QBOOKS 第48回体感バトル詩人部門
エントリ作品作者文字数
01日々神上小鳥319
02一歩踏み出す黒霧 島男387
03アンリyusukelyu
04其れはきっと不知火。海月82号414
05憎しみを唾液に変えているたこ・クラゲ608
06世界の何処か193
07こわいものみんながなやんでるのが救い57
08オレンジジュース結城森士447
09哀痛永愛147
 
 
 ■バトル結果発表
 ※投票受付は終了しました。
バトル開始後の訂正・修正は、掲載時に起きた問題を除いては基本的には受け付けません。


エントリ01  日々     神上小鳥


緩やかな痛みが僕を刺す

もう伝えたい言葉すら

忘れてしまったのかもしれない

本当ならば僕は

もう少し自由で

もう少し優しく

もう少し強く生きられたはずだった


肌を伝う雫が嫌で

振り払うように走る

名もなきアスファルトの上を

ひたすら全力疾走

それはもう泥沼のような無限のループ

茂る夏草はもう事切れた後かな


きっと明日は来ないんだろう

今日と今日が隣り合って

明日と昨日が混じりあって

生きることにすら疲れてしまう僕らには

その境目を垣間見ることにすら

目をつぶろうとする


穏やかな眠りが世界を包む

きっと伝えたいことはもう

言葉がなくたって伝わるんだろう

本来ならば僕らは

もう少し自由で

もう少し醜く

もう少し真実の自分と生きていいはずなんだ


茂る夏草は今

明日を夢見

昨日に終幕を告げる。




エントリ02  一歩踏み出す     黒霧 島男


三キロも行けば、わかるよ
本当?
本当。とにかく、三キロ
本当?
そうだよ。三キロ
どうして?
それは、僕にもわからない
本当?
本当。とにかく、わからない
本当?
そうだよ。わからない
わからないが、うまくいく
わからないのに?
本当。とにかく、うまくいく
どうして?
そうだよ、それが本当だから
どうして?
それは、「本当は本当」だから
本当って何?
それは、俺にもわからない
本当?
本当。とにかくわからない
本当?
そうだよ。わからない
とにかく、一歩踏み出せ
どうして、一歩踏み出す
とにかく、一歩踏み出すんだ
どうして、一歩踏み出すんだ
僕に説明できない「本当」を君が説明するため
君に説明できない「失敗」を私が説明するため?
信じるのに一人
失敗するのに一人
説明するのに一人
ああ、全然進めないじゃない
本当?
いいえ。それだけは、本当の嘘
ああ、僕も犠牲者か
ああ、君も犠牲者か
よかった、よかった
さあ、ならば、一歩進んでくれ
本当?




エントリ03  アンリ     yusukelyu


「アンリ」

 
あなたがどこから来たかなんて忘れたわ
きみが何していようと構わないさ
私たちお互い誰かだなんて
本当はそんな余計なこと
聞かなくったっていいのにね



あなたと私はひとつ



ぎくしゃくするのは嫌なの
捉えどころのないままがいいのさ
境界線なんて引かない方がいい
素敵な時間にしたいから
耳元でささやいて魔法をかけて



あなたと私はひとつ
こうしていれば親密になれる

あなたと私はひとつ
仮面は外して

あなたと私はひとつ
ひとつに融けあう

※作者付記:  こんにちは。





エントリ04  其れはきっと不知火。     海月82号


冷たい部屋に二人
水盆に清水と水銀を盛って
口付けだけを今は未だ
交わし続けるように媚薬
踏み外す様なレールすら、
最早見当たらないと云うのに
貴方はどうして背後《背徳》を視るの?
貴方と俺だけの結界。
炎が深海で揺らめく
白い肌と赤い口唇
そうして唯青く包む世界

貴方の名前を呼べば
切り取ったも同じことで
魂すらもう誰も手に取ることが不可能《出来ない》
先見の夢見が
薄く笑うは罪悪か後悔か
貴方は縋って涙するの
俺は貴方を喰んで愉悦する
どうしてそう泪で厭うの?
どれほどまでに言葉を尽して
貴方のことばかりを瞳《レンズ》に映してきたのに
月光に水銀が煌く
足を浸して纏わり付いた、
貴方は俺だけのモノなのに
嫉妬が蒼い炎を焼く
揺らめいて、揺らいで

死神の大鎌さえも割って
喪服の白衣を纏った
貴方の蒼褪めた瞳に蒼い月が映る
水盆は世界に通し黄泉《夜見》が嘲う
腕も手も指も絡めて
たとえどこかが千切れたとしても
貴方を離さなくとも好いようにと、
結界で貴方と俺を切り刻んで瞼を閉ざす。


※作者付記:  読み方はこうです。宜しければ。
清水―しみず。喰んで―はんで。白衣―しろごろも。嘲う―わらう。





エントリ05  憎しみを唾液に変えている     たこ・クラゲ


奨学金をくれる団体
怪しいと思ったんだよ
差別を助長する団体だとは
いろいろいらないことまで
おれに聞くから
怪しいと思ったんだよ
奨学金をくれる団体

国家レベルで差別する
素敵な国だぜ、この国は
人権なんか無視さ
無視さ

おれのその後は
聞くのは止したほうがいい
おれのその後は
聞くのは止したほうがいい
が、
あることないこと
まるで、腐った女みたいに
ぺちゃくちゃ
あらゆるところで蔓延し

おれはただ晴れた日でも
灰色の雲、目に映して
うつむき加減で
憎しみを唾液に変えている

循環せぬ溜まりこむストレス
苦しいと思ったんだろう
うつむき加減の彼があんなこと
いろいろ過剰なほどに
彼は痛めつけられ
苦しいと思ったんだろう
循環せぬ溜まりこむストレス

世界レベルで痛めつける
素敵な世界だ、この世界
人権なんか無視さ
無視さ

彼のその後は
聞くのは止したほうがいい
彼のその後は
聞くのは止したほうがいい
が、
あちらやこちらで
まるで、布袋みたいに
ぼこぼこ
あらゆるところで痛めつけられ

彼はただ晴れた日でも
灰色の雲、目に映して
うつむき加減で
憎しみを唾液に変えている

妄想の中で垣間見た
循環して溜まらないストレス
黒人奴隷が王様を痛めつけていい
法律のある世界
もはや、そこに住むしかない
火星はどっちに行けばあるんだ
バスにさえ乗れないから
歩いていこう

不平等による問題はもはや
平等では解決できないだろう
が、
神も仏も殺しを助長するくらいなら
神も仏も殺しを助長するくらいなら
これが定めなのかと聞く前に
これが定めなのだと
憎しみを唾液に変えている




エントリ06  世界の何処か     泪


真夏に落とされる爆弾
母なる大地を焦がし
遠く 遠く 空高く
あの花畑が燃えるのです

君の優しい微笑みが
彼をやる気にさせる
君のちょっとした言葉が
彼にミサイルを持たせる

君のことが大好きだから
あの花畑は燃えるのです

照りつける太陽
淫らな空
その包容力で
僕を溶かして


煙草の灰がポトリと落ちて
立ち昇る煙が途絶える

淫らな空
僕を溶かして
照りつける太陽

ジジジ


晴れた空
に浮かぶ雲
白い 白い
大きな




エントリ07  こわいもの     みんながなやんでるのが救い


こわいもの みつけた

とてもこわいもの

しらないふりしても

すぐにみつかるから

みつけたらみつかるから

つまりはそんなもの

 






エントリ08  オレンジジュース     結城森士


凍死しそうな真夏の夜に
電線に止まっているカラス
銀色のグラスに注がれた
オレンジジュース
俺の体は透き通って
喉を通過する無感動
何も飲んでいない

凍死しそうな真夏の夜に
女は去り、街を徘徊する
そして午前二時の黒猫
闇の中をカラスが鳴いている

『一体誰を呼んでいるのか
 お前が鳴くには早過ぎる
 それとも
 大切な者を失った俺を
 笑っているのか

 そんなに繰り返し鳴くな
 寝ぼけているのか
 それとも
 嫌な夢を見てしまったのか

 落ち着いて眠れよ
 夜の闇はお前に優しくないはずだ』

自分の発した声に目を覚ます
それにしても喉が渇いた
オレンジジュースを注いでくれ

凍死しそうな真夏の夜に
立ち並ぶ家々の
遥か向こうから
喧嘩した女が
俺の家を睨んでいる
今にも潰されそうで
怖い

凍死しそうな真夏の夜に
夜のお星様はオレンジ色に光っている
自室の扉を開けると
女が立っていた
「し・・・」
俺は言葉を止められた
「感情は言葉に操られる」
俺は何か喋ったが
何を喋ったか忘れた

朝焼け
電線のカラス
太陽のグラスに
笑顔を飲みたい

朝焼けの俺に
オレンジジュースを注いでくれ




エントリ09  哀痛     永愛


夜 静かな 胸に染みる 涙の雨

タバコの煙が 身体に絡みつく

濃いめに入れたコーヒー 舌に 苦く残る
 
砂糖を 1つ落とす・・・
 涙が一粒 胸に落ちる・・・
   

『もう 泣かないで・・・ 僕が側にいる』 


彼方の胸は 暖かすぎる・・・
     優しくしないで・・・胸が痛む
哀しみが胸に 溜まるから・・・