□ 第6回バトルお題(佐藤yuupopicさん出題)
テーマ
『 「音」と云う文字を使わずに音が聞こえる詩を創って下さい。 』
注)★必ず、各自で題名をつけること。「無題」の場合は規定外とみなします。
★本文・題名、ともに「音楽」「騒音」「音信不通」などの「音」を含む単語・熟語 の使用も一切禁じます。
★「音」と云う言葉の持つ意味合いを自由に解釈して表現すること。必ずしも「音が聞こえる事」を作品の中心におく必要はありません。
形式制限:詩 一行40字×60行以内 投稿期間:2002年8/9〜8/31(24:00) 作品発表:9/1(0:00 一斉発表) 投票期間:9/1〜9/15(24:00) 結果発表:9/16(1:00)予定
□ バトル参加作品 ■
entry 1
一振りの予感 木葉一刀作
オーボエが
ながい声を上げ始めると
各々楽器の声の調子を確認し始める
曲目はジョージ・ガーシュインの
Rhapsody in Blue
始めに皆のタイミングが合わさらなければ
決まらない
ダブルベース
弾くだけじゃない叩かなくては
トランペット
隣も意識してくれよ
シンバル
君の出番は多いぞ
ピアノ
ジャズのノリを殺さないで
サックス
さぁ泳いでこい
譜面はお前の漁場でいっぱいだ
暗がりの中
スポットライトを浴びながら
私がステージに上り詰める
コンサートマスターと視線を交わし
壇上へ
一発勝負
タクトを持ちて両手を上げる
その両手を振り下ろした
瞬間
■
entry 2
-- 橘内 潤作
暗闇に響く
熾(さか)んにて韶(うつく)しい韻は
織りあげられて意識となり
暗闇に馨る--となる
■
entry 3
暮れ待ち港 大覚アキラ作
北の外れの港には
空を飛べない かもめが一羽
哭けない女を哀れむように
疲れた翼 休めています
ああ あなた
私 哀しい女ですか 今日も待ちます
暮れ待ち港
曇り空でも傘はない
明日は時雨か それとも雪か
冬の終わりの北の港に
切なく汽笛 響いています
ああ あなた
私 愚かな女ですか
今日も待ちます
暮れ待ち港
男は船 女は港
そんな戯言で 心繋ぎ止め
ああ あなた
私 哀しい女ですか
今日も待ちます
暮れ待ち港
■
entry 4
月夜 深sachi作
二年ほど前のことだったでしょうか
ある晩 私は
居酒屋の裏のゴミ捨て場で
一匹のアマガエルを見つけました
乾いたコンクリートにしゃがみこんで
痩せた体で鳴いていました
遠くから聞こえる酔っ払いの声に
時折 打ち消されながらも
カエルはしきりに鳴いておりました
月のきれいな夜でした
私は何を思ったのでしょうか
カエルに悟られぬよう
ただ ただ その光景を
しばらくじっと見つめていました
今でも ときどき
月のきれいな夜には
どこからか
あのアマガエルの声が聞こえてくるような
そんな気がしてなりません
■
entry 5
五香飯店 ユキコモモ作
いつも通っている小さな商店街の坂の途中
足元に薄汚い黄色の看板が出ている
〈中華食堂 五香飯店〉
入り口は急な上り階段
二階の窓からはみ出している気配で
中華鍋をふるうのがわかる
規則正しく 小気味よい
メトロノームでいえばアレグロ というかんじの拍数
どんな人が鍋を動かしているのだろう?
何度も何度も 店の前を通る度に私は立ち止まる
耳を澄まさなくても わかる
時には包丁の 乾いたトントントン
(いや やはり中華鍋だろう)
お玉と中華鍋
野菜や米粒がその中で踊りながら
むぎゅむぎゅと挟まれ 押しつけられているのだ
上になったり下になったりしているのだ
ああ 華麗なる鍋の中の情事!
たった今 私は〈中華食堂 五香飯店〉に入ることを決意する
階段を上がる
一歩一歩踏みしめると 体が少し沈むような感覚
上りきった正面に便所 定休日は月曜です、と日焼けた張り紙
店の中は思ったよりも広かった
けれど 私の想像を裏切らない
(壁一面に高校生の書いたサインが張りつけられている)
カウンターに三人の客
奥に鍋を握るおやじさんがいる
あぁ あなたですか いつも聴いています!
と心の中で言う
(中華放送CSG ただ今から午後三時をお知らせします。じゃっじゃっじゃー)
「あ、えーと、炒飯を下さい」
テレビは夏の高校野球 画面の中で雨が降っている
(中華放送が始まった!)
カウンターの客たちが野球談義をやりだす
「そういえば、あそこの監督 もう今年で終わりだとさ」
「終わりといえば、叙叙園のマスターが死んだとさ」
「つい先日、何処ぞの主人も死んだっていうのにな」
「オヤジさんも気をつけてよ」 と一番左の客が言う
にやりとするおやじさん
大丈夫さ! と態度で示すように中華放送〈炒飯のメロディ〉が続いている
ガス台と鍋が鈍い摩擦を続ける
お玉と中華鍋の演奏がアレグロ それから次第にアンダンテ
あぁ 私の為の生放送 感激です!
と心の中で言う
(リクエスト曲が終了)
湯気をひき連れた炒飯が運ばれてきた
半球型に整えられた米粒の静止状態 (小学一年生の整列みたい)
ご飯茶碗三杯分はありそう (おっぱいでいうと、ええと、その……)
レンゲの先で触ると ほろほろ崩れた
炒飯は私を見つめるし 私も炒飯を見つめる
もう何も聞こえない
ただ気になるのは
誰かが歩くと 私の腹の肉が振動するということだ
いずれ五香飯店にまた来るだろう
■
entry 6
(作者の要望により掲載終了しました)
■
entry 7
無題 テト作
布は何で出来てるの?
繊維で出来ているのよ
繊維は何で出来てるの?
それはね
コトン と小鳥が落とした木の実
さらさらさらさら おしゃべりな川
美術室の絵の具の匂い
キラキラキラリ 木漏れ日や
公園から響き渡る笑い声
子供たちの夢の欠片
甘い砂糖菓子
そんなもので出来てるの
その布の材料は
誰が集めて来るのでしょう?
その布の材料は風が集めてくるのです
小さな小さな欠片を風は大事に運ぶのよ
その布はそれで完成?
いいえ、たくさんの風が集めた材料を
一つ一つ繊維にして
織り成した布を幾重にも
そうして一つの布が出来るの
布は各地に広がって
世界中を包みます
生きているもの全て
それに抱かれて暮らすのよ
そしてそれは生きているものの
命を包んで
たくさんの心を作るのよ
■
entry 8
秋 空人作
啼いている 啼いている 黒い虫が啼いている
なんて澄んだ声なのだろう
風に運ばれ 耳に届く心地よさよ
哭いている 哭いている 黒い虫が哭いている
醜いおのれを悔やんでいるのか
風に運ばれ 弄ばれる運命よ それを聞き
泣いている 泣いている ここでも 黒い虫が泣いている
生まれたことの無常を 人のこころの常住を
聞こえない声も しかと耳を澄ませて
■
entry 9
無響室 氷月そら作
ポケットから
じゃらじゃらじゃらっと鍵の束をとりだす
そのなかの1本を選んで
かちり と鍵をまわす
ドアを開くとそこは 白い世界
壁も 天井も 真っ白
硬いクッションがいくつも並ぶ
目の粗い 金網の床
金網の下も 壁と同じ白いクッション
まるで 白い世界に浮いているかのような
そんな感覚を呼びおこすこの部屋は
すべての振動を吸収する
無響室
ぱん と手をたたいてみても
わーぁ と声を出してみても
一瞬にして振動は無になり
残るはずのものは残らず
外界の ぱん は ぱ になり
外界の わーぁ は わー に
なる。
外の世界はいつだって
ざわざわ ざわざわ
わぁわぁ きゃあきゃあ と
やたらに騒ぎ立てる
(ウルサイウルサイウルサイウルサイ……!)
そんな中で
あたしの心はいつだって
びりびり びりびり
ゆらゆら ぐらぐら と
絶えず振動している
だからあたしはときどき
この無響室にこもって
振動を無にする
いつものように
耳鳴りに身をまかせて
目を、閉じる。
□ 結果発表
■
entry 0
誰もいない 佐藤yuupopic作
蛇口がゆるんでいる
気になって眠れない
誰も 住んでいない、隣室
の気配
廊下、の 突き当たり
上がってくる
天井の染みが揺れる
全部、
俺の気のせいかもしれない
●チャンピオン決定
第6回テーマ付き詩人バトルチャンピオンは――――
ユキコモモさんに決定です。
ユキコモモさんおめでとうございます!
次回のテーマ付き詩人バトルのお題をお願いいたします。
投票してくださった皆様、投稿してくださった皆様、本当にありがとうございました!
次回バトルもお楽しみください!!
作品名 作者名 票 五香飯店 ユキコモモ 6 一振りの予感 木葉一刀 2 無響室 氷月そら 2 秋 空人 2
感想票
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推薦:五香飯店 ユキコモモ作
感想:ユキコモモさんの「五香飯店」に票を投じます!
なんかもう、やられた〜、って感じです。
非常にリアルに音を感じました。空気も。
五感に訴えかけてくる詩でほんと、よかったです!
■
推薦:一振りの予感 木葉一刀作
感想:まず総論だが、ぱっと見て、「これはイイ!」と思ったものがなかった。
音という文字を使わなければいいと、短絡的に声、鳴く、鳴る、曲、響き、に結びつ けてしまっている。(自分含む)
大覚アキラ作「暮れ待ち港」は、歌詞ということで直接的に音を感じることはない が、好みでなかった。
たぶんもう一度同じテーマでやれば良い作品が出るような気がする。
投票だが、期待したようなわくわく感がなかったので、素直に音に取り組んでいるも のを選ぼうと思う。
木葉一刀作の「一振りの予感」。単純に、この人堅実に上手いなあ、と思った。サッ クス/ さぁ泳いでこい がいい。空気が止まったり流れたり緩急が激しいのもいい。 最後、ジャ―ン、と確実に音がなる。などと思いつつも、ありきたりな感じはするの だが、今回はこれ。
■
推薦:無響室 氷月そら作
感想:氷月そらさんの無響室に1票入れたいと思います。
まず、このネタを掴んだことが素晴らしい!
イメージ喚起力もあるし、まとまっていると思います。
気に入ってるのは最後の連かなぁ。
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推薦:五香飯店 ユキコモモ作
感想:湯気の向こうに息づく愛しい音たち。
私も五香飯店に何度でも行くだろう。
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■ほか全感想: entry 1「一振りの予感」木葉一刀さん:ストレートに音を扱いながらも、 見えてくる光景の妙の方に気持ちが吸い寄せられる。
entry 2「--」 橘内 潤さん:美しい漢字使いが闇のムードを深めている。
entry 3「暮れ待ち港」 大覚アキラさん:演歌は花道!情感がおかしくていい! (笑)
entry 4「月夜」 深sachiさん:感覚の再現への音の絡め方がうまい。
entry 6「電話」 檸檬さん:非常に音数が多くにぎやかなのに、さみしい空虚感を つくるのがうまい。
entry 7「無題」 テトさん:「無題」は規定外。残念。言葉への愛情が深く心地い い。
entry 8:「秋」 空人作さん:心地よさをうたいながらも重く、苦しい。アンビバ レンツ。辛くなる。
entry 9「無響室」 氷月そらさん:たくさんの音が無にかえっていく様がおもしろ い。
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推薦:五香飯店 ユキコモモ作
感想:一振りの予感
タイトルは「ひと振りの予感」のほうがいいと思った。あくまでも個人的な好みです が。
「サックス/さぁ泳いでこい/譜面はお前の漁場でいっぱいだ」
この表現、すごくおもしろい。それだけに、この詩のなかにコレがあるとすごく浮い ているような気がします。この表現を基準にした言葉選び、構成を考えるともっとい いのでは、と思いました。
--
これはタイトルはなしって意味なんですか? いや詩中にもあるから違うんでしょう ね。考える楽しみはありそうですが、--のビジュアルがいかんとも……。
暮れ待ち港
おちゃめですね。遊び心があっていいです。
五香飯店
ユーモアがあって、自分の気持ちと情景が同時進行していく多重放送のような感じ。 単純に読んでいて楽しい作品だな、と思いました。
■
推薦:五香飯店 ユキコモモ作
感想:面白い。
読みやすい。
ひとりよがりしてない。
楽しい詩だと思った。
一人で始めて入る店って、こんな風だなと、思った。
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推薦:五香飯店 ユキコモモ作
感想:当初は擬音がないものと思っていました。
例えば木葉さん、橘内 潤さんが良かった。
しかしユキコモモさんの作品は音だけでなく
匂いというオマケもあり、得した気分になりま
したとさ。めでたしめでたし。
■
推薦:五香飯店 ユキコモモ作
感想:テンポよく読めました。気持ちよかったです。
炒飯もおいしそう。
音と、においと、その雰囲気が感じられました。
表現も、ユキコモモテイストで素敵。面白かったです。
次点 大覚アキラさん「暮れ待ち港」
こういうふうにテーマを表現したのがすごい!
演歌調が素敵ですね。
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推薦:秋 空人作
感想:正直なところ、「これだっ!」というのがなかった今回のバトル。
テーマは面白かったんだけどなー。
一通り読んでみて、空人さんの作品が一番“聞こえ”ました。
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推薦:一振りの予感 木葉一刀作
感想:これを書きながら、まだ投票すべきか迷っています。
実は今回、「好き」と思える作品が一つもありませんでした。
(自分に鑑賞するだけの精神的余裕が無かった故です)
しかし「該当作品なし」にするのは自分の信条に反するので、 一番<音>がイメージできた作品を選ぶことにしました。
それが、この推薦作品です。
6、7、19行目はワタシ的には余分なように思えるし、 言葉というより目の付け所の勝利という気がしなくもないので、 本当にこれが詩としていい作品かどうかすごく自信がないのですが。
でも、勇気を出してこの一票を投じることにします。
■
推薦:無響室 氷月そら作
感想:他の作品も音が聞こえてきたんですが、この作品は、その聞こえてきた音 を遮断してしまうところが凄いです。
白い無響室に響く耳鳴り――これが一番、「音が聞こえた」と思えました。
■
推薦:秋 空人作
感想:まず擬音の入っている作品はみんな駄目。「音という言葉を使わない」のであれば、当然音そのものを表す言葉が使われる作品を、読者(出題者)が望むはずもない。擬音が効果的に使われているのなら話は別だけれども、今回はどの作品も安易な方向へ逃げて擬音を使っている。
その上で「テーマ」と「詩そのもののレベル」を量ってふるいにかける。
「テーマ」の解釈でぬきんでていたのは「暮れ待ち港 大覚アキラ作」。意表をつかれた。
「詩そのもののレベル」で鼻ひとつでていたのは「秋 空人作」。ただし、想起させやすい「虫の音」を取り上げているのだが、その声はあまりこちらに届いてこなかった。虫の哀しみが足りなかったか。
しかしこのふたつを比べると、若干「秋」の方が好みであるので、一票。ただ「暮れ待ち港」の解釈のおもしろさをそのまま流してしまうのはもったいないのでせっかくなので自分が聞こえた「音」を作ってみた。暇な人は御一聴ください。
(スタッフ注:投票者本人によってファイルが削除されましたのでリンクを外しました)