第19回体感詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1喪失西村美砂767
2嗚呼 悲しき運命黄加425
3joy八白363
4咆哮李衣127
5言い訳桃色1026
6デバイスMIC0
7神宮 理乃90
8ヘリコプターの音にのせて彼女のことをおもいだす俺はセンチメンタルナツコ254
9そらToWa128
10なぐさめに似た何かを。千代路253
11アイノハナシブキ毒薬透櫛264
12The snow melts月弘萌奈香89
13へいわくも268
14君と僕のチカラ渡部宣子423
15ねじれの位置?さちこ。0
16予め紅粉チコ99
17現実千早丸28
18歩(あゆみ)うらぽん232
19ダンスの仕掛人たち三浦202
20対・相性むん150
21うちゅうを救うものあや01442
22時間どろぼう九つ114
23ブースターkaco262
24恋愛方程式ニ基ヅイテミナツキアキラ336
25降雪沙礫192
26軌跡のない道あちか283
27携帯電話小山敦子314
28詩織mint477
29僕の幸せ霞洋介367
30Scary&TearsMick144
31哀反対ミラージュ。 りら370
32駅前の妖精西山天音350
3352閑流52
34悲しいかな、そんな感じ桜樹鉄太249
35現夢想如月ワダイ132
 
 
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エントリ1  喪失     西村美砂



時間それは捕獲されたのかするのか。
またはちょうど、狭間にあたしが入れるようにしたのか。
私は、転がり落ちながら、この世の中を見ている。転がり砕け、痛いのに痛みに気づいちゃいけない、この現代に私の存在は何なのか。
ただそこに留まって居たいだけだった。また蹴飛ばされるだけ。いき急ぐ汚れた目をした大人には、ただの屑でしかない。あのおじさんのヤジは汗まみれだ。
今日も満員電車の中、何を思うのか。箱に詰められた大人たちは汚い。くたびれている。何を励みに生きて居るのか。最近心から笑ったことなんてあるのか。あんなふうに私も時代に飲まれ腐っていくしかないのか。
汚されて弱くされたこの膝で歩き続けろとでも言うのか。腕が重い昨日のあいつのせいだ。そこに既にあるセーターは吐いたあとのきれっぱしだ。お母さんの作ったスパゲッティなんてもう何年も食べていない気がする。
神経質な彼氏、表面は穏やかだが、キレる準備ができている。
あっ爆弾。しかし彼を蹴落とすことは忘れた。こうしてあたしは彼を守り続けるのか。
彼が書いたデッサン、きれい過ぎるのか、汚れを見ない振りしてとぼけようとでもいうのか。群集は歩き続ける。ナチスか。誰かに仕方なく従って、耐え切れず大声で彼は彼の口を開けるが、その口をつく単語はすべてジョークに聞こえる。
今、この時計ほいかに壊すかである。むしろあたしが消えればいいのか 。時は来ない。
そのスナップは現実。重力ただ重い。そこに一匹のウサギが行くようだ。彼は気違い。窒息させたが、彼はあきらめない。否彼にはその感情がない。彼はこのデカイ街の、裏の中枢を知っている。知っている、気違いが気違いに制裁を加えられるか。 すべてを壊したが・・・。実験室に再度入る。背後にこの叩く音のたわごとより、よく獲らえたいのは、今このとき、この時。生きたいと、願うことだ







エントリ2  嗚呼 悲しき運命     黄加


雪解けの季節 別れの季節 悲しい季節
桜咲くきせつ 始まりのきせつ 出会いのきせつ
雨多きキせつ 幸せのキせつ 華散り咲くキせつ
太陽輝くキセツ バカンスのキセツ 練習のキセツ
風冷たくなりゆく季節 活動的な季節 街イロヅク季節
雪降る季節 最後の季節 恋催しの季節
そしてまた…雪解けの季節 
一年は早すぎる 思い出が早すぎる
もっと一緒にいたかった もっと想いを伝えたかった
ケドもうあなたは違う世界の人
私とは違う世界の人 思い出が  悲しすぎる
今でも伝えたいことがある 簡単なコトバなんだけど
私には難しすぎる 伝える勇気が無いから
言い切れないほどたくさんの想いが 心の底に張り付いている
一つ一つ剥がしていくのは 時間かかるし 苦しいことだから
言わないでおこう 自分のためにも あなたのためにも
コトバは自分を守るものとなる 言葉はキズをつけるものになる
あなたと別れはつらいけど 涙は見せないでおきましょう
後でこっそりと泣きましょう さようなら さよなら 愛しき人 







エントリ3  joy     八白


   x = 0.99999…
  10x = 9.99999…
10x - x = (9.99999…) - (0.99999…) = 9
   9x = 9
   x = 1


   x = 0.00000…
  10x = 0.00000…
10x - x = (0.00000…) - (0.00000…) = 0
   9x = 0
   x = 0


   x = 0.00000…
   x = 0


骰子の目が・となる確率 1/6
骰子の目が・とならない確率 5/6


試行回数10回の場合、全ての骰子の目が・となる確率
1/6 × 1/6 × 1/6 × 1/6 × 1/6 × 1/6 × 1/6 × 1/6 × 1/6 × 1/6 = 1/60466176

試行回数10回の場合、全ての骰子の目が・とならない確率
5/6 × 5/6 × 5/6 × 5/6 × 5/6 × 5/6 × 5/6 × 5/6 × 5/6 × 5/6 = 9765625/60466176


試行回数無限の場合、全ての骰子の目が・となる確率
0.00000… = 0

試行回数無限の場合、全ての骰子の目が・とならない確率
0.00000… = 0


以上により
試行回数無限の場合、起こり得るすべてのことは起こり得る







エントリ4  咆哮     李衣


  叫べ

 唯、空に向かって その声は遥か彼方へ
 大気圏に突き刺さる

  叫べ

 腹の底から その声は何処までも何処までも
 大気圏を突き破る

  嘆け

 己の醜さを その卑劣さを 小ささを
 思いの全てをぶち撒ける

  笑え

 己自身を 己の不幸を
 この世の神に唾を吐け







エントリ5  言い訳     桃色


僕たちはなかなか優れているんだ
なぜかって
僕らは何も期待しない
僕らは何も予測しない
って同じだけど

だけど僕らは努力してる
まぁどうせ僕にしかわかりゃしないだろぉけど

結構これでも悪いことはいっこもしてないし
“境界線”をこえないよういつも気をつけてる
たまにさ
どうしょうもないことしたくなっちゃったりするっしょ?
そーゆうときの僕ってかっこいいなぁって自分で思うよ
まじで
自分には厳しい、みたいなさ

っても
それよりもっとひどいことしてるやつなんて
掃いて捨てるほどいんだけど

でも僕は結構優れてるんだ
正直別に優れてたいわけじゃないのにさ
だってさ
うちの母親なんて
僕のこと正真正銘のバカだと思ってる

その世間じみた調子で
“何でこんな子があたしからうまれるのかしら
理解できないわ”的な目をしてこっち見ると
僕はこらえきれなくて
いつものにやにや笑いをはじめるんだ

でもなかなかそんな母親もいいもんでしょ
虐待とかとは絶対無縁だし

話がそれちゃってるけど
何か言いたかったわけじゃないから別にいっかぁ

そうそう僕が優れてるって話
たぶんそれって
外からは見えないんだよね

むしろさぁ
いかにもな“優れてます”って感じ?
うそっぽくてなんかうざいよねぇ

でも“俺は劣ってるぞー”ってのも
どうかとおもうけど(笑)
そぉゆうのに限ってもてんだよな

たまにうらやましいけど
そいつらにはさ
自尊心ってゆーか恥ってゆーか
ないのかね、ないほうがいいのかね

あー何か喉渇いた
最近いっつも喉かわいてるんだけどさ
なんかの症状かね

わかったのが
僕が優れてるのは
“僕”って看板をつくんないからなんだ

19才、某名門私立大学、
姉がふたりにサラリーマンの父、
性格は温厚、趣味は映画、
友達は少ないが知り合いは多い、
あんま束縛しない彼女募集中、
特技は…、とか

ってちょっとちがうか
っはは
とりあえず笑っとけって


僕は鏡だ
僕は人型クッキーだ
しかも大量生産だ

でも僕は優れてる
なぜって僕はさ
自分が“特別”じゃないってわかってるしさ
“特別”って何か吐き気するモノだって気づいたしさ

そうそう
人間観察が前まで趣味だったんだけど
最近は自分のこと考えてる方が
おもしろいんだ

どうせみんな僕とおなじだし

そうでしょ?
“違う”って云いたかったらどうぞ
でもそう云ったからって
君が僕より優れてるわけじゃないよね(笑)

なんか疲れてきたー、

毎日繰り返ししても
毎日違うことしても
おんなじなら何もしない鏡でいいや

だれも食ってくれない
腐りかけた人型クッキー

でもその中じゃ
結構僕は優れてるんだ    







エントリ6  デバイス     MIC


冬の絵のどこかに
 春がすべり込ませてあるという
そういった仕掛けなら
 どうやら凍えてばかりも
  いられないようだ

それで僕は
 大地と直角に立ち上がり
  遥かを眺んだ







エントリ7       神宮 理乃


まだつぼみもつけない 冬枯れの 木立は 寒風吹きすさむ
節分すぎて 春うららかに 陽も暖かな ある日の 夕暮れ
君と2人 桜の下を 歩きます

また あえますか

満開の桜の木の下で もう一度







エントリ8  ヘリコプターの音にのせて彼女のことをおもいだす俺はセンチメンタル     ナツコ


ヘリコプターが俺の上を飛んでいく

見えるはずもないけれど そこに向かってピースをした
見えるはずもないけれど こっち向いた気がした

ヘリコプターに乗ったら 彼女のとこにいけるだろうか


彼女はいなくなった
俺は泣かない
彼女はいなくなった
俺は泣かない
彼女はいなくなった
俺は泣かない
彼女はいなくなった
俺は泣かない


ヘリコプターの音が胸にしみてく

プルプルプルプル…

プルプルプル…


彼女がいなくなるみたいに 音はだんだん遠のいた

彼女はいなくなった
俺は泣かない
彼女はいなくなった
俺は泣かない
彼女はいなくなった

彼女はいなくなった




やっぱ泣いた







エントリ9  そら     ToWa


君は気まぐれだね

とっても機嫌がいいときは太陽遊ぼーアソボーっていっている

ちょっと機嫌が悪いときは雲が覆いしげってるぞー!!

哀しいときは雨のナミダがいっぱいイッパイ降ってくる

でも君のおかげで人間(ヒト)は生きているんじゃないかな

ありがとうそら☆ありがとう大空







エントリ10  なぐさめに似た何かを。     千代路


なぐさめに似た何かを
欲していたというの
何も信じてはいないのに
わたくしの心臓を
抉るようにして過ぎてゆく
日常とか
常識とか
対話とか
当たり前と思われているそれらの
しがらみが尚 腕に脚に絡みつき
わたくしを転ばせるのです
日々 なぐさめに似た何かは
ささやかにわたくしを励まし
叱咤し
やさしく包み込み 或いは
わたくしがうたた寝している間に
咽喉笛を掻っ切ってゆく。


日常と非日常の境目でゆらゆらしたまんま
わたくしはまた寝て起きて食べて排泄して
言葉と息を吐き
彼方と手のひらに視線を投げ
何かを得ようとしている。







エントリ11  アイノハナシブキ     毒薬透櫛


 
 細いバーを飛び越えて、マットの中へ沈んでく
 そろそろ私、言ってもいいよ。

車が潰した私の脚は 前のようには飛べないの。


 そろそろ私、行ってもいいよね。
 お人好しのアナタなら。たぶんきっと来てくれる。
 
 2/14 午後3時に、屋上で待っています。

たった20の文字の羅列に アナタは何を期待した?


正門乗り越えココへ向かう アナタの姿を見た気がした。


 そろそろ私、逝ってもいいよね。


フェンス飛び越えグラウンド。固く冷たく私を包む

 
 アナタも見ていてくれたかな?
 私のジャンプ。最後のジャンプ。
 

アカクテオオキナハナシブキ。
 
 

 
 
 



エントリ12  The snow melts     月弘萌奈香


 彷徨って

 眠って

 笑って
 泣いて


 目を開けて

 辿りついた


 あなたの手の上
 心の中


 だけど
 気づいたときには

 ただの冷たい水・・・


 
 そう。
 私はまるで
 空から降りる
 雪・・・。







エントリ13  へいわ     くも



せかいがへいわになりますように/ねむりにつくときおもったの/よるは/しずかで/くらくて/しぬってことが/なんだかとてもこわくて/わたし/なみだがぽたぽた/おちてきたの/ねぇ/あくなど/ほんとうにあるのですか?/わたしにはにんしきできない/だって/にんげんはあらそう/でも いつまでたってもおわらないのは/ねぇ/そうでしょ?

あさ/めがさめたら/なんてことなかった/そらはあおくて/わたしはしょくパンをかじった/あいするあのひとは/まだねてるかな/にんげんは/どうしてそんなに/ふくざつになっちゃったの だからみんな/わからなくなって/まだせかいは/ふこうだらけなんだよ









エントリ14  君と僕のチカラ     渡部宣子


君がいたあの頃は
何だかとっても
遠い昔の事みたく
僕の頭に
浮かんでは消え
浮かんでは消え

何で?
僕って君の事
そんなに好きだったのかなあ

いっつも傷つけて 君が泣く
そのたびに僕は 重苦しく感じて
君といる時間が
辛すぎて切なくて
だから別れたはずなのに

ねえ 僕ってば 
今になってやっと
本当は何が大切か 分かったのかな?

本当はいつも僕が悪いのに
泣いていたのは 君の方だった

そんな君から逃げたかったんだ

僕の醜さが
君の涙に映って見えるから
汚い自分を認めるのが怖くて

そんな僕から逃げたかったんだ

だけど
ねえ 僕ってば
今になってやっと
本当は何が大切か 分かったのかな?

本当は今すぐ 君に会いたい

ねえ 僕ってば
今になってやっと
本当は何が大切か 分かったんだ
ねえ 僕ってば
こんなにも 君のこと・・・

今すぐ会いたい

今なら
こんな僕を 大切に想ってくれた君を
大切に出来る気がするんだ

新しい「今」を始めよう
君がくれたチカラで
君へ 一歩一歩歩み寄ろう

きっと大丈夫
こんな僕だって 信じていける





※作者付記:感想など聞けたら嬉しいです。



エントリ15  ねじれの位置?     さちこ。


その部屋の窓からは、木製のはしご
昨日、飛行機が落ちて虹が出たトコロに続くはしご
そこは「ねじれの位置」
今までもこれからも、決して何にも交わらない位置。
・・・と思っていたケド・・・

はしごを降り、てくてくと歩いた先には花があって
誰かがお水をあげた様子!
ねじれの位置、何と交わった?
ねじれの位置の花、誰にお水をもらった?
花は光合成に夢中で、私に目もくれないが・・
それでも光は届いて
私は汗ばむ。

昨日、飛行機が落ちて、虹が出て、
今、花が咲くトコロに私は居る。

そこはねじれの位置なのに
やさしい誰かとぶつかって
花は色濃く命を続けている。
悲しい命なんてない、と
いとも簡単に証明された、ねじれの位置。
花の色はますます鮮やかになっていったの。







エントリ16  予め     紅粉チコ


僕たちは予め片方の翼をもぎ取られ出逢った

絶えず流れる血をよそにただ愛しあい

僕たちは何処へ行けばいいのだろう

できる事ならばもう片方の翼を引きちぎり

互いに合わせて身体もひとつとなり

永遠に離れずにいたい…







エントリ17  現実     千早丸


誰も助けてはくれなかった。

――助ける価値なんてないから。






エントリ18  歩(あゆみ)     うらぽん


僕らはどこへ歩いていくのだろう
僕らが歩いているこの道は
遠く遠く続いている気がする
先は見えないけれど

風が吹き雨が降っても
僕らは歩き続ける
隣を歩いていた友が
いつの間にかふといなくなることもあるだろう
それでも僕らは歩き続ける
たとえ一人でも手探りで道を探し
自らの手で道を造りながら

この道が終わるとき
僕らはどこにいるのだろう
なぜ僕らは道を築き上げているのだろう
僕らはなぜ歩き続けるのだろう
その答えを見つけられるのは
自分ただ一人だけ
そしてその答えを見つけるため
僕らは歩き続ける







エントリ19  ダンスの仕掛人たち     三浦


 命ぜられて動かされる人
 命じて動かない人
 動かされた人に寄りかかるつもりの人
 動かない人の思惑とは違う願いを持つ人

 敵を見つける人
 敵と戦う人
 敵と戦う人を助けることを許されない人

 その人たちがいることを遠くで知らされる人
 知らされて考える人
 考えない人

 リモコンダンス
 遠隔操作
 踊らせている
 踊らせるように踊らされている
 踊らせるように踊らせるように踊らせて……

 糸が切れちゃった
 誰が責任とるの?







エントリ20  対・相性     むん


世界は循環している

火は水に消され、水は電気を通し、
電気は土が吸収し、土には命が芽吹くだろう

人は灰になり大地へ返り、
また土を育て、芽吹くのか
いや人は火にも水にも電気にも弱く
土に吸収されやがってまた緑へと命を変える

人間は実に弱いものが多い

更に其処へ感情を持ってきたら
何が誇れるのか、分かったもんじゃ無いな







エントリ21  うちゅうを救うもの     あや01


ぼくらはいつもこのせまいあおいそらからうちゅうへいきたいとねがっている
でかいでかいダイヤモンドの星
そこにはダイヤモンド星人が
茶色くなりかけた地球をみている
ダイヤモンド星人たちは
「ニンゲンハチキュウノガンダネ」
とささやいている


とっくに絶滅したマンモスも
その死の直前まで
太陽のおかげで
灰色から
青色へ変わる
うちゅうをみていたのだろうか?
そして宇宙からみると点にもならない自分を思い
あのそらのかなたへいってみたいとおもったかもね



ぼくはここでひとつの結論をみいだす
ぼくらがうちゅうにかえりたいとおもうのは
ぼくらがおもうほど人間がながく生きられない証なのではないかと



そんなことをおきなわのおばぁに話したら・・・
「そんなことおばぁにはわからないさぁ。
にんげんうまれたらあとは死ぬだけさぁね
おばぁは戦争があって苦労したけど
いまは孫が12人もいてしあわせさぁ」
といって
すたすたと農連市場へかいものにいった


この一言にダイヤモンド星人はどう思うか知れないが
おばぁはうちゅうの救世主かもしれない・・・・・・・









エントリ22  時間どろぼう     九つ


「今何時?」とわたしは聞く
「四時半」だとあなたは言う

本当は四時二十八分なのに
あなたは四時半だと言った

あなたは二分をどこへやったのか
わたしの二分をどこへやったのか

もう一度「今何時?」とわたしは聞く
それでも「四時半」だとあなたは言う







エントリ23  ブースター     kaco


ボクはあなたのブースタ−。
必要あらば、いつでもお呼び。
ぼくはすぐに駆け付けるから。

ボクはあなたのジェットエンジン。
無敵の燃料満タンで、どこにだって連れてってあげる。

あなたを傷つけるものがあるなら、ボクが盾になって守ってあげる。
あなたは何も心配いらない。

ダイジョーブ、ボクがあなたを守ってあげる。

もし、あなたがボクを邪魔に感じたら・・・。
その時はボクの方から手を離すから、あなたは何も心配いらない。

ダイジョーブ、寂しくなんかないから、ボクは。

ボクはあなたのブースター。
決してあなたを傷つけはしない。

必要あらば、いつでもお呼び。







エントリ24  恋愛方程式ニ基ヅイテ     ミナツキアキラ


カナリアから歌を引いたらタダの鳥が残り
週末から女友達引いたら溜め息一つ残る

ここで恋愛方程式ニ基ヅイテ 
アイツからアタシを引いたらナニが残るんだろう

アタシの薔薇の棘を足してさっき食べてたビスケットの数
あとは思い出の男達たくさん?と口ずさむ好きな歌

足しても恋愛方程式の答えは
たった一人のアイツにちっとも及ばないのだ

いつだって今日だってこんなアタシに
知らんぷりして青い鳥追いかけている
喚いたって泣いたってアタシ一人きり
空回りしている心は何処へ駆けていくの?


今日も恋愛方程式ニ基ヅイテ
駆けても掛けても近づけぬ心は難問ね

いつだって今日だってこんなアタシに
知らんぷりして青い鳥追いかけている
喚いたって泣いたってアタシ一人きり
空回りしている心は何処へ駆けていくの?

・・・・だけど好きなの







エントリ25  降雪     沙礫


 雪が降る
 しんしん しんしん
 いつまでも
 雪が降る

 まるで
 地上の汚いものをすべて隠すかのように

 雪は降る

 そんなことで浄化されると思っているのだろうか
 この真っ白な 天の使いは

 けなげに  いつまでも
 ふっていく

 ぽつん と一つ
 私の手のひらに落ちた雪は
 みるみるうちに溶けてなくなった

 それはまるで
 儚く消えゆく人間のようで
 私はそっと手を握った

 ー真実をみつめたくなかったから







エントリ26  軌跡のない道     あちか


ぼんやりと 海に来て
ながめれば 白い船
くっきりと 波を切りゆく

斜めに真っ直ぐ
 
よくみると 水平線に
かぞえれば 白い船、船
いつのまに 速度を増して

波切る船は遠くなり
あの線の上に近づくところ



なんにもしらない
なんにもしらない
なんにもしらないわたしだけれど

この船が ここを通ったことをしっている
あの線が ないものだってしっている
届いたと 見えるのはここにいるからで
あの先が まだまだあるのをしっている



いつまでも 手の中で
くるくると いとおしく
コーヒーの空き缶をもてあそび

じっと見送り 水平線に
向かうものだと 疑いもせず
あちらは きづかずしらないままで
 


美しく 斜めに真っ直ぐ









エントリ27  携帯電話     小山敦子


舌打ちしながら握り締めながら
知っていたさ
誰とも繋がることのできないのを

音で聞こえるならきっと 超音波よりたちの悪いノイズ
膨大な電波を浴びながら
なおもボタンに指が吸い付く

もう中毒症状だ
依存症 なければ困る

繋がる手段も敢えて選ばず
選んだのは無駄な寄り道
無くなってくのは 生きるリズムとお金

知っていたさ いけないというのは
何がいけないというのでもなく
繋がる方法を選べばいい
「ダメだ」なんて言わないから
誰も言わないから
返事が来なくてもいいじゃないか

繋がっちゃえ 言葉、電波に乗せた
「今まずいかな」って思うのやめていいって
繋がっちゃえ 利用してやれ現代のベルトコンベヤー
ホントの心つかむ手前までなら、きっと

送り届けてくれるはずさ 僕の勇気







エントリ28  詩織     mint


私は詩を書いている
詩なんて言っても
何だかよくわからないのにさ

言の寺だから
言葉のかけこみ寺みたいなものか

なぞ
だわ

コメンテーターは意地悪言うの
そんなの詩じゃないなんて
コメンテーターはいつも
胡散臭い人がなるものと
テレビでは決まっているものよ

プン
スカ

例えばこれが詩じゃなかったとしても
そんなことはどうでもいいこと
言葉を紡ぐのにカテゴリーは重要?

例えばこれが詩じゃなくて
詞だったとしても
死ぬ訳じゃないんだし

例えばこれが詩じゃなくて
支だったとしてもかまわない
ひとりで生きているわけじゃないんだから

例えばこれが詩じゃなくて
師だったとしたら
私の勝ちだと誰が思うだろうか

例えばこれが詩じゃなくて
私だというのなら
「確かにその通りだね」
と頷いてみる

だって、その通りなんだもーん

イミのないことなんてないなんて
嘘くさい言葉だけど
プーンと臭う?

例えば何となくしたことでも
そこから何か見つけられるかどうかで
すべては自分次第で

自分しか許せない君と
自分すら許せない私と
多分、幸福はどちらも選ばないと思うし

勝ち負けじゃなくて
損得じゃなくて
すべては自分次第
さじかげん
いい塩梅で
よいしょしょっと





※作者付記:関係ないけど、庭さんが、オッサンが、やる気満々だなー、ちゃんと仕事してるのかなー、と最近思ふ



エントリ29  僕の幸せ     霞洋介


普通になるのが怖い
普通になって誰からも認められなくなるのが怖い
人が怖い
孤独が怖い

一人は嫌だ
一人は嫌なんだよ・・・
僕は、いなくなりたくない・・
僕はここにいたいんだ

だから、普通をやめるんだ
普通じゃなくなるんだ
酷いことをするんだ
悪いことをするんだ

そうしたらみんな僕をみてくれるでしょう?
そんな僕を認識してくれるでしょう?

タバコを吸った
おいしくない。
けど、我慢して吸った
やっぱりおいしくない・・

お酒を飲んだ
苦い・・
我慢して飲んだ。
やっぱり苦い・・

人を殴った。
痛い・・
我慢して殴った。
やっぱり痛い・・

人を殺した
悲しい・・
我慢して殺した
やっぱり悲しい・・

そして、僕はここにいる
暗く、高い塀に囲まれた場所
ここで生きている

何もしなくても、ご飯が食べられ
何をしなくても、誰かが僕を見ている

こんな場所を僕は求めていたのかもしれない

僕は今・・・とても幸せだ







エントリ30  Scary&Tears     Mick


もう何も言わないで

本当は解ってる

未来が暗いこと

今の私では光を差せないこと

レベルがそこまで来ていない事

もう混乱させないで

何も言わないで

泣き言を言わせて

あなたは

もうそんな歳じゃない

と言うけれど

言わせて

泣き言を

言わなきゃいけないの

明日に立つために
明日に立つために
明日に立つために
明日に立つために





※作者付記:泣き言を言えば、次は立ち上がれるって言うわがままと、希望が同居してるって感じの詩です。



エントリ31  哀反対ミラージュ。      りら


私はいつだってあなたと比べられてきた。
また、それで私があなたに勝って評価されたことは一度もなかった。
ただの一度もよ?
それでも、私は存在しなければならなかった。
しかも、私はあなたについてゆくことでしか存在することができなかった。
何故なの。
何故私たちは比べられたの?
私たちは全く同じ。
かつ、何から何まで違う。
全てがそうなんでしょう?
私はずっとあなたを見てた。
あなたも私を見るけれど、何として私を見ていた?
私のカタチだけ見て、その中を覗こうとはしなかったでしょう。
あなたの嫉妬という気持ちに私が映りこむことはない。
あなたはいつだって、私の嫉妬の中にいるというのに。
あなたが死んでくれればいいと思う。
もしあなたという人がいなくなってくれたら、そこで私が初めて存在すると思う。
けれど、同時にそこで私という存在がなくなる。
それも、同じことなんでしょう?







エントリ32  駅前の妖精     西山天音


早咲きの沈丁花、
甘い春のかおり。

千年前から変わらずの、
冬から春への繰り返し。
そして今日また
いつもと同じ、
春のきざし、沈丁花の香り。

冬と春との境目で、
花の香りとにがい風をまとい
駅前広場にふたりの妖精。
真紅と純白のちいさな妖精。

真紅の妖精飛びまわる。
駅前のくろい雑踏のなか、
真紅の妖精舞い狂う。
純白の妖精それに合わせて、
点対称の舞。
紅と白との螺旋を描く。

(それは過ぎゆく冬への哀悼か?
或いは来る春への讃頌か?)

駅前広場に腰掛けて、
ひとり煙草をふかしていると、
踊り疲れたふたりの妖精
わたしの方へとやってくる。

わたしの鎖骨を止り木にして、
ふたりの妖精羽根をやすめる。
汗にぬれた四枚ずつの羽根。
埃にまみれた八枚の羽根。

やがてまた、すぐにまた、
舞い踊る、駅前の妖精。
冬と春とを身にまとい、
四季の摂理を完結させる。







エントリ33  52     閑流


鳴れ、サイレン、鳴れ、
奴らの権利欲を誇示してやれ、
泣け、ブザー、泣け
奴らの闘争本能が、たとえ逃走本能でも







エントリ34  悲しいかな、そんな感じ     桜樹鉄太


アメリカンコーヒーのブラックを嗜好する人と、
アメリカンコーヒーにシュガーとミルクを大胆に注ぎ込む人。

ねぎまをあっさり塩味でオーダーする人と、
ねぎまをこってりタレ味でオーダーする人。

洋楽を好んで聴いている人と、
邦楽を好んで聴いている人。

並べてみて、ふと思う。

たぶんさ、これって、
アメリカンコーヒーのブラックを嗜好する人の方が偉く、
ねぎまをあっさり塩味でオーダーする人の方が偉く、
洋楽を好んで聴いている人の方が偉いんだよ。

いや、たぶんだけどね。

意外と万事の発端かもよ、これって。

悲しいかな、そんな感じ。







エントリ35  現夢想     如月ワダイ


夢がありました。

遠い遠い昔に。

あの頃は、

いつだって、

きらきらで、

透明で、

毎日が楽しかった。

辛くても楽しめた。

けれど、

何時からだろう?

夢が消え、

現実に戻り、

楽しみは小さくなり、

辛いことは辛いまま、

夢が欲しいけれど、

そんな勇気もなく、

そして思う。

現実は何のためにある?










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