The Drifters from the universe
サヌキマオ
日常には稀に普通では考えられないことが起こる。加えて立て続けに、突拍子もなく起こると、無宗教かつ科学的合理主義を標榜するこの私も誰だかの意思のようなものを少しは脳裏に閃かさずにいられないのだ。
今日は水曜日なので午前で高校は終わり、出す郵便物があったので駅前の大きな郵便局に立ち寄った。その途端に銀行強盗である。
強盗は三人いて、多分体格からすると全員男である。目出し帽をかぶって拳銃を持っていた。私もあまり目はよくないのだが、少なくとも銃の扱いは重そうに見えた。よく通る声で、金を出せ、両手を頭の上に置いてその場に正座しろ、と云うのですぐにしゃがみ込む。
ここでドラマだとすぐに中の客は大人しくなるのだが、あちらこちらにいたおばさんが連鎖的にパニックを起こして騒ぎ始めた。破裂音と発光があった。天井の蛍光灯が弾けた。
「いやぁ大したもんだ。生体に何らかの特殊な因子がなければ我々を認識するには至らんのです。あまつさえ会話ができるとは。スミヤセイコさん、あなたのような人を探していたんですよ」
昨日は昨日で演劇部の稽古の後、塾、ダンスのレッスンとハードワークだった。明日図書館に返すからがんばって読まねばならない本もあるし、と理由をつけて世にいう栄養ドリンクを飲んでみよう、とコンビニに寄ろうとしたら宇宙生物に頭上から呼び止められた。宇宙生物は不定形で、まばゆく発光している。
「我が星ウトキテでは秘密裏に他星の技術をサンプリングして新たな発明をしている。今回この地方の文化を参考とした兵器の試作品が出来上がったので、地域を代表してあなたにこのシステムをインストールしたい」
要約するとそういうことだ。ああ、なんか疲れてるのかな、変な幻想が見えてきたな。まだ高校生なのに、この歳で精神疾患的なアレなのかなぁ、と不安になっていると、宇宙生物は有無を言わさず光る触手を額に押し付けてきた。どうせ夢だしな、とそのままにしていると脳裏に映像が流れ込んでくる。舞台だ。日本家屋のセットがあって、五人くらいで走り回っている。
(兵器だ、って云ってたな)
強盗の金を出せコールからたぶん三分も立っていないのだろう、が、うんざりしていた。私は自分の勘の赴くまま、そっと頭の上の右手を離すと、一旦人差指で天井を差し「えいっ」と強盗に向けて振り下ろした。
すると、何もない空間から巨大な金ダライが発生し、強盗の頭を直撃する。