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Entry1
三面鏡
葉月イロ
化粧はなんとも
涙にもろく
心のように濁ります
張り出した胸の谷に爪をあて
鏡の中で切り裂いて
ぐらぐら揺れる瞳の奥に
あなたの滲んだくちびる揺れる
Entry2
ハコ
田中 新
安心を求めて 落ち着いた
刺激を感じて 足掻き苦しんだ
着々と努力を重ねて手に入れた昔ながらの風船ガムは
舌打ちをしたら パチンとしぼんでいった
いつか 自分と引き換えに四角いアンティークボックスをもらった
ザリガニ釣りをしてた子供が 池に落ちてた鍵を見つけたんだ
何だか高価なモノだと思ったから 大事にしまっておいたのだけれど
今になって どこに置いたか忘れちゃった
どこを探しても見つからないから 一生懸命思い出して造ってみたんだ
でもやっぱり同じ鍵穴は見つからなかった
部屋いっぱいになった鍵に 同じ数の鍵穴がある
どの箱から開けようかな?
目の前にある箱を開けたら
安心を求めて 落ち着いた
着々と努力を重ねて手に入れた風船ガムは
舌打ちをしたら パチンとしぼんでいった
右側にある箱を開けたら
刺激を感じて 足掻き苦しんだ
鏡越しに見たボクの姿は 何故か笑ってた
だから四角いその箱を捨てたんだ
そしたらボクが戻ってきた
なぁんだ
Entry3
スイゲツ イセツ
ミナツキ/リキョウ
1人の青年とその家族から 全ては始まりました
それは果てのない物語のようでした
いつ終わるのか等と誰も考えぬほど 長い長い時間
彼らはずっと ずっと 目に見えぬ何かと戦いました
たくさんの命が葬られ 両手に溢れるほどの花が散り
海を埋め尽くすほどの嘆きの声が 彼らに降りました
彼らを恨む声が、憎む叫びが地を満たしました
水に映る月が 風にひび割れるように
彼らもまた傷付きました
それでも彼らは止まりませんでした
幾億もの悲しみと痛みと憎しみを背負いながら
ほんの僅かな温もりや喜びの為に
割に合わない戦いを続けて 続けて 続けて
やがて 一族は 月となりました。
今も彼らは止まりません
嘆きが薄れて憎しみが朽ち 華が咲いても今もなお
それでも彼らは止まりません
雪が降り 春が咲き 夏が死に 秋が生まれる今でさえ
水に映る月 その名が絶えるその日まで
本当に彼が救われるまで 異説が続き言葉が連なり
物語は終わらないのです。
Entry4
青い腕時計
須藤あき
この時計がいつ止まっていたのか、僕は知らない。
外してから大分後だって事以外は。
この時計をいつ外してしまったのか、僕は覚えていない。
寒い時かそうでなかったかさえも。
こんな僕を君は許さないんだろう。
「幼すぎた。」だなんて言い訳だし。
あの時満点じゃなかった僕を、君は許しはしないんだろう?
腕時計の青はくすんで、戻ってこない。
いくら磨いても、もう戻ってこない。
だからこうして再び刻もうとする針も、
「振り向いて」だなんて僕には言えない。
こんな僕を君は見限ったんだろう。
「幼すぎた。」だなんて言い訳だし。
あの時転んでしまった僕を、君は見限ったんだろう?
腕時計の青はくすんで、戻ってこない。
いくら磨いても、もう戻ってこない。
だけどこうして再び刻もうとする針と同じに、
君を想うことだけは許して。
Entry5
無題
泉広海
大きな湯船に
つま先だけ つかって
小さな窓から 半欠けの月を見る
月は輝いてきれいだけど
いつか、
闇に飲み込まれて消えたり
朝が、ずっと遠くに連れていってしまうから
怖くなってきた
ここに、
私の見えるところにいて、などという願いは
聞き入れられない
特に、永遠にいてなんてものは
涙が落ちそうだったから
泣くもんかと思ったけど
月の、輝いているのに負けて
一粒だけ落とした
Entry6
足は
薫
太いだの短いだのと言う前に
足は、そうだ、歩くためのものだった。
足は私を裏切らない
寡黙に私を運び行く
まだ見ぬ土地へ運び行く。
Entry7
散歩
山口けいこ
私の心どこへ行く
ふわふわ散歩へ
空の青さにひかれて外へ
樹々の青さにやすらいで
海の青さに立ち止まる
風とともにまた私へと帰る
Entry8
ココロ
神無月 空
目に見えないことがある
耳に届かない声がある
触れられないモノが
確かにそこにある
思い出とか気持ちとか
箱にとじてこめて
五感を全て使って
確かめられたらいいのに
見えないから不安になる
聞こえないから悲しくなる
触れられないから孤独になる
それだけがすべてじゃないのに
Entry9
かお
Oka-Taka
どんな服を着る。
お金魚〜見るのはどこ?
deこれむだだよね?
寺山修司の図書館。
紙幣。じかん重すぎ。
素直。
あっはっっ。
みんな言葉は縦横。
ネットの中で弾けて、ななめに恋。
Entry10
恋が苦しい人に。
佳奈子
人の想いは通じるんだよ。
最後まで 想った人の勝ちだよ。
人の想いは通じるんだよ。
あきらめないで あきらめないで
ここが苦しいところだから
負けちゃだめよ 見失っちゃだめよ
自分を信じるんだよ
ずっと想っていて・・
願いは叶うんだよ
気持ちは動くものだから。
Entry11
もぐらのおうち
文コアナ
山、歩いてたの。
そしたら、もぐらが死んでたよ。
ねずみに見えたよ。
そしたら、おじさんがもぐらだよって、教えてくれたよ。
もぐら、かわいかったよ。死んでたけど。
もっと近くで見たくてしゃがんだの。
コアナの影でもぐらは少し涼しくなったみたい。
なでてあげたら、くすぐったそうっだったの。かわいかった。
もっと近くで見ようと思って顔、近づけてみた。
からだに、穴があいてたの。
そしたら、アリがいっぱい肉を食べてたよ。
おいしそうだったよ。まだまだ肉はいっぱいあるからアリも安心だね。
そのまま住めばいいのにね。
お菓子のおうちに住んでるみたいだもん。
アリのおうちは、もぐらのおうち。
もぐらはおうちに帰れないけど、誰かのおうちになれるなんて素敵だね。
Entry12
ゆり子さんの猫
雪音
ゆり子さんの猫は乗用車くらいの大きさ
バレーボールの瞳
ホルンの耳
手足は毛むじゃらの丸太で
胴体は絨毯を巻いた巨大丸太
ゴルフクラブの耳掻きで
耳を掃除すると
ゆり子さんの猫は
のどをゴロゴロさせて
気持ち良さそうにしています
デッキブラシを右手に
ホースを左手に
ゆり子さんの猫の体を洗おうとすると
ゆり子さんの猫は水が嫌いなので
唸り声を上げて
毛を逆立てて
ゆり子さんを威嚇します
ゆり子さんの猫は体が大きいので
食事代が大変です
食事の用意も大変で
たらいにご飯を盛って
ミルクをあげる時は
洗面器に入れて
ゆり子さんの猫と遊ぶ時は
猫じゃらしを持って追いかけます
追いかけられることもあります
初めは笑っていたゆり子さんも
しまいに真剣な表情になっています
夜もふけました
お休みの時間です
ゆり子さんは
ゆり子さんの猫の隣に布団を敷きます
電気を消して眠ります
ゆり子さんの猫のしっぽが
ゆり子さんの枕なのです
Entry13
鞭
凛
内部から湧き出てくる
疎ましい欲望を断ち切れない。
私は一体、何を欲していた?
澱が舞うと
また目覚めてしまうの。
粉々にされる運命の
新しい欲望が。
望んでもいないのに
何かの拍子に喉を突いてでてくる。
私は愛を乞う資格などないのに。
分かるでしょう。
果てがない。
潰れても潰れても甦ってくる。
鞭打つ手が震え出して止まらない。
憎悪の海に溺れたまま
いつになったら
私の血は眠りから覚めるのよ。
Entry14
記念日
深神椥
あの人と出会って、もうすぐ二年になる
あの人とは、私が通うお店の店員さん
ほとんど一目惚れ状態で、一日中その人のことを考えていたこともしばしば
あの人と出会った時の衝撃は、憧れの芸能人に会った時以上だった
こんな恋、二度とないと思う
その人の素性は全く知らないし、名前さえも知らない
私はかなり人見知りをするタイプなので、声をかけるなんて到底無理
それが「私」、本来の「私」
でも―あの人は私を変えてくれた
話したことはなくても、あの人のそばにいるだけで、すごく落ち着ける
すごくドキドキできる
こんなことは初めてだ
こんな気持ちになれたのは、あなたが初めて
あなたが私を変えてくれた
あなたが変えたのは私
それが嬉しくてたまらない
―そんな想いを胸に、私は今日もお店の扉を開きます
Entry15
みえない鎖
馬場明日香
髪の香り 果実の匂い
夜の街がくるしくて あいたくて
今ここでないているのに
君は気づくはずがないんだ
波の音も 時がすぎても
君にはわからないのかな
ざんこくなことに
鎖だけじゃらじゃらなるんだ
ほどいてよ鎖を
くやしくてまたなみだが
あふれちゃうじゃない
鍵を わたしに・・・
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