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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage3
第8回バトル 作品

参加作品一覧

(2010年 3月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
小笠原寿夫
1000
3
待子あかね
1000
4
石川順一
953
5
ごんぱち
1000

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(本作品は掲載を終了しました)

結婚披露宴
小笠原寿夫

 結婚というものに知識めいたものは何ひとつありません。しかしながら、昔、披露宴会場のアルバイトをしていた経験から、披露宴の雰囲気だけは何度も味わってきました。
 その空気は、金色。
 何もかもが煌めいて見えるし、厳かな空気と華やかな空気が同居している様子です。
 新郎新婦は、披露宴会場の暗闇のなか、その荘厳な扉から、ゆっくりと入場します。スポットライトを浴び、美しい音楽を受けながら、会場の一同は、二人の男女に目を向けます。
 スッとしたスーツに身を包んだ新郎とスタイリッシュなドレスを身に纏った新婦。その日の主役は明らかに二人のものです。新郎新婦席に着席した二人に会場中が注目します。
 司会者が二人の馴れ初めを話し始め、スクリーンには、二人のこれまでの人生を集約した数々のスライド写真が映し出されます。
 そうして、愛に満ち溢れた二人に、来賓挨拶が行われます。新郎の上司が、この役割を担うことが主流です。新郎の上司だけあり、会社での新郎の仕事を賞賛し、新婦には「本当におめでとう。」の言葉を添えるケースが多いようです。
 続いて、新婦がお色直しのために中座し、暫し歓談の時間が設けられます。この場で、ホテルの料理が振る舞われ、会場一同は、新婚の男に、酒を振る舞います。
 これまでで一番印象に残った料理は燃えるアイス。キラキラしたアイスに青い炎。
 賑やかな空気に包まれるなか、新婦が衣装を変えて入場します。この瞬間が、新婦の最も晴れやかな姿を見せるときだと思われがちですが、新婦の一番輝けるシーンは、もっと後になります。新郎新婦は、高く聳え立ったケーキにナイフを入れます。この瞬間、最も多くのフラッシュが焚かれます。
 その後、友人挨拶、余興が行われ、会場の照明が消されます。
 キャンドルサービスです。
 丸いテーブルに、各々の蝋燭が備え付けてあり、新郎新婦は、ゆっくりと着実に一本一本、火を灯していきます。
 会場が幸せに包まれるなか、照明が灯り、新郎新婦挨拶が、執り行われます。この時が新婦の最も輝かしいシーンです。互いの両親が会場の舞台前に立ち、新婦が両親に感謝の手紙を読むのです。皆がグッと緊張するシーンです。場の空気が最高潮に達したとき、両親から新郎新婦に花束が贈呈されます。
 そうして、新郎新婦退場と共に、幸せな音楽が流れ、親戚一同、友人一同は、二人を讃えながら引き出物を受け取り、二次会へと繰り出します。
結婚披露宴 小笠原寿夫

その電話だけは
待子あかね

「あなたは1人でも大丈夫だろ? あの子は、だめなんだ。俺がいてやらなきゃ、だめなんだ」
 そういって、あたしは振られてあなたに、もう会えません。あきらめはつきました。背は低いし、髪はいつもぼさぼさだし、そんなにセンスもいいってわけでもない。あんな人、なんで夢中になっていたんだろう。あんな人より、もっとすてきな人は、きっとどこかにいるわ。
 一晩、眠りにつきました。
 一晩、眠りにつきました。あんな人、なのに、声が聞きたくなりました。身体は空いてないってことはわかっています。あの子のもとに行ったから、忙しくしてるってわかっています。だけど、たった一言だけでもいいから、あなたの声が聞きたいと、一度思ってしまったら、その想いが脳裏から離れなくなりました。
 
 ひとり暮らしをしているのだから、部屋で電話をしてもだれにもなにもいわれないのに、なぜだか、ぼんやりと、近くのウサギ公園に行きました。公衆電話の近くにぼやんと、街灯に照らされているブランコに揺られながら、
「いま、ちょっとだけ、いいかしら」
 怒られるのを承知で、携帯電話のベルを鳴らす。きっと、隣にあの子がいるのね。いいのよ、そんなこと。あなたが声を聞かせてくれたら、それだけで。
「どうしたの?」
 声を聞かせてくれた。ほんとうに、うれしい。涙がでちゃう。
「ううん、なんでもない。風邪、ひいていないかなあ、と思って。それだけ。じゃあ、ね」
 
 毎晩毎晩1ヵ月。夜の十時。あなたの携帯電話のベルを鳴らす。ずっと、あなたは出てくれました。実際に、会っているときよりも心地いいような気分。たった一言交わすだけ。気まずい雰囲気になることもなし、言葉に詰まることもなし。スキヨ、なんてことばは飲み込み続けました。だって、あの子に悪いもの。あなたには、あの子としあわせになってほしいの。ずっと。その隙間に、ちょっとだけ想い出して。
 夜の公園はいつもだれもいません。たまに、犬の散歩のおねえさんが通るぐらいで、たいていは、だれもいませんでした。滑り台を滑ったり、ジャングルジムに登ったり、砂場で『山』をつくったり。
 そこにはいつも、月と街灯の影がありました。
 そこにはいつも、あたしとあなたがいました。

 ある夜、街灯は、消えました。
 今夜はあなたの声が聞こえません。代わりに、あの子の声が聞こえました。
「あたしたち、結婚するの。だから、いい加減、もう、電話はやめてね」
その電話だけは 待子あかね

いろいろなゴリラ
石川順一

ゴリラは脳卒中になったけど人間の病院には行かず
ゴリラの病院に行く事にした

人間の病院ではいろいろうるさく言われるからだ
まあ本当はゴリラの態度が悪いからからいろいろ
言われるのだけれど

何にしろ病気の治療に全然関係無いのに
家族関係とか経済力など根掘り葉掘り言って来るのには
閉口した。挙句の果てには
その原因はずばりずばりずばりとうるさいよ

だからゴリラは人間のでは無くゴリラの病院にしたのだ

しばらくするとスクールバスがやって来た
ゴリラはこれから模試を受けに行く必要もあった
社会人入学制度を利用して医学部を目指して居るのだ

座禅を組んで精神集中を学び集中して勉強出来るようにも
配慮した
さらに建築現場へ働きに言って学費を稼ぐ事も怠らなかった

こんなに頑張って居るゴリラはそろそろ限界だったが
その時誰かがゴリラのかんにさわる事を言うと
ゴリラに後光が差しとてつもない事が起こるのだが
それはまた別の話である


その一 ゴリラは憲法を尊重する義務を負う
誰だこんな条項を入れやがったのは
だってゴリラ憲法ですから
馬鹿もんこんなあほな憲法に忠誠誓えるか
でもゴリラさん拒否すると入庁する事出来ませんし
入庁した後そう言う危ない思想を持って居ると
懲戒理由になりますよ

馬鹿野郎俺は俺の憲法を作ってフィーバーしてやる

やれやれゴリラさん適格性無し
失格ですな

ゴリラは面接で落ちた


貧しいゴリラは雨合羽が出て来てほっとした
しかし暗証ナンバーが分からなくなって混乱した
おまけに部屋の炬燵のスイッチが勝手に入ってるし
こんな事ならプラグごとコンセントから抜いて置けば
良かったとゴリラは思った

春風駘蕩としてほんわかとした
ある良き日の出来事であった


ゴリラは大穴を狙った
勿論その方がゴルフボールが入り易いと
判断したからだ

ゴリラはパター専用のゴルフクラブを手に持つと
精神集中して小穴なんかには目もくれずに
目をかっと見開いた

これまで閉じられて居たゴリラの目が
かっと開かれた時
お釈迦様の目が静かに開かれた時の様に

ゴリラのみぬちには生気が漲り
頭からは湯気が立ち
周りに居る人たちはゴリラにコスモを感じた

この後すごい事が起こるのだが
それは又別の話である
 
この後どうなったかはある程度予想通り、ゴリラ自身がものすごい回転をしながら大穴へはまり始めた。これが本当のゴリラのごり押しでして。
いろいろなゴリラ 石川順一

マルチ商法やっつけろ
ごんぱち

「確かにビジネスで儲かるって話が書いてあります。あります、けれどほら、欄外に、効果に個人差がありますって書いてあるでしょう? 小さくて読めない? あなた、だったら最初に言えば良いでしょう? 世の中には様々な視力の方がいらっしゃいます。この契約書は一般的な視力を持つ方なら当然読めるサイズの文字とインクを使用しているのですよ。もし万一ですよ、契約書に視力的に読めない字があったら、説明してくれとかより分かり易い大きな文字の書かれた契約書にしてくれの一言……まあ、この場合二言三言ですが、あって然るべきでしょう、それが世間の常識、大人の嗜みってものでしょう? いや、マナー、人として当たり前の事でしょう。お金を返せ? 勿論です、嘘は言いません。いや、返します、返しますよ、お金は返します。新品の商品と引き替えに、間違いなく返します。一応聞いておきますけれど、パッケージから出してしまったなんて事は――え? ええええ? 開けた? 何を? パッケージ? 商品の? 本当に? 冗談抜きで? パッケージを開けたぁぁあ? そんな事したら、商品価値がゼロでしょう? ゼロはやり過ぎ? 何言ってるんです、あなた、レトルトカレーの蓋開いてたら買います? 意味が違う? 全然違わないですよ。我が社は、生産ラインが少なくってですね、新しい商品を作るので塞がってるんですよ。そんなあなた、開けて劣化した製品を再パッケージする事に使う余裕なんてないんですよ。良いですか? 分かりましたか? ええ、分かって頂ければ良いです。それだけの分別のある方でホッとしました。やはり、物事を落ち着いて正確に判断出来る眼力が備わっている人は、尊敬も信頼も出来ますね。あなたの事ですよ? いや、本当、あなたには感心しました。男が男に惚れたって言うんですかね? 感服しました。あなたを、あんな半端なビジネスに誘ったこの私が馬鹿でした。大変申し訳ありません! あなたなら……軽々しく教えるなと厳命されているのですが、あなたになら良いでしょう。本当は、我々の会社を大きくしたビジネスは、もっと良い商品を取り扱うものなのです。これからその細かい方法をお教えしましょう――」

「――四谷、この前のマルチ商法の会社にねじ込んだんだったっけ? いやぁ、早めに気付いて良かったな」
「おお蒲田! このコラゲンザムデインA一〇器官ホグホグが、今なら十個で七万円だぜ!」