら

  やつが来るぞ
   緑の化けもの
    女 子供を隠せ
     誰も知らないと言え

    ( ……稲光……
        ……不安げにざわめく青穂……
       ……暗い水路の魚がはねる……
         ……水の匂い…… )

   雨が来る
   やつが来る

   だららだらだら だららだらだら

  女はどこだと言っている
  子供はどこだと言っている
   高いところから不思議と冷たい声で言っている

   恐怖に負けるな
   誰もなにも言ってはならない











エントリ21  灯心     駱 大二郎


おれにある風のような翠の声
おれにある針のような旋律

みんな君にあげる
でもみんな意味がない

モン・サン・ミッシェルの道端に落ちてる石にだって
どれも敵わない

「時間がきましたさようなら
  気が向いたらまた挑戦して下さいね」

ちょっとは翠を蒼に背伸びさせようとするのに
必ず針を逆に握って
親指に赤くて丸い滴ができる

怪我だよ
誰も心配しない程度の

プツプツ 月にプツ
ツーツー 赤い粒の星

意味がないものはリサイクルもきかない

ほら、また夜が明ける
滴にそっくりの朝が
沈黙の鞭をしならせてやって来る











エントリ22       紅粉チコ


陽はすぐ暮れる

家路の途中で持ち上げる

公衆電話の重い受話器

聞ける術など無いくせに

今日もまた

じっと待ってる

聞こえてくるのを

じっと待ってる








エントリ23  見るよ?     やさぐれOL


知ってる?あなたが切ったあなたの髪の毛を私が食べちゃったって
気持ち悪いって言われるから黙ってる
でも、気持ち悪いね

知ってる?あなたとあなたを合わせると気持ち悪いになるって
わからないよねこんな話
あなたはさっきすました顔してタモさんの話に笑ってたしね

知ってる?タモさんだっていつかはいなくなっちゃうことを

時間は過ぎるものだし湯水は流れるものだし風は吹いていくものだし
秒針が動くその瞬間にも世界は変わっていくの
誰にも止めることはできないの
本当に誰にも止められないの
だから進むか止まる、どちらかしかこの世には存在しません

なんて考えると虚しくなります

さっきすまして笑ったあなた
ところが今ここにいるあなたはどうやら
私の味方をしてくれているようだ
ねえ、
あなたの一瞬たりとも止まらないこのどうにも大きく止まらない世界を
見ているそれ、
見るよ?
見るよ?
見るよ?

あなたは「それ」を私のこのどうにも大きくとまらない世界を見ている「これ」に吐き出し、私はそれだけでは足りずに体中に塗りたくったり悲鳴をあげたり、出来る限りのことをした。時間は止まってる。確かに時間は止まってるの

埃だらけの部屋も
あなたが切ったその髪もあなたの「それ」に見られていたんだ
そしてあなたは今のかけら一つ残さず移ろっていく

私は今あなたをみている
私は今あなたのことを探している
私は今あなたがどこにでも行けることを知っている
私は今あなたがとても気持ちがよく空を飛んでることを知っている
私は今あなたがここにいることを理解したくない
私はあなたがここにいたことを大事に思う日がくる
私は今あなたの「それ」つぶしてくりぬいてしまいたい








エントリ24  希い望む     カノイ


…やっと見つけた
あんただろ?、あんただよな?
だったら早く片付けてくれ

折って 壊して 砕いてくれよ
オレの中の
少しの土に 僅かな水に 微かな光に
そんな「隙間」に
あとからあとからあとからあとから
生まれて生まれて生まれて生まれてくる「希う望み」

そんな嘘
そんなマガイ物
そんな空しい蜃気楼
そんなロクでもない妄想の上の楼閣  

端からまとめて根こそぎ全部
撃ち抜いて 切り裂いて 叩き潰してくれよ

そんなモノ無ければ
はじめから無ければ
崩れて 流れて 消えるのを
消えて行くのを見ないで済むんだ

そんなモノ
そんなモノ無ければ簡単なんだ
簡単に
簡単に消えられる
消えられるんだ
簡単に
消えられる
消えられるのに…

なあ…あんた
だから…
さっさと片付けてくれよ
頼むよ……