■古い白黒写真より 中津川渉さん
感想:
今回は5作品ともメッセージのはっきりした作品であった。だのでそれもイライラせずに読んだけれども、みんなあまりにもまともすぎて(私生活でも真面目な皆さんなのだろう)、なにしろ、うまみがない。
やっぱり小説を書く以上、何か一つでいいから面白い部分が欲しいじゃない。それが研究者のミスだったり、ストーカーと間違われる張り込みでもなんでもいいんだけど、そうじゃなくて、今、あなたが、この作品を、書く意味を、読者である私は、見出せなかった。
なにか、この作品の作者が、あなたである必要では、あるのか。
一人の作家としての持ち味は、なんなのか。
それは、決してネタには出てきません。
見えてこないのです。
なんかおずおずしてるから、ネタも小さくなるし。
中津川さんに投票するのは、毎回毎回自分の文体を持っているからです。
ファンだから投票します。そういうわけです。(M)
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感想:
どちらも良いと思うのですが。トータルとしては中津川さんの方に。
『張り込み』はとりあえず面白いです。でも「張り込み捜査の結末は如何に」と動かされてきた読者の魂は「いまいち仕事に不熱心な男のトホホ」に落とされてどこへ行ったらええねんと。つまりこれは警官が主人公のストーリーの流れにある1ネタとしては良いのですが、ここだけ切り出した場合読者は迷ってしまう。週刊誌や携帯のミョーなリアリティとかはすごく良いし、トホホも面白いのに、何か成仏できない感が残るみたいな。
『古い白黒写真より』は、まあそういう点で比べれば迷う心配はないのですが、それ以上でもない感じ。想い出話として普通に聞ける、それだけのこと。手違いか入れ違いか効果的治療が受けられなかった芙美子さんに対する「わたし」の心情は十分に察することができますが、しかし日記でも報道でも随筆でもない、小説はもっと手段を選ばぬあざとい暴力があってもいいかなあと、個人的には、そんな気もします。それでも読んでいけるのは締まった文体のおかげだと思います。(蛮)
投票者: その他のQBOOKS参加作者