「燃え上がる」
スーパーの駐車場にそれはあった。発泡スチロールにすっぽりと収まった中古の武者兜には大量のネギがばらまかれて居り、私には山に有る緑の森の様に見えた。既にスーパーの従業員に通報されて居り、早く実行しなければ私の狂気は実現出来なくなって仕舞う。青々とした山の狂気、ぞくぞくとする炎のエロス、それらは女の私にとっては、必要不可欠のものの様に思えた。私はこのスーパーで深夜ストリップショウをやって居る所を通報された事があり、ブラックリストにも載って居て、面もわれて居るので警察に通報されたら直ぐに御用になって仕舞うに違いない。早くしなくては。私はその発泡スチロールに入念に灯油を撒くと、マッチを擦って火を放った。
「ライヴを盛り上げる」
割れた酒瓶の中身は玉子酒に60度以上のウオッカが混ざって居た。私はそれらをなめまわして、気をためて吐き出して、燃え易い空気の状態を自分の周りに作り出した。そうしておいてから、マッチを擦って息を体中に吸い込むと、体中から息をマッチの火めがけて吐き出した。紅蓮の炎は直線状のアリアとなってライブ会場を駆け抜けて行った。
「ボーマンナスオさん」
ボーマンナスオさんは火薬工場の会長だったが、和菓子工場も秘かに経営して居た。和菓子工場の方は無許可操業だったので、地下の秘密の和菓子工場はばれないように全くの無音稼働をして居た。地域の雇用、地域の御中元御歳暮などの贈答品需要を満たしたり、ちょっとしたお茶受けとしてバカ売れしたりしてこの地域では全面的に受け入れられて居たのだが、無許可操業を警察が見逃す筈も無く、ついに警察の手入れが入る事になって仕舞った。
ボーマンナスオさんは警察の手入れを食らうぐらいだったらと、自社製の火薬で和菓子工場の方は燃やして仕舞った。
「ゴリラの告白」
-みんな私でした。私はスーパーの駐車場にあった発泡スチロールに灯油を撒いて火を放ちました。ライヴを盛り上げると称して、家族とも言えるファンの皆さまから負傷者を出して仕舞いました。ボーマンナスオとは私の事です。警察の目を眩ませる事には成功しましたが、それで済む筈も御座いません。-
全てあらいざらい告白したゴリラは、気が高ぶって来たのか体から湯気が立ち始め、体中が高熱化して、火をを吹き燃え始めた。
「皆さん逃げて下さい」
そう言ったかと思うとゴリラは自ら炎と化して、三日間燃え続け、自ら高層ビルに昇って、高層ビルの屋上から落下して果てた。