第33回体感バトル詩人部門


エントリ作品作者文字数
01理由神上小鳥440
02憐華 れんげ椿※データ無
03 デ ジ ャ ブ 鵯 砂弐依135
04同じ空の下でさくら、兄さん元気だよ。339
05時の掟黒羽 奏192
06ホンキ日和143
07オヤユビ〓 n a n a 〓125
08キスしても良いですか沙汰172
09どうしようもなくねめめ273
10天井が鏡だった、夜かんこ77
11+ sweet rose +姫川 理瑠187
12好きだから。みらくる。125
13媚薬の牢獄月夜※データ無
14伝わらない絢神林檎223
15「孤独の定義」222
16小鳥やさぐれOL156
17    人  。 Oka-taka35
18落ちたガラス駱 大二郎164
19夢追い人バイオラッド242
20自分の足で 自分の意思で国士無双151
21誕生日jin364
 
 
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エントリ01  理由     神上小鳥


つたう赤は命の欠片
そしてあたしの涙のカタチ

何にも知らない親どもは
くだらない言葉で愛を語った


「いつも気にかけているよ」


貴方達の愛はそんなものか

三年もの間気付かずに
その事実すら知らないくせに

貴方達の「いつも」は
『三年に一度』のものなのか

悲しくなった

寂しくなった


「死にたかったのか」


どうしてそんなこと聞くんだ

人が死を恐れなくなるなんて
あたしには想像できない

あたしは生きたかった
生きたかったんだ

そうやって自分を確認しなくては
生きていけなかった


「死ね」


何度言われ続けたら良い?

この世の全てが
あたしを憎んでいる気がした

苦しくて

寂しくて

それでも死にたくなかった
死ぬのは恐いんだ

死んだらきっと皆
喜んであたしを忘れにかかる


だから


生きたかった

こうしてでも

生きたかった

認めてほしかった

あたしはここにいても良いんだと

甘えだってわかってるよ


それでも


死ななきゃいけない人間は
どこにもいないって

そう信じたかったんだ


この手をつたう命の欠片
そしてあたしの涙のカタチ

何にも知らない人間たちは
くだらない言葉で世界を飾る






エントリ02  憐華 れんげ     椿


葬に捧ぐは 優しき鬱
縋れず 涙す 忌まわしき刻

今宵の月まで 彼方を抱き
雫が奏でる儚さを 眠り 詠おう

憐れみ悲しむ一輪の華
窓辺は雨に濡れ 霞む夕間暮れ
憐れみ散り逝く一片の夜
悠遠は葬の底への回帰が招く

行かないで 葉を散らす風
木漏れ日に隠れ 交わす約束
ただ今は巡り逝く四季を数え
やがて咲き乱れよう 憐華に満ちた最期

 






エントリ03  デ ジ ャ ブ      鵯 砂弐依



 右手に右手を掴まれて
 微睡みまでもが跳んだ宵
 夜の幕と立待月は
 それ、総て、
 ハクチューム

 何度目か、現実に戻れた
 夏のコンクリの上だった
 冷や汗、陽炎、自分の影


 今までのものは幻だった

 遠くで蝉が哭いていた

 今までのものは幻だった

 まだ、眼を閉じているのに気がついた








エントリ04  同じ空の下で     さくら、兄さん元気だよ。


諸君、状況は厳しい
周囲8キロメートル四方を包囲されてしまった
生還率は2%
幸運を祈る
出来るだけ遠くへ飛べ、希望を捨てるな

風が吹く毎に、小部隊はそれぞれ空に舞い降りる
遠くへ、遠くへ
白い綿毛の落下傘は風に煽られ、乱高下する
遠くへ、遠くへ

報告!
第3部隊は、下降流に見舞われ、ほぼ全員が墜落
アスファルトと車輪の狭間で全滅状態
全兵に告ぐ、遠くへ、遠くへ
遠くへ飛べ



5月の眠たい風は、大手町の交差点をすり抜け
オープンカフェのパラソルにほお擦りしていきます

「あ、たんぽぽ!」
銀行の制服を着た清楚なOLが小さくつぶやきます
銀のスプーンで、ミントンのカップに注がれた紅茶から
白いタンポポの綿毛をすくい上げ、そっと歩道に零します

今日も、暖かい、何事もない一日です
交差点を配達のバイクが通り抜けていきます






エントリ05  時の掟     黒羽 奏


振り返ると 足跡は無くて
向き直ると 道筋は見えず
笑うがいい
私が
いかに愚かで在るのか

若年のものを見て 思う
私は何も出来ていなくて
自分だけ特別な気がして
怒るがいい
私が
いかに幼稚で在るのか

知らぬ間に流れていて
気付かぬまま掬われていく
嘆くがいい
世界が
いかに矮小で在るのか

全てに等しく
何にも動じず
残酷に優しい その支配は

明日を今日にして
今日を過去にして
過去を抱きつぶして

とどまる事を
決して許さぬ







エントリ06  ホンキ     日和


あなたのホンキを見せてみな。

チャンスは1回。

やり直しなんてきかない。

つないだ手を離すのは、

心の配線変えるのは、

いつだって簡単。

ただ忘れればいい。

さあ、赤をきる?それとも青?

やり直しなんてきかない。

震えてるのはあなたの手だけじゃないんだから。

チャンスは1回。

さあ。

あなたの本気を見せてみな。







エントリ07  オヤユビ     〓 n a n a 〓


ピ、ピ…
ピピ…
ピピピ…
ピピ…

たった4文字…

だけど、

この4文字は

この気持ちだけは

どうしても君に送れない…

送信ボタンを押せないの

このオヤユビが

いつもキャンセルしちゃうから…



ピ、ピ…
ピピ…
ピピピ…
ピピ…

送れない 『だいすき』 を

今日もオヤユビで打っている。






エントリ08  キスしても良いですか     沙汰



「キスしても良いですか」

 良いとも悪いとも言ってないのに唇を奪われる



 どうせするんなら聞かなくても良いのに

 そう 文句を言ったこともあるけど

 素直に頷けるわけじゃないので よしとする



「ずっといっしょにいれたらいいね」



 そう囁く声に 頷いて

 世界的なプレイヤーになるであろう彼の目を見ながら

 そのとき一緒にいるのは自分じゃなければいいのにと思った






エントリ09  どうしようもなくね     めめ


好き

伝えることはできないけど
伝えることはしてはいけないのだけど

スキだ

授業中に寝言で名前を出してしまいそうなくらい
思わず机にハートと名前を書いてしまうくらい


ぁあ・・・なんて愛しいのか

苦笑いした顔も
困った顔も
楽しそうな顔も
笑いをこらえている顔も
その長くてでも不器用に動く手も
逃げるのが速いその足も

全部が君で

君の全てで

その全てが

好きだよ

豪腕力士に心臓をつかまれたくらい
毎日苦しいの

って言えば

おおげさだよ

って笑うのかな

でも胸をかきむしりたくなるくらい

切なくて

想うだけで

愛しい

君への想いはきっとホンモノ

伝えてはいけないけど

想うことは許して

スキだよ

好きなんだ







エントリ10  天井が鏡だった、夜     かんこ


裸の女優

パンツを脱いだ裸の王様

天井に映る白いシーツに髪をなげ出した冷めた目と演技の温度差は
朝が来る前に埋める

眠り始めたら、本当の月の反射の下に抜け出すから








エントリ11  + sweet rose +     姫川 理瑠


そのやわらかい髪の毛だとか
そのワイシャツの肩幅だとか
そのグレーのスーツ姿だとか
その薄情そうな薄い唇だとか
そのわざとらしい指輪だとか
その細く乾いた指だとか
その慣れた手つきだとか
その煙草を燻らせ黄昏る背中だとか
そのすれ違いざまのほのかな香りだとか
その白々しい笑顔だとか
その余所行きの声だとか
その愛しそうな目つきだとか

なにもかもが甘美で
潤いが否めないから
甘い言葉でわたしを陥として


※作者付記: もう終わりにしなくちゃって思ってるのですが。







エントリ12  好きだから。     みらくる。



いかないで

背を向けないで
こっちをみて


拒絶しないで

頑張るから
あなたにきらわれないように


どうしても

あなたはいくの
もどれないの


……分かった。

待ってるから、私

あなたのコト

ずっとずっと

この場所で


だから、



―――――――気が向いたら、会いにきて。








エントリ13  媚薬の牢獄     月夜


切なさに
心臓が止まりそうだった
切なさに
喉がかき切られそうだった
幾度となく握った拳を
ゆっくりと開いては
呼吸を整えていました

知らずにあなたはいるのでしょう
無造作にあなたは笑うのでしょう

罪だと気づきなさい
虜囚のように捕らえては
離さないのは罪なのです

この翼をもいで
この鎖をとって
飛べなくなってもいいから
この束縛から逃れたい
無意識に私を絡め取る
枷を取って もうここへ来ないで



本当は
失うことなんてできないだけ
そう
この檻の鍵は
私が持っているのだから






エントリ14  伝わらない     絢神林檎


「好きだよ」
真剣にあなたにそういったのに返された言葉は、
「私も」
という冗談な気持ち。
どうして真剣に受け取ってくれないのだろう。
それは同性だからという、単純な言葉ですまされるのだろう。
違う性でしか結婚できないという、変な理屈のせいで、私の片思いは一瞬でくずれさってしまった。
どうして愛し合うものが一緒になってはいけないのだろう。
いつかそういう固定観念とか、偏見だとか、すべてこの世から消え去ったら、一緒になろう。
    お互い愛しあうもの同士として






エントリ15  「孤独の定義」     涼


ある日 突然
いつも見なかった夜空を見上げて
柄にもなくセンチになることは
ありませんか?

ある日 突然
忙しさの中に消えていった思い出を
埃をかぶったアルバムから探すことは
ありませんか?

ある日 突然
疎遠だった友人に会って
思い出のあの曲を歌いたくなることは
ありませんか?

ある日 突然
大勢の人の前で泣き喚いて
誰かに慰められたいと思うことは
ありませんか?

ある日 突然
自分が「自分」であることをやめて
人気のない海へ行きたいと思うことは
ありませんか?

「孤独の定義」


※作者付記: 高校時代に書き溜めた詩の一つです。







エントリ16  小鳥     やさぐれOL


もうサンダルでもいい季節です  ペタペタ


桜が全て散った木々の隙間から垣間見える事象は

きっと 全て このどこまでも続く木の為の事象


そこを借りて小鳥はおかあさんの待っている

羽毛飛び散るおうちへと 上手に 弧を描ける様になって



それを ファンタオレンジ飲みながら 

去年のサンダルで ふらふらしちゃう それ以外の子 他の子











エントリ17      人  。      Oka-taka



















ごみばこ に入れる




におぃの擦り傷 呼吸する
 元のばしょ











よわくひらいた

































エントリ18  落ちたガラス     駱 大二郎


コツンと床に落ちた音。
伸ばす 伸ばす手、とどかない。

こぼれ落ちた隙間
覗きこんだらビー玉のような
青いガラスが転がっていた。
中に君が映っている。
並木道にあるあの喫茶店
窓際の席に座っていたときの
外を眺めていた横顔
茶色い目にも髪にも青が滲む。

誰にも言えない秘密が
ベッドと壁の隙間に転がっている。
ぴったりの青だね。
秘密を隠すには丁度いい。






エントリ19  夢追い人     バイオラッド


慌ただしく見えるこの街も
この川の土手からは静まり返って見える

欲望渦巻くこの街を夢掴むために走りぬけ
辿り着くのはいつもこの場所

夢はいくらでもあるさ!
だけど一番やりたいことなんて分からない

その答えが分かるわけでもないのに
屁理屈と言い訳を並べて
ただ退屈しながら意味の分からぬ授業を受けている

からからに喉が乾くほど夢語り合いたいよ!
手は届きそうだけど何かがそれを遠ざけてしまう

ここに辿り着くと いつも涙が溢れる
黄昏た空に映し出された街のどこかで暮らしている誰かの 夢を追い続ける足音が聞こえる






エントリ20  自分の足で 自分の意思で     国士無双


この社会に知らぬ間にばらまかれた命
皆 自由に動くことすら考えもせず生きている

ある日 俺は自分が動けることに気付いた
そっと だけど力強く大地踏みしめ
このまやかしの世界を出ていった

偽りの社会構造
俺一人消えたところで気付きもしない
あらかじめ与えられた大地の上に
我がもの顔で立っている
そんな奴に俺はなりたくない







エントリ21  誕生日     jin


 誕生日

 
 毎日が充実している
 喜びに悲しみが混じり
 苦しさに楽しさが隠れている
 腹の立つことも多いけれど
 捨てたもんじゃないと思えることもあって
 少し人生が判りかけてきた
 今日は私の誕生日
 この世に生を授けてくれた
 二人に感謝をする日

 子供の誕生日を忘れた母
 そうか誕生日か忘れてたな
 少しさびしげに話す口ぶりに
 思いを素直に告げられなくて
 お祝いを言って欲しかったんじゃない
 ありがとうを伝えたかった
 今日は私の誕生日
 この世に生を授けてくれた
 二人に感謝をする日

 八十になるこの歳まで
 祝ってもらったことなどないという父
 いまさらそうじゃないとも言えず
 口ごもる私
 誕生日だから一緒にいたくて
 感謝の気持ちを伝えたくて
 でもできなくて
 そっと心の中でつぶやく
 今日は私の誕生日
 この世に生を授けてくれた
 二人に感謝をする日