第52回体感バトル詩人部門

エントリ作品作者文字数
01手紙Hdl364
02大好きな彼方永愛182
03はなゆう52
04僕らの未来神上小鳥213
05ONIGIRIharuo251
06仏教徒の息子黒霧島男322
07蟻を10匹空白265
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ01  手紙     Hdl


今はまだ見えない
あなたのことが心配です
今はまだ知らない
あなたの家族も心配です

言葉も文化も違うというのに
わたしとあなたは出会ってしまった
それだけでわたしたちは国境を越えた
もし世界に国境がなかったら と
思ったことさえないというのに

あなたが心配です
隣にいるともだちと同じくらい
あなたのことが心配です

あなたがもし生き残れなかったら
わたしに何かを知ってほしい と
あなたは言っていましたね
わたしはまだその「何か」を知らない
知らないうちに
行ってしまわないでください

あなたが心配です
まだ出会って1ヶ月もたっていない
あなたのことが心配です

もしあなたが助かるなら
わたしの国へ来てください
けれども あなたは自分の国を
捨てられないというのでしょう
あなたは自分の家族を
捨てられないというのでしょう

あなたのことが心配です
わたしには祈ることしかできないけれど



※作者付記: イスラエルにいる私のペンパルへの手紙です。
来年夏にシリアとの戦争を控え、彼は日本に行くつもりだと言っています。
しかし、家族が日本に来ることを拒むなら、彼は来ないとも言っています。
もし、イスラエルに残るなら、生き残ることは難しい、と、彼は言っていたのに。
戦争が私の友達の命を奪おうとしているのに、私は何もすることができないのです。
メールで悲しさを訴えていた彼のことが心配です。






エントリ02  大好きな彼方     永愛


1年ぶり 大好きだった彼方見かけた気がした

振り返り・・・

気のせい??そんなはずない

毎日見てた彼方の後姿

間違えるはずがない

私に気づいてくれない彼方

気づいて欲しい・・・

でも、無理だった

勇気なんてなくて

離れてく。

ただ 彼方の後姿見つめてる私を

振り返ることもしないで。

彼方の1歩づつが 

寂しさとなって私の胸に溜まってく

ねぇ・・・私のこと、忘れてしまったの??

彼方は変わってしまったの??







エントリ03       はなゆう


ポストに手紙を

太陽に光りを

たんぽぽには水を

緑には花を

青春には希望を

夜空には星を掲げ

頬には恋をあげましょう







エントリ04  僕らの未来     神上小鳥


過ぎ去りし時は揺らぐ

記憶の断片を繋げた

いびつな形のパズル

原型など気にもしないから

成立した僕らの世界


焼けたアスファルト

揺れる陽炎

息絶え絶えにさ迷い続ける人

目も眩むような長い旅路

そして

汗ばんだ手を掴んだ少女


オアシスなんてない

のどを潤す聖水は

愛する誰かの涙

オアシスなんてない

疲れを癒す木陰は

愛する誰かの歌声


過ぎ去りし時は揺らぎ

原型を留めぬ記憶たちの流星雨

苦痛を糧に生きるなら孤独

君と見る未来があるから

過去も笑いあえる明日に変わるんだ







エントリ05  ONIGIRI     haruo


おにぎりを食べて
あぁ、満腹だと
それで終わる人がいる

種類が豊富だから
食べるから飲み込むへ
ゴールを間違ってしまった人がいる

どれが何番目に美味しいのか
レポーターのように
答えを準備している人がいる

おにぎりを食べ続けることが
作り手への思いを証明することだと
固く信じる人がいる

微笑ましいだろう?
彼らの滑稽さといじらしさは
その一途な姿勢は

心の底から不味いと思うものを
美味しいと思うのは
とても難しくて

美味しいか分からないものは
知っている振り
口はいくらでも動く

例えそれが賞味期限が過ぎて
腐りきっていても
自分を操れば昨日と今日は変わらない







エントリ06  仏教徒の息子     黒霧島男


人の死の横で生き
仏壇の横で寝る
人の死の横で生き
墓の饅頭を食う
後ろめたきは
我が生命が
十全たらんこと
後ろめたきは
我が生命が
後ろめたきこと

裸足で走って転び
寝小便もへっちゃら
歪んだ眼鏡をかけ
油断な目を恨む

人の死の横で生き
仏壇の前で唱え
人の死の横で生き
墓に饅頭を供え
後ろめたきは
我が生命が
十全たらんこと
後ろめたきは
我が生命が
後ろめたきこと

救いを求めて三千里
自転車漕いで丸裸
月面着陸大成功
奪ったバナナは幾らなの?

仏にすがりたいが
宗教は大嫌い
気休めなどいらない!
と叫んでは
生ぬるい現代に入り浸る

人の死の横で生き
人の生の元で死ぬ
ならば後ろめたきも
後ろめたくなし
歪みも補正せず
歪みでアートする
心意気なぞまったくなく
ただ戯れては戯れ
世界の要求に
歪んだ問いを返すのみ







エントリ07  蟻を10匹     空白


ひねくれ者の

蟻を10匹

わからないかもしれないけど



ぶっきらぼうの

蟻を10匹

照れくさいからさ



喧嘩しても

蟻を10匹

いつもごめんね



挨拶代わりに

蟻を10匹

何度言っても足りないよ



この出逢いに

蟻を10匹

ただのすれ違いでも



この命に

蟻を10匹

僕がいること



当たり前に

蟻を10匹

今日に昨日に明日に



向日葵になって

蟻を10匹

眩しい太陽に



コート探して

蟻を10匹

厳しい寒さに



改めて

蟻を10匹

小さな背中に



思い出話と

蟻を10匹

見上げた顔に



さりげなく

蟻を10匹

並べた肩に



影でこっそり

蟻を10匹

悪口の方が多いけど



忘れないうちに

蟻を10匹

胸に抱いた

蟻を10匹

言葉少なな今の僕の

蟻が10匹

空気中に並んでる